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第2章
3,「 地球ロマンティック」
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土手に座って、他愛もない話をしていた。
「ねえ、先輩って」
言いかけて、ためらうと実咲は首を傾げて微笑んだ。「どうしたの?」
どうする、俺。このまま、聞いちゃう?。
実咲が曇った顔をしたらどうすればいいのか。けど、このまま聞かずにいてもメリットなんてない。
「先輩って、実は夕焼け好きでしょ」
実咲は背筋を伸ばした。俺の顔を見上げて固まってしまう。
あーあ、俺やらかしたかも。嫌われたかな。明らかにタブーだったよな、今の。
——だけど実咲は笑った。
「びっくりしたー」
クスクスと口に手を当てる実咲に、俺もびっくりする。初めて見るその実咲に、胸がキュンとなった。
「よく、わかったね」
実咲は俺の頭を撫で、更に両頬をつまんで引っ張る。照れるんだけど。
「陽くんの肌、色白くて綺麗だね」
それは、よく言われている。俺、女に触られるの嫌いなんだけど。悪くないな、これ。先輩、お返し。
実咲の頬をつまんで、ひっぱる。恋人らしくいちゃつけている。それが嬉しくて、俺は笑ってしまう。
ひとしきり、ふざけたあと実咲は言った。
「陽くんといると、楽しい」
「ええ?」
初めて先輩は、今ここにいる俺を見つめた。そうだよ、実咲。実咲は俺だけ見つめてればいいんだ。
「嬉しいなー、ねえ先輩。ハグしてもいい?」
両手を広げて、実咲を待つ。実咲は、遠慮がちに俺の胸に顔を埋めた。頭を撫でると、ひたすら尊いものに感じる。シャンプーのいい香りがして、俺は実咲の小さな肩に顔をのせた。
「可愛い、先輩」
これが、恋人ってやつか。
「先輩」
俺は実咲を体から離して、その目を見据えた。先輩は目線を下に落として驚いた顔をする。
「こ、これ……」
「見つけた?」
その手に握っているのは、チケット。
「今度、デートして?」
笑ってみると、実咲は顔を赤くさせた。そしてチケットをよく見て、瞳を輝かせる。
「これ、私が観たかった映画! 」
上目遣いに俺を見てはしゃいでいるのを見て、ズボンのポケットをさする。スマホがない。痛恨のミスだ。鞄の中を探ろうとしたがそれだと今度は実咲の顔が見れない。
「なんで、わかったの?」
「えー、あ、うん」
俺は、しどろもどろに返答をした。
——実咲のスマホの待ち受け、これなんだよね。「地球ロマンティック」
「ねえ、先輩って」
言いかけて、ためらうと実咲は首を傾げて微笑んだ。「どうしたの?」
どうする、俺。このまま、聞いちゃう?。
実咲が曇った顔をしたらどうすればいいのか。けど、このまま聞かずにいてもメリットなんてない。
「先輩って、実は夕焼け好きでしょ」
実咲は背筋を伸ばした。俺の顔を見上げて固まってしまう。
あーあ、俺やらかしたかも。嫌われたかな。明らかにタブーだったよな、今の。
——だけど実咲は笑った。
「びっくりしたー」
クスクスと口に手を当てる実咲に、俺もびっくりする。初めて見るその実咲に、胸がキュンとなった。
「よく、わかったね」
実咲は俺の頭を撫で、更に両頬をつまんで引っ張る。照れるんだけど。
「陽くんの肌、色白くて綺麗だね」
それは、よく言われている。俺、女に触られるの嫌いなんだけど。悪くないな、これ。先輩、お返し。
実咲の頬をつまんで、ひっぱる。恋人らしくいちゃつけている。それが嬉しくて、俺は笑ってしまう。
ひとしきり、ふざけたあと実咲は言った。
「陽くんといると、楽しい」
「ええ?」
初めて先輩は、今ここにいる俺を見つめた。そうだよ、実咲。実咲は俺だけ見つめてればいいんだ。
「嬉しいなー、ねえ先輩。ハグしてもいい?」
両手を広げて、実咲を待つ。実咲は、遠慮がちに俺の胸に顔を埋めた。頭を撫でると、ひたすら尊いものに感じる。シャンプーのいい香りがして、俺は実咲の小さな肩に顔をのせた。
「可愛い、先輩」
これが、恋人ってやつか。
「先輩」
俺は実咲を体から離して、その目を見据えた。先輩は目線を下に落として驚いた顔をする。
「こ、これ……」
「見つけた?」
その手に握っているのは、チケット。
「今度、デートして?」
笑ってみると、実咲は顔を赤くさせた。そしてチケットをよく見て、瞳を輝かせる。
「これ、私が観たかった映画! 」
上目遣いに俺を見てはしゃいでいるのを見て、ズボンのポケットをさする。スマホがない。痛恨のミスだ。鞄の中を探ろうとしたがそれだと今度は実咲の顔が見れない。
「なんで、わかったの?」
「えー、あ、うん」
俺は、しどろもどろに返答をした。
——実咲のスマホの待ち受け、これなんだよね。「地球ロマンティック」
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