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迷宮12-4)贈りもの
しおりを挟む『っ!』
ルーくん以外、全員、振り返った。
「えっ、みんなどうしたの? そっちに何かある?」
ルーくんだけはきょとんとして首をかしげている。
『……気のせい、かな』
『こびこび~☆』
『ぷーにぷに♪』
『こびっ、こびっ』
『みんなも、気のせいだーって言ってるわ』
「急にみんな振り返るから、びくっとしちゃった」
『驚かしてごめんね。あ、ほら、そろそろ日が暮れるでしょう? 帰宅大丈夫かな?』
「そうだね、そろそろ帰らないとお母さんが心配するかも。また明日も遊びに来るね」
『うんうん、急いで帰ってね。もうすぐ、完全に日が落ちちゃうからね』
わたしはルーくんをせっつくように、迷宮のレンガを動かして誘導する。
早くルーくんをここから引き離したかった。
ルーくんの姿が村へ向かって見えなくなると、わたしは意識を集中する。
出口と入り口を塞ぎ、誰も入ってこられないように。
ゴーレムさんも女神像の所に来てくれた。
『みんな、気づいたよね?』
『俺、気ヅイタ。俺、迷宮守ル』
ルーくんには気のせいだって言ったけれど。
でも、気のせいじゃない。
絶対、何かがわたし達を見ていた。
なんだろう。
誰だろう。
人ではないと思う。
悪意の塊みたいな、とても嫌な気配がしたのです。
だから、ルーくんを急いで返したのだけれど……。
わたしは、意識を迷宮の上のほうへ持っていく。
意識を強く集中しながら、迷宮の周囲を、草原を、じっと見回す。
『こびー……』
『コビットさんにも見えないのね。じゃあ、見つけられないかな』
コビットさんは、感覚がわたしよりも鋭い。
迷宮に近づく人々に最初に気づけるのは、いつだってコビットさんだ。
そのコビットさんで駄目なら、わたしじゃ見つけられないと思う。
わたし達が見つめる中で、太陽はゆっくりと草原の向こうの山間に消えてゆき、オレンジ色の空は紫から藍色へとグラデーションを描いてゆく。
そのまま空が全て深い藍色に染まるまで、ずっと迷宮の周囲に意識を凝らしていたけれど、何も捕らえることは出来なかった。
あきらめて、意識を女神像の中に戻す。
……何事もなければよいのだけれど。
ルーくんがくれた羅針盤懐中時計を見つめ、わたしは溜息をついた。
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