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side1 ジュリエッタが消えた世界

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クラウン王国の王都にある『クラウン魔法学院』では、その日、『生徒会が主体となって開催する決まり』のある『学園祭』が催されていた。

この『学園祭』は、国を興した勇者、『セイイチ・ナラ・クラウン』が、学院設立の際に決めたイベントである。

日本の『学園祭』とは違い、生徒の模擬店等は無いが、魔法剣の模擬戦、騎馬で弓を射る競技『流鏑馬』、剣舞、各クラスで魔法を使ったアートを披露したりする。

そして、そんな『学園祭』のメインイベントが、「ダンスパーティ」である。

婚約者がいる女性は男性がエスコートして参加、いない人は友人同士で参加する。

女子はマントを脱ぎドレスアップし、男子はタキシード等で普段より豪華な衣装に着替える。
そして、学園が用意した食事を食べたり、軽快なリズムのダンスを踊る。

そんなワイワイとした楽しいイベントが『学園祭』である。

そんな楽しい催し物の真っ最中に、クラウン王国の第一王子、『アルファード殿下』を中心としたグループ、
『セドリック侯爵令息』『フィガロ騎士団子息』と『マジェスタ魔法師団長子息』と、そのグループの姫『アイリス公爵令嬢』が、断罪劇を始めた。

断罪相手は『氷の令嬢、ジュリエッタ公爵令嬢』だ。王子の姫として有名な、アイリス嬢の妹である。

「暴力振るった」だの、「意地悪をした」だのと壇上で吠えているが、ホールにいる誰一人として本気にしていなかった。

『氷の令嬢』は、常に本を読んでる大人しい令嬢で、無表情が怖いけど、結構優しいのだ。
平民だ、下級貴族だと蔑んだりせず、困っている人がいれば手を差し出してくれるような優しい令嬢だった。

そんな人が、傲慢の塊アイリス嬢を苛めるなど絶対に有り得ないと、他生徒は思っていた。

王子に捕縛を命令された護衛も、『有り得ない』と思っていた。だが、王家に忠誠を違う騎士は、王族の命令は絶対なのだ。
だから、どんなに理不尽だとしても、捕縛せざるを得なかった。

ロープで手首を縛り、学園を出て、馬車で王城にある牢へと向かってる最中も、騎士はジュリエッタの様子を気にしていた。

塔に到着し牢に入れる際、騎士はジュリエッタに声を掛けた。「申し訳ございません。こちらに入ってて下さい。
今、別の者が公爵様に事態の報告に行ってます。執行日までお待ち頂ければと思います」

中に入ったジュリエッタは、それまで一言も喋らず、笑わず、怒りもせず居たが、牢の扉がガシャンと閉まった瞬間、「あらら…」と一言呟いた。

それが、世界から消える前に最後に発した言葉だった。その声は誰に聞かれること無く、闇の中で静かに木霊した。



その頃、断罪劇が終わったパーティ会場では、壇上でアルファード王子が、側近である、セドリック、フィガロ、マジェスタ達に責められていた。

彼らは知らなかったのだ。このような寸劇がある事も、アイリスと婚約する事も。

側近3人は、アイリスとアルファードが異母兄妹だという事を知っていた。
常々、「距離が近いな」とは思っていたが、それは異母兄妹だからだと思っていた。
姫扱いしていたのは、本当に姫だからだ。『王子の腹違いの妹』だから、『姫』として扱っていた。

なのに、本当に愛し合ってて、腹違いとはいえ兄妹で婚約やら結婚やらの話が出るとは思ってなかったのだ。

それに、『氷の令嬢ジュリエッタ』が、陰険な虐めやらをしていたとは思えなかった。

学園では常に2人は一緒に居たし、帰りは「あんたの家って王城だっけ?」って疑問に思うくらい城に帰ってた。
しかも、部屋まで用意して貰ってて、専属侍女だっているのだ。
完全な姫扱い。「一国の一姫」だと、言われても頷ける対応だった。

そんなだから、「ジュリエッタが暴力や虐め」と宣ったのが信じられなかった。

しかも、「暴力や虐め」をしていたのはアイリスだった。平民や下級貴族を影でコソコソと甚振っていたのだ。
それをさり気なく救っていたのがジュリエッタだった。だから、壇上でアイリスの肩を抱き、見当違いな罪状で非難していたアルファード王子に苦言を呈していた。

「そんな訳ない」「違う」と。「ジュリエッタ様はそのような方ではありません」と。

その度に、「いや、でも……」「アイリスが……」と、盲目的にアイリスを信じるアルファードに、側近3人は呆れ返り、王子を誑かして騙した醜女アイリスを睨み付け、


「あなた達2人、どうなっても知りませんよ。私は父に今日の事を伝え、側近を外して頂きます」と、セドリック。


「殿下が目を覚まさないなら、私も本日限りで側近を辞めさせて頂きます」と、フィガロ。


「僕も父上に報告して側近辞めますね」と、マジェスタ。


信頼していた3人が、それぞれ宣言し、王子の前から去って行った。

その光景を目の当たりにしたアルファード王子は、「ウソだろ…」と呟き、「私は何かを間違ったのか?」と、幼馴染の3人が去って行くのを、唖然としたまま見送った。

アイリスは、側近3人が喋ってる間、ずっと彼らを鬼の形相で睨み付けていた。


(余計な事を言うな)(バレたらどうすんのよ)(私達を引き離そうったってムダよ)と、心の中で悪態を吐きながら。


そして、3人が去って行く姿をニヤッとしながら見送り、(邪魔者がやっと消えたわ)と、呆然と佇むアルファード王子の腕に自分の腕を絡め、


「アルファード様ぁ。やっと意地悪なジュリエッタが居なくなってぇ、これでアイリスは安心出来ますわぁ」


と、ギュッと自分の身体を押し付けて、猫なで声を出して甘えた。が、バッ!と王子は絡められた腕を外し、アイリスから距離を取った。

何故かその時、何時もなら可愛く聞こえる猫なで声が悍ましく感じ、(この女は危険だ)と瞬間的に防御魔法で全身をガードした。

その行動に吃驚したアイリスは、「どうなさったのですぅ?身体を離されてしまって、アイリスは悲しゅうございますぅ」と、顔を覆って「およよよ」と泣き真似をした。

壇上で未だ繰り広げられてる2人の物語。ホールにいる生徒達の間では、様々な話が飛び交っていた。

「なんだアレ。舞台演出?泣き真似下手くそ」

「まだやってるね。余興かな?見て、口元ニヤッとしてる」

「氷の令嬢は大丈夫かな」

「たぶん気にしてないんじゃない?めっちゃ無表情だったし」

「無表情はいつもじゃん。「ふ~ん」って顔して眺めてたよね」

「殿下は今頃になってアイリス姫の異常性に気付いたのか」

「今更?って思う。姫は悪魔だよ。俺、平民だからって理由で、通りすがりに扇子で頬を殴られたんだぞ」

「マジ?ある男爵令嬢なんて、魔法の練習台にされて、顔に大火傷を負ったって言ってたぜ」

「あ、それ知ってる。その子の友達の子爵令嬢が姫に文句言いに行ったんだって」

「子爵令嬢って、市井で行方不明になったっていう子?」

「そう。裏路地で見つかったんだけど、誰かに暴漢されたんだってよ」

「それ指示したの姫じゃない?僕も「〇〇令嬢を犯せ」って命令されたんだ。空き教室に呼び出されて」

「怖っ!もう完全に犯罪者じゃん!高位貴族だからって偉そうにしてて、私あの女大嫌いなのよ!」

「「「「姫を好きなヤツなんて殿下だけ!」」」」


ザワザワとしているパーティ会場。そこに学園長が現れて、閉会宣言をした。


『前代未聞の学園祭となってしまった。楽しみにしていた生徒諸君。学園の長として、お詫び申しあげる。
生徒会を次年度の若者に託し、今期生徒会は今日限りで解散。日を改めてダンスパーティを執り行うものとする。
本日より学園は休学となり、在校生は指示があるまで自宅で待機せよ』


そうして学園始まって以来の、残念な学園祭が幕を閉じ、ホールにいた生徒達は一人、また一人と、会場を後にし、各々が帰途に就いた。

会場に残ったのは、後始末に動いていたアルファードの側近3人と、問題行動をした王子とアイリス。そして学園長と数名の教師。

側近3人は学園長の指示で、王子を国王の元へ連れて行くため声を掛け、馬車まで誘導した。

アイリスは一人残されてしまった。「殿下はわたくしが居ないとダメなんですの。道を開けなさい」と、行く手を阻む教師に命令したが、囲まれて身動きが取れなかった。


学園長「アイリス・メルセデス令嬢。公爵様が迎えに来るまで待機せよ。そのあと王に謁見し、此度の不祥事について沙汰が下される」


「わたくしが何故?不祥事とはなんの事でしょう?
ふん。貴方達、公爵令嬢で、王太子妃になるわたくしに対してこのような仕打ち。沙汰が下るのは自分達ではないの?殿下にお伝えして断頭台に送りましょうか?」


鼻で笑ったアイリスに、教師達は持っていた書類をパラパラ捲り、数々の悪行を述べていった。


教師A「平民だと蔑んで、扇子で滅多打ちした事」

教師B「男爵令嬢に実験と称して魔法攻撃した事」

教師C「破落戸に依頼して子爵令嬢を襲わせた事」

教師A「試験の際に影武者を使った事」

教師B「市井での無銭飲食や、小さな子に対する暴力」


一枚一枚読んでいく度に顔が歪んでいくアイリス。まさか全てバレてるとは思わず、ギリっと奥歯を噛み締めた。

下を向き、震えているアイリスを見遣って、「事の重大さがわかったか?」と伝え、「刑に服し、反省しなさい」と告げた学園長。

教師達にその場を任せ、公爵を迎えるため踵を返したその背に向かってツラツラと言葉を発した。


「わたくしが本心でそのような事をなさったと?わたくしはジュリエッタに脅されていたんですの……やらなければ殺すと……わたくしが殿下の寵愛を得たから嫉妬していたんだわ……幼少期からずっと虐められていましたの……もう、怖くって怖くって……」


「およよよ」と泣き真似をしながら、とんでも発言をするアイリス。彼女は全く反省していなかった。
口から出る言葉は、ジュリエッタが如何に非道かって事だけ、そして自分は被害者だと。

悲劇のヒロインは、メルセデス公爵が迎えに来るまで、一人芝居を続けていた。


一方、メルセデス公爵家の執務室では、ダンスパーティで起こった一部始終の報告を受け、公爵が頭を抱え項垂れ、執事、侍従、セフィーロが憤っていた。


執事「旦那様、頭を抱えてても問題は解決致しません。アイリス様は今まで様々な問題を起こしております。
私は忠告致しましたよ。このままでは取り返しがつかなくなると。本日の出来事は、旦那様が目を瞑って野放しにした結果です」


セフィーロ「父上。だから言ったじゃありませんか、あの女は異常だと!姉様を部屋に閉じ込めたり、毒を盛ったりしていたんですよ!姉様に呪いを掛けたのだって、絶対にあの女だ!ジュリ姉様が虐め?あの女に?そんな根も葉もない嘘で非難され投獄?巫山戯ています!」


公爵「待て、閉じ込めたり、毒だと?しかも呪い?なんのことだセフィーロ。ジュリエッタは呪われてるのか?」


セフィーロ「まさか知らなかったと?ジュリ姉様は呪われてます。『感情封じ』というものです。だから笑ったり怒ったり出来ないのです。教会で司教様に解呪を頼んだのですが「出来ない」と言われてしまいました。
幼い頃に掛けられたもので難しいと。根が深いのだと言われました」


公爵「まさか……まさか、そんな事が……何も知らなかった父を許してくれジュリエッタ……」


執事「そのお話は別の日に致しましょう。旦那様、アイリス様を迎えに行かねばなりません」


侍従「真実は白日の下に晒されます。無実だと証明されればジュリエッタ様は釈放され、アイリス様は悪行の数々で投獄されるでしょう。
公爵様、急いで学園へ向かって下さい。馬車を回しておきます」


意気消沈してしまったメルセデス公爵を、「一人では行かせられない」と、セフィーロが付き添い学園に向かった。

パーティホールには、教師に囲まれ「無実だ」「被害者だ」「悪者はジュリエッタだ」と、悲劇のヒロインよろしくシクシクと泣くアイリスがいた。

「お父様ぁ。皆さん酷いんですのぉ」と走り寄って来た醜女をセフィーロが制し、護衛に捕縛命令を出し、暴れ狂う女を連れ王城へ向かった。

謁見の場に転がされたアイリス。その目はアルファード王子殿下に向けられ、縋るように見詰めていた。
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