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はしゃぐ元公爵令嬢

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真冬の朝、外は快晴。(たぶんな。ジュリー探してて外を見てないからな)

青空が広がり、白い雲がぼんやり流れている。(はずだ)

太陽の光が強く、雪がキラキラと輝いている。(天気良い日はそれが綺麗なんだよ)

街は静かで、鳥のさえずりが聞こえる。(はずだ。防音で聞こえないから予想だな)

冷たい空気の中、暖かい飲み物を手にして、ホッとする季節だ。(学校行く時な)

吹雪の時以外で、尚且つ氷点下-15°C以上の時な。下回ると秒で冷え冷えになって買った意味無くなるんだよな。


拓磨は『出せ!!』と主張している相棒を鎮めるため、ジュリー以外の事を必死で考えていた。

それを許してくれないのか、「ねぇ、タクマ」と、可愛く「教えて?」とお強請りしてくる。

やめてホント。うちの子寝かさなきゃならないんだから。


拓磨「ジュリー。SEXもコンドー君も俺達にはまだ早い言葉なんだ。だから今は忘れてくれ。な?
ほら、着替えないと父さんを待たせちゃうから、部屋行くぞ」


「そうなんですの?『まだ早い言葉』というのがあるのですね。分かりましたわ。でも、何時か教えて下さいね」


拓磨「ああ…」やっと離してくれた。ヤレヤレ。

(教えるのは、ジュリーが彼女になって、ベッドインOKの時だな)ボソッ。

「ん?何か言いまして?」 

拓磨「い、いや何も言ってねぇよ」


クローゼットを開けて、服を物色しながら呟いた言葉は、ジュリーの耳には聞こえてなかったようだ。セーフ。

人知れず「ホッ」と息を吐き出し、自分の着替えを出し、スウェットの上をバサッと脱いだ所で、「ひゃぁあ!」と悲鳴が聞こえた。

驚いて、「何事!?」と振り返ったら、ソファに座り、真っ赤な顔を手で覆い、指の隙間から俺を見ているジュリーが居た。

訳が分からず、「どうした?」と一歩踏み出したら、「キャー!破廉恥ですわー!止まって下さいましー!」と、更にパニックになり叫ばれた。

「は?破廉恥?誰が…まさか俺が?」と自分を指差し、聞きながら、また一歩踏み出したら、
「はだ、裸、殿方の肌ー!見てしまいましたわー!」とまた叫び声をあげた。

ソファからピョンッと跳ね降り、「タクマ、ふ、服を、服をー!」とカーテンの裏に隠れたジュリー。


拓磨「裸って…上半身だけだろ。お前だって、ベッドの中でピンクのポッチ晒してたぞ、ポロンと乳出して」

ジュリーの「え?」に、あっやべ!と口を押さえ、無意識に発した言葉に(あちゃー)と思ってたら、肩をガシッと掴まれた。

「ひっ!」と恐る恐る振り返ったら、青筋立てた鬼が居た。父さんだ。般若になった父さん怖っわ!

ジュリーの悲鳴を聞いてすっ飛んで来たみたいだ。


父「拓磨、女性にそれは言っちゃいけない。偶然見えてしまったのだろうが、隠し通すか、オブラートに包んで伝えなさい。直接的な言葉は時に相手を傷付ける。分かったなら服を着なさい。下で待ってるぞ」


拓磨「はい。ごめん父さん。ちょっと待ってて」

怒られた。ついポロっと出ちゃったんだよ。肩めっちゃ痛い。というか、初めて怒られたな。


父「ああ。ジュリちゃん、息子が申し訳ない。拓磨の無神経な言葉、親として謝罪する。この子は良い子なんだ、誤解しないでな。では、後でな」


「はい…」

(タクマが優しくて良い人なのは分かってるわ。ポッチとか、ポロンとか…自分の失態に顔から火が出そうよ。それに、大声なんてあげて、令嬢として失格だわ)


父さんが出て行き、シーンっと静まり返った部屋の中では、チクタクと秒を刻む音だけが響いていた。

先に声を出したのは俺、「ジュリーごめん」と謝った。

「わたくしも思わず叫んだりと、たくさん粗相してしまいましたわ。謝罪致しますわ」と、ジュリーも謝った。


カーテンの隙間から、ひょっこりと顔を出した真っ赤なジュリーが可愛くて、思わず近寄って抱きしめてしまった。カーテンごとだけど。


戸惑ってるジュリーに、「無神経だった。ゴメンな」と囁いたら、「いえ、あの。わたくしこそお見苦しい物を…」

最後まで言わさず、被せるように「そんな事ない!」と全力否定。「寧ろ素晴らしい物を有難うと言いたい!」

食い気味に叫んだら、「ふふふ。肌を晒したわたくし達はお互い様ですわね」と苦笑した。

「はは!そうだな」と顔を見合わせ笑いあった。

その後、「脱ぐからそっち向いてて」と注意をし着替えた。

黒の細身パンツと黒のロンT、白いペイズリー柄のカジュアルジャケットは最近のお気に入り。

着替えながら、(あのジーンズに、俺のトレーナーと革ジャン擬き、キャップ被せたら良い感じかも)と思案し、ジュリーに「これ着て」と渡した。

上着とキャップを見て、「不思議な形ね」と呟きながら着替え、姿見の前に立たせたら、「あら、素敵だわ」とその場でクルクル回り喜んでいた。

納得した所で下に降り、リビングでテレビを見ていた父さんに声を掛けた。
その時の父さんの顔が憂いを帯びていて気になったが、俺の声に反応し振り向いた時には、何時もの顔に戻っていた。


(こりゃ相当な事があったな)と思いながらも敢えて聞かず、(夜に聞こう)と頭の隅に追いやった。

「お!ジュリちゃん可愛いな」と褒められたジュリーは「まぁ!お褒め頂き光栄ですわ。お父さんも素敵ですわよ」と返していた。

「ははは」「ふふふ」と笑い合ってる2人に、「早く行こう」と玄関へ促し、それぞれ靴を履いて、框からガレージへと入り、父さんの愛車2台のうちの一つ、『ハマーH2』に乗り込んだ。

前に乗りたい!と目線で訴えられたので、ジュリーを助手席へ乗せ、俺は後部座席へ。シャッターの開閉ボタンを押し、開いた先は銀世界!

まぁ、住宅地だから周りは家だらけなんだけどな。

それでも、ジュリーには初めて見る世界だ。「凄いわ!あれは何かしら!」と、ずっと興奮している。

昨夜はフードを目深に被せてたし、周りは闇だったから風景なんて見えなかったしな。

父さんが運転しながら質問に答えている。ニッコニコだ。ジュリーが可愛くて仕方ないんだろうな。

そんな事を思いながら窓の外を見ていたら、スマホが鳴った。充希だ。「あ、今日来るって言ってたな」


拓磨「おう。はよー」  

充希(モーニン。ん?なんか騒がしくね?)

拓磨「あー、車に乗ってるんよ。父さんの」

充希(親父さん!!拓ちゃん、えがっだなぁ)

拓磨(やっぱ言った)「くくっ。そうだな。で、今から買い物行くからさ、美奈ちゃんにゴメンって言っといて」

充希(え、ハブ?大親友の僕をハブミちゃんにすんの?)

拓磨「何だハブミって。お前行きたいの?美奈も?」

充希(……「行く!」って言ってます。僕も行く!なぁ、ハマーH2?ジャガーF?どっち?)

拓磨「冬にジャガーは事故るわ。ハマーだ。ちょっと父さんに聞くから待ってろよ」


会話を聞いてたらしい父さんがOK出し、迎えに行く事になった。来た道を戻り充希家へ。

「着替えて待ってろ」と通話を切り、着くまでアプリゲーム『モンつむ』をする事にした。

落ちてくるゴブリンや一角兎、ワイバーンを揃えながら、ふと思った。(車の音凄いのに良く聞こえたな)と。あと、(相手が充希だとなぜ分かった)と。

それを聞いたら、「音は大学で慣れてるからだろうな。相手が分かったのは、拓磨の友達は充希君しか知らないからだな」と言われた。

拓磨「そですか。ま、充希しか友達いねぇわ俺」

そういえばジュリーの声が聞こえないなぁと、覗き込んでみたら、ダッシュボードに埋め込んである『ポータブルテレビ』に釘付けだった。

流れてるのは、ユーツブで見た事ある、3Dアイドルの歌と踊りだった。手と足を動かし真似してる。
曲が終わると「お父さんもう一回」と強請って、今度は口ずさんで踊り出した。

父さんが「ジュリちゃん相当気に入ったんだね。将来はアイドルかな?」と聞いたら、

「将来ですか…この国にずっと居られたら、タクマのお嫁さんになるわ」と、衝撃発言をした。

拓磨&父「「…………」」

拓磨「はぁぁあ?」

父「えぇぇえ?」

一拍置いたあと広い車内には、エンジンの重低音を掻き消すような、俺と父さんの声が大音量で響き渡った。

父さんが顎を摩りながら、「ふむ…」となんだか思考してるけど、俺の頭の中は嵐だった。(なぜ、どうして、どこで、なぜ)と、完全にパニックに陥っていた。

混乱している俺を乗せたハマーが、住宅密集地に迷惑な音を響かせながら、充希の家の前に到着した。

乗り込んで来た充希と美奈に気付かす呆けていたら、耳元で「拓磨!!」と叫ばれ、漸く我に返った。


美奈「おはようタッくん。タッくんパパ今日は宜しくお願いしまーす!」


父「お!元気だな。おはよう。美奈ちゃんだったかな?今、5年生くらいかな?」


美奈「そうだよ!4月に6年生になるんだ!ねぇ、ねぇ、タクパパのお隣にいるのが『お姫様』?」


「あら、わたくしかしら?『お姫様』ではなくてよ。初めまして小さな妖精ちゃん。わたくしはジュリエッタと言いますの。どうぞ良しなに」


美奈「ふわぁぁ。妖精ちゃんって美奈の事?ジュリお姉さんは天使みたいに綺麗ね!」


父「妖精と天使か。こりゃ気を付けて運転せねばな。ははは」


のほほん3人組は、合流してからワイワイと騒いでる。オッサンと美女と少女。絵面が凄いが仲良しだな。

一方、テンションの高低差が激しい男2名は、後部座席のレバーを動かし、椅子ごと後ろに下がった所でコソコソと話してた。


充希(拓磨どしたの?凄ぇテンション低くない?)

拓磨(……あのな、何から話して良いか分からん)

充希(何よ何よ。惚れちゃった?ヤッちゃった?)

拓磨(違ぇよ!いや、あー。手は出してない。(キスはしちゃったけど…)ボソッ)

充希(あんだって?)

拓磨(いや?手は出してねぇって言ったんだよ)

充希(ふ~ん。なら惚れちったか。あんな美少女だしな)

拓磨(顔は確かに可愛いが、行動がツボるんだよ)

充希(無意識に煽っちゃう系かぁ。異世界帰っちゃったらどーすんの?)

拓磨(てかさ、父さんに言われたんだけど、俺アイツに惚れてるのか?『気付いたら落ちてる』とか意味不じゃね)

充希(感覚で感じるって?それ系は僕にも分かんないなぁ。可愛い女の子は皆好きだし。
『ビビっとくる』って言われても、可愛い子見たら『ビビっ』とくるもん)

拓磨(……だから充希って女子にモテないんじゃね?寄ってくんのチンコ目当てばっかだろ。粗チンなのに)

充希(っかー!出た!発射しないマグナム自慢ですかぁ?新品のピンクマグナムのくせに!
僕のは中古の松茸色だもんね!「顔に似合わな~い」って言われっからね!)

拓磨(新品だがピンクじゃねぇ!最高級の松茸だわ!色も大きさもな!お前のはシメジだろ?
てか、『中古の松茸』ってエグくね?ぷッ!顔に似合ってる充希のシメジこんにちわ~)

充希(うっわチンコに話し掛けてる変態がいる!アングル的にフェラ体勢だかんね!)

拓磨(はぁ?そう見えて、そう思ってるお前が変態だわ!)


拓磨の悩み相談をしていたのに、いつの間にか下らない下ネタの応酬になっていき、遂には、

「ビック松茸見せろや」「シメジ見せろや」と、見せ合いになり、ウエストの隙間から覗き、「デカ」「ちっさ」と感想を言い合っていた。

拓磨「充希パイパンじゃね?剃ってんの?」

充希「薄いの!チョロ毛生えてっから。しかもさ、女の子に評判良いの。チクチクしなくて良いって」

拓磨「そうなん?あー、ケツに当たる時とか?」

充希「そうそう。足の付け根とかさ。肌弱い子だと毛でカブれんだわ」

拓磨「毛でカブれんの?それ病気持ちじゃね?」

充希「あーなる。シラミとか?うっわ、想像したらキチーな」

拓磨「お前ちゃんと検査してんの?」

充希「いっやぁ、拓磨ちゃん。僕が病気持ちだとでも?」

拓磨「だって不特定多数とか、移ってそうじゃん」

充希「やめてよねぇ。僕のちん子ちゃんは清潔で健康ですぅ」


喧嘩しても仲が良い。この幼馴染2人の下らないトークは止まらない。
小声が普通の声量になり続いた会話は、目的地に着くまで終わらなかった。

拓磨達の近くに座ってた美奈は、聞こえてくる会話に「男ってホント馬鹿だよねぇ。てか兄達キモっ」と、顔を顰めて首を振っていた。

目的地に着き、店をブラブラ歩いてる間ずっと、充希は美奈に拒否され続けていた。

充希「美奈ぁ~」

美奈「うっさいバカ兄!行こジュリお姉ちゃん」

「あらあら。ふふ、行きましょうかミナちゃん」

充希「あぁぁ…僕の天使がぁぁ…」

父「はっは!どんまい充希くん」

拓磨「充希アホだな。って、だぁあ!俺に抱き着くな!」

充希「拓磨までぇ…酷いよぉ…」


騒がしい一行が訪れたのは、巨大ショッピングモール。

異世界からやって来た『無表情令嬢』は、何を見、何を感じるのか。さぁ、ショッピングの始まりだ。
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