上 下
23 / 28

業火の襲来者

しおりを挟む
 訓練の疲れも抜けきっていない中、俺は司令室へと向かった。
「失礼します、7号です」

「7号か?悪いが、緊急事態発生だ」

「何が起きたのですか?」

「第1席次だ‥‥ゴールドに動きがあったと報告があった!こちらに向かっているらしい」

「それは‥‥いつの報告なのですか?」

「先ほどだが‥‥諜報部員の状況の悪化によって報告が遅れていたらしい‥‥ゴールドが出立したのは、昨日だ」

「つまり‥‥もうここに来ていてもおかしくはない‥‥ということですね?」

「ああ‥‥報告を受けてから周囲の警戒態勢を最大限まで引き上げたが‥‥」
 司令官の話を遮るように、基地自体が揺れる。まさか、ゴールドが攻めてきたのか?そう思い、俺は、基地外へと飛び出した。



 急いで出た外の風景は、まさに惨状と言える状況だった。
見張りに出ていた兵士やロボット、ドローンの残骸がそこら中に転がり、町には火の手が回っていた。俺は周りを見渡し、敵を探す‥‥炎の中に何かを見つけた。あれはロボットか?炎に紛れるような橙色の機体に、大きな両手剣を構え、建物を薙ぎ払いながら、こちらに向かってくる。
「ようやく見つけたぞ‥‥全く慣れない町はこれだから嫌なんだ」

「貴様が‥‥ゴールドか?」

「そうだが‥‥そういうお前は、俺たちを殺しまわっているっていう例のロボットだな?」

「ああ‥‥しかし、そちらから攻めてくるとはな‥‥」

「うん?潰せるものはさっさと潰すべきだろう?」

「全く同感だ‥‥わざわざ殺しに行く手間が省けた」

「なんだ?他の国落としを倒しているから図に乗っているのか?悪いが、俺は、あいつらとは数段上のレベルだ‥‥後悔するなよ?」

「レーヴァテインよ‥‥力を開放せよ」
 そう言うと、奴は大剣を構えた。すると、武器がどんどん光り輝いていく。あれは‥‥まさか、リアトリスの時の‥‥だとすれば、不味いな‥‥
 そんなことを考えていると、奴が剣を振るった。その軌跡をなぞるように、炎が向かってきた。意表を突かれたような攻撃に驚きながらも、辛うじて避けた。魔法じゃないんだからおかしいだろ‥‥
 息をつく暇もなく、奴はこちらへ突進してきた。



 奴が懐に入ってくると、大剣を振るった。その一刀を避け、俺も銃剣を構える。熱い‥‥剣自体の温度が高いのか‥‥?そんな俺に二刀目が襲う。銃剣で止めるが、止めた剣が熱い‥‥よく見れば、赤熱した刀身となり、今にも押し切られそうになっていた。すかさず銃を放ちながら、距離を取る。銃弾は惜しくも外れたが、奴の攻撃をいなすことが出来た。
 あの剣を受け止めるのは危険だな‥‥何か対抗策は‥‥ダメだ、何も思いつかないな。
「その剣‥‥魔法武器か何かなのか?」

「うん?ああ、そうだが‥‥お前に教えてやる義理はない!」
 そう言い終えると、奴は再び向かってくる。見え見えの時間稼ぎだったか‥‥しかし、炎速度は遅い。遠距離ならこちらが優勢だろう‥‥!
 そう考えた俺は、銃を連射する。逃げ場のない攻撃に奴は、突進を止め、大剣を振るう。銃弾をすべてのみ込むような大きな炎が出て、防がれてしまった。だが、こちらの狙い通り遠距離戦に持ち込めそうだ‥‥!
すかさず俺は追撃をしたが、奴の剣でいなされる。

「ふっ‥‥遠距離なら分が良いと踏んだか、確かに観察眼と経験は良いものを持っている‥‥だが、甘い!」

 そう言い終えると、奴は突くように構えた。すると、剣先に炎の球体が形成されていく。それを突き出すように放つ。今までの、どの炎の速度よりも早く、鋭く飛んできた。それを紙一重で身をひねるように躱した。
 俺が体勢を整え、奴の方向に向き直ると、先ほどの球体が幾つも浮かんでいた。不味いな‥‥そう思う俺に、容赦なく火球が襲い掛かる。銃弾で相殺したが、これでは弾数に限りがあるこちらが不利になる。
 俺は、最後の火球を躱しながら、ゴールドの懐へ潜り込んだ。



 間合いを詰めるのに成功すると、銃剣で奴を切りつける。しかし、奴の剣で止められた。俺は、すぐ手を引きながら、銃を撃つ。軽く躱されたが、回避先に銃剣を突き刺す。流石の奴も避けきれず、腹に突き刺さる。そのまま深く突き刺そうと押し込むが、それを払いのけるように大剣を振るった。剣を回避したものの、炎が回避できず当たってしまった。
 だが、意外なことにダメージはそれほどなかった。苦し紛れの攻撃だと炎が弱まるのか?だとすれば、このまま押し切る!
 そう考えた俺は、銃剣を振るい続けた。ほとんどは躱されたが、数発は当たり、確実に奴のダメージを追わせることに、成功した。
 攻撃によろめくゴールドにとどめを刺そうと、追い詰める。奴は、先ほどと同じように大剣を振るい追撃を阻止しようとするが、軽く回避した。その後に出てきた炎もダメージがほとんどないため、そのまま突っ込んだ。よし‥‥これで勝ちだ‥‥!
 そう思った俺の顔面に奴の剛腕が、突き刺さる。装甲を粉砕する一撃に俺は吹き飛ばされ、後方へと倒れ込んだ。ただの拳に‥‥何故だ‥‥?

「はぁ‥‥はぁ‥‥解せないという表情だな。無理もない‥‥炎が装甲を蝕んでいたということに気が付くという発想は、あのラクアですら思いつかなかったからな」

「炎が身体を蝕むだと‥‥?」

「ふっ‥‥だが、ダメージをくらいすぎた‥‥次の一刀で決めさせてもらおう」

「レーヴァテインよ‥‥我がすべてを捧げる‥‥!」
 奴の大剣に炎が集まり、どんどん大きくなっていく‥‥!まるで、大きな炎の大剣のようだ‥‥あれをくらえば、ひとたまりもない‥‥!
「この一刀は神すら焼き切る‥‥!町ごと消えて無くなれ!」
雄叫びとともに大剣が振り下ろされる。このままでは‥‥基地が‥‥彩花が危ない‥‥!賭けだが、この一撃をずらすしかない‥‥!
そう考えた俺は、真っ向から炎を受け止める。それまでのどの炎よりも熱いことが、銃剣から伝わってきた。左の銃剣がほぼ溶けかけている。ならば‥‥左手を犠牲にしてこの一刀をいなす!まだ原型を残している銃剣を下げて、左肩を炎に押し付け、切っ先をずらすことに成功した。機体はもうボロボロだったが、最後の力を振り絞り、奴のもとに突進した。
ゴールドの横に身を放り投げるように滑り込ませると、奴に銃剣を切りつける。しかし、大剣で防がれた。熱を感じない‥‥これならば、押し切れる‥‥!銃弾を放ち、奴の体勢を崩すと、俺は、銃剣で奴の頭を切り飛ばした。
力なく垂れ込む目の前の機体を確認すると、俺は、勝利の余韻に浸る間もなく、倒れ込んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

性転換タイムマシーン

廣瀬純一
SF
バグで性転換してしまうタイムマシーンの話

聖女戦士ピュアレディー

ピュア
大衆娯楽
近未来の日本! 汚染物質が突然変異でモンスター化し、人類に襲いかかる事件が多発していた。 そんな敵に立ち向かう為に開発されたピュアスーツ(スリングショット水着とほぼ同じ)を身にまとい、聖水(オシッコ)で戦う美女達がいた! その名を聖女戦士 ピュアレディー‼︎

Apricot's Brethren

七種 智弥
SF
~あらすじ~ 目覚めた時、少年は自分がどこにいるのかわからなかった。周囲は見知らぬ風景で、何の手掛かりもない。記憶喪失に陥り、自分の正体や過去のことを思い出すことができないのだ。 少年は不安と焦りを感じながらも、周囲を探索し始める。いつの間にか迷い込んだ家屋の中で、何か手掛かりを見つけることを期待しながら。 しかし、その最中に家主に発見されてしまう。驚きとパニックに襲われる中、少年は説明しようとするものの、家主は警戒心を抱いている様子だった。 男との腹を割った会話の末、少年は家主に自分の状況を説明する。記憶喪失であり、自分の正体を探しているのだと。家主は悶着の末、少年と行動を共にすることとなる。 そして少年の正体を追求するための冒険へ。彼らは様々な場所を訪れ、人々と出会いながら少年の謎を解き明かしていく。 果たして、少年Xの正体とは何なのか。彼の過去や記憶はどこにあるのか。そして、この見知らぬ世界に迷い込んだ理由とは何なのか。 少年と男の物語は、彼らの運命を変える大きな真実へと続いていく……。

イマジナリーズ

マキシ
SF
『想像力は、全てを可能にする!』  この辺りの銀河は、かつて、ある特殊な能力を持った人々が支配していた。それら人々は、自身の想像力を現実にできる能力を持っていた。彼らは、イマジナリーズ(空想する者)と呼ばれた。

特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第二部 『新たなる敵影』

橋本 直
SF
進歩から取り残された『アナログ』異星人のお馬鹿ライフは続く 遼州人に『法術』と言う能力があることが明らかになった。 だが、そのような大事とは無関係に『特殊な部隊』の面々は、クラゲの出る夏の海に遊びに出かける。 そこに待っているのは…… 新登場キャラ 嵯峨茜(さがあかね)26歳 『駄目人間』の父の生活を管理し、とりあえず社会復帰されている苦労人の金髪美女 愛銃:S&W PC M627リボルバー コアネタギャグ連発のサイキックロボットギャグアクションストーリー。

【完結】最弱テイマーの最強テイム~スライム1匹でどうしろと!?~

成実ミナルるみな
SF
 四鹿(よつしか)跡永賀(あとえか)には、古家(ふるや)実夏(みか)という初恋の人がいた。出会いは幼稚園時代である。家が近所なのもあり、会ってから仲良くなるのにそう時間はかからなかった。実夏の家庭環境は劣悪を極めており、それでも彼女は文句の一つもなく理不尽な両親を尊敬していたが、ある日、実夏の両親は娘には何も言わずに蒸発してしまう。取り残され、茫然自失となっている実夏をどうにかしようと、跡永賀は自分の家へ連れて行くのだった。  それからというもの、跡永賀は実夏と共同生活を送ることになり、彼女は大切な家族の一員となった。  時は流れ、跡永賀と実夏は高校生になっていた。高校生活が始まってすぐの頃、跡永賀には赤山(あかやま)あかりという彼女ができる。  あかりを実夏に紹介した跡永賀は愕然とした。実夏の対応は冷淡で、あろうことかあかりに『跡永賀と別れて』とまで言う始末。祝福はしないまでも、受け入れてくれるとばかり考えていた跡永賀は驚くしか術がなかった。  後に理由を尋ねると、実夏は幼稚園児の頃にした結婚の約束がまだ有効だと思っていたという。当時の彼女の夢である〝すてきなおよめさん〟。それが同級生に両親に捨てられたことを理由に無理だといわれ、それに泣いた彼女を慰めるべく、何の非もない彼女を救うべく、跡永賀は自分が実夏を〝すてきなおよめさん〟にすると約束したのだ。しかし家族になったのを機に、初恋の情は家族愛に染まり、取って代わった。そしていつからか、家族となった少女に恋慕することさえよからぬことと考えていた。  跡永賀がそういった事情を話しても、実夏は諦めなかった。また、あかりも実夏からなんと言われようと、跡永賀と別れようとはしなかった。  そんなとき、跡永賀のもとにあるゲームの情報が入ってきて……!?

処理中です...