47 / 232
人海戦術①
しおりを挟む——翌日
五条「……夜中発作起きた?」
朝、ひなの喘鳴が酷いので聴診しながら聞いてみる。
が、ひなは不貞腐れて黙ったまま。
今朝の熱は37度5分。
昨夜の感覚が正しければ、朝なのに熱が下がってない。
朝ごはんもヨーグルトしか食べなかったらしい。
五条「今しんどくないか?」
って聞いても、返事はなし。
五条「ひな、喘息の調子があまり良くないから、今日から昼にも吸入するからな。寝る前と合わせて1日2回。いいね?」
何も言わないけどひなの瞳が揺れた。
きっと、『なんで?嫌だ!』と思ってるんだろう。
五条「吸入の時は呼びに来るから。それ以外は大人しくしときなさい。それと貧血も出てるから、トイレも不安ならまこちゃんと行きなさい。わかったか?」
ひな「……」
うんともすんとも言わん……
結局、ひなの声は聞くことなく回診を終えた。
***
*ひなのside
お昼ごはんはまたゼリーしか食べなかった。
薬を飲んでぼーっとしてたら、
神崎「ひ~なちゃんっ!吸入行こっか!」
って、底抜けの明るさで神崎先生がやってきた。
五条先生は忙しくて来れなかったのかな。
と思いながら、渋々神崎先生と処置室に向かう。
そして……
ブーン……ゴォー……サァー……——
ひな「ッ……ゲホゲホッ……コホッ……ゴホゴホッ……」
こんな拷問みたいなことを1日に2回もしないといけないなんて……。
毎日寝る前に頑張ってたのに、修学旅行には行けなくなったし、どうせ2回にしたところでこんなの意味ないでしょ。
ひな「ハァハァ……ゴホゴホゴホッ、ッハァ……ケホッ……」
神崎「ひなちゃん、あとちょっとだよ~。頑張れ頑張れ」
先生たちのあとちょっとは全然ちょっとじゃないんだから。
もうわかってるんだから。
はぁ、苦しい。
ちょっとマスク浮かそう……
神崎「あぁ~!ひなちゃんダメ。ちゃんと終わるまでつけないと!」
と、神崎先生に口のマスクを押さえられる。
五条先生だけかと思ってたら、神崎先生も抜け目ないんだね。
はぁ……
やっと吸入が終わるといつものようにヘトヘト。
部屋に戻って神崎先生が出ていくと、秒で寝てしまった。
そして夜……
工藤「ひなちゃん!久しぶり!」
吸入へわたしを連行しにやってきたのは、工藤先生。
去年、退院してすぐに夏樹くんにチクられた以来だから、10ヶ月ぶりくらいに会った。
ひな「どうして、工藤先生が……?」
工藤「五条先生と神崎先生、少し忙しくて。ごめんな、俺じゃ嫌だった?」
いや、そんなことないしそんな言い方されたら吸入が嫌ですとも言いにくい……
ひな「嫌じゃないです」
工藤「うん!そしたら行こう!」
と、それはそれは元気に白い歯を見せられて渋々ついて行き……
工藤「ひなちゃん、マスク押さえといてあげるから手離してもいいよ。しっかり吸ってな!」
と、これまた元気いっぱいに余計な……
いや、ご丁寧にマスクまで押さえてもらって吸入を終えた。
***
——次の日
ひな「ケホケホッ……ッハァ……ゴホッ、ハァハァ……」
夜中に発作が起きてからずっと苦しい。
横になってられなくて身体を起こしてみるけど、疲れてまた横になってを繰り返してる。
コンコンコン——
真菰「ひなちゃん、大丈夫!?」
回診前になってまこちゃんが来た。
もうすぐ五条先生も来ちゃう。
ひな「ハァハァ……大丈夫です。ッハァ…………ゲホゲホッ」
真菰「五条先生すぐ来てもらうね」
あー、やめてー……。
って思うのに、すぐに電話をかけちゃうまこちゃん。
もちろん、五条先生はすぐに来る……
五条「大きい発作起きただろ?いつあった?」
まこちゃんがサッとパジャマをめくって、すぐに五条先生が聴診を始めた。
ひな「ハァハァ……発作なんてありません……ケホッ……」
五条「隠してもわかるから嘘つくな。夜中の間にあっただろ?なんですぐ呼ばないんだ」
ひな「わかるなら聞かないで。ケホッ……」
五条「あのなぁ、大体わかるってだけで正確に把握したいから聞いてるんだ!まこちゃん、点滴用意してきてくれる?」
真菰「わかりました」
は?点滴って言った?
ありえない。
ひな「大丈夫です、しなくていいですから……ゴホゴホゴホッ!」
五条「どこをどう見たら大丈夫なんだ。ごはんも食べてないし、胸の音も酷いし、発作は起きてるし、熱も38度出てるんだ」
ひな「そんなことないです!! しんどくないし!! ゲホゲホッ、ハァハァ」
五条先生と言い合いをしてる間に、まこちゃんが点滴を持ってきた。
わたしは五条先生に腕をガシッと押さえられて、すぐに針を刺された。
はぁ……もう最悪……
12時になって、ごはんの時間になった。
看護助手さんがお粥を運んできてくれたけど、まったく食べる気にならない。
ひな「コホコホッ……」
時折咳込みながら、ベッドの上でじっと窓の外を見つめる。
コンコンコン——
あぁ、五条先生が来たんだな……
と思ったら、
宇髄「ひなちゃーん、ごはん食べてるかなー?」
ん?
宇髄先生が、どうして……
ひな「どうして宇髄先生が来たんですか?」
宇髄「今、五条先生も神崎先生も手が離せなくてね」
昨日の工藤先生と同じ……
これは、なんかおかしい。
神崎先生が来るのはわかるけど、工藤先生も宇髄先生もなんで突然わたしのところに来るの?
次は藤堂先生が来るってこと……?
ひな「お腹空いてないのでごはんはいらないです」
宇髄「じゃあ、後でお腹空いてから食べてみるか?」
ひな「……点滴してるのでもう食べなくていいです」
宇髄「うーん、ひなちゃん……」
宇髄先生が唸ってる。
宇髄先生って、ガタイめっちゃ良くて怖い系な感じと思いきや、結構優しくて穏やかでみんなのお兄さんって感じなんだけどな。
怒ってないけど、完全に参った困ったって声してる。
宇髄「そしたら、吸入しに行こうか」
やだ。もう行きたくない。
ひな「やめときます」
宇髄「ひなちゃん、吸入はしておかないと喘息が良くならないから行こう。すぐ終わるから」
ひな「行きたくありません!」
言って、布団をすっぽりかぶった。
ひな「ゴホゴホゴホッ……」
宇髄「ひなちゃん、お布団からは出よう。身体しんどいだろう?ちょっと聴診だけしていいかな?」
ひな「しんどくありません。しないでください。ゴホゴホッ」
布団に潜り込んだまま答える。
宇髄「……うん、わかった。無理にはしない。その代わり、先生が部屋出たら布団からは出てな。約束な?」
と言って、宇髄先生は出て行った。
***
~小児科医局~
工藤「宇髄先生!先生はどうでした!?」
宇髄「撃沈だ。ごはんも嫌、吸入も嫌、聴診も嫌って布団に潜られた」
神崎「宇髄先生もダメか~。ひなちゃんも頑固だな。一度拗ねると長いタイプか」
五条「申し訳ありません……。恐らく、反抗期も始まったんです。だから優しくしてるし、先生たちにも行ってもらってるってのに……。ちょっと、そろそろ俺行きます」
宇髄「五条待て。まだ藤堂がいるから。反抗期ならなおさら人変えよう」
藤堂「そんな話聞いた後で、俺自信ないですよ……(笑)」
神崎「いや!藤堂先生はひなちゃんの王子様だから、ワンチャンいけるかと!」
藤堂「ひなちゃんはバカじゃないからなー」
神崎「まぁたしかに、ひなちゃんって賢いですよね。宿題教えてた時から思ってたけど、何かと物事を理解したり本質を見抜く力があって、それをちゃんと他のことに繋げて応用もできる。夏樹ならいけたかもしれないけど、ひなちゃんはそうはいかないか」
工藤「あいつはまこちゃんで一発だからな(笑)」
藤堂「悠仁、ごはんは仕方ないとして吸入はどうする?させるなら今から俺行ってくるけど」
五条「いえ。宇髄先生のすぐ後はどうせ聞かないと思うので、夜にまたお願いします」
16
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?
すず。
恋愛
体調を崩してしまった私
社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね)
診察室にいた医師は2つ年上の
幼馴染だった!?
診察室に居た医師(鈴音と幼馴染)
内科医 28歳 桐生慶太(けいた)
※お話に出てくるものは全て空想です
現実世界とは何も関係ないです
※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます
My Doctor
west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生
病気系ですので、苦手な方は引き返してください。
初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです!
主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな)
妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ)
医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる