上 下
205 / 232

2度目の誕生日プレゼント①

しおりを挟む


それから、約1ヶ月。

無事に手術を終えたわたしはその後順調に回復し、退院も間近になってきた。










ピピッ……


祥子「36度ちょうどね。次、血圧測るわね」





朝食を食べて、祥子さんの朝のラウンド。

心臓はアブレーション手術のおかげで不整脈も発作もなくなり、喘息も落ち着いている。





コンコンコン——


藤堂「ひなちゃん、おはよう」


工藤「おはよう!」


ひな「おはようございます」





そして、藤堂先生と工藤先生が回診に。





藤堂「ひなちゃん、今日は具合どう?」


ひな「特に変わりないです。元気です」


藤堂「うん、ありがとう。顔色も良いし、バイタルも問題ないね。胸の音だけ聴かせてね」





と、まずは藤堂先生の簡単な診察。

それが終わると、





工藤「そのままごめんなー」





工藤先生も聴診をし、





工藤「よし、問題ない。そしたら、今日は検査とか特に予定ないからな。また夜に来るから、それまでゆっくりしてな」


藤堂「何かあったらすぐに呼んでね」


ひな「はい。ありがとうございました」





と、病院での平穏な朝のルーティンが終わる。



そして、本を読んだり、勉強したり、落ちた筋力を取り戻すためにリハビリがてら院内を歩いたり。

お昼も残さず食べて、また医学書に目を通して、





ふぅ~、ちょっと休憩。





と、息をついた午後3時過ぎ。





コンコンコン——





五条「ひな」


ひな「五条先生!」





が来てくれた。





ひな「お疲れ様です!お仕事ひと段落ですか?」





1日1回は必ず会いに来てくれる五条先生。

今日はこの時間だから、仕事の合間に来てくれたんだろう。





五条「あぁ。ひなは勉強してたか。調子良さそうだな」


ひな「はい。お昼も全部食べました!今はちょっと休憩です」


五条「ん、えらいな」





と言って、そこの椅子に座るのかと思いきや、





……っ!!///





五条先生はベッドに腰掛けてきた。





ひな「ごっ、五条先生?」


五条「ん?」





いつもは椅子に座るのに、どうして隣に座ったんだろう。



なんか、ド、ドキドキする……///





ひな「な、なんでここに座るんですか?」


五条「嫌だったか?」


ひな「いえ、嫌じゃないですけど……っ」


五条「けど?」


ひな「え?け、けど……っ、ド、ド……」


五条「ん?」


ひな「え、えっと、その……っ」


五条「……そんなにドキドキするか?」


ひな「へっ!!?……っ/////」


五条「ぶははっ!ひな顔真っ赤。ちょっとくっついて座っただけだろ?嬉しいし可愛いけど、このくらいのことはもう少し慣れてくれてもな~」


ひな「だ、だって、家ならまだしも病院で……!しかも久しぶりだし……っ、いつもはそこ(椅子)に座るから……っ」


五条「確かにそうだな。でも、今日はひなに言わなきゃいけない大事な事があるだろ?」


ひな「え?」





わたしに言わなきゃいけない……





ひな「大事な……こと??」





するとそこへ……





コンコンコン——


「「ひなちゃーん!」」





黒柱たちが来て、





ひな「え?」





その手にはケーキがあって、





五条「ひな」





腰に手を回されて、身体をギュッと引き寄せられて、





ひな「え?」





五条先生の顔を見上げると、





五条「誕生日おめでとう」


「「ひなちゃん、お誕生日おめでとう!」」





って、五条先生も先生たちも。みんなが。





ひな「え?今日って……」


五条「3月1日。ひなの21歳の誕生日だぞ。やっぱり忘れてたか」





3月1日……

すっかり忘れてた。

というか、日付の感覚がわからなくなっちゃってて、意識も何もしてなかった。





藤堂「ひなちゃん元気になって調子が良いから、みんなでお誕生日ケーキ用意したの。ろうそくは無しだけどね」





と、テーブルに置いてもらったのは、フルーツがぎっしり乗ったタルトケーキ。

その上には、



"ひなのちゃん お誕生日おめでとう"



と書かれた、チョコレートも乗っている。





ひな「わたしの誕生日……先生たち、みんな覚えてくれてたの?」


五条「当たり前だろ」


藤堂「主治医だからね」


工藤「担当医だからな」


宇髄「俺も」


神崎「俺も!」


藤堂「?」


工藤「??」


宇髄「???」


神崎「っ……お、俺は!ほら、ひなちゃんのカルテいつも見てるし!たまに診察もするから!」


宇髄「ははっ。わかってる、冗談だ」


五条「神崎先生もひなの大事な先生ですよ。な?ひな」


ひな「はい、もちろんです!」


神崎「ひなちゃんっ……!」


五条「ここにいる先生たちはみんな、ずっとひなのこと見てきてくれたんだ。ひなのことなら、もう何でも知ってるぞ」


ひな「本当にありがとうございます。わたし、先生たちにお祝いしてもらえてすごくうれしいです!」


五条「ん、よかったな」





ぽんぽん……





ひな「ハイ……っ//」


藤堂「ふふっ。そしたら、ケーキみんなで食べようか」


工藤「あ、俺切りますよ」


神崎「俺も!」


藤堂「じゃあ、お願いしてもいい?」





と、ケーキを切り分けてもらい。

ベッドを離れテーブルとソファーに移動して、先生たちとみんな一緒にケーキタイム。










藤堂「ひなちゃん、ケーキ美味しい?」


ひな「ふぁいっ!おいひくって、ひあわへでふ!」


五条「ひーなぁ?口に入れたまま喋るな。というか入れ過ぎだ。少しずつゆっくり食べんか!」





ヒィッ……!





ひな「ごめんなふぁ……っ、ゴホッ、ゴホゴホッ!」


神崎「おおーっと、ひなちゃん大丈夫?」


ひな「ゴホッ……らいじょぶ……っ、ゴホゴホッ!」


五条「いつもいつも言わんこっちゃないな……ほら、牛乳飲め」





そして、ケーキを食べ始めてわりとすぐ。

口に入れたまま喋って怒られて、急いでモグモグして飲み込もうとしたら喉に詰まり。

いつものごとく、五条先生に呆れられる。

でも、背中はすかさずさすさすしてくれた。





藤堂「ごめんごめん。僕が食べてる時に話しかけちゃったね」


五条「すみません、もう大丈夫です。ケーキが美味し過ぎてつい……えへへ」





と落ち着いたところで、フォークをケーキに入れると、





五条「ひな!そんな大きいとさっきみたいになるだろ、その半分にせんか!お前は学習能力ゼロか!」





と言われてしまい、





ひな「うぅ……」


五条「ったく、甘いもの食う時だけは食い意地張って」


ひな「お誕生日だからオコラナイデ……」


五条「忘れてたくせに」


ひな「うぅ……」





なんて言い合いしてると、





プルルップルルッ……





五条「はい、五条です。……わかった、すぐ行く」





五条先生に呼び出しが入り、





神崎「呼び出し?」


五条「はい。憂太くんです」


神崎「あー、発作起きちゃったか。今朝調子良くなかったもんね」


五条「すみません、俺ちょっと行きます。ひな、ごめんな。ケーキゆっくり食べろよ」





そう言って、自分の食べかけのケーキを全部口の中に放り込んで、患者さんのところへ行った。



もう、自分はバカみたいに大きいひと口で食べるじゃん。

まったく、いつもいつも人に言っておきながら。



むむぅ……



五条先生が部屋を出た後、心の中でぶつぶつ言いながら、言いつけ通りに小さくしたケーキを口の中に入れる。





工藤「ははっ。可愛いなひなちゃん」


ひな「えっ??」


工藤「人には少しずつ食べろって言ったのに、五条先生は残りのケーキひと口で食べたって。なんなら、残ってるケーキもらおうと思ってたのに食べて行っちゃったって、そう思ってない?」





なっ……!ば、バレてる……!





工藤「ひなちゃんは全部顔に出るからわかりやすいな。頬っぺた膨らんでるぞ?」


ひな「だ、だって……!五条先生いつもそうなんです。わたしにはああだこうだ言うのに、自分は言ってることと違うことするんですもん。どうしてわたしは怒られるのか……」


宇髄「ははっ。でも、そんな五条先生が大好きなんだろ?」


ひな「えっ?」


神崎「五条先生にいろいろ言われてぷんすこしてても、本当に嫌って感じじゃないんだよね~。検査や治療の時に比べたら嬉しそうにすら見えるよ?」


ひな「えっ!? そ、そんなことないですっ……!本当に五条先生の意地悪嫌なんですからっ!」


藤堂「ふふっ。でも、大好きなのは間違いないでしょ?だってひなちゃん。五条先生が行っちゃってから、お顔が急に寂しそうになったよ」


宇髄「すまんな。五条先生いないのに、おじさん達のティータイムに付き合ってもらって」


ひな「いえ……!そんな、とんでもないですっ!わたし、本当にすごく嬉しいです。五条先生が恋人なら、先生たちはお父さんやお兄さんのような、家族みたいな存在でもあるので。というか、先生たちがわたしに付き合ってくれてるんです。忙しいのに、本当に今日はありがとうございます」


藤堂「こちらこそだよ。成長した姿見せてくれてありがとう。これからもお祝いさせてね。でも、できれば病院じゃなくてお家がいいかな(笑)」





うっ、そりゃそうだよね……。





ひな「来年は家で誕生日を迎えられるように頑張ります……」


藤堂「うん。退院したら、僕と会うのは定期健診だけになるようにね。21歳の目標のひとつにしとこうか(笑)」


ひな「は、はい。そうします……」





なんて、ちゃっかり主治医らしいことを言われたりして。

その後も先生達とお話ししながら、ささやかなお誕生日会が終わった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?

すず。
恋愛
体調を崩してしまった私 社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね) 診察室にいた医師は2つ年上の 幼馴染だった!? 診察室に居た医師(鈴音と幼馴染) 内科医 28歳 桐生慶太(けいた) ※お話に出てくるものは全て空想です 現実世界とは何も関係ないです ※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

My Doctor

west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生 病気系ですので、苦手な方は引き返してください。 初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです! 主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな) 妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ) 医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

【R18】鬼上司は今日も私に甘くない

白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。 逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー 法人営業部メンバー 鈴木梨沙:28歳 高濱暁人:35歳、法人営業部部長 相良くん:25歳、唯一の年下くん 久野さん:29歳、一個上の優しい先輩 藍沢さん:31歳、チーフ 武田さん:36歳、課長 加藤さん:30歳、法人営業部事務

処理中です...