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♡ あなたに乗るウェー♡

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 海辺の町の古い一軒家に住んでいる義男は、けたたましい道路工事の音で目を覚ました。昨日、何日も徹夜でした仕事を終えたばかりだと言うのに。

 寝惚け眼で窓を開けると、何やら道路を掘り返している。

「ああ、そう言えば前に水道工事をするとチラシがポストに入ってたっけ。」

 義男はどてらを羽織り、階段を下りて洗面所へ向かった。顔を洗おうと蛇口を捻ると、水が出ない。

「あーそう言えば断水もするって書いてあったような」

 義男はパジャマにどてら、つっかけの姿で外へ出た。

「すいませーん、ご迷惑おかけしています」

 若い女性が義男に声を掛けた。スーツ姿だから、現場監督か何かか?

「いえいえ全然でーす」

 義男は浜へ下り、つっかけのまま海に入り、海水で顔を洗った。

「ふ~~~~」

 しばらく顔を洗っていると、波に揺蕩うみかんが義男の足に当たった。みかんを拾い上げ、暫く見つめた後、剥いてみた。

「あー、食えそうだな」

 義男は一房食べてみた。塩っ辛くて、食えたもんじゃない。

「ぶへっ!プップッ!!」

 海に唾していると、それを見ていた先程の女性がクスクスと笑っているのが目に入った。海に落ちているものを食べているのを見ると引きそうだが、彼女は違った。

「ワイルドなんですね」

「頭が悪いだけですよ」

 義男は海を出ながら言った。

「寒くないんですか?」

「あー、生まれが北国だから、これぐらいなんてことないです」

「え、そうなんですか?どこですか?」

「ノルウェーです」

「ノ、ノルウェー?」

「はい」

「あの、ノルウェーの森の、ノルウェー?」

「はい」

「すごーい!行ってみたーい」

「行く?」

「え?」

「僕に乗るウェ?」

「あなたに乗るウェー」

『パンパンパンパンパンパン!!』

「あっあっあっあっあっ」

『ドクドク!ドクドクドク!!』

 義男は行為が終わると泥の様に眠った。起きたら彼女はいなかった。

 どてらを羽織り、つっかけで外に出る。

 工事は既に終わっていた。
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