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不安定な情緒①

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それからひと月半。

学校の健康診断があったり、次の定期健診もあったけど、貧血の数値も少し上がってたし、身体の調子はしばらく良かった。

2年生最初の定期テストも終わって、





五条「身体も頭も良くなってるな、この調子だ」





なんて、五条先生に言ってもらったりもした。

なのに、梅雨も本番を迎え、毎日のように雨が降るここ最近。

なんだかこの天気に合わせるように、わたしの体調も悪くなってて……










***



あぁ……気持ち悪い……。





3時間目の授業中、また吐き気に襲われた。

最近いつもこうで、しょっちゅう吐き気が起こる。

ちょうどお腹が空き始めるせいかな、なんて言い聞かせて耐えるけど、お昼を食べても変わらず。

そのうち食欲も出なくなって、ご飯が食べられない。





友達「ひーちゃん、おにぎり一つ……?」





一緒にお昼を食べる友達も心配してくれる。





ひな「うん、ちょっと食欲なくて……」


友達「大丈夫……?ここ最近、具合よくないんじゃない?」


ひな「雨ばっかりで気分が下がってるのかも(笑)大丈夫だよ!」





なんて言いながら、薬を飲むためになんとかおにぎりは食べきった。



そして、下校する頃にはまたひどい吐き気が……





夏樹「ひなの……?」





……っ、しまった……。





下駄箱で靴を履いてると、夏樹くんに会ってしまった。

教室出る時は会わないように気をつけたのに。





夏樹「具合悪いんだろ?顔色悪いぞ。先生に言ってるか……?」





これ、言ってないって言ったらチクられる……





ひな「うん、五条先生には伝えてあるよ!」


夏樹「……そうか。ひとりで帰れるか?って俺も部活なんだけど」


ひな「大丈夫大丈夫。また明日ね!」





もちろん、本当は言ってない。

それに、五条先生はここのところ当直ばかり。わたしが学校行ってる間に帰ってきて、学校から帰る頃にまた家を出てる。

だから、具合が悪いことはまだバレてない。

夏樹くんにチクられるわけにいかなくて、なんとか気丈に振る舞って家に帰ってきた。



けど……





ひな「うっ……気持ち悪っ……」





家に着いて気が緩んだのか、ついにトイレで吐き出してしまった。



はぁ……なんでだろう……。

またどこか悪いの……?



一頻り吐いた後、1人不安になりながら、フラフラとリビングへ行きソファーへ横になった。



さすがに五条先生に言わないとまずいかな。

でも病院行こうってなるのは嫌だし、正直に話せば話すほど、治療とか入院とか嫌なことばっかりになるし……。



なんて考えながら、わたしは夢の中へ。










そして、次に目が覚めると、窓の外には太陽が。



やばっ!!もう朝!?今何時!?



慌てて起きると、6時過ぎ。

セーフ……って思ったけど、昨日帰ってきたまんまで寝てるじゃん!と急いでシャワーをしにバスルームへ。

すると、





ひな「あ……」





パンツに血がついてて、生理が始まってた。

まだ量が少ないからさっき始まったんだなと、シャワーのついでにパンツも手で洗う。

そんなこんなしてたら時間がギリギリになってしまい、朝ごはんも食べず薬も飲まず、制服に着替えたら速攻で家を出た。










そして昼休み。

朝ドタバタしたせいで、薬を忘れたことに気がつく。

朝も飲んでないのにさすがにやばいと思い、こればかりは正直に言おうとLIMEを開いたら、





"朝薬飲んでないだろ?"
"昼の分も持って行ってないだろ?"





と、すでに五条先生からメッセージが……。

薬はお薬カレンダーに入れてあるから、家に帰った五条先生にバレたよう。

五条先生がお薬カレンダーを用意したのは、こんな風にわたしがちゃんと飲んでるか確認するためだったんだと、高2になってようやく気がついた。





"ごめんなさい。寝坊して、朝も昼も薬を忘れました。反省しています。"





と、謝罪メッセージを送信。





"藤堂先生には伝えとく"
"今日も夜一緒にいられないから、夜は忘れずに必ず飲みなさい。"





と、すぐに返事が来た。

そして、夜は忘れずに薬を飲んで、お風呂にも入ってちゃんとベッドへ。



そういえば、今日は久しぶりに吐き気がなかった気がするけど、たぶん生理のせいだったんだよね?

なんだ、治ってよかった!



と、1日を振り返りながら眠りについた。










そして翌朝。

起きてリビングに行くと、いつの間にか帰ってきてシャワーを浴びたところであろう五条先生が。





五条「おはよう」


ひな「五条先生!おはようございます!」





少し久しぶりだったから、うれしくて声も弾む。

すると、





五条「気分が悪いのはいつからだ?」


ひな「え?」


五条「いつから具合悪かった?ご飯も食べれてないんだろ?吐き気はいつから?」





あ……これは、もう……夏樹くんだ……。





ひな「あ、あの……えっと……」


五条「俺がいて気づかなきゃ自分から言えないのか?藤堂先生との約束破るの何回目だ?だいたい自分が1番辛い思いするのになんで我慢する?」





久しぶりに会ったのに、いきなり怒られて涙が……





ひな「ごめんなさい……」


五条「泣かせたいんじゃなくて、ひなが心配だから言ってるんだ。今回みたいにどうしても会えない時間が続くことだってあるだろ。そんな時はひなが自分で声を上げてくれないとさすがにわからん」





朝から正論のシャワーを浴びせられて、何も言い返すこともなくて、ただただ涙だけ流し続けた。

五条先生も言うべきことは言ったのか、お説教タイムは終わったみたいで、





五条「で、今はどうなんだ?今朝も気持ち悪いか?」





って、今度は泣いて立ち尽くすわたしの前にしゃがみ込んで、優しい五条先生に。



ひな「フリフリフリ……今は大丈夫です。具合が悪くなり始めたのは1週間前くらいからで、一昨日は帰ってきてから一度吐きました。でも、そのおかげか昨日は気持ち悪くならなかったです。もう治りました」


五条「治ったかどうかはわからんが、原因は調べとこう。体温もいつもより高いし、病院行くぞ」





って、首元に触れながら言う五条先生。





ひな「え?でも学校行きたい……。今は本当に元気なんです。あっ、そうだ、生理なんです。昨日の朝、生理になったから気持ち悪かったんです、きっと」


五条「なんでそれを早く言わないんだよ……昨日すぐ言わんか……」


ひな「ごめんなさい。薬忘れたから言いにくくて……」


五条「生理痛は?しんどくないか?」


ひな「はい。今のところ大丈夫そうです」


五条「そしたら学校終わってから病院だぞ。いいな?」


ひな「え?でも、宇髄先生が生理の検査はもう必要ないって……」


五条「生理どうこうじゃなくて、こんなに吐き気が続くことあったか?どっちにしろ調べとかないとダメだ。学校終わりでいいから、な?」


ひな「はい……」





と約束をして、学校に行く支度も済ませて朝ごはん。





五条「はい、薬」





ご飯を食べ終わると同時に、五条先生がテーブルに薬を置く。





ひな「ありがとうございます……」


五条「昼の分も持って行くの忘れるなよ」


ひな「はい……」





と、朝の薬を飲んで、昼の薬はかばんにしまった。

そして、時間になってそろそろ家を出ようかという時、





うっ……吐きそう……!





なぜか急に吐き気に襲われて、トイレに駆け込んだ。





ひな「オェッ……ケホケホ……オェッ……」





そして、その様子をがっつり五条先生にも見られてて、トイレのドアを開ければ、五条先生は腕を組んで仁王立ち。





五条「吐いたな」


ひな「……吐きました」


五条「学校休め」


ひな「はい……」





と手を引かれて、気づけば病院に。


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