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内科病棟①

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それから、点滴を外してもらって病室へ。

16歳になったから小児科は本当に卒業で、今回から初めての内科病棟。

部屋は個室にしてくれたみたい。





藤堂「ひなちゃん、担当の看護師さんは後で挨拶に来てもらうね」





え?看護師さん?





ひな「まこちゃんは??」


藤堂「まこちゃんは小児科の看護師さんだから、もうひなちゃんを担当できないんだ」





そうだったんだ……。

まぁ考えてみればそうか……。

でも、もうまこちゃんがいないなんて……





藤堂「ひなちゃん不安?」


ひな「……少し」





だって、姫島さんのことがあったから。

また意地悪な人だったらどうしようって思っちゃう。





五条「大丈夫だ。良い人だから、ひなもすぐ打ち解けられると思う」


ひな「五条先生は誰か知ってるんですか?」


五条「当たり前だろ」


藤堂「先生たちみんなで、ひなちゃんのことしっかり見てくれる人にお願いしたからね。心配しなくていいよ」





と言われても、やっぱり不安……。










***



コンコンコン——


藤堂「ひなちゃん、今ちょっといい?」





そして、お昼を過ぎてから藤堂先生が看護師さんと病室に来てくれた。





藤堂「朝言ってた担当の看護師さん紹介するね」


祥子「ひなちゃん、はじめまして。冨岡祥子(とみおかしょうこ)です。よろしくね」





と挨拶をしてくれたのは、すごく綺麗なお姉さん……





五条「ほら、ひなも挨拶しなさい」


ひな「あ、よ、よろしくお願いしますっ……!」





あんまり綺麗だから見惚れちゃった。

まこちゃんじゃなくて不安だったけど、冨岡さんなら大丈夫そう。



……って、あれ?

冨岡……?冨岡、祥子……?

まこちゃんの名前、冨岡真菰……



まこちゃんは、明るくてニコニコ元気なかわいいタイプ。

目の前にいる冨岡さんは、美人で落ち着きのある大人の女性って感じ。

タイプが違うけど、よく見ると確かにまこちゃんと似てるような。



もしかして……





ひな「まこちゃんのお姉さん……?」


祥子「あら、よくわかったわね!正解っ」


ひな「やっぱり。名字が一緒だし、なんとなくまこちゃんに似てるなと思いました」


祥子「そう?ひなちゃんのことは真菰からもよく聞いてたの。よろしくね。あ、わたしのことは祥子でいいからね」


ひな「祥子さん。よろしくお願いします」


祥子「何かあった時はいつでもナースコールしてね」


ひな「はい」





新しい看護師さんになるって聞いた時はドキドキだったけど、ホッと一安心。

挨拶が済んだ後、祥子さんと藤堂先生はすぐに戻っていき、また五条先生と2人になった。





五条「な?良い人って言っただろ?」


ひな「まさか、まこちゃんのお姉さんだったなんて。姉がいるって聞いたことあった気もするけど、姉妹で看護師さんなんですね」


五条「あぁ。ノワールはそういう人多いんだ。ひなのマミーとダディーも夫婦だっただろ?院長なんて一家揃ってノワールにいる」


ひな「たしかに」


五条「祥子さんは俺たちも信頼してるから、ひなも安心して頼ったらいいからな」


ひな「はい」





それから五条先生としばらくの間いろんな話をした。

ほとんどが学校の話で、普段学校ではどんな風に過ごしてるかとか、友達のこととか、クラスの雰囲気とか。

勉強のことや夏樹くんの学校での様子なんかも。

こんなに五条先生とゆっくり話せるのも普段はないから、今まであまり話してなかったことをたくさん話して、五条先生も優しい顔でうれしそうに聞いてくれた。










そして、あっという間に夕食の時間も終わって、藤堂先生が新しい薬を持ってやってきた。





藤堂「ひなちゃん、こんばんは。ご飯食べた?」


ひな「はい。たくさん食べました。五条先生に見張られてたので……」


五条「んぁ?」





ギクッ……





余計なことを言ってしまった。

なんでこう思ったことがすぐ口から出ちゃうのか……





ひな「ごめんなさい。心の声が……」


藤堂「はははっ。たくさん食べられたなら何より。今日は五条先生と1日一緒にいられて、ひなちゃんよかったね」


ひな「ぁ、はい……//」





ずっと一緒にいれたのは本当にうれしかったから思わず照れちゃう。





藤堂「そしたら、お薬飲もうか」





と、藤堂先生から説明を受けて、薬を受け取った。



今夜から試す新しい薬。

貧血の薬はいくつかあるけど、他の薬が合わないことは既にわかってる。

だから、もしこれがダメだった時はもう飲める薬がないって。

そしてそうなると、注射することなるんだって。
薬を飲むのも嫌だけど、注射なんて絶対やだ。

この薬がどうか身体に合いますようにと、祈りを込めて飲み込んだ。





藤堂「ひなちゃんいい?もし、気持ち悪くなったりお腹が痛くなったらすぐに言うんだよ。ナースコールしてね」


ひな「わかりました」


藤堂「五条先生はこのまま朝までひなちゃんと?」


五条「ええ。そうしようかと思ってます」


ひな「え?そんな、五条先生帰らないと。ご飯も食べてないのに……」





五条先生は明日朝から仕事。

今は19時半。朝から今までずっといてくれたから、夜はゆっくり休んでほしい。

それに、晩ご飯だってわたしが食べるのをじっと見てただけで、五条先生は食べてない。





五条「でも、ひな寂しいだろ?」





……っ。

そんなこと言われたら、寂しいから行かないでって言いたくなっちゃうよ。

でも、我慢しなくちゃ。





ひな「ひとりで大丈夫です。今日はすぐ寝るし、五条先生明日は早いからお家でゆっくり寝てください」


五条「いいのか?」


ひな「はい。大丈夫です」


五条「そうか。そしたら、また明日の朝顔出しに来るな。ゆっくり寝るんだぞ」


ひな「ありがとうございます。おやすみなさい」





と、五条先生と藤堂先生が部屋を出て行った。



でも、その数十分後には……





ひな「……っ、うっ……」





まだ眠りにつかず、ウトウトしてると突然吐き気に襲われた。



どうしよう……



これはきっと副作用……薬が合わなかったんだ。

99%そうだと思うから、怖くてナースコールのボタンを押せない。

押せば、祥子さんも藤堂先生もきっと飛んでくる。



うっ……やばい……もう吐く……



グズグズしてても吐き気は容赦なく襲いかかる。

すぐに耐えきれなくなって、1人トイレへ駆け込んだ。





ひな「ハァハァ……ケホッ、ハァハァ……」





便器の前でしゃがみ込んで20分くらい。

晩ご飯も全部吐き出して、ようやく吐き気が治まってきた。



そろそろ戻らなきゃ……



壁に手をつきながらなんとか立ち上がって、フラフラの身体で部屋へ戻る。

こんな時のたった数メートルが長いこと長いこと。

やっと病室の前に来てホッとしながら扉を開けると、誰もいないはずの部屋に白衣のイケメンと私服のイケメン。

藤堂先生と五条先生が。



嘘でしょ……



わたしはいつもタイミングが悪い。

もうちょっと早く戻ってきてたら寝たふりできたのに。

でも、なんで五条先生がまだいるの……?





五条「ひな吐いた?」


ひな「……フリフリフリ」


藤堂「吐いちゃったね」





首を振ってみたけど、フラフラなのと顔色が悪いのと、もうバレバレなんだろう。

藤堂先生にひょいっと身体を持ち上げられ、スタスタとベッドに運ばれた。





藤堂「すぐ教えてって言ったのに、なんでナースコールしなかったの……」





って言いながら、診察を進める藤堂先生。

わたしの目からは涙がぽろぽろ。





ひな「なんで、っ……五条先生がまだいるの……っヒック……」


五条「藤堂先生と飯食ってたんだよ。帰る前に顔見とこうと思って来たら、ひないないから……」


藤堂「ひなちゃんいつ気持ち悪くなった?薬飲んでどのくらいしてから?」


ひな「気持ち悪くなってないっ……グスン……ただのトイレで……せ、生理痛です……グスン」


藤堂「吐くほど生理痛酷い?じゃあ宇髄先生にも診てもらおうか」


ひな「だ、だから吐いてなぃ……ヒック、グスン、ヒック」


「「もぉ……」」





困ったな……というように、2人の小さなため息が聞こえると、





五条「ひな?嘘つかない」





ぽんぽん……





全部わかってるんだぞ。とでも言うように、五条先生の手が優しく頭に乗っかって、気も涙腺も一気に緩んでしまった。





五条「注射になるのが嫌で隠そうとしたんだろ?まったくひなは……」


ひな「うぅ……グスン、ヒック……薬、飲むからっ……グスン、グスン……ヒック……」


藤堂「ひなちゃんもう泣かないで。まだ注射にするって決めてないから。明日もう一度お薬飲んでみて、また副作用出ないか様子見てから決めるよ。ね?」


ひな「飲んだらまた気持ち悪くなる……ぅぅ……グスン……」


五条「もうどっちなんだよ(笑)」


藤堂「やっぱり相当気持ち悪かったんだね。かなり戻したでしょ?脱水になりかけてるから点滴するね」


ひな「ヒック……ヒック……ぅわ~ん……!!」


五条「も~、ひなぁ。ほら、よしよしよし……やっぱり今日は朝まで一緒にいよう。な?だからもう泣かないよ。俺ここにいるから、ゆっくり休むぞ」


ひな「うぅっ……ごじょぉせんせぇ……ヒック……ヒック……」





そしてこの後、わたしは五条先生に抱き抱えられたままたくさん泣いて、そのまま五条先生の腕の中でぐっすり……。


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