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その気持ちは友愛か親愛か
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誤字・脱字、修正致しましたm(_ _)m
教えて下さった方、ありがとうございます!(´▽`)
下部に挿絵有りです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
頭の中で天使が踊り狂ってる状態の拓磨は、足首を捻って歩けないジュリエッタを姫抱っこし、
冬休みで学生がごった返すショッピングモールの中を、人目も憚らず颯爽と歩いていた。
ジュリエッタも拓磨しか見えておらず、首に回した手に力を込め、ギュッと抱きつき甘えていた。
そんな風に甘えてくる彼女が可愛くて、足を止め、「ジュリー」と声を掛け、「ん?」と顔をあげた時に現れた額に「ちゅっ」とキスをした。
そんな2人を目の当たりにした通行人達はザワザワとしていた。その中にはグループで遊びに来ていた、拓磨と充希の通ってる学校の同級生達もいた。
「きゃあ!何あれ撮影?」
「やっべぇ超可愛くね?アイドルか?」
「お姫様抱っこで颯爽と歩くとか彼氏やべぇな」
「ちょ、写メ撮ってSNS挙げようぜ!」
-----------------------------------------------------
【拓磨と充希の同級生の会話】
「え!あれSクラスの豊田くんじゃん!」
「マジ?あ、ほんとだ。拓磨だ!」
「アイツあんなヤツだったか?いっつも冷めてんじゃん」
「彼女にだけ甘いとか痺れるんですけどぉ~♡」
「イケメンで秀才で運動神経抜群で銀髪美少女が彼女とか……」
「「「人生勝ち組イェイ!!」」」
「充希あれ知ってんのかね」
「ミッツって拓ラブだからな。彼女に嫉妬して大変そう」
「あー。拓磨に近付く女を追い払ってるもんな」
「いや、あれって女が顔目当てとか、金目当てだから、遠ざけてんだよ」
「「「それな!!」」」
「ねぇ、声掛けちゃう感じ?」
「充希にLimeしとこ」
“”モール𝙣𝙤𝙬 。拓&美女発見𝙣𝙤𝙬 “”シュポッ。
「あれは撮影だと思って鑑賞しとこうぜ」
「「「OKググール!イェイ!」」」
-----------------------------------------------------
ジュリエッタにデレている所を、同級生に見られているなんて露ほども思ってなかった拓磨は、
額にキスした後「ジュリー顔真っ赤。可愛いなお前」と、耳元で囁いた。
嬉しいのと恥ずかしいので照れてしまったジュリエッタは、「もぅ…タクマのバカ…」と呟き、肩口に顔を埋めた。
拓磨は「くくっ」と笑い、「それも可愛いよ」と、頭にキスしてから、また歩きだした。
ジュリエッタは(やられっぱなしはイヤよ)と、頬は届かないから首筋に「ちゅっちゅ」と口付けを送った。
仕返しされると思ってなかった拓磨は、吃驚して一瞬ジュリエッタを落としそうになってしまった。
拓磨「あっぶな。コラいたずらっ子」
「ふふふ。ごめんなさい?ふふ。でも、お返ししただけよ?」
拓磨「ははっ!そうか、俺が発端か。じゃあお相子だな」
「ふふふ。ところで何処へ向かってるのかしら?」
拓磨「あー、ココだよ。医療品コーナー。ここで湿布を買おうと思ってさ……って言っても分からんよな。
ちょっと買って来るから、ここに座って待っててな。知らない人に付いていくなよ?」
絶対に腫れてると思って湿布を買いに来た拓磨は、店前に置いてあるスツールにジュリエッタを降ろし、ひと言注意をして、店に入っていった。
残されたジュリエッタは、(知らない人には付いて行かないわ。それくらい分かってるわよ。もう……)と唇を尖らしていた。
一人でいるジュリエッタに近付く影が2つ。
拓磨と一緒に居たところを見ていなかった影2つは、「よぉ、久しぶりぃ」
「ガチで、マジ久しぶりぃ」と言いながら、ジュリエッタを挟んで両側に腰掛けた。
ナンパだ。『あれ、人違いだったごめんね。キミ可愛いね』というセリフが続くナンパだ。
そんな事など知らないジュリエッタは、律儀に返答した。
「あら。どなたですの?わたくし貴方達を知らないのですけど、誰かとお間違えではなくって?」と。だけど頭の中では色々と喋っていた。
(随分と馴れ馴れしい方ね。耳飾りとネックレスをジャラジャラ付けて、魔法付与でもしてるのかしら。あ、魔法使いは居なかったわね。
鼻の飾りは『モーギュー』の真似かしら?あ、人化した『モーギュー』かしらね)と。
ジュリエッタ。『モーギュー』とは牛だろうか?残念ながら現代には人化した牛は居ないんだ。花輪はオシャレで付けてるんだ。
ジュリーの丁寧な口調にお嬢様キャラだと思ったのか、2人のナンパ野郎は口々にバカにしてきた。
男A「ワタクシだってよ!何処の姫でちゅかぁ?」
男B「キャラやば!俺達もキミなんて知らねぇし!」
男A「ナンパだよ。ナ・ン・パ!一人で寂しそうじゃん?イケメンな俺達がイイこと教えてやるよ」
男B「そうそう。気持ちイイことな」
男A「それな!!」
男A×B「「ギャハハハ!!」」
そんなナンパ野郎に一切反応せず、拓磨が入店した医薬品店を無表情で見詰めるジュリエッタ。
それは無視したのではなく、何を言ってるか分からなかったからだ。しかも知り合いではない。なので敢えて反応しなかった。
そんなジュリエッタの反応にイラッとしたナンパ野郎共は、目を合わせ頷いてから、
Aが腕を掴んで無理やり立たせ、「イイところ行こうぜ」と強引に引っ張った。
Bはジュリエッタの腰に手を回し、「細っせぇ、ヤッてるうちに折れんじゃね?」とほざいてる。キモイ。
「きゃぁあ!痛いわっ、やめなさいっ!離して!」
悲鳴を聞いて慌てて店から出て来た拓磨は、「その手を離せよ」と、ジュリエッタの腕を掴んでいる男Aの手に、拳を思いっきり叩き付けた。
「ゴギャ」っという音が聞こえた気がしたが、折れてたって知らねぇ。完全に正当防衛だからな。
そして、腰に手を回している男のコメカミを鷲掴みにし、「触るなゴミ」と言い放ち、握力を強めていった。
殴られた手を押さえ「痛ぇ!」と蹲る男Aと、「痛い痛い!悪かった!」と叫ぶ男B。
ジュリエッタが「タクマもう良いわ」と抱きついて来た事で我に返った。怒りでどうにかなりそうだった。
「ふぅぅ」と息を吐き怒りを鎮め、Bのコメカミから手を離した拓磨は、医薬品店の店員に守衛を呼ぶよう頼んだ。
一部始終を見ていた他の客が、「この男達は私達で見てるから、彼女さんを安心出来る場所に連れてってあげな」と言ってくれ、
「お騒がせしてすみませんでした。あと、ありがとうございます」と頭を下げて、その場から立ち去った。
今度は姫抱きじゃなく縦抱っこで。医薬品店の近くに身障者用トイレがあったので、そこに2人で入った。
ドレッサーの台の上にジュリエッタを降ろし、拓磨はスツールに腰掛け、「ブーツ脱がすな。痛かったら言って」と伝え、ゆっくりと脱がした。
ジュリエッタはトイレに入った時からソワソワしていた。まさか御手洗に殿方と入るとは思ってなかったから。
確かに個室だし、広いし、スツールも置いてあるし、手当てするには丁度良い場所だけど、とても緊張する。
しかも、目線の先では自分の足を観察されてる。タイツという布越しだけど、とても恥ずかしい。
(顔から湯気が出そうだわ)
顔が熱くて手でパタパタ仰いでいたら、「これ脱いで」とタイツを指さして言われた。
「え?タイツというコレをですの?」
拓磨「そう」
「な、なんででしょう?これ脱いだら素足になってしまいますわ…」
拓磨「くくっ。そりゃそうだろうな。でも脱いで、手当てするから。足首まだ痛いだろ?」
「あ!そ、そうよね」
この世界は魔法が使えない。向こうでは何処か怪我しても《ヒール》で治ってたので、薬材を使う治療というのが分からなくって戸惑ってしまった。
納得したので脱ごうとしたのだけれど、座ったままだと脱げないわ。
「タクマ、座って脱ぐのは難しいわ。一度下に降りたいのだけど…」
拓磨「そうだよな。あ、ちょっと待ってろ」
バックにバンダナがあったので、それを出し床に広げ、ジュリエッタの脇に手を入れ持ち上げ、バンダナの上へ降ろした。
拓磨「大きめのバンダナだけど立てる範囲が狭いな。ここで出来るか?後ろ向いてるから、脱ぎ終わったら教えて」
「ええ。大丈夫だと思うわ。脱いだら声掛けるわね」
スカートをたくし上げ、スルスルとタイツを下げていき、左足を抜いた所で足が縺れた。「キャッ!」
「うおっ!」拓磨の方へ倒れてしまい、「あ、ぶッ!」背中に思い切り顔をぶつけた。「痛ぁ…」
「ックリしたぁ。くくっ、お前ぶっ倒れるの好きな。ほら…と。そこで大人しく座ってろよ」
鼻から下を手で覆って「痛い」と呻いてるジュリーを持ち上げ、ドレッサーの上に座らせた。
右足首に引っ掛かったままのタイツを取り去り、畳んでからショルダーの中に入れ、荷物掛けに掛けた。
スツールに座り、捻ったほうの足を「ここに乗せて」と自分の太腿に乗せさせ、診察開始。
拓磨「あー、やっぱ腫れてるな。足首だけ動かせるか?」
「ッ!痛ッ…動かせるけど凄く痛いわ…」
拓磨「動くなら折れてはねぇか…捻挫だろうか」
痛がるジュリーに「今日の買い物はここまでにして、病院行くからな」と伝えながら、腫れてる部分に湿布を貼った。
「あら?不思議な布ね…スースーして気持ちイイわ。魔法薬のようね。もう大丈夫だから、お買い物は続けたいわ」
拓磨「とりあえず応急処置でサロンパス貼ったから、少し痛みは引くが、無理して歩いたら悪化すんだろ。今日はダメだ。帰りに病院寄って医者に診てもらおう」
「お医者様に診て頂けたら治るのね。分かったわ。
……またタクマと一緒に来たいわ…手を繋いで色んなお店を見て廻りたいの」
照れながら言うジュリエッタが可愛いくて、「ああ…」俺もと、言おうとして言葉に詰まった。
『ナンパして強姦』『拉致・誘拐』と、色んな犯罪の光景が頭を駆け巡り、気軽に「また来よう」と言えなかった。
先程の出来事のように、自分が連れ出したせいで怖い目に遭わせてしまったらどうしよう。と、そう思うと気軽に「うん」とは言えず、目の前にある綺麗な脚の怪我部分を優しく撫でながら「買い物にはもう連れて来ない」と呟いた。
「え……タクマどうして?わたくしが粗相してばかりだから?嫌気が差してしまったの?」
拓磨「それは違う!ジュリー、そんな泣きそうな顔しないで。ごめん。言い方が悪かった。
この店にはもう来ないって言いたかったんだ。というか、都会の大きい店とかも。人混みとかも……」
「ん?どういう事でしょうか?他の商店なら問題無いという事かしら?」
拓磨「さっき怖い目に遭ったろ?俺が目を離した少しの間で……そんなのがまた起こったらどうする。
常に俺が、傍でお前を守ると誓っても、予想だにしない出来事が起こる」
出掛け先で、繋いだ手が離れた瞬間を狙われて攫われるかもしれない……車で山奥に連れて行かれ強姦されたり…
拓磨「日本に潜む『魔物』は人間なんだ。狡猾でずる賢い、犯罪を『悪』だと思ってない人の形をした『魔物』」
しかも、その『魔物』を殺してしまったら、自分も犯罪者になってしまう。だから、簡単に手は出せない。
「……人の形をした『魔物』は、私の国にも沢山いたわ。あの星に住む犯罪者は、この世界の犯罪者より狡猾で狡いと思うわ。魔法で洗脳したり、隷属して奴隷にしたりとか。
そんな方達は居たけど、常に怯えて暮らしては居なかった。巻き込まれたら怖い思いはすると思うわ。
でも、怯えて暮らす人は居なかったわ。怯えて暮らすより、楽しんで生きる方が幸せだもの」
拓磨「……でも……俺は……」
「ねぇ。タクマは傍で私を守ってくれるのでしょ?それはずっと?一生かしら?」
拓磨「ああ。ずっと一生。俺がお前の傍で守り続ける。ジュリーのナイトは誰にも譲らない。お前が好きだから」
「好き…それは、友愛?親愛?わたくしの心には、タクマを親愛している気持ちがあるわ。親愛する貴方に守られる幸せ…それは何よりも尊いこと。
わたくしは、握った手を永遠に離さないと誓うわ。タクマは、わたくしを力強く抱きしめ、絶対に離さないで。そして、ずっと一緒にいて、愛しいわたくしの騎士として」
ジュリーの握りしめた手は、俺の手を温かく包み込んでいる。小さい手から伝わる温もりが幸福だと感じる。
「俺の気持ちも親愛だよ」気持ちが溢れ出て止まらない。彼女の言葉が心に刺さり、胸を震わせる。
ジュリーの愛を受け止めることができることに、感謝の気持ちで胸がいっぱいだ。
そして、彼女を一生守り、愛し続ける決意を固めた。ジュリーにとって、心地よい居場所となり、安らぎと幸福を提供できる存在でありたい。ジュリー専属のナイトとして。
拓磨はスっと立ち上がり、自分の手を包み込んでる小さな手の甲に「ちゅっ」とキスを落とし、「好きだよジュリエッタ」と囁き、桜色の唇に優しい口付けを落とした。
教えて下さった方、ありがとうございます!(´▽`)
下部に挿絵有りです。
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頭の中で天使が踊り狂ってる状態の拓磨は、足首を捻って歩けないジュリエッタを姫抱っこし、
冬休みで学生がごった返すショッピングモールの中を、人目も憚らず颯爽と歩いていた。
ジュリエッタも拓磨しか見えておらず、首に回した手に力を込め、ギュッと抱きつき甘えていた。
そんな風に甘えてくる彼女が可愛くて、足を止め、「ジュリー」と声を掛け、「ん?」と顔をあげた時に現れた額に「ちゅっ」とキスをした。
そんな2人を目の当たりにした通行人達はザワザワとしていた。その中にはグループで遊びに来ていた、拓磨と充希の通ってる学校の同級生達もいた。
「きゃあ!何あれ撮影?」
「やっべぇ超可愛くね?アイドルか?」
「お姫様抱っこで颯爽と歩くとか彼氏やべぇな」
「ちょ、写メ撮ってSNS挙げようぜ!」
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【拓磨と充希の同級生の会話】
「え!あれSクラスの豊田くんじゃん!」
「マジ?あ、ほんとだ。拓磨だ!」
「アイツあんなヤツだったか?いっつも冷めてんじゃん」
「彼女にだけ甘いとか痺れるんですけどぉ~♡」
「イケメンで秀才で運動神経抜群で銀髪美少女が彼女とか……」
「「「人生勝ち組イェイ!!」」」
「充希あれ知ってんのかね」
「ミッツって拓ラブだからな。彼女に嫉妬して大変そう」
「あー。拓磨に近付く女を追い払ってるもんな」
「いや、あれって女が顔目当てとか、金目当てだから、遠ざけてんだよ」
「「「それな!!」」」
「ねぇ、声掛けちゃう感じ?」
「充希にLimeしとこ」
“”モール𝙣𝙤𝙬 。拓&美女発見𝙣𝙤𝙬 “”シュポッ。
「あれは撮影だと思って鑑賞しとこうぜ」
「「「OKググール!イェイ!」」」
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ジュリエッタにデレている所を、同級生に見られているなんて露ほども思ってなかった拓磨は、
額にキスした後「ジュリー顔真っ赤。可愛いなお前」と、耳元で囁いた。
嬉しいのと恥ずかしいので照れてしまったジュリエッタは、「もぅ…タクマのバカ…」と呟き、肩口に顔を埋めた。
拓磨は「くくっ」と笑い、「それも可愛いよ」と、頭にキスしてから、また歩きだした。
ジュリエッタは(やられっぱなしはイヤよ)と、頬は届かないから首筋に「ちゅっちゅ」と口付けを送った。
仕返しされると思ってなかった拓磨は、吃驚して一瞬ジュリエッタを落としそうになってしまった。
拓磨「あっぶな。コラいたずらっ子」
「ふふふ。ごめんなさい?ふふ。でも、お返ししただけよ?」
拓磨「ははっ!そうか、俺が発端か。じゃあお相子だな」
「ふふふ。ところで何処へ向かってるのかしら?」
拓磨「あー、ココだよ。医療品コーナー。ここで湿布を買おうと思ってさ……って言っても分からんよな。
ちょっと買って来るから、ここに座って待っててな。知らない人に付いていくなよ?」
絶対に腫れてると思って湿布を買いに来た拓磨は、店前に置いてあるスツールにジュリエッタを降ろし、ひと言注意をして、店に入っていった。
残されたジュリエッタは、(知らない人には付いて行かないわ。それくらい分かってるわよ。もう……)と唇を尖らしていた。
一人でいるジュリエッタに近付く影が2つ。
拓磨と一緒に居たところを見ていなかった影2つは、「よぉ、久しぶりぃ」
「ガチで、マジ久しぶりぃ」と言いながら、ジュリエッタを挟んで両側に腰掛けた。
ナンパだ。『あれ、人違いだったごめんね。キミ可愛いね』というセリフが続くナンパだ。
そんな事など知らないジュリエッタは、律儀に返答した。
「あら。どなたですの?わたくし貴方達を知らないのですけど、誰かとお間違えではなくって?」と。だけど頭の中では色々と喋っていた。
(随分と馴れ馴れしい方ね。耳飾りとネックレスをジャラジャラ付けて、魔法付与でもしてるのかしら。あ、魔法使いは居なかったわね。
鼻の飾りは『モーギュー』の真似かしら?あ、人化した『モーギュー』かしらね)と。
ジュリエッタ。『モーギュー』とは牛だろうか?残念ながら現代には人化した牛は居ないんだ。花輪はオシャレで付けてるんだ。
ジュリーの丁寧な口調にお嬢様キャラだと思ったのか、2人のナンパ野郎は口々にバカにしてきた。
男A「ワタクシだってよ!何処の姫でちゅかぁ?」
男B「キャラやば!俺達もキミなんて知らねぇし!」
男A「ナンパだよ。ナ・ン・パ!一人で寂しそうじゃん?イケメンな俺達がイイこと教えてやるよ」
男B「そうそう。気持ちイイことな」
男A「それな!!」
男A×B「「ギャハハハ!!」」
そんなナンパ野郎に一切反応せず、拓磨が入店した医薬品店を無表情で見詰めるジュリエッタ。
それは無視したのではなく、何を言ってるか分からなかったからだ。しかも知り合いではない。なので敢えて反応しなかった。
そんなジュリエッタの反応にイラッとしたナンパ野郎共は、目を合わせ頷いてから、
Aが腕を掴んで無理やり立たせ、「イイところ行こうぜ」と強引に引っ張った。
Bはジュリエッタの腰に手を回し、「細っせぇ、ヤッてるうちに折れんじゃね?」とほざいてる。キモイ。
「きゃぁあ!痛いわっ、やめなさいっ!離して!」
悲鳴を聞いて慌てて店から出て来た拓磨は、「その手を離せよ」と、ジュリエッタの腕を掴んでいる男Aの手に、拳を思いっきり叩き付けた。
「ゴギャ」っという音が聞こえた気がしたが、折れてたって知らねぇ。完全に正当防衛だからな。
そして、腰に手を回している男のコメカミを鷲掴みにし、「触るなゴミ」と言い放ち、握力を強めていった。
殴られた手を押さえ「痛ぇ!」と蹲る男Aと、「痛い痛い!悪かった!」と叫ぶ男B。
ジュリエッタが「タクマもう良いわ」と抱きついて来た事で我に返った。怒りでどうにかなりそうだった。
「ふぅぅ」と息を吐き怒りを鎮め、Bのコメカミから手を離した拓磨は、医薬品店の店員に守衛を呼ぶよう頼んだ。
一部始終を見ていた他の客が、「この男達は私達で見てるから、彼女さんを安心出来る場所に連れてってあげな」と言ってくれ、
「お騒がせしてすみませんでした。あと、ありがとうございます」と頭を下げて、その場から立ち去った。
今度は姫抱きじゃなく縦抱っこで。医薬品店の近くに身障者用トイレがあったので、そこに2人で入った。
ドレッサーの台の上にジュリエッタを降ろし、拓磨はスツールに腰掛け、「ブーツ脱がすな。痛かったら言って」と伝え、ゆっくりと脱がした。
ジュリエッタはトイレに入った時からソワソワしていた。まさか御手洗に殿方と入るとは思ってなかったから。
確かに個室だし、広いし、スツールも置いてあるし、手当てするには丁度良い場所だけど、とても緊張する。
しかも、目線の先では自分の足を観察されてる。タイツという布越しだけど、とても恥ずかしい。
(顔から湯気が出そうだわ)
顔が熱くて手でパタパタ仰いでいたら、「これ脱いで」とタイツを指さして言われた。
「え?タイツというコレをですの?」
拓磨「そう」
「な、なんででしょう?これ脱いだら素足になってしまいますわ…」
拓磨「くくっ。そりゃそうだろうな。でも脱いで、手当てするから。足首まだ痛いだろ?」
「あ!そ、そうよね」
この世界は魔法が使えない。向こうでは何処か怪我しても《ヒール》で治ってたので、薬材を使う治療というのが分からなくって戸惑ってしまった。
納得したので脱ごうとしたのだけれど、座ったままだと脱げないわ。
「タクマ、座って脱ぐのは難しいわ。一度下に降りたいのだけど…」
拓磨「そうだよな。あ、ちょっと待ってろ」
バックにバンダナがあったので、それを出し床に広げ、ジュリエッタの脇に手を入れ持ち上げ、バンダナの上へ降ろした。
拓磨「大きめのバンダナだけど立てる範囲が狭いな。ここで出来るか?後ろ向いてるから、脱ぎ終わったら教えて」
「ええ。大丈夫だと思うわ。脱いだら声掛けるわね」
スカートをたくし上げ、スルスルとタイツを下げていき、左足を抜いた所で足が縺れた。「キャッ!」
「うおっ!」拓磨の方へ倒れてしまい、「あ、ぶッ!」背中に思い切り顔をぶつけた。「痛ぁ…」
「ックリしたぁ。くくっ、お前ぶっ倒れるの好きな。ほら…と。そこで大人しく座ってろよ」
鼻から下を手で覆って「痛い」と呻いてるジュリーを持ち上げ、ドレッサーの上に座らせた。
右足首に引っ掛かったままのタイツを取り去り、畳んでからショルダーの中に入れ、荷物掛けに掛けた。
スツールに座り、捻ったほうの足を「ここに乗せて」と自分の太腿に乗せさせ、診察開始。
拓磨「あー、やっぱ腫れてるな。足首だけ動かせるか?」
「ッ!痛ッ…動かせるけど凄く痛いわ…」
拓磨「動くなら折れてはねぇか…捻挫だろうか」
痛がるジュリーに「今日の買い物はここまでにして、病院行くからな」と伝えながら、腫れてる部分に湿布を貼った。
「あら?不思議な布ね…スースーして気持ちイイわ。魔法薬のようね。もう大丈夫だから、お買い物は続けたいわ」
拓磨「とりあえず応急処置でサロンパス貼ったから、少し痛みは引くが、無理して歩いたら悪化すんだろ。今日はダメだ。帰りに病院寄って医者に診てもらおう」
「お医者様に診て頂けたら治るのね。分かったわ。
……またタクマと一緒に来たいわ…手を繋いで色んなお店を見て廻りたいの」
照れながら言うジュリエッタが可愛いくて、「ああ…」俺もと、言おうとして言葉に詰まった。
『ナンパして強姦』『拉致・誘拐』と、色んな犯罪の光景が頭を駆け巡り、気軽に「また来よう」と言えなかった。
先程の出来事のように、自分が連れ出したせいで怖い目に遭わせてしまったらどうしよう。と、そう思うと気軽に「うん」とは言えず、目の前にある綺麗な脚の怪我部分を優しく撫でながら「買い物にはもう連れて来ない」と呟いた。
「え……タクマどうして?わたくしが粗相してばかりだから?嫌気が差してしまったの?」
拓磨「それは違う!ジュリー、そんな泣きそうな顔しないで。ごめん。言い方が悪かった。
この店にはもう来ないって言いたかったんだ。というか、都会の大きい店とかも。人混みとかも……」
「ん?どういう事でしょうか?他の商店なら問題無いという事かしら?」
拓磨「さっき怖い目に遭ったろ?俺が目を離した少しの間で……そんなのがまた起こったらどうする。
常に俺が、傍でお前を守ると誓っても、予想だにしない出来事が起こる」
出掛け先で、繋いだ手が離れた瞬間を狙われて攫われるかもしれない……車で山奥に連れて行かれ強姦されたり…
拓磨「日本に潜む『魔物』は人間なんだ。狡猾でずる賢い、犯罪を『悪』だと思ってない人の形をした『魔物』」
しかも、その『魔物』を殺してしまったら、自分も犯罪者になってしまう。だから、簡単に手は出せない。
「……人の形をした『魔物』は、私の国にも沢山いたわ。あの星に住む犯罪者は、この世界の犯罪者より狡猾で狡いと思うわ。魔法で洗脳したり、隷属して奴隷にしたりとか。
そんな方達は居たけど、常に怯えて暮らしては居なかった。巻き込まれたら怖い思いはすると思うわ。
でも、怯えて暮らす人は居なかったわ。怯えて暮らすより、楽しんで生きる方が幸せだもの」
拓磨「……でも……俺は……」
「ねぇ。タクマは傍で私を守ってくれるのでしょ?それはずっと?一生かしら?」
拓磨「ああ。ずっと一生。俺がお前の傍で守り続ける。ジュリーのナイトは誰にも譲らない。お前が好きだから」
「好き…それは、友愛?親愛?わたくしの心には、タクマを親愛している気持ちがあるわ。親愛する貴方に守られる幸せ…それは何よりも尊いこと。
わたくしは、握った手を永遠に離さないと誓うわ。タクマは、わたくしを力強く抱きしめ、絶対に離さないで。そして、ずっと一緒にいて、愛しいわたくしの騎士として」
ジュリーの握りしめた手は、俺の手を温かく包み込んでいる。小さい手から伝わる温もりが幸福だと感じる。
「俺の気持ちも親愛だよ」気持ちが溢れ出て止まらない。彼女の言葉が心に刺さり、胸を震わせる。
ジュリーの愛を受け止めることができることに、感謝の気持ちで胸がいっぱいだ。
そして、彼女を一生守り、愛し続ける決意を固めた。ジュリーにとって、心地よい居場所となり、安らぎと幸福を提供できる存在でありたい。ジュリー専属のナイトとして。
拓磨はスっと立ち上がり、自分の手を包み込んでる小さな手の甲に「ちゅっ」とキスを落とし、「好きだよジュリエッタ」と囁き、桜色の唇に優しい口付けを落とした。
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