いけないですか

雪乃都鳥

文字の大きさ
上 下
19 / 19
第4章

epilogue

しおりを挟む
 実咲はもう遠くを見ない。俺の名前を呼んで、よく泣きよく笑い。胸の中に抱かれれば、幼子のように寝息をたてる。それでもやっぱり夕焼けは好きみたいで。

「実咲はよく飽きないね」

 実咲は笑って言った。

「毎日、変わるんだよこの景色。絵の具が空一面に広がるの。見ていると、泣きたくなったり思いっきり笑いたくなったり」

 へえ、と俺は真似してしゃがんで見上げる。よくみると、淡い青や紫が染み込んでいる。実咲のその小さな肩を見て、抱き寄せて顔を埋めた。甘いシャンプーの香り。

 温かくて、涙がでてしまいそうだった。


end.
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...