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 その後も出来るだけミーヤ公爵令嬢と会わないように避け続けました。
 罪悪感がいっぱい沸きあがってきます。 
 僕に避けられると、ミーヤ公爵令嬢は寂しそうな笑みを浮かべるから。
 でも、ここでめげたらいけないんです。
 命がかかっているんですから。 

 どうしても一緒に出なければいけないパーティーなどは、僕は体調不良を理由にすぐに王宮へ戻るようにしました。
 それでも彼女は、一度も僕を責めません。
 僕が王子だからというのもあるのでしょう。
 けれど体調不良を理由に僕が城に戻ると、次の日には、心のこもったお見舞いの品が彼女から届きます。

 僕が倒れてしまった日に飲んでいた紅茶や、パーティーで僕が彼女の前で口にしたことのある焼き菓子、ふと目を止めた美麗なティーカップ。
 それらによく似たものや、同じものが届きます。
 僕の好みをよく見てくれているんでしょう。
 そして必ず、彼女の直筆で僕を気遣う手紙が添えられています。

 どうして、こんなに思ってもらえてるのに、僕は彼女を避けなくちゃいけないんでしょう。
 
 運命に泣きたくなってきます。
 いっそ前世を思い出さない方がよかったんじゃないでしょうか。
 そうしたら、僕はミーヤ公爵令嬢と運命の日までは幸せに暮らせた気がします。
 ゲームの中のルペストリス王子はなんで浮気なんかしたんでしょうね。
 僕だったら、絶対、ミーヤ公爵令嬢だけを見続けるのに。
 
 ……ん?
 待ってくださいね。
 僕いま、凄い事に気が付きました。

 ミーヤ公爵令嬢が僕を殺す理由って、僕がヒロインと浮気をするからですよね?
 僕、ヒロインのこと好きじゃないんです。
 いえ、ゲームの中のルペストリス王子はヒロインの事が好きだったと思います。
 でも、プレイヤーとしての前世の僕は、婚約者がいる人に四六時中くっついて回って、「そんなつもりなかったんです……」って言い訳するヒロインの姿に全然共感持てなくて。
 僕が男の子だからでしょうか。
 女の子だったら、ヒロインと王子の身分違いの恋にドキドキできたのかな。
 でも僕は前世もいまも男の子ですし。

 ゲームの中でミーヤ公爵令嬢に刺されなくても済む方法は、ヒロインとの愛情値を最大値まで高めることでした。
 愛の力がどうたらで、僕を刺してもナイフが刺さらないとかなんとか。
 ネットで見た情報なので、僕は未体験です。
 結局僕はあんまり乗り気になれなくて、何回かプレイしても刺されて終わっちゃったんですよね。
 いまの僕も、出会う前からヒロインにあまりいいイメージがもてないから、愛情値が最大になるなんてことはなさそうです。
 なので、ヒロインには最初から近づかないという方法も取れるんじゃないでしょうか。

 つまり、僕は、もしかして刺されなくて済んだり、しないかな……?

 ミーヤ公爵令嬢を避けなくちゃって思っていたけれど、ヒロインを避ければいいって考えたら、なんだか気が楽になってきました。
 僕はうきうきと鼻歌を歌いたい気分になりながら、ミーヤ公爵令嬢にお見舞い品のお礼と、今度、一緒にお出かけしましょうって手紙を書きました。
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