上 下
154 / 209

傑と悟②

しおりを挟む


*夏樹side





七海「夏樹、ひなのは?」





待合室にいると、車を駐めた傑が来て俺の隣に腰を下ろした。





夏樹「中にいる」


七海「そっか。ひなの大丈夫かな。身体、強くないとは聞いてたけど、思ってたより弱いみたいだね。今日みたいなことはよく?」


夏樹「うん。しばらく調子良かったけど、本当は元気な時の方が少ない。入退院繰り返してるんだ」


七海「そうだったんだ。俺、まだ元気なひなのしか見たことなかったからさ。突然体調崩し出してびっくりした」


夏樹「だよな。ひなのって、いつもギリギリまで我慢するし隠すんだよ。だから、やばいってなった時には、割とマジで本当にやばいことが多いから、俺も結構ビビる時ある。でもまぁ、今日は全然マシな方だったな」


七海「あんなフラフラしてて全然マシなんだ……」





と話してると、処置室から藤堂先生が出てきた。





夏樹「藤堂先生!ひなのは?」


藤堂「大丈夫、落ち着いたよ。早めに連れてきてくれてありがとう、症状軽くて助かった。それと、ひなちゃんが新しい友達できたって、やっぱり傑のことだったか。傑に車あげておいてよかった」





ん?





七海「あ、なんか聞いてた?」


藤堂「うん。アメリカから来た20才のお兄さんで、なんとなく俺に雰囲気が似てる気がするって言ってた(笑)」





あれ?

藤堂先生と傑、知り合い……?





夏樹「ちょ、ちょっと待ってストップ!2人って知り合い??」


藤堂「あれ、夏樹知らなかったのか。傑は僕の甥っ子。姉の子だよ」


夏樹「へっ!?」


七海「悟は俺の叔父さん」


藤堂「傑~、医大入ったら呼び捨てやめろって言っただろ。ちゃんと敬称付けろ、ぶっ飛ばされたい?」





なっ……藤堂先生怖っ!

こんなキャラだっけ、傑に当たり強くね……?





七海「はい、すみません……」





って、傑も頭上がんない感じじゃん。





夏樹「マジか、2人親戚だったのか……。つか、傑黙ってないで早く言えよ!もしかして、ひなのの主治医が藤堂先生ってこと知ってたのか?」


七海「うん。入学前、栗花落ひなのって子がいるから仲良くしてあげてって悟くんが。かわいい子だから見たらわかるって言われてたけど、本当に見た瞬間この子だなってわかった!」


藤堂「でしょ?(笑)」





まさか、傑と藤堂先生が親戚同士だったなんて……。





夏樹「世間ってほんと狭いんだなぁ……あ、ところで藤堂先生。五条先生は?」


藤堂「五条先生、今週ずっと出張だったの。さっき連絡したら、今帰ってる途中でもう着くって。ひなちゃん、五条先生とこんなに離れるの初めてだったから、それもあったんだろうね」


夏樹「そうか、五条先生いなかったのか……ひなのなんも言ってなかったな」





と、話してたところへ、





五条「藤堂先生!」





五条先生が来た。





五条「お疲れ様です。ひなは?」


藤堂「点滴入れて処置室で休ませてるよ。あと10分くらいで終わるかな」


五条「そうですか、ありがとうございます」





と、2人が話す横で、





七海「夏樹、この人が五条先生?ひなのの婚約者?」


夏樹「あぁ。ひなのが惚れるのわかるだろ?」





って、コソコソ話してたら、





藤堂「こーら、聞こえてないと思ってんの?ほら傑、挨拶しなさい。五条先生、こいつがこの前話したうちの傑」


七海「はじめまして、七海傑です」


五条「五条悠仁、よろしくな。藤堂先生とひなからも話聞いてるよ。今日はひな送ってくれたみたいでありがとう。夏樹も悪かったな」


夏樹「俺は何も。あ、これひなののカバン。そしたら、俺たちこれで帰るよ。ひなのにまた月曜日なって伝えて!」





預かってたひなののカバンを五条先生に渡して、傑と病院を後にした。










***



*ひなのside





藤堂「ひなちゃーん」


ひな「ん……んん……」


藤堂「点滴終わったよ。気分どうかな、目眩落ち着いた?」





ゆっくりと目を開けて天井を見てみると、さっきより身体が軽い感じ。





ひな「はい。さっきより楽になりまし……」





藤堂先生の方を見ると、隣に五条先生が。





ひな「五条先生……」


五条「大丈夫か?」


ひな「あれ……出張は……?」


五条「終わって帰ってきたぞ。ったく、そろそろ体調崩すだろうとは思ってたんだ。だから今回の出張は行きたくなかったんだが……きっちり俺のいない間に倒れたな。飯ちゃんと食ってるって、LIMEで嘘ついてただろ(笑)」





と言いながら、五条先生はわたしのおでこをツンと押した。





ひな「ごめんなさい……」





すると、今度は頬に手を添えて、





五条「寂しかったか?」


ひな「コクッ……」


五条「熱出なくてよかった。ちゃんと藤堂先生のとこ来たんだな。えらかった」


ひな「夏樹と傑に連れて来……って夏樹と傑は??」


五条「2人ともついさっき帰ったぞ。また月曜日に会おうなって」


ひな「そっか」


藤堂「そしたらひなちゃん。検査結果出てるから、少しお話ししようか」





と、身体を起こしてもらい、検査結果を見せてもらった。










白血球数:5300
赤血球数:394
ヘモグロビン:9.7








ヘモグロビン値、9.7か……。



血液検査の結果はやっぱり悪くなってて、わかってたことなのに数字で見るとやっぱりショック。





藤堂「もう見てわかると思うけど、数値がかなり低くなってきてる」


ひな「はい……」


藤堂「大学には休まず通いたいんだよね?」


ひな「もちろん、休まず行きたいです」


藤堂「うん。そしたら、このまま貧血が進まないように、週1回鉄剤打とう」





やっぱり、そうだよね……。



鉄剤注射になるだろうなと思ってたけど、これもいざ言われるとやっぱりショック。





藤堂「それと、薬もいくつか出しておくから、朝昼晩ときっちり飲むようにして。これで大学は毎日行ってもいいけど、決して無理はしないように。しんどくなった時はすぐ来るんだよ」


ひな「わかりました……ありがとうございました」





こうして、薬の服用と週に1回の鉄剤注射でなんとか大学には通えているものの、どんどん暑くなるこの季節に、どんどん難しくなる講義。

わたしの身体は辛うじて現状維持できてる……かな?という状態で、絶好調とは程遠い。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

虐げられた落ちこぼれ令嬢は、若き天才王子様に溺愛される~才能ある姉と比べられ無能扱いされていた私ですが、前世の記憶を思い出して覚醒しました~

日之影ソラ
恋愛
異能の強さで人間としての価値が決まる世界。国内でも有数の貴族に生まれた双子は、姉は才能あふれる天才で、妹は無能力者の役立たずだった。幼いころから比べられ、虐げられてきた妹リアリスは、いつしか何にも期待しないようになった。 十五歳の誕生日に突然強大な力に目覚めたリアリスだったが、前世の記憶とこれまでの経験を経て、力を隠して平穏に生きることにする。 さらに時がたち、十七歳になったリアリスは、変わらず両親や姉からは罵倒され惨めな扱いを受けていた。それでも平穏に暮らせるならと、気にしないでいた彼女だったが、とあるパーティーで運命の出会いを果たす。 異能の大天才、第六王子に力がばれてしまったリアリス。彼女の人生はどうなってしまうのか。

吸血鬼公爵に嫁いだ私は血を吸われることもなく、もふもふ堪能しながら溺愛されまくってます

リオール
恋愛
吸血鬼公爵に嫁ぐこととなったフィーリアラはとても嬉しかった。 金を食い潰すだけの両親に妹。売り飛ばすような形で自分を嫁に出そうとする家族にウンザリ! おまけに婚約者と妹の裏切りも発覚。こんな連中はこっちから捨ててやる!と家を出たのはいいけれど。 逃げるつもりが逃げれなくて恐る恐る吸血鬼の元へと嫁ぐのだった。 結果、血なんて吸われることもなく、吸血鬼公爵にひたすら愛されて愛されて溺愛されてイチャイチャしちゃって。 いつの間にか実家にざまぁしてました。 そんなイチャラブざまぁコメディ?なお話しです。R15は保険です。 ===== 2020/12月某日 第二部を執筆中でしたが、続きが書けそうにないので、一旦非公開にして第一部で完結と致しました。 楽しみにしていただいてた方、申し訳ありません。 また何かの形で公開出来たらいいのですが…完全に未定です。 お読みいただきありがとうございました。

【完結】王子妃になりたくないと願ったら純潔を散らされました

ユユ
恋愛
毎夜天使が私を犯す。 それは王家から婚約の打診があったときから 始まった。 体の弱い父を領地で支えながら暮らす母。 2人は私の異変に気付くこともない。 こんなこと誰にも言えない。 彼の支配から逃れなくてはならないのに 侯爵家のキングは私を放さない。 * 作り話です

【R18】ひとりで異世界は寂しかったのでペット(男)を飼い始めました

桜 ちひろ
恋愛
最近流行りの異世界転生。まさか自分がそうなるなんて… 小説やアニメで見ていた転生後はある小説の世界に飛び込んで主人公を凌駕するほどのチート級の力があったり、特殊能力が!と思っていたが、小説やアニメでもみたことがない世界。そして仮に覚えていないだけでそういう世界だったとしても「モブ中のモブ」で間違いないだろう。 この世界ではさほど珍しくない「治癒魔法」が使えるだけで、特別な魔法や魔力はなかった。 そして小さな治療院で働く普通の女性だ。 ただ普通ではなかったのは「性欲」 前世もなかなか強すぎる性欲のせいで苦労したのに転生してまで同じことに悩まされることになるとは… その強すぎる性欲のせいでこちらの世界でも25歳という年齢にもかかわらず独身。彼氏なし。 こちらの世界では16歳〜20歳で結婚するのが普通なので婚活はかなり難航している。 もう諦めてペットに癒されながら独身でいることを決意した私はペットショップで小動物を飼うはずが、自分より大きな動物…「人間のオス」を飼うことになってしまった。 特に躾はせずに番犬代わりになればいいと思っていたが、この「人間のオス」が私の全てを満たしてくれる最高のペットだったのだ。

【完結】復讐の館〜私はあなたを待っています〜

リオール
ホラー
愛しています愛しています 私はあなたを愛しています 恨みます呪います憎みます 私は あなたを 許さない

管理委員長なんてさっさと辞めたい

白鳩 唯斗
BL
王道転校生のせいでストレス爆発寸前の主人公のお話

処理中です...