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2度目の誕生日プレゼント①
しおりを挟むそれから、約1ヶ月。
無事に手術を終えたわたしはその後順調に回復し、退院も間近になってきた。
ピピッ……
祥子「36度ちょうどね。次、血圧測るわね」
朝食を食べて、祥子さんの朝のラウンド。
心臓はアブレーション手術のおかげで不整脈も発作もなくなり、喘息も落ち着いている。
コンコンコン——
藤堂「ひなちゃん、おはよう」
工藤「おはよう!」
ひな「おはようございます」
そして、藤堂先生と工藤先生が回診に。
藤堂「ひなちゃん、今日は具合どう?」
ひな「特に変わりないです。元気です」
藤堂「うん、ありがとう。顔色も良いし、バイタルも問題ないね。胸の音だけ聴かせてね」
と、まずは藤堂先生の簡単な診察。
それが終わると、
工藤「そのままごめんなー」
工藤先生も聴診をし、
工藤「よし、問題ない。そしたら、今日は検査とか特に予定ないからな。また夜に来るから、それまでゆっくりしてな」
藤堂「何かあったらすぐに呼んでね」
ひな「はい。ありがとうございました」
と、病院での平穏な朝のルーティンが終わる。
そして、本を読んだり、勉強したり、落ちた筋力を取り戻すためにリハビリがてら院内を歩いたり。
お昼も残さず食べて、また医学書に目を通して、
ふぅ~、ちょっと休憩。
と、息をついた午後3時過ぎ。
コンコンコン——
五条「ひな」
ひな「五条先生!」
が来てくれた。
ひな「お疲れ様です!お仕事ひと段落ですか?」
1日1回は必ず会いに来てくれる五条先生。
今日はこの時間だから、仕事の合間に来てくれたんだろう。
五条「あぁ。ひなは勉強してたか。調子良さそうだな」
ひな「はい。お昼も全部食べました!今はちょっと休憩です」
五条「ん、えらいな」
と言って、そこの椅子に座るのかと思いきや、
……っ!!///
五条先生はベッドに腰掛けてきた。
ひな「ごっ、五条先生?」
五条「ん?」
いつもは椅子に座るのに、どうして隣に座ったんだろう。
なんか、ド、ドキドキする……///
ひな「な、なんでここに座るんですか?」
五条「嫌だったか?」
ひな「いえ、嫌じゃないですけど……っ」
五条「けど?」
ひな「え?け、けど……っ、ド、ド……」
五条「ん?」
ひな「え、えっと、その……っ」
五条「……そんなにドキドキするか?」
ひな「へっ!!?……っ/////」
五条「ぶははっ!ひな顔真っ赤。ちょっとくっついて座っただけだろ?嬉しいし可愛いけど、このくらいのことはもう少し慣れてくれてもな~」
ひな「だ、だって、家ならまだしも病院で……!しかも久しぶりだし……っ、いつもはそこ(椅子)に座るから……っ」
五条「確かにそうだな。でも、今日はひなに言わなきゃいけない大事な事があるだろ?」
ひな「え?」
わたしに言わなきゃいけない……
ひな「大事な……こと??」
するとそこへ……
コンコンコン——
「「ひなちゃーん!」」
黒柱たちが来て、
ひな「え?」
その手にはケーキがあって、
五条「ひな」
腰に手を回されて、身体をギュッと引き寄せられて、
ひな「え?」
五条先生の顔を見上げると、
五条「誕生日おめでとう」
「「ひなちゃん、お誕生日おめでとう!」」
って、五条先生も先生たちも。みんなが。
ひな「え?今日って……」
五条「3月1日。ひなの21歳の誕生日だぞ。やっぱり忘れてたか」
3月1日……
すっかり忘れてた。
というか、日付の感覚がわからなくなっちゃってて、意識も何もしてなかった。
藤堂「ひなちゃん元気になって調子が良いから、みんなでお誕生日ケーキ用意したの。ろうそくは無しだけどね」
と、テーブルに置いてもらったのは、フルーツがぎっしり乗ったタルトケーキ。
その上には、
"ひなのちゃん お誕生日おめでとう"
と書かれた、チョコレートも乗っている。
ひな「わたしの誕生日……先生たち、みんな覚えてくれてたの?」
五条「当たり前だろ」
藤堂「主治医だからね」
工藤「担当医だからな」
宇髄「俺も」
神崎「俺も!」
藤堂「?」
工藤「??」
宇髄「???」
神崎「っ……お、俺は!ほら、ひなちゃんのカルテいつも見てるし!たまに診察もするから!」
宇髄「ははっ。わかってる、冗談だ」
五条「神崎先生もひなの大事な先生ですよ。な?ひな」
ひな「はい、もちろんです!」
神崎「ひなちゃんっ……!」
五条「ここにいる先生たちはみんな、ずっとひなのこと見てきてくれたんだ。ひなのことなら、もう何でも知ってるぞ」
ひな「本当にありがとうございます。わたし、先生たちにお祝いしてもらえてすごくうれしいです!」
五条「ん、よかったな」
ぽんぽん……
ひな「ハイ……っ//」
藤堂「ふふっ。そしたら、ケーキみんなで食べようか」
工藤「あ、俺切りますよ」
神崎「俺も!」
藤堂「じゃあ、お願いしてもいい?」
と、ケーキを切り分けてもらい。
ベッドを離れテーブルとソファーに移動して、先生たちとみんな一緒にケーキタイム。
藤堂「ひなちゃん、ケーキ美味しい?」
ひな「ふぁいっ!おいひくって、ひあわへでふ!」
五条「ひーなぁ?口に入れたまま喋るな。というか入れ過ぎだ。少しずつゆっくり食べんか!」
ヒィッ……!
ひな「ごめんなふぁ……っ、ゴホッ、ゴホゴホッ!」
神崎「おおーっと、ひなちゃん大丈夫?」
ひな「ゴホッ……らいじょぶ……っ、ゴホゴホッ!」
五条「いつもいつも言わんこっちゃないな……ほら、牛乳飲め」
そして、ケーキを食べ始めてわりとすぐ。
口に入れたまま喋って怒られて、急いでモグモグして飲み込もうとしたら喉に詰まり。
いつものごとく、五条先生に呆れられる。
でも、背中はすかさずさすさすしてくれた。
藤堂「ごめんごめん。僕が食べてる時に話しかけちゃったね」
五条「すみません、もう大丈夫です。ケーキが美味し過ぎてつい……えへへ」
と落ち着いたところで、フォークをケーキに入れると、
五条「ひな!そんな大きいとさっきみたいになるだろ、その半分にせんか!お前は学習能力ゼロか!」
と言われてしまい、
ひな「うぅ……」
五条「ったく、甘いもの食う時だけは食い意地張って」
ひな「お誕生日だからオコラナイデ……」
五条「忘れてたくせに」
ひな「うぅ……」
なんて言い合いしてると、
プルルップルルッ……
五条「はい、五条です。……わかった、すぐ行く」
五条先生に呼び出しが入り、
神崎「呼び出し?」
五条「はい。憂太くんです」
神崎「あー、発作起きちゃったか。今朝調子良くなかったもんね」
五条「すみません、俺ちょっと行きます。ひな、ごめんな。ケーキゆっくり食べろよ」
そう言って、自分の食べかけのケーキを全部口の中に放り込んで、患者さんのところへ行った。
もう、自分はバカみたいに大きいひと口で食べるじゃん。
まったく、いつもいつも人に言っておきながら。
むむぅ……
五条先生が部屋を出た後、心の中でぶつぶつ言いながら、言いつけ通りに小さくしたケーキを口の中に入れる。
工藤「ははっ。可愛いなひなちゃん」
ひな「えっ??」
工藤「人には少しずつ食べろって言ったのに、五条先生は残りのケーキひと口で食べたって。なんなら、残ってるケーキもらおうと思ってたのに食べて行っちゃったって、そう思ってない?」
なっ……!ば、バレてる……!
工藤「ひなちゃんは全部顔に出るからわかりやすいな。頬っぺた膨らんでるぞ?」
ひな「だ、だって……!五条先生いつもそうなんです。わたしにはああだこうだ言うのに、自分は言ってることと違うことするんですもん。どうしてわたしは怒られるのか……」
宇髄「ははっ。でも、そんな五条先生が大好きなんだろ?」
ひな「えっ?」
神崎「五条先生にいろいろ言われてぷんすこしてても、本当に嫌って感じじゃないんだよね~。検査や治療の時に比べたら嬉しそうにすら見えるよ?」
ひな「えっ!? そ、そんなことないですっ……!本当に五条先生の意地悪嫌なんですからっ!」
藤堂「ふふっ。でも、大好きなのは間違いないでしょ?だってひなちゃん。五条先生が行っちゃってから、お顔が急に寂しそうになったよ」
宇髄「すまんな。五条先生いないのに、おじさん達のティータイムに付き合ってもらって」
ひな「いえ……!そんな、とんでもないですっ!わたし、本当にすごく嬉しいです。五条先生が恋人なら、先生たちはお父さんやお兄さんのような、家族みたいな存在でもあるので。というか、先生たちがわたしに付き合ってくれてるんです。忙しいのに、本当に今日はありがとうございます」
藤堂「こちらこそだよ。成長した姿見せてくれてありがとう。これからもお祝いさせてね。でも、できれば病院じゃなくてお家がいいかな(笑)」
うっ、そりゃそうだよね……。
ひな「来年は家で誕生日を迎えられるように頑張ります……」
藤堂「うん。退院したら、僕と会うのは定期健診だけになるようにね。21歳の目標のひとつにしとこうか(笑)」
ひな「は、はい。そうします……」
なんて、ちゃっかり主治医らしいことを言われたりして。
その後も先生達とお話ししながら、ささやかなお誕生日会が終わった。
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