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23話 スキル

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 イリーナが呪文を唱えると、魔法陣が白い光を放ち始める。

 しばらくは何も感じなかったが、突然胸の鼓動が早くなり、息苦しくなった。

「はぁ……はぁ……なんだ?」

 俺は息を荒くしながら胸を押さえる。
 この状態が数分続いた。
 吐き気やめまいを感じ始めたとき、ようやく鼓動の速度が元に戻る。
 魔法陣から放たれている白い光も消えた。

 そして、俺の頭の中に、

『スキル【分身】が使用可能になりました』

 と女とも男とも分からないような、奇妙な声が響いた。

「どう? 成功した?」
「……【分身】が使用可能になったと声が聞こえたが」
「【分身】どんなスキルかしら。使ってみて」

 使えって言われても、どうやって使えばいいのか……。

 ……いや、待て、何となくだがどう使えばいいのか分かるぞ。

 何をどうすれば使えるのかを不思議と理解している。
 なぜかこうすれば確実に発動するという、確信すら持っていた。

 俺は目を閉じて、そして、【分身】とスキル名を頭の中で唱えた。

 すると二体の全く俺と同じ分身が、両脇に出現した。

「リ、リストさんが三人」
「自己の分身を作り出すスキルね。なかなか強力なスキルなんじゃない」

 両脇にいる自分を見てみる。
 なんか若干気持ち悪い気分だ。

 自分のスキルについて、誰から教えられるわけでなく、どんなスキルなのか理解しているのだが、これは完全な自分の分身を作るというスキルと言うわけではない。

 戦闘能力は【超強化】がある俺とほぼ同じだが、回復力はなく、一定以上のダメージを食らったら消える。

 それと自我があるというわけではない。
 簡単な指示を俺が出して、それを忠実に実行するという感じだ。

 個別に指示を出すことが出来、左の分身に指示を出したい場合Aと、右の分身に指示を出したい場合Bと指示の前に言う必要がある。何も言わなかった場合、どっちにも出した指示という扱いになる。

 分身は、だいぶ離れた場所までも行けるみたいで、遠距離攻撃への対処が出来ないという弱点も、少しは改善された。

 攻撃を食らわなくても、一時間したら自動的に消える。
 消えろと念じたら消すことが出来る。
 一度使ったら、二時間の間を置かないと発動することは出来ない。

 説明はこのくらいだ。
 なぜか分かるのかと聞かれると、分からないと答えるしかないが、なぜかどんなスキルか分かる。

 イリーナが言った通り結構強いスキルであると思う。
 自分と同じ戦闘力を持った分身を二体作れるからな。

「さて、ちょっと試してみないそのスキル?」
「試す?」
「ええ、リリナと軽く戦ってみて、どれだけ強いのか試してみるのよ。守護騎士は回復するから、多少は怪我しても構わないしね」
「模擬戦をしろというわけか。別に俺は構わないが」
「じゃあやってみましょう。リリナ、準備しなさい」

 リリナは無言で剣を抜き構える。

 俺も剣を抜いて、分身たちに戦闘準備と頭の中で命じる。すると分身も剣を抜いた。

「では、始め」

 模擬戦が始まった。
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