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第一章 相田一郎
好奇心
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景色が見えた。
見回せば上下左右どれも同じで殺風景なコンクリートの面。それでいて神秘的な雰囲気も感じ取れる。
薄灰色の無機質な空間の真ん中で、作業着姿の俺は立っていた。
……ここは!?
見覚えがある……
空間の広さも照明の形も位置もまるで同じ……
ここは二日前に夢で見たあの場所だ。
何故またこの夢を見てしまったのだろうか?
このやたらリアリティのある夢を……
何かが頭の中で引っ掛かる。
浮かび上がるのは目覚める直前のヴィジョン。
この場所でやり残していた事が一つあったのを思い出した。
未知の存在に対して刻み込まれた本能……
それは侵略生物と対峙した時のあの恐怖という負の感情とはまた別の正の感情……
それは時として恐怖よりも上回る。
湧き上がる強い好奇心だ。
あの板はまだ存在しているのだろうか?
目を細めてそれが以前に存在していたはずの位置を探ると、五十メートル程先の正面壁沿いに、直立した人の背丈ほどの薄灰色の板を確認した。
あったぞ!
あれには何が記録されているというのか!?
見たい!!
この謎に満ちたシュールでどことなく神秘性を感じる無機質な空間のデザインが、刺激をより掻き立てる。
子供の頃に観た古いSF映画だ。
主人公の宇宙飛行士が生物のいない未知の惑星へと降り立ち、神殿のような古代遺跡を発見する。そして内部を調査すると、そこには何かの秘密を遺した碑石が存在していた。
その時の俺は言いようのない高揚感を覚え、食い入るようにテレビ画面を見つめ、その中へと入り込んでいた。
あの時の興奮が今、目の前にある。
好奇心という精神の原動力は物理運動へと変化し、一歩一歩、未知の石版へと焦点と意識を集中させて進んでゆく。
まだだ……まだ目覚めるんじゃないぞ!
右足……左足……右足……左足……
前回の時よりもさらに前へ、近くへ進むのに成功する。
文字のようなものはまだ判別できないが、刻み込まれた絵の方はその全体像が見えてきた。
判別できたのは三角形に近い大きな一つの模様。
それはどうやら山を描いているように見える。
さらに進むと、その山と思われる頂きの部分から、飛び散るような放物線を描くように、細かい複数の線が刻まれているのを確認できた。
『eruption』
文字は石板の上部に横書きのアルファベットで記載されていた。
俺は今、その目の前に立っている。
エルプション?
見たことも聞いたこともない単語だ。
だが、それが何なのかは大方予想がつく。
『tion』とは動作・状態・結果を名詞に変えるもの。
絵からも予想できる。
答えは多分、噴火だ。
だったら噴火がどうしたというんだ?
わざわざ石版に記録する程のものだ、とても規模の大きなものだったのだろう。
だが、ここ最近で歴史に残るような大きな噴火というのはニュースでも聞いた事がない。
この石板は破損や侵食もなくかなり新しいもののように見える。
少なくとも大昔に作られたものではないだろう。
仮にこの大噴火が遠い過去のものだとしても、わざわざ最近になってこのような形で記録する必要性が感じられない。
一体何を伝えようとしているのか?
現代でも過去でもない。
もしかするとこれは……
未来の出来事……なのか?
見回せば上下左右どれも同じで殺風景なコンクリートの面。それでいて神秘的な雰囲気も感じ取れる。
薄灰色の無機質な空間の真ん中で、作業着姿の俺は立っていた。
……ここは!?
見覚えがある……
空間の広さも照明の形も位置もまるで同じ……
ここは二日前に夢で見たあの場所だ。
何故またこの夢を見てしまったのだろうか?
このやたらリアリティのある夢を……
何かが頭の中で引っ掛かる。
浮かび上がるのは目覚める直前のヴィジョン。
この場所でやり残していた事が一つあったのを思い出した。
未知の存在に対して刻み込まれた本能……
それは侵略生物と対峙した時のあの恐怖という負の感情とはまた別の正の感情……
それは時として恐怖よりも上回る。
湧き上がる強い好奇心だ。
あの板はまだ存在しているのだろうか?
目を細めてそれが以前に存在していたはずの位置を探ると、五十メートル程先の正面壁沿いに、直立した人の背丈ほどの薄灰色の板を確認した。
あったぞ!
あれには何が記録されているというのか!?
見たい!!
この謎に満ちたシュールでどことなく神秘性を感じる無機質な空間のデザインが、刺激をより掻き立てる。
子供の頃に観た古いSF映画だ。
主人公の宇宙飛行士が生物のいない未知の惑星へと降り立ち、神殿のような古代遺跡を発見する。そして内部を調査すると、そこには何かの秘密を遺した碑石が存在していた。
その時の俺は言いようのない高揚感を覚え、食い入るようにテレビ画面を見つめ、その中へと入り込んでいた。
あの時の興奮が今、目の前にある。
好奇心という精神の原動力は物理運動へと変化し、一歩一歩、未知の石版へと焦点と意識を集中させて進んでゆく。
まだだ……まだ目覚めるんじゃないぞ!
右足……左足……右足……左足……
前回の時よりもさらに前へ、近くへ進むのに成功する。
文字のようなものはまだ判別できないが、刻み込まれた絵の方はその全体像が見えてきた。
判別できたのは三角形に近い大きな一つの模様。
それはどうやら山を描いているように見える。
さらに進むと、その山と思われる頂きの部分から、飛び散るような放物線を描くように、細かい複数の線が刻まれているのを確認できた。
『eruption』
文字は石板の上部に横書きのアルファベットで記載されていた。
俺は今、その目の前に立っている。
エルプション?
見たことも聞いたこともない単語だ。
だが、それが何なのかは大方予想がつく。
『tion』とは動作・状態・結果を名詞に変えるもの。
絵からも予想できる。
答えは多分、噴火だ。
だったら噴火がどうしたというんだ?
わざわざ石版に記録する程のものだ、とても規模の大きなものだったのだろう。
だが、ここ最近で歴史に残るような大きな噴火というのはニュースでも聞いた事がない。
この石板は破損や侵食もなくかなり新しいもののように見える。
少なくとも大昔に作られたものではないだろう。
仮にこの大噴火が遠い過去のものだとしても、わざわざ最近になってこのような形で記録する必要性が感じられない。
一体何を伝えようとしているのか?
現代でも過去でもない。
もしかするとこれは……
未来の出来事……なのか?
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