13 / 35
13話 逃亡
しおりを挟む
エメルテアは俺の額から指を離すが、視線はずっと額に注がれていた。
何があった?
今の光は?
なぜこんなに俺の額を見ている?
額に何かあるのか?
「この模様……」
ミリアの声だ。
さっきまでエメルテアを怖がっていたが、今は俺の額を見ている。
「ミリア、俺の額に何かあるのか?」
小声で尋ねてみる。
「えっと……もようが描かれています」
「模様ってどんな模様だ」
「どんなですか……。うーん口でどう説明したら……。でも、この模様……。あ、消えました」
どうやら消えたようだ。
見ることは出来なかったが、俺の額に謎の模様が描かれていたらしい。
守護騎士の紋章ってエメルテアは言っていた。
つもりなんだろうか。
それが額にあって見られたということは何か。
ばれたってことか。俺が守護騎士で、ミリアが聖女であると。
「あなたは守護騎士ですね。状況的に考えてその子が聖女の力を持つ子と見て間違いないでしょう」
やはりばれている。
しかし歓迎されているようならいいが、相手の表情は険しい。
歓迎されているようにはまるで見えない。
「その紋章、忠義の聖女の紋章……。その紋章は確か、ギャレク教の連中が盗んでいったはず……。適合者が見つかったという噂は聞いていましたが、あなたたちがそうですか。新参者の犬が、我々アレスト教に何のつもりで来たのですか?」
エメルテアは俺を睨みつけながらそう言う。
何を言っているのまったく理解出来んが、怒りをかっているのは間違いない。
たぶん誤解で怒っていると思うので、ここは晴らしておかないといけない。
「おい、正直あんたの言っている事は理解出来ないが、たぶん誤解だと思うぞ。俺たちは聖女について何も知らないんだ」
「無知を装い私に取り入りますか。残念ながらその手には乗りませんよ」
エメルテアは、二回手を叩いた。
するとガシャガシャと、鎧を装備した者たちが走ってくる音が聞こえてくる。
扉が開き、白い鎧を装備した者たちが、部屋に次々と入ってきた。
二十人くらいはいるようだ。完全に囲まれた。
「そのものたちを捕らえなさい。男の方は守護騎士ですので、加減は無用ですよ」
「はっ!」
問答無用か!
どうする? こんな有名な建物内で、大きな騒ぎを起こすのは非常にまずい。
逃げた方がいいな。
囲まれているがどう逃げる?
俺は剣を抜く。
そしてエメルテアに斬りかかるそぶりを見せる。
騎士たちは咄嗟に、エメルテアをかばうように動く。
そこで包囲に隙が出来た。
ミリアを抱えて、その隙をつき包囲を脱出した。
「逃がしてはいけません! 追ってください!」
エメルテアの怒声が聞こえる。
騎士たちが命令に従い追って来るが、正直スピードが違う。
俺の方が全然早い。
あっさり騎士を撒いて大聖堂を出た。
念のため大聖堂から大分離れた位置まで走り続ける。
「ここまで来れば大丈夫だろう」
もう騎士は来ないだろうという場所まで走りきり、抱えていたミリアを地面に下す。
「う、ううううー」
ミリアが凄くグロッキーな表情になっていた。
「だ、大丈夫か!?」
「は、早すぎます~……」
早く移動しすぎたみたいで、ミリアは気分が悪くなっているようだ。
「す、すまん」
「い、いえー。しかたのないことですから……」
フラフラなミリア。
俺はミリアを再び抱っこして、今度は速度に気をつけて宿に向かった。
○
その日の夜。
ミリアは宿で休んで体調を取り戻した。
今は寝る時間なので、すやすやと寝ている。
俺は今後どうするか、起きて考えていた。
あんないきなり捕まりそうになるとは思わなかった。
ベルシンは、アレスト教は最もまともな教義の宗教だと言っていたが、本当なのか?
まあ、何か誤解している風だったが。
ただああも問答無用に来られたら、誤解を解くことも出来ないだろう。
大聖堂から聖女の情報を聞くのは不可能だろうな。
一つ分かったのは、黒い鎧の連中はやはり聖女と関わりがあるということだ。
あいつらに関する噂も、真実の可能性が高い。
これ以上の情報を知るためにはどうすればいいか。
別の方法で調べるか、ほかの宗教の本拠地に行ってみるか。
どちらがいいか……。
その時、部屋の外がいきなり騒がしくなる。
俺の泊まっている場所は二階で、一階に酒場があるのだが、一階から悲鳴が聞こえてくる。
何だ?
そして大勢の人間が階段を走って登る音が聞こえてくる。
鎧を着ているみたいだ。
まさか、大聖堂の騎士たちが、俺の居場所を嗅ぎつけたのか?
いや、それだと悲鳴は何だったんだ?
俺は一旦部屋の扉を開けて廊下に出てみる。
「お、お前ら!」
黒い鎧を装備した連中が、ゾロゾロと廊下を歩いてきていた。
何があった?
今の光は?
なぜこんなに俺の額を見ている?
額に何かあるのか?
「この模様……」
ミリアの声だ。
さっきまでエメルテアを怖がっていたが、今は俺の額を見ている。
「ミリア、俺の額に何かあるのか?」
小声で尋ねてみる。
「えっと……もようが描かれています」
「模様ってどんな模様だ」
「どんなですか……。うーん口でどう説明したら……。でも、この模様……。あ、消えました」
どうやら消えたようだ。
見ることは出来なかったが、俺の額に謎の模様が描かれていたらしい。
守護騎士の紋章ってエメルテアは言っていた。
つもりなんだろうか。
それが額にあって見られたということは何か。
ばれたってことか。俺が守護騎士で、ミリアが聖女であると。
「あなたは守護騎士ですね。状況的に考えてその子が聖女の力を持つ子と見て間違いないでしょう」
やはりばれている。
しかし歓迎されているようならいいが、相手の表情は険しい。
歓迎されているようにはまるで見えない。
「その紋章、忠義の聖女の紋章……。その紋章は確か、ギャレク教の連中が盗んでいったはず……。適合者が見つかったという噂は聞いていましたが、あなたたちがそうですか。新参者の犬が、我々アレスト教に何のつもりで来たのですか?」
エメルテアは俺を睨みつけながらそう言う。
何を言っているのまったく理解出来んが、怒りをかっているのは間違いない。
たぶん誤解で怒っていると思うので、ここは晴らしておかないといけない。
「おい、正直あんたの言っている事は理解出来ないが、たぶん誤解だと思うぞ。俺たちは聖女について何も知らないんだ」
「無知を装い私に取り入りますか。残念ながらその手には乗りませんよ」
エメルテアは、二回手を叩いた。
するとガシャガシャと、鎧を装備した者たちが走ってくる音が聞こえてくる。
扉が開き、白い鎧を装備した者たちが、部屋に次々と入ってきた。
二十人くらいはいるようだ。完全に囲まれた。
「そのものたちを捕らえなさい。男の方は守護騎士ですので、加減は無用ですよ」
「はっ!」
問答無用か!
どうする? こんな有名な建物内で、大きな騒ぎを起こすのは非常にまずい。
逃げた方がいいな。
囲まれているがどう逃げる?
俺は剣を抜く。
そしてエメルテアに斬りかかるそぶりを見せる。
騎士たちは咄嗟に、エメルテアをかばうように動く。
そこで包囲に隙が出来た。
ミリアを抱えて、その隙をつき包囲を脱出した。
「逃がしてはいけません! 追ってください!」
エメルテアの怒声が聞こえる。
騎士たちが命令に従い追って来るが、正直スピードが違う。
俺の方が全然早い。
あっさり騎士を撒いて大聖堂を出た。
念のため大聖堂から大分離れた位置まで走り続ける。
「ここまで来れば大丈夫だろう」
もう騎士は来ないだろうという場所まで走りきり、抱えていたミリアを地面に下す。
「う、ううううー」
ミリアが凄くグロッキーな表情になっていた。
「だ、大丈夫か!?」
「は、早すぎます~……」
早く移動しすぎたみたいで、ミリアは気分が悪くなっているようだ。
「す、すまん」
「い、いえー。しかたのないことですから……」
フラフラなミリア。
俺はミリアを再び抱っこして、今度は速度に気をつけて宿に向かった。
○
その日の夜。
ミリアは宿で休んで体調を取り戻した。
今は寝る時間なので、すやすやと寝ている。
俺は今後どうするか、起きて考えていた。
あんないきなり捕まりそうになるとは思わなかった。
ベルシンは、アレスト教は最もまともな教義の宗教だと言っていたが、本当なのか?
まあ、何か誤解している風だったが。
ただああも問答無用に来られたら、誤解を解くことも出来ないだろう。
大聖堂から聖女の情報を聞くのは不可能だろうな。
一つ分かったのは、黒い鎧の連中はやはり聖女と関わりがあるということだ。
あいつらに関する噂も、真実の可能性が高い。
これ以上の情報を知るためにはどうすればいいか。
別の方法で調べるか、ほかの宗教の本拠地に行ってみるか。
どちらがいいか……。
その時、部屋の外がいきなり騒がしくなる。
俺の泊まっている場所は二階で、一階に酒場があるのだが、一階から悲鳴が聞こえてくる。
何だ?
そして大勢の人間が階段を走って登る音が聞こえてくる。
鎧を着ているみたいだ。
まさか、大聖堂の騎士たちが、俺の居場所を嗅ぎつけたのか?
いや、それだと悲鳴は何だったんだ?
俺は一旦部屋の扉を開けて廊下に出てみる。
「お、お前ら!」
黒い鎧を装備した連中が、ゾロゾロと廊下を歩いてきていた。
0
お気に入りに追加
875
あなたにおすすめの小説
天職はドロップ率300%の盗賊、錬金術師を騙る。
朱本来未
ファンタジー
魔術師の大家であるレッドグレイヴ家に生を受けたヒイロは、15歳を迎えて受けた成人の儀で盗賊の天職を授けられた。
天職が王家からの心象が悪い盗賊になってしまったヒイロは、廃嫡されてレッドグレイヴ領からの追放されることとなった。
ヒイロは以前から魔術師以外の天職に可能性を感じていたこともあり、追放処分を抵抗することなく受け入れ、レッドグレイヴ領から出奔するのだった。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
異世界悪霊譚 ~無能な兄に殺され悪霊になってしまったけど、『吸収』で魔力とスキルを集めていたら世界が畏怖しているようです~
テツみン
ファンタジー
**救国編完結!**
『鑑定——』
エリオット・ラングレー
種族 悪霊
HP 測定不能
MP 測定不能
スキル 「鑑定」、「無限収納」、「全属性魔法」、「思念伝達」、「幻影」、「念動力」……他、多数
アビリティ 「吸収」、「咆哮」、「誘眠」、「脱兎」、「猪突」、「貪食」……他、多数
次々と襲ってくる悪霊を『吸収』し、魔力とスキルを獲得した結果、エリオットは各国が恐れるほどの強大なチカラを持つ存在となっていた!
だけど、ステータス表をよーーーーっく見てほしい! そう、種族のところを!
彼も悪霊――つまり「死んでいた」のだ!
これは、無念の死を遂げたエリオット少年が悪霊となり、復讐を果たす――つもりが、なぜか王国の大惨事に巻き込まれ、救国の英雄となる話………悪霊なんだけどね。
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
魔獣奉賛士
柚緒駆
ファンタジー
砂漠の巨大帝国アルハグラを支配する冷酷な王ゲンゼルは、東の果て、氷の山脈に棲む魔獣ザンビエンに、己の姫リーリアを生け贄として捧げる事を決めた。姫を送り届ける役目には、三十人の傭兵達と年老いた魔獣奉賛士が一人。それ以外の奉賛隊はアルハグラの民から選ばれる。孤児として育ったランシャは、報奨金目当てに奉賛隊に参加した。一方隣国ダナラムは、奉賛隊を壊滅すべく秘密裏に聖滅団を差し向ける。
身に覚えがないのに断罪されるつもりはありません
おこめ
恋愛
シャーロット・ノックスは卒業記念パーティーで婚約者のエリオットに婚約破棄を言い渡される。
ゲームの世界に転生した悪役令嬢が婚約破棄後の断罪を回避するお話です。
さらっとハッピーエンド。
ぬるい設定なので生温かい目でお願いします。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる