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本編 最強冒険者

story197/絆の再生

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閉じた瞼の向こう側から、強い陽射しが僕の顔を照りつけ、眩しさに抗えずゆっくりと目を覚ました。

そんな僕の目に最初に飛び込んできたのは、凄く高い位置にある、電気も何も無い真っ白な天井だった。

「んん?…ここ何処だろ……あ、思い出した」

確か、蒼い髪の日本語を話す外国人?に、夜中に甲斐甲斐しくお世話されたっけ。

「という事は、あの方の自宅ってことかな?」

僕なんて、その辺に生えてるぺんぺん草みたいな存在なのに、
救ってくれた上に、こんなフカフカなベッドで休ませてくれるなんて…とっても優しい方なんだな…

「…ふにゃ…うぶぅ…」

天井を見つめ、蒼髪の青年の優しさに感謝していたら、僕の右側から可愛らしい寝言が聞こえた。

「あらら?キミは誰かな?ふふふ。凄く可愛い赤ちゃんだ。
銀色と蒼色のツートンカラーの髪って凄いな…アニメのキャラみたい。綺麗に真ん中で分かれてるねぇ」

「スピよスピよ」と可愛い寝息をたてて眠る赤ん坊を起こさないように、注意しながら身体を起こし、
自分が今どこに居るのか、そして何時なのか、何曜日だったかを確認するためスマホを探したが見つからず、

「ありゃ、どこかに落としちゃったかな。
これじゃ時間が分かんないなぁ。毎朝のお楽しみ、投稿小説を読むことも出来ないじゃ~ん」

「はぁ」と溜め息を吐き、(携帯ショップに行くの嫌だなぁ)と思いながら窓の外に視線を向けたら、驚いた。

「どぇえ。な、た、太陽が…ふたつ!?いやいや、まさかそんな…目の錯覚だよ。うん」

ラノベ展開よろしく、目が覚めたら異世界だった!なんてことを一瞬思ったが、

(そんな非現実的な事なんてある訳ないよねぇ)

と思い直し、ふたつの太陽は見なかった事にして、

「ここは本当に何処なんだろう…」と呟き、困惑したまま窓の外の景色を眺めていた。

しばらくボーッとしながら、

(あ、そういえば。大好きな作家さんの新作本の発売日って明日だっけ?…あれ?いつだっけ?)

(ん~。学校って休みだっけ?登校日だっけ?ここから学校までどの位の距離かなぁ。
行かなきゃダメかなぁ。原田さんとか、藤井君たちに嫌がらせされるから行きたくないなぁ)

と、色々と考え事をしていたら、背中に人の気配を感じ、
(あ、あの蒼髪の人かな)と思い、お礼を言おうとゆっくりと振り返った。

彼と目を合わせた瞬間、なぜか唐突に抱き着きたい衝動に駆られたのだが、何とか思い留まり、
混乱したまま、もう一度目線を合わそうと顔を上げた僕の目に飛び込んできたのは、
蒼髪の昨日の彼は勿論だが、その隣りに立って優しく笑みを浮かべている、黒髪ロングの男性だった。

2人共が知らない人の筈なのに、蒼髪の彼を見れば抱き着きたくなるし、黒髪の彼には懐かしさが込み上げてくる。

そんな胸中にますます混乱して、パニックになり掛けていたら、両方から話し掛けられた。

「おはよう翔馬。気分はどうだい?」と黒髪の彼が言い、頭を撫でてきて、

「お前…ショウマか?目の色は変わってないが…髪が…」と蒼髪さんが言いながら近付いてきた。

背の大きい迫力のある風貌にたじろぎながらも、喉奥から絞り出すように声を出し、

「あ、あの、その…お二人は、ぼ、僕のことを知っているようなのですが…すみません…あの…記憶が曖昧で…
失礼ながら、お、覚えてないのです。助けて頂いたのに、ぶ、無礼を承知で伺います。お二人はどなたですか?」

と、しどろもどろになりながら2人に問うたら、黒髪さんは悲しそうに顔を歪ませ、
碧髪さんは、「ウソだろ…」と呟き、手で目を覆い、上を向いてしまい、良く見ると肩が震えていた。

その様子を見て、(ど、ど、どうしよう…覚えてないとか失礼過ぎるよね…)とオロオロしていたら、

「ふ、ふぎぁあ、うぶぶぶぅ、んまあ…」と赤ん坊が泣き出したと同時に

「まーまー、おあよー!ルナちたよー」と額に角の生えてる男の子が元気に入室してきて、その後すぐ、

「ママおはよう。魔力は回復した?」と小さい二本の角を生やした少年が入室してきた。

僕を「まま」「ママ」と呼んだ事と、角の生えた姿に驚いたのは勿論だけど、
少年が口にした「魔力」という言葉に、目を見開いて驚いた。

(二つの太陽に、魔力…まさか異世界転移したのか僕は!これは夢か?…いや、頬を抓ったが痛い…現実かぁ!)

と、数秒固まったまま心の中で非現実的な出来事に興奮していたら、一本角の男児が、

「まーま!かみ、まっくろけっけー!ルナといっちょ!」と叫び、ピョンっと抱き着いてきた。

その無邪気な仕草が可愛くて、恐る恐る頭を撫で、

「ふふふ。可愛いね。キミはルナくんって言うんだね。何歳なのかな?この角もとっても格好良いね」

と話し掛けたら、慌てた様子で黒髪さんの元へと行ってしまった。
それを少し残念に思いながら、気を取り直して、状況を把握するため、部屋にいる方々に自己紹介がてら話し掛けた。

「えっと…僕は、天城  翔馬っていいます。18歳の高校生です。あ、あの日本人です。
ここは異世界なんでしょうか?あなた方が僕を救ってくれたんですよね?
そんな恩も忘れて寝こけてしまい申し訳ございません。
で、あの…何も覚えていないので、どなたか状況を教えて頂けませんか?」

そう聞いたら、泣いていたのか、目を真っ赤にさせた蒼髪の男性が、僕の手を握りながら色々と教えてくれた。

「──ということなんだよ。理解したかショウマ」

その内容は理解の範疇を超えており、しばらく頭の中でグルグルと思考が巡った。

どの位のあいだ思考していたのか、気付いた時には部屋の中には僕とアレクレス…だ、旦那…しか居らず、
その空間はシーンっと静まり返っていた。

その沈黙に耐えられず、漸く口を開き、要約した内容を確認するように繰り返し呟いた。

「えっと、アレクレス…さんが、僕の旦那さんで、先程の赤ん坊が…あ、愛し…合った末に授かった息子で、
ルナくんとマイキーくん、転生者のカイトくんが、僕達の家族なんですね。だ、旦那さん…うっ…恥ずかしぃ。
で、亜神様に精神支配の魔法を掛けられた末に、無茶をして記憶を失ったわけですね。理解しました」

そうか…旦那さん…。だから目が合った瞬間、あの衝動に駆られたのか。
記憶を失っても、本能で愛する人を求めたってことなのかな。

それにしても、僕が結婚して、ましてや妊娠と出産をしているなんてね。
どおりで、エスポアちゃんが横に居たのに違和感を感じなかったんだな。

……そういえば、僕の色味が銀髪桃色目だったって言ってたけど、今の僕って黒髪桃色目なんだよね?
華やかな色合いから、一気に地味な印象になっちゃったし、記憶も失った僕って、彼の知る翔馬じゃないよね?
そんな僕と一緒に居て、彼は幸せなのだろうか…

そう思った事をそのまま伝えたら、思いっきり抱き締められ、「えっ」と驚く間もなく、唇を重ねてきた。

「あ、んッ…待っ…んんッ…」

(待って待ってぇ、いきなりキスぅ~!
どどどどうしよう!前の僕がどうだったか知らないけどぉ!今の僕にしたら初キスなんですけどぉ!)

「ショウマ、いいか良く聞け。俺はお前の容姿に惚れたんじゃない。存在そのものに惚れたんだ。魂ごとな。
それと、今までの記憶がお前から消えたのは辛いものがあるが、俺が覚えてるから良いんだ」

「……た、たましい…」

「くくっ。そうだ魂だ。ちゅっ。
この2年間、俺たちは数々の困難や喜びを共有してきた。
お互いの心を支え合い、励まし合うことで更なる絆を築いてきた」

「……」

「お前の存在は、ただ容姿の美しさだけではない。お前の魂が輝いていることに、俺は惹かれたんだ。
その純粋さと優しさが、俺の心を癒してくれるんだよ」

(す、凄いセリフを言われてます!僕ちょっとキュンキュンしちゃってます!)

「たとえ過去の記憶を失っても、それは過ぎ去った時間だけであり、お前の本質や魅力は決して変わらない。
俺がお前のために覚えているから、お前は安心していてくれ」

「……は、はい!」

「くくくっ。良い返事だ。何やっても可愛いなお前は。
良いか、これからも俺たちは、新たな思い出をつくり続けていく。
涙や喜びを共有し、互いを支え合うことで、より強い絆を築いていくんだ」

「か、かわ…」(僕のどこが可愛いのか理解不能です)

「2年という時間より、これからの一生の方がもっと長い。俺たちはまだまだたくさんの未来が待っている。
一緒に成長し、夢を追いかけ、困難を乗り越えていく。お前がいてくれるなら、それだけで十分だ」

「……」(あぅあぅ…イケメンの笑顔の破壊力すごっ!)

「俺はお前のことを愛してる。容姿ではなく、お前の魂そのものを。
だから、これからもずっと一緒にいてくれ。お前の存在そのものが、俺の宝物なんだよ。ちゅっ」

「あ、愛…あきゃぁぁああ!!甘っ、ゲロ甘ッ!砂糖吐きそうッ!そして、さり気にチュウですのん!!
あれか?アレクレスさんは、前世イタリア人ですか!?以前の僕は、このゲロ甘攻撃に耐えていたのぉ!」

ぎゃあ!何さり気なく腰を抱いてんの!ヤバい!リアルBL展開に僕ちんオーバーヒートしそうなのぉ!

あれ?良く考えたら、エスポアくんを授かったって事は、僕がアレクレスさんに掘られたってこと?

「マージーかー!リアルR18展開を経験したってことですやん!
え?僕が?アナル犯されて「あんあん」言ったってことですのん?
日陰のぺんぺん草が、日向の向日葵のような貴方に、雑音を聞かせてしまったのですかぁ!?」

「何言ってんだお前は…そんだけ元気ならもう大丈夫だな。お前の父上が朝食を用意してくれてるから行こうぜ」

「は?え?乳?父?チチ…僕のファーザー?翔陽パパもこの世界に転生してるのですか?
顔を覚えていないんですが、どんな方ですか?久々の再会なので、緊張しますぅ」

「どんなって…さっきまで部屋に居たから会ってるぞ。
黒髪の長髪で、俺の横に居ただろ?そしてお前の頭を撫でていたじゃないか」

そう言われて思いだし、あの目が合った瞬間に懐かしさが込み上げた理由が判明した。

と同時にベッドから抜け出し、部屋から飛び出て廊下を走り、階段を駆け足で降り、
食卓で料理を並べてる後ろ姿を発見し、恐る恐る声を掛けた。

「パ、パパ…なの?本当に?僕の…お父さんなの?」

「ははっ。そうだよ翔馬。愛しい我が息子、やっと認識してくれたか。会いたかった翔馬」

「お父さぁん!うぅ…嬉しいよぉ…うわぁあん…」

喜びと感動が心の奥深くに広がり、僕は思わず涙を流した。
ずっと父の存在を思い続けながらも、その姿を見ることは叶わなかった。
しかし、今その願いが叶った瞬間、僕の胸は喜びでいっぱいになった。

お父さんは優しく笑いながら、僕の方へ歩み寄った。その笑顔には、積年の思いが込められて見えた。

「翔馬、お前を残して逝ってしまって本当にごめんな。でも、今度はずっと一緒にいるからね」

「ううん、お父さん。今こうして会えたから僕はそれだけで嬉しいよ」

二人の距離が縮まるにつれて、僕の喜びは増していく。
過去の寂しさや切なさが一気に溶けていく感覚がして、幸福感が増していった。

そして、ついにお父さんと抱き合った。固く抱きしめるその腕は、もはや言葉よりも強く、深い絆を象徴していた。

その瞬間、幼少期に失った父の優しさと愛情が再び心に満ちていく。
僕は幸せな涙を流しながら、過去の喪失感を埋めるかのように、父親の温かさを感じた。

この再会は、僕達にとってただの再会ではなく、何よりも大切な絆の再生を意味していた。
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