描写集

雪乃都鳥

文字の大きさ
上 下
14 / 25
1月

おばあさんと犬

しおりを挟む
 私は、恋人を待っていた。犬の散歩道でもある道路の真ん中に整備された憩いの場。

 夕方の都会は、寂しくもあり寒くもあり。けれどそれが肥になって、恋焦がれていた。

 一方で私はそわそわもしていた。恋人が待ち遠しいのもあったが、それより勝るのは歩いている老人たちが私に話しかけないかどうかだった。

 話しかけられることの多い私だ。今日もとうとう話しかけられてしまった。おばあさんは隣のベンチに犬を上るように促していた。犬は若さはまだわずか残ってはいたが、すでに老衰しているようだった。
 
 こういうとひどく見えるようだが、きっと運動をさせていたのだろう。おばあさんは、「前は上れたんだけどねぇ」と空を仰いでいた。

 どうやら前に上らせたベンチが高かったようだ。犬は私が座った隣に、体を重たそうにしながらも足を折りたたんだ。

 犬は震えていた。よっぽど寒いのだろう。私は震える柴犬を、ここで初めて見た。

「あれももうじき咲くよ」

 おばあさんは、目をしばつかせながら桜を仰ぎ見た。「そうなんですか?」そう聞くと、当たり前だよと言われた。「そうですよね」そう言うと、おばあさんは笑った。


平成31年1月29日

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

カジュアルセックスチェンジ

フロイライン
恋愛
一流企業に勤める吉岡智は、ふとした事からニューハーフとして生きることとなり、順風満帆だった人生が大幅に狂い出す。

我慢できないっ

滴石雫
大衆娯楽
我慢できないショートなお話

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

処理中です...