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それはアカン
しおりを挟む「その悪女と貴様の根回し済な者の証言など、なんの証明にもならんな」
小馬鹿にしたように、なんか腹立つ顔でまた堂々と俺たちを指差す王子と、困惑通り越して冷めた目を向ける観客達。
それはそうだろう。
素晴らしいと評判の公爵令嬢を婚約者に持ちながら、他の、しかも身分の低い男爵令嬢にうつつを抜かした挙句、公爵令嬢を追い詰め、前世返りするような程の絶望を味わせた。
なおこの国で前世返りした者は、余程辛い思いをしたのだろう、という先入観というか、とても都合のいいプラス補正が掛かる為に優遇される事が多い。
そんな事も知らない王子の好感度は、爆下がりと言っても過言では無いだろう。
特に公爵令嬢は学園の生徒達からの信頼も厚い。
悪名らしきものと言えば、嫉妬深く我儘、という貴族女性によく居るステータスくらいか。
浪費癖があるとかも聞くが、それで公爵家が破綻するならともかく、寧ろ必要経費だと思うんだ俺。
国の偉い貴族の娘が、みすぼらしい服着てたら他の貴族女性だってそれ以下のもの着なくちゃいけなくなる。
別にこれはそうしないとダメとかいう法律がある訳じゃないけど、もしそうなってしまったら、何が起きるか、という事の方が重要視されていると思う。
さて、では何が起きるか。
まぁ、戦争だよね。
考えてみて欲しい、王家以外の貴族全てが酷い服を着ていたら。
酷く貧しい生活をしていたら、諸外国からどう見えるだろう。
国民からどう見えるだろう。
不満が溜まらない訳が無い。
悪評が流れない訳が無い。
必然的に王家がヤバくなるのは、容易に想像がつくのではないだろうか。
「いや、もう本当に頭大丈夫?」
「やかましい!俺は正常だ!!」
正常でそれってヤバくない?
いや、もうちょい考えようよ。
知らないなら調べようよ。
なんなの、無能なの?
胡乱げな眼差しを無能王子に向ける俺と、そんな俺の顔にスリスリと顔を寄せる公爵令嬢。めっちゃ可愛い。
そこでようやく、保護者が姿を現した。
「ええい!やめんかお前達!」
王子の実の父、王様である。
髭をたっぷりと蓄えた、まさに王様!って感じの外見である。
トランプのカードにこんなん居た気がする。
頭痛のせいか眉間にガッツリと皺を寄せ、こめかみを指先で解しながらの登場である。
だがしかし、王子はどこまでも王子だったらしい。
「父上!王である貴方からも言ってやって下さい!こんな悪女が王太子妃になった日には、財政、治安が悪化し、破滅するだけです!」
いや、貴族が何かしら浪費する事で国に金を落とす事は、経済を回す一助だけど。
それが無しで経済が回るなら良いだろうけど、消費者が居なきゃ経済は回らない訳で。
本当に何言ってるのコイツ。
むしろ公爵令嬢が浪費しなかったら他の貴族女性も何も買えなくなるよね。
どう考えても必要経費じゃん。
え?何この王子どんだけ視界狭いの?
大体、嫉妬深く我儘とか、めっちゃ愛されてる証拠やん、こんな美少女の何が不満なのコイツ。
改めて考えるとめっちゃイライラして来た。シバきたい。頭皮爆破したろかこの野郎。
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