40 / 44
第二章 二葉藍子
授業
しおりを挟む
気難しそうな雰囲気の、やや中年太り気味で黒縁眼鏡をかけたこの男性教師は、教卓の後ろに立つとピンと背筋を伸ばし、どこぞの教官のように腕を後ろに組んで朝の点呼を始めていく。
「起立、気をつけ、礼!」
「おはようございまーす!」
クラスのみんなが一斉に挨拶を返し、私も一緒にそれに加わった。
「それでは点呼を始めます。青木……」
「はい」
担任があ行から順番に名前を呼んで生徒一人一人を確認してゆく。
玲子と私も返事をし、やがて三神の番になったが返事が返ることもなく、結局は姿を現さなかった。
やはりあいつは今日も授業をサボったようだ。
こうなるともう二度と来ないのではないだろうか。
「三神は今日も欠席のようだな。まったく、困った奴め……」
呆れた様子でそう呟くと、担任は役割を終えて教室を出ていった。
左前方に座る玲子の方に視線を送ると、こちらを向いて残念そうに首を横に振る。
私は返答に困り、とりあえず首をかしげる仕草をしてそれに答えた。
まったく、玲子ときたら……
次のチャイムが鳴り、世界史のやや若い男性教師が教室へ入るといよいよ授業が始まった。
今日の内容はエジプトの歴史についてである。
古代エジプトといえば、ピラミッドやスフィンクス、そしてなんといっても宇宙人。
遥か以前にあれだけの発展した文明を築き上げ、それらしきものを醸し出す奇妙な人物の壁画などもたくさん残されている。
テレビで放送される超常現象モノの番組は毎回欠かさず観ているほどオカルト好きな自分にとってワクワクするようなテーマだ。
だが今回はあくまでも高校の授業。
「ナイル川下流の大三角州地帯である下エジプトの古代エジプト人が、メソポタミア文明の影響をうけて前五千年頃から農耕文明に……」
そんな好奇心を誘発するものには一切触れられることなく、地味な内容の話が進められてゆく。
教師が『これがテストの答えです』と言わんばかりに強調して発音する部分を中心にノートに書き込んでいくうちに世界史の授業は終盤となり、質問の時間となった。
「それでは、今日の授業で何か質問のある方は手を挙げてください」
質問? 場違いな発言なのは分かっているが、せっかくのこのテーマのチャンス。
どうしても他の人の意見、特に大人の人のものが聞きたいので私の手は我慢ならずに挙がってしまう。
「はい先生! エジプト文明って不思議なことが多いですよね? 宇宙人が関わっていると思いますか?」
その突拍子もない質問に教師の眉毛が思いっきり開き、面食らった表情になった。
あっ、まずい。やっぱり言ってはならなかったか……
「宇宙人!? そ、そうだね……個人的に先生は古代の地球に別の惑星の知的生命体がやって来て、人類に文明を与えた可能性は必ずしも否定できないと思うよ」
意外にも真面目に答えが帰ってきたので何だか嬉しくなってきた。
もっといろいろ聞いてみたい!
「それじゃあ、不老不死って実現可能だと思いますか? ファラオとかってミイラになってそういうのやろうとしていたじゃないですか」
「うーん、さすがにそれは専門外だから先生にはそこまでは分からないけど、もしかすると未来になると何らかの方法で肉体を復活させる方法が見つかるのかもしれないね。それはそう遠い時代の話ではないかもね」
「はい先生、ありがとうございました! すいません変な質問しちゃって……」
「いや、こういった好奇心を持つのは悪いことではないよ。では他に質問ある方は~」
このやり取りに玲子がこちらを向いて『何やってんだか』と言わんばかりに首をかしげるのであった。
それから幾つかの授業を終えると正午のチャイムが鳴り、昼休憩の時間に入った。
「起立、気をつけ、礼!」
「おはようございまーす!」
クラスのみんなが一斉に挨拶を返し、私も一緒にそれに加わった。
「それでは点呼を始めます。青木……」
「はい」
担任があ行から順番に名前を呼んで生徒一人一人を確認してゆく。
玲子と私も返事をし、やがて三神の番になったが返事が返ることもなく、結局は姿を現さなかった。
やはりあいつは今日も授業をサボったようだ。
こうなるともう二度と来ないのではないだろうか。
「三神は今日も欠席のようだな。まったく、困った奴め……」
呆れた様子でそう呟くと、担任は役割を終えて教室を出ていった。
左前方に座る玲子の方に視線を送ると、こちらを向いて残念そうに首を横に振る。
私は返答に困り、とりあえず首をかしげる仕草をしてそれに答えた。
まったく、玲子ときたら……
次のチャイムが鳴り、世界史のやや若い男性教師が教室へ入るといよいよ授業が始まった。
今日の内容はエジプトの歴史についてである。
古代エジプトといえば、ピラミッドやスフィンクス、そしてなんといっても宇宙人。
遥か以前にあれだけの発展した文明を築き上げ、それらしきものを醸し出す奇妙な人物の壁画などもたくさん残されている。
テレビで放送される超常現象モノの番組は毎回欠かさず観ているほどオカルト好きな自分にとってワクワクするようなテーマだ。
だが今回はあくまでも高校の授業。
「ナイル川下流の大三角州地帯である下エジプトの古代エジプト人が、メソポタミア文明の影響をうけて前五千年頃から農耕文明に……」
そんな好奇心を誘発するものには一切触れられることなく、地味な内容の話が進められてゆく。
教師が『これがテストの答えです』と言わんばかりに強調して発音する部分を中心にノートに書き込んでいくうちに世界史の授業は終盤となり、質問の時間となった。
「それでは、今日の授業で何か質問のある方は手を挙げてください」
質問? 場違いな発言なのは分かっているが、せっかくのこのテーマのチャンス。
どうしても他の人の意見、特に大人の人のものが聞きたいので私の手は我慢ならずに挙がってしまう。
「はい先生! エジプト文明って不思議なことが多いですよね? 宇宙人が関わっていると思いますか?」
その突拍子もない質問に教師の眉毛が思いっきり開き、面食らった表情になった。
あっ、まずい。やっぱり言ってはならなかったか……
「宇宙人!? そ、そうだね……個人的に先生は古代の地球に別の惑星の知的生命体がやって来て、人類に文明を与えた可能性は必ずしも否定できないと思うよ」
意外にも真面目に答えが帰ってきたので何だか嬉しくなってきた。
もっといろいろ聞いてみたい!
「それじゃあ、不老不死って実現可能だと思いますか? ファラオとかってミイラになってそういうのやろうとしていたじゃないですか」
「うーん、さすがにそれは専門外だから先生にはそこまでは分からないけど、もしかすると未来になると何らかの方法で肉体を復活させる方法が見つかるのかもしれないね。それはそう遠い時代の話ではないかもね」
「はい先生、ありがとうございました! すいません変な質問しちゃって……」
「いや、こういった好奇心を持つのは悪いことではないよ。では他に質問ある方は~」
このやり取りに玲子がこちらを向いて『何やってんだか』と言わんばかりに首をかしげるのであった。
それから幾つかの授業を終えると正午のチャイムが鳴り、昼休憩の時間に入った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる