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迷宮3-1)冒険者さんいらっしゃい!

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「宝箱はっけーん♪」
「敵もいないのねぇ、ここ~」

 冒険者らしきカップル二人組みが、最奥の間の宝箱を発見した。
 最奥って言っても四部屋しかないんだけどね。

 二人とも剣士系かな。
 男女ともに駆け出しの冒険者感がある。
 でも緊張していないのは、わたしの迷宮が小さいからかな。
 冒険者の敵っぽいモンスターとか、絶対いなさそうだよね。



 迷宮に生まれ変わってから、早数日。
 混乱していたのも最初だけで、わたしはさくっと現状に馴染んでしまいました。

 だってほら、泣いててもどうにもならなかったし。
 ほんとに一杯泣いたんだけどね?

 スマホなんかみながら歩かなきゃ良かったなとか。
 きっと死んじゃったんだな、とか。
 弟もお母さんもお父さんも、きっとみんな泣かせちゃっただろうなぁとか。
 
 ここから動けないから、余計一杯考えて、一杯悲しくなって。

 反省も後悔もしたけれど、現実はひとつだけ。
 迷宮になってしまったというこの事実。 

 だったら、楽しい事を考えたいでしょう?
 地下迷宮じゃなくてよかったなーとか。

 地下ってこう、イメージ的に薄暗くてじめじめしているでしょう?
 ちょっと怖い虫とか、ぞろぞろいそう。
 むしろ魔物の巣窟みたいな。

 それに引き換え、わたしの迷宮はいい。

 屋外なのだ。
 広々とした草原にぽつーんとあるのよ。

 意識を迷宮の上のほうに持っていくことが出来るんだけど、そこから見渡したら、一面野原だったの。
 少し離れた所に村があるけれど、それ以外はほんと何もなくて見晴らしがいい。
 時間と共に映りゆく空の色は鮮やかで、いつまでも見ていたくなるぐらい綺麗だったしね。

 屋外とはいえ虫の一匹や二匹いそうだけど、いまのところ迷宮の中には一匹も出てこない。
 わたしが虫を苦手なせいかな?
 多足形の虫はもちろんだけど、恐怖の黒い悪魔、その名もG様が出現したら、わたしは錯乱する自信があるよ。

 だってこの迷宮、わたし自身だからね。

 想像してみて?
 自分の身体の中を、ムカデやら黒い悪魔が這いずり回るのを!

 しかもわたしは迷宮そのものだから、迷宮を置いて逃げ出す事もできないんだよ。

 ね?
 無理でしょ怖いでしょ。

 あ、ちょっとほんとに想像しちゃった吐きそう。
 迷宮だから吐けないけどね。


 おっと、また冒険者達がきた。
 きっちり、迷宮としてお迎えしますよ~。
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