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迷宮18-3)不思議な夜

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 とりあえず、わたしは迷宮パワーをむむむむむーんとコビットさんに送ってみる。
 迷宮パワーを受け取ったコビットさん、背筋ぴーんで、さっきよりもずっと元気になった。


『こびっ☆』
「お、迷宮パワーが効いてるな」
『でも、ずっと送っておかないとだめかも。迷宮パワーが流れていく感じがするのです』


 コビットさんに、ずっと迷宮パワーが繋がっている感じなのですよ。
 こう、水道の水をほんの少しだけ出して、細く細く、少しずつ流しているような。
 意識して止めてみると、とたんにコビットさんがくったりと元に戻ったので、慌てて流しなおす。


 うぅん、このままずっと流し続けるには、迷宮パワーが心もとないのですよ。
 この間、一気に温室をぐぐーっと増築して、一気に迷宮パワーを使ってしまったのです。
 
 今まで食べれる物といったら木の実だけだった。
 でもコビットさんが頑張ってくれて、温室の中に家庭菜園的な小さな畑が出来上がっているのです。
 それに、木の実もバリエーションが増えて、赤い木の実だけでなく、ころんと手の平サイズのピンクの木の実もなっている。
 お家を作ったら、ルーくんが住めそうなレベルで食べ物が豊富なの。


『青い夜は、何日も続くのかなぁ?』
「どんどん青みを増して、今夜がピーク。明日からは、青さが薄れていくと思う」
『それじゃあ、辛いのは今日だけだねぇ』


 昨日までは、みんな、なんともなかったと思う。
 だからたぶん、もしも原因が青い月だとしたら、多少月が青くっても、そんなに影響はないはず。
 今夜を乗り切れば、きっとみんな、明日からは元気になれる。
 ……かな?
 なれるといいな。


「じゃあ、みんな疲れている感じだし、今日はもう帰るね」
『ルーくん、せっかく来てくれたのにごめんね』
『こびー……』
「むしろ俺のほうがごめんなさいだよ。迷宮さんは、疲れてても見た目変わらないんだね」
『迷宮だから、もっと疲れたら、壁とか変化するのかなぁ?』
「それ、なんかみてみたい気もするけど、迷宮さんが辛いのは嫌だな」
『きっと、明日になれば治ると思う。昨日までは、本当になんともなかったんだもの』
「そうだといいな。じゃあ、また明日!」
『うん、またですよ』


 わたしは、いつも通りレンガを動かしてルーくんを誘導する。
 最近は軽々と動かせたレンガが、最初の頃みたいにすごく重く感じられて大変だった。


 うーん、本当になんだろう?


 なんとなく、胸元の羅針盤懐中時計を女神像の髪で覆い隠す。
 だって、レンガを動かすのがもっと大変になったら、女神像の髪は動かせない気がするの。
 今も、やっぱり動かしづらかった。


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