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傑と悟②
しおりを挟む*夏樹side
七海「夏樹、ひなのは?」
待合室にいると、車を駐めた傑が来て俺の隣に腰を下ろした。
夏樹「中にいる」
七海「そっか。ひなの大丈夫かな。身体、強くないとは聞いてたけど、思ってたより弱いみたいだね。今日みたいなことはよく?」
夏樹「うん。しばらく調子良かったけど、本当は元気な時の方が少ない。入退院繰り返してるんだ」
七海「そうだったんだ。俺、まだ元気なひなのしか見たことなかったからさ。突然体調崩し出してびっくりした」
夏樹「だよな。ひなのって、いつもギリギリまで我慢するし隠すんだよ。だから、やばいってなった時には、割とマジで本当にやばいことが多いから、俺も結構ビビる時ある。でもまぁ、今日は全然マシな方だったな」
七海「あんなフラフラしてて全然マシなんだ……」
と話してると、処置室から藤堂先生が出てきた。
夏樹「藤堂先生!ひなのは?」
藤堂「大丈夫、落ち着いたよ。早めに連れてきてくれてありがとう、症状軽くて助かった。それと、ひなちゃんが新しい友達できたって、やっぱり傑のことだったか。傑に車あげておいてよかった」
ん?
七海「あ、なんか聞いてた?」
藤堂「うん。アメリカから来た20才のお兄さんで、なんとなく俺に雰囲気が似てる気がするって言ってた(笑)」
あれ?
藤堂先生と傑、知り合い……?
夏樹「ちょ、ちょっと待ってストップ!2人って知り合い??」
藤堂「あれ、夏樹知らなかったのか。傑は僕の甥っ子。姉の子だよ」
夏樹「へっ!?」
七海「悟は俺の叔父さん」
藤堂「傑~、医大入ったら呼び捨てやめろって言っただろ。ちゃんと敬称付けろ、ぶっ飛ばされたい?」
なっ……藤堂先生怖っ!
こんなキャラだっけ、傑に当たり強くね……?
七海「はい、すみません……」
って、傑も頭上がんない感じじゃん。
夏樹「マジか、2人親戚だったのか……。つか、傑黙ってないで早く言えよ!もしかして、ひなのの主治医が藤堂先生ってこと知ってたのか?」
七海「うん。入学前、栗花落ひなのって子がいるから仲良くしてあげてって悟くんが。かわいい子だから見たらわかるって言われてたけど、本当に見た瞬間この子だなってわかった!」
藤堂「でしょ?(笑)」
まさか、傑と藤堂先生が親戚同士だったなんて……。
夏樹「世間ってほんと狭いんだなぁ……あ、ところで藤堂先生。五条先生は?」
藤堂「五条先生、今週ずっと出張だったの。さっき連絡したら、今帰ってる途中でもう着くって。ひなちゃん、五条先生とこんなに離れるの初めてだったから、それもあったんだろうね」
夏樹「そうか、五条先生いなかったのか……ひなのなんも言ってなかったな」
と、話してたところへ、
五条「藤堂先生!」
五条先生が来た。
五条「お疲れ様です。ひなは?」
藤堂「点滴入れて処置室で休ませてるよ。あと10分くらいで終わるかな」
五条「そうですか、ありがとうございます」
と、2人が話す横で、
七海「夏樹、この人が五条先生?ひなのの婚約者?」
夏樹「あぁ。ひなのが惚れるのわかるだろ?」
って、コソコソ話してたら、
藤堂「こーら、聞こえてないと思ってんの?ほら傑、挨拶しなさい。五条先生、こいつがこの前話したうちの傑」
七海「はじめまして、七海傑です」
五条「五条悠仁、よろしくな。藤堂先生とひなからも話聞いてるよ。今日はひな送ってくれたみたいでありがとう。夏樹も悪かったな」
夏樹「俺は何も。あ、これひなののカバン。そしたら、俺たちこれで帰るよ。ひなのにまた月曜日なって伝えて!」
預かってたひなののカバンを五条先生に渡して、傑と病院を後にした。
***
*ひなのside
藤堂「ひなちゃーん」
ひな「ん……んん……」
藤堂「点滴終わったよ。気分どうかな、目眩落ち着いた?」
ゆっくりと目を開けて天井を見てみると、さっきより身体が軽い感じ。
ひな「はい。さっきより楽になりまし……」
藤堂先生の方を見ると、隣に五条先生が。
ひな「五条先生……」
五条「大丈夫か?」
ひな「あれ……出張は……?」
五条「終わって帰ってきたぞ。ったく、そろそろ体調崩すだろうとは思ってたんだ。だから今回の出張は行きたくなかったんだが……きっちり俺のいない間に倒れたな。飯ちゃんと食ってるって、LIMEで嘘ついてただろ(笑)」
と言いながら、五条先生はわたしのおでこをツンと押した。
ひな「ごめんなさい……」
すると、今度は頬に手を添えて、
五条「寂しかったか?」
ひな「コクッ……」
五条「熱出なくてよかった。ちゃんと藤堂先生のとこ来たんだな。えらかった」
ひな「夏樹と傑に連れて来……って夏樹と傑は??」
五条「2人ともついさっき帰ったぞ。また月曜日に会おうなって」
ひな「そっか」
藤堂「そしたらひなちゃん。検査結果出てるから、少しお話ししようか」
と、身体を起こしてもらい、検査結果を見せてもらった。
白血球数:5300
赤血球数:394
ヘモグロビン:9.7
・
・
・
ヘモグロビン値、9.7か……。
血液検査の結果はやっぱり悪くなってて、わかってたことなのに数字で見るとやっぱりショック。
藤堂「もう見てわかると思うけど、数値がかなり低くなってきてる」
ひな「はい……」
藤堂「大学には休まず通いたいんだよね?」
ひな「もちろん、休まず行きたいです」
藤堂「うん。そしたら、このまま貧血が進まないように、週1回鉄剤打とう」
やっぱり、そうだよね……。
鉄剤注射になるだろうなと思ってたけど、これもいざ言われるとやっぱりショック。
藤堂「それと、薬もいくつか出しておくから、朝昼晩ときっちり飲むようにして。これで大学は毎日行ってもいいけど、決して無理はしないように。しんどくなった時はすぐ来るんだよ」
ひな「わかりました……ありがとうございました」
こうして、薬の服用と週に1回の鉄剤注射でなんとか大学には通えているものの、どんどん暑くなるこの季節に、どんどん難しくなる講義。
わたしの身体は辛うじて現状維持できてる……かな?という状態で、絶好調とは程遠い。
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