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第一章 いざ、竜狩りへ
026 キャンプ
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境界線のある開けた草原から少し森へ寄ったところで、銀色の集団は簡易テントを組み立てていた。ネルビスの指示で、戦士たちが休息できる簡単なキャンプ場が出来上がっていく。
ザックスは薪を集めて来てキャンプ場へ置くと、空を見上げた。
雲ひとつない青空が広がり、よく晴れた天気だった。
日は頭上へ昇り、世界を明るく照らしている。
「いい天気だな。絶好の竜狩り日和だぜ」
ワイバーンが来るのを待つ間に、ザックスはガン・ソードを取り出して魔力莢を装填する。
「ここらへんなら、コイツも問題なく使える、よな?」
試しに、ザックスは魔力弾を空へ向けて一発放った。
小さな光の球はガン・ソードの射出光を離れ、上空へ静かに飛んでいき、消えていった。
「うし、問題なさそうだな」
「あまり、やたらと魔力弾を撃つな」
キャンプの指示を出していたネルビスが、ザックスの元へやって来てしかめっ面を見せる。
「試射だよ。ダークマターの影響範囲を確かめるのも大事だろ?」
「それは必要な事だが、空に向けて撃つのは良くない。ワイバーンに見られたら、魔力弾を使う奴らが居ることを悟られるだろう。そうすれば、奴らは巣から出てこなくなるぞ。小型飛竜種は力が無い分、単体では慎重なふるまいをすることが多い」
ザックスは面白く無さそうに舌打ちすると、おもむろにガン・ソードをホルスターに戻し、再び空を見上げた。
「なあ、奴らは歩いてやって来るってことはあるか?」
「歩けはするが、基本的に空を飛んでくる。わざわざ視界の狭い地面を歩いて来るメリットは殆どない。アホなことを言ってないで、黙って空でも見張っていろ」
「いちいち、うっせぇんだよ、クソチビ」
「貴様が聞いたのだろう。文句を言われる筋合いは無いな」
「一言多いんだって言ってんだよ、てめぇは。口を開けば――」
「旦那ぁー! 火の準備が出来ましたぜぇー!」
ザックスの言葉を遮るようにネルビスを呼ぶ声がし、ネルビスは振り返る。
茶髪の男が、ネルビスへ向けて手を振っていた。
「火の用意が出来たようだ。昼の作戦行動へ向けて、早いうちに食事を済ませておくぞ」
「ってめ、人の話を聞けよコラ」
ネルビスはザックスへ一瞥をくれてやると、「ふんっ」と鼻を鳴らして立ち去る。
「てめぇの鼻は、病気か? ずっとフンスカ鳴らしやがってよぉー?」
ザックスは嫌味を吐きつけるが、ネルビスは無視を決め込んだまま独り歩いて行ってしまった。
「おーい、聞いてますかー?」
腹の虫がおさまらないザックスは、なおも嫌味ったらしく声を投げかけながら、ネルビスの後を追いかけた。
ザックスは薪を集めて来てキャンプ場へ置くと、空を見上げた。
雲ひとつない青空が広がり、よく晴れた天気だった。
日は頭上へ昇り、世界を明るく照らしている。
「いい天気だな。絶好の竜狩り日和だぜ」
ワイバーンが来るのを待つ間に、ザックスはガン・ソードを取り出して魔力莢を装填する。
「ここらへんなら、コイツも問題なく使える、よな?」
試しに、ザックスは魔力弾を空へ向けて一発放った。
小さな光の球はガン・ソードの射出光を離れ、上空へ静かに飛んでいき、消えていった。
「うし、問題なさそうだな」
「あまり、やたらと魔力弾を撃つな」
キャンプの指示を出していたネルビスが、ザックスの元へやって来てしかめっ面を見せる。
「試射だよ。ダークマターの影響範囲を確かめるのも大事だろ?」
「それは必要な事だが、空に向けて撃つのは良くない。ワイバーンに見られたら、魔力弾を使う奴らが居ることを悟られるだろう。そうすれば、奴らは巣から出てこなくなるぞ。小型飛竜種は力が無い分、単体では慎重なふるまいをすることが多い」
ザックスは面白く無さそうに舌打ちすると、おもむろにガン・ソードをホルスターに戻し、再び空を見上げた。
「なあ、奴らは歩いてやって来るってことはあるか?」
「歩けはするが、基本的に空を飛んでくる。わざわざ視界の狭い地面を歩いて来るメリットは殆どない。アホなことを言ってないで、黙って空でも見張っていろ」
「いちいち、うっせぇんだよ、クソチビ」
「貴様が聞いたのだろう。文句を言われる筋合いは無いな」
「一言多いんだって言ってんだよ、てめぇは。口を開けば――」
「旦那ぁー! 火の準備が出来ましたぜぇー!」
ザックスの言葉を遮るようにネルビスを呼ぶ声がし、ネルビスは振り返る。
茶髪の男が、ネルビスへ向けて手を振っていた。
「火の用意が出来たようだ。昼の作戦行動へ向けて、早いうちに食事を済ませておくぞ」
「ってめ、人の話を聞けよコラ」
ネルビスはザックスへ一瞥をくれてやると、「ふんっ」と鼻を鳴らして立ち去る。
「てめぇの鼻は、病気か? ずっとフンスカ鳴らしやがってよぉー?」
ザックスは嫌味を吐きつけるが、ネルビスは無視を決め込んだまま独り歩いて行ってしまった。
「おーい、聞いてますかー?」
腹の虫がおさまらないザックスは、なおも嫌味ったらしく声を投げかけながら、ネルビスの後を追いかけた。
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