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感度は抜群②

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*ひなのside





目が覚めたら真っ暗だった。

なんとなく頭がぼーっとするし、身体も重たい。

でも、目が覚めてよかった……。





治療の時、今まで経験したことのない感覚に襲われて怖かった。

最後は突然ふわっと全身の力が抜けて宙に浮いて、ゆーっくりと背中から暗闇の中に身体が沈んでいく感じ。

なんだか、このまま戻って来れないんじゃないかって思ったのが記憶の最後だった。





「ひなちゃん、起きてた?」





ビクッ……





そーっと病室の扉が開いたので、見回りの看護師さんが来たんだと思ったけど、聞こえてきたのは聞き慣れた声。

小さい明かりがつけられて、優しく微笑む藤堂先生の姿が見えた。





ひな「藤堂先生……」


藤堂「身体どう?まだ少し怠いかな。治療頑張ったもんね」





と言いながら、優しい手がおでこに乗っけられて、





ひな「……グスン、ぅぅ……グスン……」





自然と涙が溢れてきた。





ひな「グスン、グスン……藤堂先生……ケホケホッ……」


藤堂「ちょっとしんどいかな?泣かなくて大丈夫だよ。身体起こそうか」





と、ベッドの背もたれを起こしてもらって聴診もされた。










***



*藤堂side





ひな「ケホケホッ……グスン、グスン」





治療の疲れが出てるのか、少し咳き込んでて身体が怠そう。

ただ、熱はないし胸の音も大丈夫そうだ。





藤堂「うん。ひなちゃん喘息酷くなってないから大丈夫だよ。疲れて少ししんどくなっちゃったね。治療、よく頑張ったよ」





と言うと、またひなちゃんの目からぶわっと涙が溢れた。

その姿に胸が締め付けられ、思わずベッドに腰掛けてひなちゃんをそっと抱きしめる。





ひな「怖かった……グスン。身体が変になって……どっか行っちゃうみたいで……治療怖かった……。ヒック、ヒック、ケホケホッ……」


藤堂「怖かったね。あんな感覚になるの初めてだったよね。ひなちゃん、お咳出て苦しくなっちゃうからゆっくり呼吸するよ」


ひな「ヒック、ヒック……うぅっ……ケホケホッ、ケホケホッ……」


藤堂「大丈夫、大丈夫。咳が落ち着いたらもう一度横になろうね」





と、背中を撫でてあげてると、ギュッと白衣を掴んできて、





ひな「嫌……グスン」


藤堂「どうしたの?何が嫌なの?」


ひな「このまま……ヒック、藤堂先生、離れないで……ケホケホッ」





……っ。

ひなちゃん、俺にまでこんなに甘えるなんて……。



熱でも出てきた?とおでこに手をやるけどやっぱり熱はない。



よっぽど治療辛かったかな……。

それともイった後で人肌恋しくなった?

あぁ、早く治して悠仁に甘えさせてあげたい。





藤堂「うん、わかった。このままいるから呼吸整えよう」





と、優しく抱き締めて背中を撫で続けること30分。

ひなちゃんの身体が俺に寄りかかりきって寝息が聞こえ始めた。

そっと身体を離しベッドに預けて、背もたれも下げる。

もう一度聴診だけして、落ち着いてぐっすり眠ったことを確認してから、そっと病室を出た。










***



*ひなのside





朝、まこちゃんが朝食を運んできてくれたので目が覚めた。





真菰「ひなちゃん、おはよう」


ひな「まこちゃん、おはよう」


真菰「ご飯の前に、先に点滴外させてね」





昨日は気づいてなかったけど、夜ご飯を食べれないからって点滴されてたみたい。

おかげで今朝は身体のだるさもなくなってる。





真菰「ご飯終わったらお薬と体調チェックしに来るね」


ひな「はい」





と返事して、朝ご飯を食べた。










コンコンコン——



ご飯を食べて、まこちゃんにいつも通り体温と血圧を測ってもらったら、藤堂先生が回診に来た。





藤堂「ひなちゃん、おはよう」


ひな「おはようございます」


藤堂「少し食欲戻った?今朝は昨日より食べられてるね。そしたら聴診するね」


ひな「はい」





と、ボタンを開けて聴診してもらう。

確かに今朝も残しちゃったけど、昨日までより食べれたかも。



治療のおかげかな?

あれ、でもそういえばお腹の張りがまだ治ってない気がする。

少し楽になった感じもするけど……





藤堂「……なちゃん、ひなちゃん」


ひな「え、あ、はい!」


藤堂「大丈夫?考え事してた?」


ひな「い、いえ。大丈夫です……」


藤堂「どうしたの?気になることあるならちゃんと教えて?お約束でしょ?」





うぅ……そう言われると……





ひな「あの……昨日治療してもらったのに、その、まだお腹が少し張ってる感じがして……」


藤堂「うん。今からその話をしようとしてたんだよ。やっぱりぼーっとしてたでしょ(笑)」





え?もうなんか話してた?



と思ったら、確かにまこちゃんの姿がなくなってるし、いつの間にか宇髄先生がいるし……

やっぱりわたしがぼーっとしてたみたい。





ひな「ごめんなさい、お願いします……」


藤堂「そしたらお話するね。さっき言ってくれたけど、今朝もひなちゃんのお腹が張ってるのはね、実は、昨日の治療ではお腹に溜まったものを全部出しきれなかったんだ。だから、もう1回治療をするよ」


ひな「え……?」





もう1回って、なんで……。





藤堂「昨日、ひなちゃんは宇髄先生にクリトリスを刺激してもらったよね?それで、ひなちゃんはすごく頑張ったんだけど、溜まってるものは3割程しか出せなかった」


ひな「3割……ということは、あと1回でも終わらないんじゃ……?もし、昨日の治療と同じだけ出せるとしても、あと2回は治療が必要ってことになりますよね……?」


藤堂「さすが。ひなちゃんよくわかったね。だけど、何度も治療するのは嫌でしょ?先生たちもなるべく1回で終わらせてあげたいと思ってる。だから、今度の治療は昨日より少し頑張れるかな?」


ひな「少し頑張るって……?」


宇髄「今度の治療はな、ひなちゃんの膣の中に指を入れて刺激するんだ。だから、少し痛みがあるかもしれない。昨日はなるべく痛くないようにと思ってやらなかったんだけど、やっぱり、中の刺激をしないとお腹に溜まったものが全部出せないんだ」





そうだったんだ。

だから、昨日の治療は痛くなかったのか。

痛くなくてよかったって思ってたのに、もうやりたくない……。





わたしはすっかり俯いて返事もせずに黙ってしまう。

そして、ポタッと涙が落ちた。





藤堂「ひなちゃん」





そっと頭の上に藤堂先生の手が乗せられる。

五条先生の手は大きくて優しいけど、藤堂先生の手も五条先生より少し指が細くてスラっとした感じで優しい。





五条、先生……





"トクン"





ひな「……っ!」





なんだろう……これ……。

また胸がトクンてなった。

しかも、今までよりトクンが大きい気がする。





宇髄「ひなちゃん大丈夫か?」
藤堂「心臓痛い?」





思わず胸を押さえちゃって、先生たちにバレるけど……





ひな「大丈夫です……治療が嫌で……」


藤堂「本当に?ちょっとごめんね」





と、藤堂先生がすかさず聴診器を胸に滑り込ませて、宇髄先生には手首を掴まれる。





今悪いのはお腹なのに。

心臓も悪くなったら……

もう、わたしどうしたらいいの……



不安しかなくて押しつぶされそう。





藤堂「うん、心臓は大丈夫みたいだね」


宇髄「今は脈も乱れてない。心配しなくて大丈夫だろ」





はぁ、よかった……。





ひな「あの、先生……?」


「「うん?」」


ひな「次の治療はいつですか?」


宇髄「ひなちゃんはいつしたい?先生たちはなるべく早く治してあげたいと思ってるぞ。ひなちゃんさえ良ければ明日でも」





明日か……

どうしようかな。

一昨日はよくわからないまま明日してって言っちゃったけど、今は……





藤堂「決められないなら明日頑張ろうか。そしたら五条先生にも会えるしね」


ひな「えっ??」





五条先生に会えるって?





藤堂「五条先生、今忙しくてなかなかひなちゃんに顔見せに来れないんだけどね。ひなちゃんが治療終わったら来てくれるって」





そうだったんだ。

てことは、早く治療したら早く会えるんだよね?





ひな「頑張ります……明日、治療してください……」


宇髄「明日でできそうか?」


ひな「はい……」


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