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嫉妬の章
第22話 嫉妬の権化
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「な、なんだと…」
「へへ、残念だけどお前のお仲間は全員倒してやったぜ?後はお前だけだ、嫉妬帝!」
「どいつもこいつも使えない愚図どもめ…この数ごときを倒せない間抜けしかいないのか!」
「愚痴を聞きに来たんじゃないんでな、そろそろ終幕と行こうか」
「クソォッ!イージス、俺を守れ!!」
「それの弱点は把握済みだ…旦那、サミエム!3方向から同時に攻撃する、俺に続け!」
「はい!!ソウルブレイク!」
「エンチャントファイア…炎月切り!!」
「エンチャントウィンド…風烈斬!」
同時に放った僕たちの攻撃にたじろぐカトルを見てこの盾の弱点を知った。弱点は一方向からの攻撃にしか対応が出来ないことだ。当たり前かもしれないが、全方位に構えられる盾なんて存在しない。絶対的な防御でもどこかしら穴はある。それを証明するかのようにサミエムとヘリオの攻撃は見事に奴の身体を引き裂いた。悲鳴をあげながら爆炎に包まれたカトルは床に倒れ込む。
「やった…」
「死んでたまるか!!」
「うわっ、なんだ…何をするつもりだ!」
燃え上がる炎とは違う光が周囲を包み込む。しかし、イージスの突破口もこっちは分かっている。何をしようと無駄なあがきだ…そのはずだ!僕はそんな希望的観測しか思い浮かべなかった。それはずっと戦っていて奴の厄介さをうんざりするほど見せつけられたからかもしれない。考えていることとは裏腹に構えを一向に解こうとはしなかった。しかし、それは杞憂に終わった。カトルの姿がなかったのだ。
「逃げられた…」
「…不味いな」
「ははは、ヘリオのおっさんよぉ!あと一歩なんだからそんなに不味くはないだろ?」
サミエムはふざけて笑っていたが、ヘリオは不気味なくらいに黙り込んでいる。普段ならおっさんではなく、師匠だ!それと安心するのはまだ早い…とか言って気を引き締めさす所なのに何も言わない。考え事をしているのか、それともこれから起きることが気になるのか…嫉妬帝の消えた行方について心当たりはありそうな雰囲気だ。そんな感情の色だと感じた。黙り込んだヘリオを見て、サミエムが少し心配そうに顔色をうかがいだしたその時だった。突如強い揺れを感じた。
「な、なんだ?!地震か?!」
「…悪い予感が的中したようだ、外へ出るぞ!」
これは一昔前の話。とある山に9つの魔法系統を持つ化け狐がいた。本来魔物は1つの系統しか魔法が使えず、その代わりにとてつもない魔力や強靭な肉体を持っているのだが…その狐は違った。基本系統の炎や風、雷だけではなく、幻術などの上位魔法まで使いこなしてしまう。その上凶暴で狡猾、おまけに獣の魔力の源であるしっぽを9本も持っている。美しくも残酷な金色の狐はいつしか畏怖され、信仰されたが、大層強い旅の者に打ち取られた……という昔話をクラウソラスの蔵書置き場で見かけた気がする。なんか聞いたことあるようなやったことがあるような話だなと感じた…
「お、おい!あの屋根にいる化け物…あれって」
「あぁ、金信仰の開祖…ガルデ山の九尾さまだろう」
「それって迷信だろ!だって、あれは…」
「なんだ、お前が狩ったあの熊…金色熊だっけ?あれも元をたどれば奴の眷属だぞ」
「マジかよ…」
「まぁ神話級の化け物もいるくらいだし」
「それもそうだな、よし!いっちょ昔話のヒーローになってやるか!」
「待って待って!」
「なんだよ、灰崎」
「別にあれが嫉妬帝自身とは限らないじゃないか!」
「確かに…」
「旦那、あれは間違いなく奴だ」
「え?」
「帝王にはアーティファクトと同化する能力がある、その時に魔獣の姿になるのは知っているだろ?」
「…記憶にあります」
彼に諭されなくても頭では理解していた。しかし、目の前の現実から目をそらしたかった…僕たちの戦いはまだまだこれからだということから…
「へへ、残念だけどお前のお仲間は全員倒してやったぜ?後はお前だけだ、嫉妬帝!」
「どいつもこいつも使えない愚図どもめ…この数ごときを倒せない間抜けしかいないのか!」
「愚痴を聞きに来たんじゃないんでな、そろそろ終幕と行こうか」
「クソォッ!イージス、俺を守れ!!」
「それの弱点は把握済みだ…旦那、サミエム!3方向から同時に攻撃する、俺に続け!」
「はい!!ソウルブレイク!」
「エンチャントファイア…炎月切り!!」
「エンチャントウィンド…風烈斬!」
同時に放った僕たちの攻撃にたじろぐカトルを見てこの盾の弱点を知った。弱点は一方向からの攻撃にしか対応が出来ないことだ。当たり前かもしれないが、全方位に構えられる盾なんて存在しない。絶対的な防御でもどこかしら穴はある。それを証明するかのようにサミエムとヘリオの攻撃は見事に奴の身体を引き裂いた。悲鳴をあげながら爆炎に包まれたカトルは床に倒れ込む。
「やった…」
「死んでたまるか!!」
「うわっ、なんだ…何をするつもりだ!」
燃え上がる炎とは違う光が周囲を包み込む。しかし、イージスの突破口もこっちは分かっている。何をしようと無駄なあがきだ…そのはずだ!僕はそんな希望的観測しか思い浮かべなかった。それはずっと戦っていて奴の厄介さをうんざりするほど見せつけられたからかもしれない。考えていることとは裏腹に構えを一向に解こうとはしなかった。しかし、それは杞憂に終わった。カトルの姿がなかったのだ。
「逃げられた…」
「…不味いな」
「ははは、ヘリオのおっさんよぉ!あと一歩なんだからそんなに不味くはないだろ?」
サミエムはふざけて笑っていたが、ヘリオは不気味なくらいに黙り込んでいる。普段ならおっさんではなく、師匠だ!それと安心するのはまだ早い…とか言って気を引き締めさす所なのに何も言わない。考え事をしているのか、それともこれから起きることが気になるのか…嫉妬帝の消えた行方について心当たりはありそうな雰囲気だ。そんな感情の色だと感じた。黙り込んだヘリオを見て、サミエムが少し心配そうに顔色をうかがいだしたその時だった。突如強い揺れを感じた。
「な、なんだ?!地震か?!」
「…悪い予感が的中したようだ、外へ出るぞ!」
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「お、おい!あの屋根にいる化け物…あれって」
「あぁ、金信仰の開祖…ガルデ山の九尾さまだろう」
「それって迷信だろ!だって、あれは…」
「なんだ、お前が狩ったあの熊…金色熊だっけ?あれも元をたどれば奴の眷属だぞ」
「マジかよ…」
「まぁ神話級の化け物もいるくらいだし」
「それもそうだな、よし!いっちょ昔話のヒーローになってやるか!」
「待って待って!」
「なんだよ、灰崎」
「別にあれが嫉妬帝自身とは限らないじゃないか!」
「確かに…」
「旦那、あれは間違いなく奴だ」
「え?」
「帝王にはアーティファクトと同化する能力がある、その時に魔獣の姿になるのは知っているだろ?」
「…記憶にあります」
彼に諭されなくても頭では理解していた。しかし、目の前の現実から目をそらしたかった…僕たちの戦いはまだまだこれからだということから…
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