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しおりを挟む僕、第六王子ですけれど、僕の上にはほかに9人お姉様がいます。
弟も4人いますし、妹は3人だったでしょうか。
いえ、この間も生まれたので、4人だった気もします。
とにかくいっぱいいて、この国では女性でも王位につけますから、僕の王位継承権はとっても低いです。
公爵家のご令嬢なら、もっと上のお兄様達や、お母さまの身分が高い弟達でもいいのではないでしょうか。
僕のお母さまは伯爵家の出身ですから、その点を考えても公爵家にとってあまりいい婚約相手ではないと思うのですけれど。
「ルペストリス王子は……紅茶がお好きなのですね……」
ミーヤ公爵令嬢が、控えめに微笑みます。
駄目です、そんな優しげな、綺麗な笑顔を僕に見せては。
どきどき、してしまうじゃないですか。
彼女の綺麗な笑顔を見ていると罪悪感も浮かんできて、僕は下に目をそらしました。
瞬間、さっきとは違う意味でドクンッと心臓が跳ねました。
淡いクリーム色のドレス。
それは、乙女ゲームの中で、ミーヤ公爵令嬢が好んで身に付けていた色です。
悪役なのに、黒でも赤でもなく、白に近いクリーム色。
白に近いドレスは、汚れが目立ちます。
例えば、もしも怪我をしたなら、その赤い血の色は鮮やかに映えて……。
「王子、失礼いたします。お顔の色がすぐれない様子ですが」
護衛兼専用使用人のディノールが、僕にそっと声をかけてくる。
やばい。
顔に、出ていた?
確かに、痛いぐらいに指先が冷たくなっているのが自分でもわかるけれど。
目の前のミーヤ公爵令嬢は、ゲームの美麗スチルよりもずっとずっと幼い顔立ちです。
青ざめてしまった僕を、心配そうに見つめています。
彼女は僕の2歳年下ですから、いまはまだ8歳です。
将来僕を刺し殺すときは、15歳ぐらい。
ナイフを片手に、血まみれの彼女は微笑むんです。
『貴方だけなの……貴方だけ……これでもう、ずっと、大丈夫……』
悪役なのに、いつも白に近いクリーム色のドレスで、そのイベントの時もそのドレスで。
だから、僕を刺して飛び散った赤い鮮血が、彼女の服を鮮やかに汚して……。
「ルペストリス王子っ!」
ぐるりと僕の視界が暗転する。
ディノ―ルが僕を呼ぶ声と、小さな女の子の悲鳴と、いくつもの息をのむ音。
どこか遠くで何かが倒れる音がして。
僕はそのまま気を失ってしまいました。
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