38 / 209
蕁麻疹②
しおりを挟む*ひなのside
お昼になると、五条先生が検査結果を話しにやって来た。
五条「朝の検査結果だが、蕁麻疹の原因はわからなかった。ただ、恐らく疲れが原因になってると思う。学校行って初めての環境で疲れたか?」
ひな「うーん、少しは疲れましたけど、そんな身体に異常をきたすほどでは……」
五条「自分が思ってるより身体は疲れてるんだ。まぁ、悪いところがあるわけじゃないからそんなに心配しなくていい。しっかり休めば大丈夫だ」
ひな「はい」
五条「ところで、学校ではお昼何食べてたんだ?」
ひな「え?」
突然、何でそんなこと聞くんだろう。
ひな「パンですけど……」
五条「それは昨日だろ?月曜から木曜は?」
ひな「パ……」
と言いかけて気がついた。
たぶん、パンしか食べてないことを知られちゃいけないんだと……
ひな「パ、pastaとか……」
五条「はぁ?パスタなんか食堂にないだろ。うどんか蕎麦だろ。まぁいい。他には?」
えっと、他になにがあったっけ……
ひな「カレーと、えっと、うどんと蕎麦と、Uh……お寿司」
と、なんとか絞り出して答えてみた。
なのに、五条先生の反応がないからうつむいてた顔を上げてみる。
あれ?
なんか、見たことないくらいニコニコしてるけど、目だけは全然笑ってない……。
五条「ひなちゃ~ん?5日間学校があって、さっきパンとパスタ食べたって言ったよねぇ?じゃあ、どうしてあと4つも食べたものがあったのかなぁ~?」
あ……これはやばい……
ひな「えっと、パスタは間違えました!」
言うと、五条先生は『はぁ……』とため息をついて、
五条「あのなぁ……嘘つくならもっとマシな嘘をつきなさい!!」
ひな「ごめんなさい……」
って、そもそもなんで怒られるような状況になったの……。
五条「学校の食堂に寿司なんかないだろ!本当は何食ってたんだ?ちゃんと食べてないだろ?体重がこの5日間で1kg減ったんだ。病院ではちゃんと食べてるのになぜ減る!?」
あ、なるほど。
そういうことだったのか。それでバレたんだ……。
だったらなおさら、パンだけ食べてたなんて言ったらどうなるのか……
五条「まさか、毎日パンしか食わなかったか?」
ひな「え?あ、えっと……」
なんでバレた?
五条「怒らないから正直に言いなさい。」
……もう逃げられない。
ひな「ずっと、パンを食べてました……」
五条「やっぱりか」
と言いいながら、五条先生が椅子に腰掛ける。
五条「なんでパンしか食べなかったんだ?」
怒らないと言ったからか、五条先生から怒りは感じなくなった。
ひな「決められなくて……」
五条「は?」
ひな「メニューが沢山あって、どれも美味しいそうでご馳走に見えて、迷ってたら何食べたらいいのかわからなくなって、結局、家でも食べたことあるようなパンを……」
声に出してみて改めて思ったけど、ご馳走に手をつけられずに袋入りのパンを買うなんて、あの人との生活から全然抜け出せてないみたい。
五条「お昼は1人で食べてるのか?」
ひな「はい。友達ができてないので、ひとりです。でも、ひとりなのは気にしてないです。いつもそうだったので」
あ、また。
いつもそうだったけど、本当は友達ができて一緒にわいわいできたらいいのになって思ってる。
五条「途中から入ったから、すぐに友達ができないのは仕方ない。慣れなくてひとりで辛いかもしれないけど、ご飯はしっかり食べないとダメだ。メニューが選べないんなら、端から順番に毎日違うもの食べてみればいい」
なるほど、その手があったか。
五条「とりあえず、この土日はしっかり休め」
ひな「はい……」
***
そして、週が明けて月曜日。
・日替わりランチ
・カレーライス
・チャーハン
・親子丼
・カツ丼
・うどん
・焼きそば
・唐揚げ
・フライドポテト
・コロッケ
・
・
・
昼休みの食堂で、メニュー表を眺める。
順番……とりあえず日替わりランチか。
と、食券を買っておばちゃんに渡した。
前の人を真似してご飯は少なめと伝えて。
「はい、日替わりね~」
と出てきたのは、生姜焼き定食。
うぁ、おいしそう!!
気分ルンルンで席に座って、
ひな「いただきます!」
パクッ……モグモグ……
美味しい!!
生姜焼きなんて生まれて初めて食べた。
すごくご飯が進む味。
病院の食事よりも少し量は多いけど、美味しくて全部食べれちゃった。
美味しいご飯でお腹が満たされて、午後の授業も頑張ろう!とルンルンで教室に戻った。
***
*五条side
ひなから学校が終わったと連絡があったので、そろそろ戻って着替えも済んだかという頃に病室へ行った。
五条「おかえり」
ひな「ただいま!」
ん……?
なんか、見たことないくらいご機嫌……。
五条「ご機嫌だな。学校でいいことあったか?」
聞くと、聞いて!と言わんばかりに目をキラキラさせている。
ひな「お昼ごはんに日替わりランチを食べました。今日は生姜焼きで、それがすっごく美味しかったです!」
……生姜焼きでこんなに目を輝かせる子がいるのか。
こいつは本当に……
五条「そうか。ちゃんとご飯食べれたんだな。パンより良いだろ?」
ひな「パンもいいけど、もっと美味しかった!全部食べました!」
五条「本当か?それはえらい。明日からもしっかり食べるんだぞ」
ひな「はい!」
話を聞いた後、聴診をしてひなの体調を確認して病室を出た。
今日も友達はできてないだろうから、ひとりで美味しそうに生姜焼きを頬張ったんだろう。
その姿を想像すると……
……いや、まぁ、笑顔で楽しく学校に行ってくれて何よりだ。
***
*ひなのside
でも、その夜……。
消灯時間も近くなってきたころ、身体にはまた蕁麻疹が出た。
少しずつ身体がかゆくなってきて、腕を見ると蕁麻疹が浮き上がってきた。
土日はなんともなかったのに……
かゆい……!!
気づけば上半身のあちこちが地図になってて、痒すぎて我慢できなくてナースコールした。
そして、五条先生がまた30秒くらいで薬を持ってすっ飛んで来てくれた。
五条「服脱げるか?とりあえず薬塗ろう」
と言われたので、パジャマを脱いだ。
そして、すぐに背中の方から薬を塗ってくれる。
でも、とにかくかゆくてわたしは腕やお腹をずっと掻く。
五条「痒いけど掻くな。余計に痒くなるし、痕になる可能性もあるから我慢しろ。今まこちゃんが氷用意してくれてるから」
我慢できたら掻いてないよ!
我慢できないくらいかゆいから掻いてるのに!
ひな「我慢できない!かゆい!」
五条「痒くても我慢!」
ひな「無理!」
と言い合ってると、まこちゃんが氷のうをいくつか持ってきてくれて、すぐに身体に当ててくれた。
五条先生は背中の薬を塗り終わったみたいで、今度は腕やお腹や首、膨疹が出てるところ全部に薬を塗ってくれた。
五条「よし、薬は塗ったから、とりあえずパジャマ着ろ」
と、パジャマを着せてもらったけど、身体中まだまだかゆい。
薬の効果はあるのかと思うくらい、かゆい。
ひな「かゆいの治らない!!」
そう言ってあちこち掻き続けてると、五条先生に手を掴まれてしまった。
しかも、片手で氷のうをわたしの体に当てたまま、もう片方の手で私の両手を。
そんな器用なことしてくれなくていいのに、おかげでわたしは身体を掻けない。
ひな「掻かせて!」
五条「ダメだ。落ち着け。暴れてたらもっと痒くなるぞ」
はぁ、なんでこんな蕁麻疹が出るの……?
痛いのも嫌だけどかゆいのも辛い。
そのうち、わたしはまたロボットのように
ひな「かゆい…………かゆい…………かゆい…………」
と言い続けた。
そんなかゆみは、30分以上経ってようやく引き出す。
今日は美味しいごはんを食べて、気分良く1日が終わると思ってたのに……
ひな「今日はhappyだったのに……」
と、思わず心の声を漏らす。
五条「身体は思ってる以上に疲れてるんだ。こうして出る蕁麻疹自体は害があるものじゃないが、辛かったら明日は一度学校休むか?それとも、午前中だけとかお昼だけとかでもいいが」
そんな……
学校には行きたい。
せっかく行けるようになったし、行ってもいいならわたしは、
ひな「学校は休みたくありません。行っても問題ないなら行きます」
五条「そうか。蕁麻疹が出る以外は問題ないから、自分が行きたいと思ってるなら行ってもいい。ただ、無理するなよ」
ひな「はい」
と言って、学校には休まず通ってるんだけど……
3
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします
ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、
王太子からは拒絶されてしまった。
欲情しない?
ならば白い結婚で。
同伴公務も拒否します。
だけど王太子が何故か付き纏い出す。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
虐げられた落ちこぼれ令嬢は、若き天才王子様に溺愛される~才能ある姉と比べられ無能扱いされていた私ですが、前世の記憶を思い出して覚醒しました~
日之影ソラ
恋愛
異能の強さで人間としての価値が決まる世界。国内でも有数の貴族に生まれた双子は、姉は才能あふれる天才で、妹は無能力者の役立たずだった。幼いころから比べられ、虐げられてきた妹リアリスは、いつしか何にも期待しないようになった。
十五歳の誕生日に突然強大な力に目覚めたリアリスだったが、前世の記憶とこれまでの経験を経て、力を隠して平穏に生きることにする。
さらに時がたち、十七歳になったリアリスは、変わらず両親や姉からは罵倒され惨めな扱いを受けていた。それでも平穏に暮らせるならと、気にしないでいた彼女だったが、とあるパーティーで運命の出会いを果たす。
異能の大天才、第六王子に力がばれてしまったリアリス。彼女の人生はどうなってしまうのか。
吸血鬼公爵に嫁いだ私は血を吸われることもなく、もふもふ堪能しながら溺愛されまくってます
リオール
恋愛
吸血鬼公爵に嫁ぐこととなったフィーリアラはとても嬉しかった。
金を食い潰すだけの両親に妹。売り飛ばすような形で自分を嫁に出そうとする家族にウンザリ!
おまけに婚約者と妹の裏切りも発覚。こんな連中はこっちから捨ててやる!と家を出たのはいいけれど。
逃げるつもりが逃げれなくて恐る恐る吸血鬼の元へと嫁ぐのだった。
結果、血なんて吸われることもなく、吸血鬼公爵にひたすら愛されて愛されて溺愛されてイチャイチャしちゃって。
いつの間にか実家にざまぁしてました。
そんなイチャラブざまぁコメディ?なお話しです。R15は保険です。
=====
2020/12月某日
第二部を執筆中でしたが、続きが書けそうにないので、一旦非公開にして第一部で完結と致しました。
楽しみにしていただいてた方、申し訳ありません。
また何かの形で公開出来たらいいのですが…完全に未定です。
お読みいただきありがとうございました。
【完結】王子妃になりたくないと願ったら純潔を散らされました
ユユ
恋愛
毎夜天使が私を犯す。
それは王家から婚約の打診があったときから
始まった。
体の弱い父を領地で支えながら暮らす母。
2人は私の異変に気付くこともない。
こんなこと誰にも言えない。
彼の支配から逃れなくてはならないのに
侯爵家のキングは私を放さない。
* 作り話です
【R18】ひとりで異世界は寂しかったのでペット(男)を飼い始めました
桜 ちひろ
恋愛
最近流行りの異世界転生。まさか自分がそうなるなんて…
小説やアニメで見ていた転生後はある小説の世界に飛び込んで主人公を凌駕するほどのチート級の力があったり、特殊能力が!と思っていたが、小説やアニメでもみたことがない世界。そして仮に覚えていないだけでそういう世界だったとしても「モブ中のモブ」で間違いないだろう。
この世界ではさほど珍しくない「治癒魔法」が使えるだけで、特別な魔法や魔力はなかった。
そして小さな治療院で働く普通の女性だ。
ただ普通ではなかったのは「性欲」
前世もなかなか強すぎる性欲のせいで苦労したのに転生してまで同じことに悩まされることになるとは…
その強すぎる性欲のせいでこちらの世界でも25歳という年齢にもかかわらず独身。彼氏なし。
こちらの世界では16歳〜20歳で結婚するのが普通なので婚活はかなり難航している。
もう諦めてペットに癒されながら独身でいることを決意した私はペットショップで小動物を飼うはずが、自分より大きな動物…「人間のオス」を飼うことになってしまった。
特に躾はせずに番犬代わりになればいいと思っていたが、この「人間のオス」が私の全てを満たしてくれる最高のペットだったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる