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第十二話
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俺はエミルの戦闘を見て、アドバイスをすることになった。
なので、前をエミルが歩き、後ろに俺が歩くという形でダンジョン攻略を行うことになる。
階段を降りて、狭い通路を歩く。
レベル9999になって以降、この手のダンジョンは歩くのが面倒なので、床を壊してあっさりと最深部まで行って攻略していた。今回みたいに、ダンジョン作成者の意向に沿って攻略しないといけないみたいなケースは、一度もなかった。
しばらく歩くと前方から、かさかさと物音が聞こえてきた。
カラフルな色の大きい蜘蛛が5匹歩いてきた。
8本の足がそれぞれ違う色をしている。胴体は黒一色だ。目が青白く光っており、口からは鋭い牙を生やしている。
めちゃくちゃ気持ち悪い見た目の蜘蛛だ。
いくら敵が気持ちの悪い見た目といっても、高位の冒険者であるエミルは特に怯むことはなく、剣を抜き、蜘蛛に切りかかった。
冒険者は普段から気持ち悪い魔物と何度も相対している。
G~Cランクの魔物の中には、虫の様な姿をした魔物もいる。
虫系の魔物は普通の虫より数段大きい。
前世では元々虫が苦手だった俺は、最初は気持ち悪くてまともに戦えなかった。
慣れたのと、虫系の魔物は弱い場合が多いので、普通に戦えるようにはなったのだが。
「はぁああ!!」
エミルは雷を纏いながら、蜘蛛たちを次々に一刀両断していく。
エミルは、僅か数秒で全ての蜘蛛を倒した。
倒された蜘蛛は黒い靄となって消え去る。
非常に剣速が早い。剣の扱いに関しては達人級といっていいだろう。エミル自身の剣の腕に加え、雷撃による追加ダメージもある。
普通に戦えば厄介な相手なのは間違いなさそうだ。
「どうだった!?」
振り返ってエミルはそう聞いてきた。
アドバイスを欲してそうな表情をしている。
「いや、あんな数秒間の戦いで分かるか」
「ま、まあ確かにそうね。あんな雑魚相手じゃ全然本気も出せてないし」
先走って聞いたことを若干照れているような感じでエミルは言った。
「その剣、めちゃくちゃ電気出てるけど、自分で使ってて痺れたりしないのか?」
「私は雷無効体質だから問題ないわ」
魔法や装備で体制を高めているわけでもなさそうだったから疑問に思っていたが、そんな体質があったのか。
「私の実家の近くに、雷がたくさん落ちる山があったの。名前は雷山って、そのまんまな名前なんだけど、子供の頃その山に迷い込んじゃってそこで雷に撃たれちゃったの。普通なら死んでたけど、奇跡に生き返って。その時、雷無効の体質を手に入れたわ」
「生まれつきじゃないのか」
「うん。髪の毛も今は金髪だけど、雷に撃たれる前までは黒だったのよ」
「そんなことあんのかよ……」
「変わったのはそれだけじゃなくて、なぜか身体能力も上がって、動きが格段に速くなったのよ。それから私は雷山の頂点まで登って、そこに突き刺してあったこの雷轟剣を引き抜いて自分の物にしたわ」
得意げな顔でエミルは武勇伝を語りだした。
中々変わった人生を送ってきた女なようだ。
前世の知識があるほれほどじゃないだろうけど……
会話をしながら通路を歩く。
別れ道はなかったので、道に迷う事はなくひたすら歩いた。
出てくる敵もさっきの蜘蛛ばかりだった。
序盤なので弱い敵しか出さないように調整しているのだろうか。
しばらく歩くと、広い部屋にたどり着く。
中に入った瞬間、部屋の入口が扉で封鎖された。
天井の方から、何かが落ちてきた。
地面に着地した瞬間地面が大きく揺れる。
何が落ちてきたのか確認する。
ピンク色の体毛を生やした巨大な羊だった。
顔はつぶらな瞳をしていて、結構可愛いが、二本の大きな角を生やしており、攻撃力は高そうに見える。
今まで見てきた奇妙な敵や建物の数々を考えると、一番マシな見た目をしていた。
「むむ、可愛い見た目……だけど容赦はしないわ」
エミルは雷轟剣を力強く構える。
雷轟剣の先端に、電気が集中し始める。
その剣を振ると、雷撃が迸り、巨大羊の頭に直撃した。
雷が間近で落ちた時の様な、轟音が部屋に鳴り響く。
今まで近接で戦っているところだけ見てきたが、かなり強力な遠距離攻撃も、エミルは使えるようだ。
「グオオオオオオ!!」
と羊が可愛い顔から似合わない雄たけびを上げた。
これだけの巨体。耐久力は優れているのか、エミルの攻撃を受けても、一撃では倒れなかったようだ。
頭を下げて、角をエミルに向け、巨大羊は突進してきた。
「遅い!」
エミルのスピードからすると、避けるのは非常に楽なスピードの突進だった。エミルはジャンプして、あっさりと避ける。
そのまま羊の頭の上に着地したエミルは、首元に剣を突き刺した。
突き刺してから、ゼロ距離で雷を発生させて、再び強力な雷撃が迸った。
流石に耐えきれるダメージではなかったようで、巨大羊は地面に倒れ伏せ、その後、黒い靄となって綺麗さっぱり消滅した。
「こんなもんね」
二発強力な攻撃を放ったが、特に消耗した様子はなく、涼し気な顔でエミルは言った。
なので、前をエミルが歩き、後ろに俺が歩くという形でダンジョン攻略を行うことになる。
階段を降りて、狭い通路を歩く。
レベル9999になって以降、この手のダンジョンは歩くのが面倒なので、床を壊してあっさりと最深部まで行って攻略していた。今回みたいに、ダンジョン作成者の意向に沿って攻略しないといけないみたいなケースは、一度もなかった。
しばらく歩くと前方から、かさかさと物音が聞こえてきた。
カラフルな色の大きい蜘蛛が5匹歩いてきた。
8本の足がそれぞれ違う色をしている。胴体は黒一色だ。目が青白く光っており、口からは鋭い牙を生やしている。
めちゃくちゃ気持ち悪い見た目の蜘蛛だ。
いくら敵が気持ちの悪い見た目といっても、高位の冒険者であるエミルは特に怯むことはなく、剣を抜き、蜘蛛に切りかかった。
冒険者は普段から気持ち悪い魔物と何度も相対している。
G~Cランクの魔物の中には、虫の様な姿をした魔物もいる。
虫系の魔物は普通の虫より数段大きい。
前世では元々虫が苦手だった俺は、最初は気持ち悪くてまともに戦えなかった。
慣れたのと、虫系の魔物は弱い場合が多いので、普通に戦えるようにはなったのだが。
「はぁああ!!」
エミルは雷を纏いながら、蜘蛛たちを次々に一刀両断していく。
エミルは、僅か数秒で全ての蜘蛛を倒した。
倒された蜘蛛は黒い靄となって消え去る。
非常に剣速が早い。剣の扱いに関しては達人級といっていいだろう。エミル自身の剣の腕に加え、雷撃による追加ダメージもある。
普通に戦えば厄介な相手なのは間違いなさそうだ。
「どうだった!?」
振り返ってエミルはそう聞いてきた。
アドバイスを欲してそうな表情をしている。
「いや、あんな数秒間の戦いで分かるか」
「ま、まあ確かにそうね。あんな雑魚相手じゃ全然本気も出せてないし」
先走って聞いたことを若干照れているような感じでエミルは言った。
「その剣、めちゃくちゃ電気出てるけど、自分で使ってて痺れたりしないのか?」
「私は雷無効体質だから問題ないわ」
魔法や装備で体制を高めているわけでもなさそうだったから疑問に思っていたが、そんな体質があったのか。
「私の実家の近くに、雷がたくさん落ちる山があったの。名前は雷山って、そのまんまな名前なんだけど、子供の頃その山に迷い込んじゃってそこで雷に撃たれちゃったの。普通なら死んでたけど、奇跡に生き返って。その時、雷無効の体質を手に入れたわ」
「生まれつきじゃないのか」
「うん。髪の毛も今は金髪だけど、雷に撃たれる前までは黒だったのよ」
「そんなことあんのかよ……」
「変わったのはそれだけじゃなくて、なぜか身体能力も上がって、動きが格段に速くなったのよ。それから私は雷山の頂点まで登って、そこに突き刺してあったこの雷轟剣を引き抜いて自分の物にしたわ」
得意げな顔でエミルは武勇伝を語りだした。
中々変わった人生を送ってきた女なようだ。
前世の知識があるほれほどじゃないだろうけど……
会話をしながら通路を歩く。
別れ道はなかったので、道に迷う事はなくひたすら歩いた。
出てくる敵もさっきの蜘蛛ばかりだった。
序盤なので弱い敵しか出さないように調整しているのだろうか。
しばらく歩くと、広い部屋にたどり着く。
中に入った瞬間、部屋の入口が扉で封鎖された。
天井の方から、何かが落ちてきた。
地面に着地した瞬間地面が大きく揺れる。
何が落ちてきたのか確認する。
ピンク色の体毛を生やした巨大な羊だった。
顔はつぶらな瞳をしていて、結構可愛いが、二本の大きな角を生やしており、攻撃力は高そうに見える。
今まで見てきた奇妙な敵や建物の数々を考えると、一番マシな見た目をしていた。
「むむ、可愛い見た目……だけど容赦はしないわ」
エミルは雷轟剣を力強く構える。
雷轟剣の先端に、電気が集中し始める。
その剣を振ると、雷撃が迸り、巨大羊の頭に直撃した。
雷が間近で落ちた時の様な、轟音が部屋に鳴り響く。
今まで近接で戦っているところだけ見てきたが、かなり強力な遠距離攻撃も、エミルは使えるようだ。
「グオオオオオオ!!」
と羊が可愛い顔から似合わない雄たけびを上げた。
これだけの巨体。耐久力は優れているのか、エミルの攻撃を受けても、一撃では倒れなかったようだ。
頭を下げて、角をエミルに向け、巨大羊は突進してきた。
「遅い!」
エミルのスピードからすると、避けるのは非常に楽なスピードの突進だった。エミルはジャンプして、あっさりと避ける。
そのまま羊の頭の上に着地したエミルは、首元に剣を突き刺した。
突き刺してから、ゼロ距離で雷を発生させて、再び強力な雷撃が迸った。
流石に耐えきれるダメージではなかったようで、巨大羊は地面に倒れ伏せ、その後、黒い靄となって綺麗さっぱり消滅した。
「こんなもんね」
二発強力な攻撃を放ったが、特に消耗した様子はなく、涼し気な顔でエミルは言った。
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