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みんないっしょのいつかめそのはーち!

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「そういえばさー、アイテムがゲームそのままなら、通貨はどーなの?」
「あー、ゲームのお金は古代文明の遺物扱いって聞いた」

 ふとしたドラゴさんの質問はもっともなもので、前にワタナベさんから聞いた情報を共有しておくことにした。

「価値的にはどんな感じなんです?」
「んー、めちゃくちゃ希少とは聞いたんすけどね。骨董屋とかで鑑定してもらったら分かるかもしれん」
『実はわたくしもこの世界の一般人の年収とか物の細かい価値とかよく分からないんですよね……元神なので』

 分かんねェのかよ。

「使えねェなァ……」
『まって普段の明るいドラゴさんどこ行ったんですかいきなり辛辣にならないでこわい』
「わかる」

 アタシが言うなら分かるんだけどなんでドラゴさんがいきなり辛辣になってんの。

「なんでさー、そんなに怖くないじゃん。ほら、ただのワイルドダンディなイケオジだよ?」
「だからだよ」
「えっ」
「いつもにこやかなイケオジが急に辛辣になったらこわいじゃん」
「たしかに」

 さすがドラゴさんである。これ絶対今の自分の外見と自分がイコールしてなかったな。

「わかった! じゃあ今度から予告して辛辣になるね!」
「そういう問題だっけ」
「え?」
「うん、まあいいや」

 これだから天然は天然なんだよなぁ。それはそれで逆にこわいのにね。

「それで、どうします? 骨董屋さんとか探してみます?」
「うーん、道具屋さんとかの方がありそうっすよね、この街」

 ハーツさんに返答しつつ、考える。
 つーかそれ以前にこの街に詳しくないからどっちも見付けられるか不安っすわ。
 役所で地図とか見つつ簡易地図と照らし合わせてマッピングしとかねェと。

「でもさー、古代文明の遺物扱いなんでしょ? 怪しまれない?」
「おぉ、ドラゴさんが珍しく正論を」
「ひどくない?」
「普段の行いだと思いますよ」
「ひどくない?」

 ひどくはない。

「じゃあどうします?」
「うーん、アタシら冒険者なんだし、冒険者組合持ってったらいんじゃないすかね?」
「なるほどそれもそっか」

 古代文明の遺物とか、それこそ冒険者が見つけそうなものっしょ。

「これに関しては価値は知っといた方が良さそうですが、いつでも良さそうですね」
「ねー」

 ねー。

「ほんじゃ、結局今からどーしやしょーね」
「金策、というと、一番手っ取り早いのは冒険者組合で何かを換金することですが……」

 うーん、と唸りつつ考えてたところで、横からドラゴさんがつんつんして来た。

「ねーねー」
「なんすかドラゴさん」

 それ地味に刺さってきて痛ェんすけど。

「ユーリャさんの歌ってるとこ見たいし聞きたい」
「あぇ?」

 なんか急に褒められた。
 だってそれ、アタシのそれらがドラゴさんの好みじゃねェと出ない言葉じゃん。

 いや、でも待てよ?
 今のアタシのそれらが見たいってことか?

「そういえばユーリャさんって吟遊詩人でしたね」
「そうそう。路銀も稼げるし、一石二鳥じゃね?」
「いや、それドラゴさんが聞きたいだけっしょ」
「えー? だめかな」

 いや、あのさ。

「……アタシがおだてられたら断れないの分かっててやってるっすよねソレ」
「うん!」

 いや、うん! じゃねェんすよ。元気よく何言ってんすかアンタ。

「自分も手伝うよ! リズム感ないけど!」
「何手伝う気なんすかそれ」

 リズム感なかったらなんも出来なくね?

 とか思った瞬間に、ワタナベさんが飛び出てきた。

『ご安心ください!』
「お、今度はなんだ」
『二人が似合いそうな楽器は出来るようにしておきました!』

 は?

「どういうこと」
『イケオジが三人で歌って踊ってアイドルグループみたいになれってわけじゃなくて、三人がバンドみたいなそんな感じになったらめっちゃカッコイイだろうなって思って、あ、もちろん歌って踊っても出来るようになってるんでどちらでもお好きな方を選んでいただいて構いません!』

「は?」

 思わず内心が口からも出た。
 めっちゃ早口で何言ってんのコイツ。

「えっ、じゃあ、自分の壊滅的なリズム感と音痴が治ってるん!?」
「え、わたしタンバリンとリコーダーとトライアングルとカスタネットと鍵盤ハーモニカしか出来ないと思ってたのに」

 いや、うん、気にするとこそこなん?
 あと鍵盤ハーモニカってなに? ピアニカなら知ってるけど。

『ハーツさんはピアノ、ハープ、ギター、フルート、あとバイオリンみたいな弦楽器系がイケます!』
「えええ」

 なんかいきなりマスオさんみたいな声出てるんすけど、ハーツさんのそのリアクションは嬉しいのか嫌がってるのかどっちなんか分からんよ。

『ドラゴさんはドラム、ギター、サックス、そういう癖の強い系の楽器がイケます!』
「やったー!!」

 めっちゃ喜んでるねドラゴさん。
 まあ、マジで楽器出来なかったって聞いてたから、嬉しいんだろう。
 リズム感壊滅的だったらそりゃそうかもしれない。
 でもドラゴさん要領は良いから練習すれば出来そうなモンだけどなぁ。

「じゃあ自分ドラムしたい! リズム刻みたい!」

 そこはビートちゃうんか。

「……となると、わたしはベースギターでもやりましょうか」

 わぁ、似合いそう。ってまてまて。

「いや、それアタシ歌うしか道残ってないじゃん」

 なんでみんなして中央へ据えようとするんすか。
 アタシそんな目立ちたがり屋じゃねェんすけど。

『二人も歌えますよ?』
「やったー!!」
「じゃあコーラスでもしましょう」

 いや、だからね。

「なんでアタシがメインなんすか」
『吟遊詩人ですし』
「吟遊詩人だもんなあ」
「吟遊詩人じゃあ仕方ないと思いますよ」
「解せぬ」

 吟遊詩人が何したってんすか!
 そりゃたしかに歌う職業ですけども、歌える人が他にもいるんなら弾いたり奏でたりする方に回りますよ!
 詩人はハープが通常武器だけど、それ以外も使えるし、なんならスキルでフルートとか色々使ってたんだぞ!

 ていうか。

「ファンタジーだからガチバンドはアカンしょ」

 ドラムとかあんなデカいの使ったら騒ぎになるよ。ギターとかも。

「つまり、ファンタジーで再現出来る程度のバンドならオーケーなんですね?」
「なるほど!」

 一生懸命諦めさせようと色々言ったのに、二人して“じゃあギターはクラシックにして”とか“ドラムはポンゴみたいな感じのやつ?”とか話し合い始めてしまった。

 えええええ。

「え、いや、あの、なんで二人共ノリノリなん?」

 どうしてそんなに歌わせようとしてくるの二人とも。

「正直、イケオジ達の楽器弾いてる姿が見たい」
「自分が今まで出来なかったこと出来るって言われたらやりたくなった」
「わぁ、欲望に忠実」

 つまり、自分の欲のためにアタシを利用しようとしてんすね。

「あとやっぱユーリャさんのその声で歌うの聞きたい」
「分かります。普段はチャラいイケオジが真剣な顔で歌ってるとこも見たい」
「ぐっ……」

 なんで二人はすぐこうやっておだててくるんすか。
 アタシだって見たいよそりゃ。

「ユーリャさんは良いんですか? その声で、その姿で歌い放題ですよ?」

 じっと見つめられて心が揺らぐ。

 歌い放題……、いや、たしかにカラオケは好きだよ。
 しかしだな。アタシぁ歌詞とかそんなんうろ覚えで、よっぽどリピした曲でないと覚えてないっつーか……。

『ご安心ください! 記憶力も上げておきました!』
「至れり尽くせりだなぁオイ! 何してんすか!」
『元々神々ネットワークで偶像アイドルさせるつもりだったんだから仕方ないじゃないですか!』
「いやそれはそれでどうなの」

 つーか色々初耳なんすけど。

『まさか元の人の魂が入るなんて思わなかったから結構好き勝手やっちゃったんですよ! 諦めてください!』

 えええ……。

「だってさユーリャさん。諦めて歌おう?」
「歌わせたいだけっしょアンタ」
「うん!」

 力強くお返事してんじゃねェよ……。

「わかったよ、わかりました! やりゃいいんでしょ!」
「ねぇユーリャさん耳ピコピコしてる」
「だあああ! またか! くそが!」

 猫耳を両手で掴みながら吠える。なんで勝手に動いてんだよこの耳。ふざけんな。

「結構最初からずっと動いてましたけどね」
「言ってよ!」

 ハーツさんなんで黙ってたの!? 酷くない!?




​───────​───────
 おまけ
(入れたかったけど無理だったやつ)
​───────​───────



「あっ、そうだワタナベさん」
『はい、なんでしょうドラゴさん』

「自分ってさ、巻き舌出来るようになってる?」
『え?』
「巻き舌」

『いや、あの、すみません、それは知らなかったのでやってないです』
「えぇー……」

「巻き舌っつーと、ゴルルァ! みたいなやつっすか?」
「そうそれ。ごらぁー」

「わあ、すっごいひらがなっぽい」
「わたしそれ得意ですよ。ガルルルルルルルル……」
「凄いけどなんで犬の威嚇音」

「言いやすくて」
「わかるけど」


 
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