上 下
130 / 232

嘘と隠し事①

しおりを挟む


*藤堂side





——数ヶ月後





~小児科医局~





藤堂「悠仁、ちょっといい?」


五条「あれ、藤堂先生。お疲れ様です。ひな何かありました?」


藤堂「ううん、今日も元気だったよ。どの結果も安定してるし。見る?」





と、悠仁に検査結果を渡す。

今日はひなちゃんの年明け最初の定期健診。

ついさっき終わったところで、悠仁と話をしに来た。





五条「今月もまずまずですね。そろそろ体調崩すだろってずっと思ってますけど……ひな妙に元気ですね」


藤堂「うん、そうだよね。悠仁に話したかったのはそのこと」





修学旅行が終わって、もう3ヶ月以上。

旅行中に具合が悪くなることもなく、元気いっぱい笑顔で帰ってきたひなちゃんは、まだ一度も体調を崩してない。

患者が元気でいてくれるのは主治医として何よりだけど……

あのひなちゃんに何も起きないのは、嵐の前の静けさなのかと思えてならない。





藤堂「修学旅行が終わって結構経つのに、ひなちゃんがこんなに元気なのがどうも気になっててさ」


五条「それは俺もそう思います。とはいえ、家でも変わった様子はないですけど……それが逆に変わってるとも言えるか」


藤堂「うん……こんなこと言うのあれだけど、嫌な予感するんだよね。何か隠してるのかな。悠仁、心当たりある?」


五条「うーん……」





と、2人で考えてると、





神崎「あ……」





と言ったのは、悠仁の隣に座ってた神崎先生。





神崎「そういえば、ひなちゃんお腹の具合は?最後に治療したのいつでしたっけ」


五条「付き合う前……ひなの誕生日より前だったから、ちょうど去年の今頃ですね」


神崎「いや、記憶の辿り方(笑)」


藤堂「ふふっ。でもそうだね、神崎先生の言うそれが1番怪しいな……。悠仁、ひなちゃんって生理来てる?」


五条「修学旅行終わってすぐと、2ヶ月前にも来たとは言ってましたね。どっちも軽そうでしたけど。生理痛も大したことなかったみたいで」


藤堂「それなら問題なさそうか。生理はもうひなちゃんに任せてるからな。でも、ヘモグロビン値変化なくて気づかなかった。なんで下がらなかったんだろう?」


神崎「うーん。フェジンが思いの外ひなちゃんに合ってたとか?だけど、フェリチンの方はやっぱり少しずつ下がってますよね」


藤堂「そうなんだよね。それもそろそろ気にしないといけないんだけど……とりあえずはお腹のことかな。俺も気になるし、ちょっと宇髄先生に相談してくる。ありがとう。悠仁、また連絡するよ」


五条「わかりました。お願いします」










***



*五条side





五条「ひなー?」


ひな「はーい」





その夜、ソファーでテレビを見るひなに声をかける。





五条「来週、宇髄先生にお腹診てもらうぞ」


ひな「えっ……?」





テレビに夢中で話半分だったひなが、驚いた様子で振り返った。

あの後、藤堂先生から連絡があって、1週間後、宇髄先生が一度検査をしてくれることに。





ひな「なんで……?」


五条「なんでって、お腹の治療してからそろそろ1年経つだろ?」


ひな「1年経ったらしなきゃいけなかったでしたっけ……?生理だって来てるし、検査なんてしなくて大丈夫です」


五条「一応検査してもらって、何もなければそれで安心だろ?とにかく、念のため経過観察してもらっとこう」


ひな「それは、もう決まりですか……?」


五条「あぁ。もう予約入れてもらったから、学校終わったら婦人科行くこと」


ひな「……はい」










***



*ひなのside





はぁ……

どうしよう、これはやばい……

いろいろやばい……





五条先生が突然話してきたお腹のこと。

実は、もう2週間くらい前から嫌な予感がしてる。



そもそも生理が全然来てない。

宇髄先生には3ヶ月来なかったら教えてとか言われてたけど、3ヶ月どころかもう半年は来てない。

それがバレないように五条先生には嘘ついて、適当なタイミングで生理が来たことにしてた。



でも、それだけ生理が来てないせいか、ついにお腹が張り出した。

最初は、生理前かな?やっと来るのかな?って思ってたけど、生理は一向に来てくれず、とにかくお腹だけが張ってくる。

だから、家ではずっとふわもこルームウェアを着てるし、定期健診でもめっちゃお腹引っ込めてる。





もしかして、五条先生にも藤堂先生にもバレた?

でも、さっき五条先生が話してた感じはバレてなさそうなんだけどな。

もしバレてたら怒るだろうし……。



じゃあ、どうしてこんな話になったんだろ。

藤堂先生だって定期健診で何も言ってなかったけど……もしかして、宇髄先生が検査するって言ったの?

でも、わたし宇髄先生に会ってないのにそんな話にならないよね?

じゃあ、先生たちの勘が良すぎるとか?



うーん……



って、それはもう置いておいて、



さぁ……どうしよう……



来週の検査でバレないようにするか、そもそも検査を無いものにするか。

とにかく、あの治療だけは絶対にやりたくないよ……。





そしてわたしは、どうしたら検査を受けずに済むか、このお腹の異変がバレずにやり過ごせるか、とにかく必死で考えた。


けれど、こんな悪い子のことを、神様は見逃さなかったみたいで、許されなかったみたいで……










***



——数日後





ひな「あの、五条先生」


五条「ん?」





朝ごはんを食べながら、わたしはあることを五条先生に伝える。





ひな「実は、さっき生理になりました」


五条「そうか。それで今朝はしんどそうなのか。今回はちょっと重いか?」





……え?

しんどく、ないんだけどな。

生理来たって、検査伸ばして欲しくて嘘ついただけなんだけど……

でも、そう見えてるなら都合がいいし、まぁいっか。





ひな「少しだけしんどい、かな?でも大丈夫です。学校行きます」


五条「ん、わかった」


ひな「それと、明後日の宇髄先生の検査ですけど……生理終わってからでもいいですか?」


五条「あぁ、そうだな。その方がいいか。宇髄先生に伝えとくよ」


ひな「ありがとうございます。お願いします」





……Yes!!



なんでもないように振る舞ってるけど、内心はもうガッツポーズ。

とりあえず、検査を1週間伸ばすことに成功してひと安心。










五条「ひなー?ちょっとおいで」





ん?



そんな朝食後、歯みがきをしてリビングに戻ると、ソファーに座る五条先生が手招きしてる。



って、なんかステート持ってるんだけど……





ひな「なんでしょうか……?」





言いながら近づくと、





五条「やっぱりしんどいだろ?ちょっと熱測れ」





と、手首を掴まれたと思ったら、ソファーに座らされて、体温計を渡される。





ひな「いや、わたし本当にしんどくないです」


五条「いいから。とりあえず測りなさい」





うぅ……





そう言われて、渋々体温を測ってみると、





ひな「あ、ちょっ……」





わたしが何度だったか見る前に、体温計を取り上げられた。





五条「36度8分か。うーん……」





え?今なんともないのにそんなにあるの?

生理来てないのに微熱気味……?





ひな「6度8分だったら大丈夫ですよね……?熱ないし、学校行きます!」


五条「待て。聴診するから服捲れ」


ひな「な、なんで……」


五条「いいから。微熱でも体温が高いの久しぶりだろ?聴診しないなら学校行かせないぞ」





服をめくればお腹も見える。

もうかなり張ってきて引っ込めるのも無理なのに、こんなお腹を見たら五条先生が気づかないはずない。





まさか、お腹張ってて苦しいのが顔に出てる?

それでしんどいかって言ってるの?

どうしようどうしよう……バレたくない……





あ、そうだ!





ひな「じゃあ、また制服着て整えるの大変だから上からにしてください。あと、見られるの恥ずかしいので……」


五条「わかった。それでいいから早くボタン外せ」





よしっ!!わたし天才!!



って、また内心ガッツポーズを決めて、五条先生に聴診してもらった。





五条「……ん、こっちは大丈夫そうだな。ひな本当にしんどくないのか?生理痛も平気か?」


ひな「はい」


五条「んー、ならいいか。でも薬は持って行っとくんだぞ。それから、しんどくなったら授業の途中でもすぐに帰ってこい。いいな?」


ひな「はい」





と、なんとか学校へ行くことに成功する。



だけど、そうして行った学校で……
























——バタンッ!





わたしは倒れてしまった。





「「ひーちゃん!?」」
「「栗花落さん!?」」





授業中になんとなく痛み出したお腹。

徐々に痛くなるのを我慢して授業を受けてたら、終わる頃には激痛に。



授業終わりのチャイムが鳴って、『起立!』の号令で立ち上がったものの、痛みに耐えきれず崩れ落ちた。

クラスのみんながわたしの方を見て、教壇に立つ先生もすぐに駆けつけてくる。





教員「栗花落さん!!栗花落さんどうしたの!?」


ひな「ん"っ……ゔぅっ……い"っっ…………」





返事も出来ずうずくまるわたしに、教室中が大騒ぎ。

その騒ぎが聞こえたのか、隣のクラスの先生も来た。





教員「おい!栗花落大丈夫か、しっかりしろ!!先生、救急車呼びましょう。僕は保健室へ連れて行くので、先生は救急車を」


教員「わかりました。みんな!大丈夫だから次の授業の準備しなさい!」





と、先生が職員室に走り、わたしは隣のクラスの先生に抱き上げられ保健室へ。



そして……















ピーポーピーポーピーポーピー……


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?

すず。
恋愛
体調を崩してしまった私 社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね) 診察室にいた医師は2つ年上の 幼馴染だった!? 診察室に居た医師(鈴音と幼馴染) 内科医 28歳 桐生慶太(けいた) ※お話に出てくるものは全て空想です 現実世界とは何も関係ないです ※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます

My Doctor

west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生 病気系ですので、苦手な方は引き返してください。 初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです! 主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな) 妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ) 医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

処理中です...