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第十一話
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「さっきの魔物……声を聴く限りなんか子供って感じだったわね」
ドームを出た後、エミルがそう言った。
「魔物に子供がいるのかどうかは知らんが……邪悪な魔物という感じはしなかったな」
「魔物だから何だかんだ言って悪いやつでしょ?」
この考えはエミルが単細胞生物だからではなく、冒険者のほとんどが持っている考えだ。
まあ、実際ほとんどの魔物は邪悪な連中なので、実力差が魔物とそれほどない冒険者なら、問答無用で殺しに行った方が、被害は済むだろうし、間違ったやり方とは一概に言えない。
魔物=悪の考えを持つ者が、言葉で考えを変えるとは思えないし、わざわざ説得はしなかった。
シーラは、あの奇妙な建物で遊べば自分の下にたどり着けると言っていた。
建物は全部で5つ。ドームはすでに攻略したので、後4つだ。
俺たちはドームから一番近くにある建物へと向かった。
ドームは荒野にポツンと立っていたが、次の建物があった場所は草原だった。
エジプトのピラミッドのように、四角錐の建物が草原の真ん中に建造されていた。砂漠にあるイメージが強いので、違和感が凄い。
ちなみにこの世界では、ピラミッドの様な建物はたぶん存在しない。俺も世界中を見て回ったわけではないので、知らないだけでどこかにあるかもしれないが。少なくとも俺の知識の中にはない。
外壁は相変わらずのカラフルなマーブル模様。
ドームや塔同様、かなり大きな建物だった。
入り口の前まで行き、中に入った。
ドームの時と同じく、入り口が魔法文字(ルーン)で強化された扉に封鎖された。
さてここは何があるか。
前と同じく敵を倒せばいいだけなら楽なのだが。
薄暗い通路を進んでいくと、広い空間に出た。
この建物の内部デザインはモザイク柄だ。
もしかしたら、最初の塔が失敗作だったのは、デザインを間違えたからなのだろうか。
『ハロー。またあったねお兄ちゃん。シーラミッドへようこそー』
シーラミッドて。
何でそのネーミングにしたのか気になる。
魔界にはまさかピラミッドがあるのか?
「早くこの茶番を終わらせてお前の居場所を教えろ」
『駄目だよー。それじゃ面白くないよぉ』
シーラの指示を無視して、強引に場所を探すという手もあるのだが、隠れている場所によってはかなり手間がかかる。
今のところ会わないと言ってきているわけじゃないし、ここは大人しく指示に従っていた方が、手早く会えるかもしれない。
『このシーラミッドはダンジョンだよー。地下に行く階段があるから、そこを降りて一番下を目指してねー』
地下ならこのピラミッドの部分は一体何の意味があるんだ。
『あ、上の部分は飾りだよー。面白い形の建物でしょ』
「飾りなのかよ。無駄にでけーなおい」
『あ、それと、ダンジョンの壁や床を壊すのは反則だからねー。反則したらこの場所に戻ってくることになるから。守ってね』
反則したら転送される。
その転送を無効化する魔法をかければ問題はないが……ただ、シーラの機嫌を損ねると、逃げられて捕まえるのが遅れるかもしれない。ここは一応従っとくか。
『それじゃ、階段を開くね!』
シーラがそう言うと、中央の床が開く。
地下まで行ける階段が現れた。
シーラの声はそれ以上聞こえなくなった。
「行くか」
「私はダンジョン攻略は得意よ! 任せなさい」
ダンジョン攻略得意な奴が、あんな安直な罠に引っかかるわけない。怪しすぎる。
エミルの動きには注視しなければ、面倒な罠を作動させるかもしれない。
俺たちは階段を降りて、ダンジョンに入った。
「ライズ、一つお願いがあるわ」
「何だ」
ダンジョンに入って歩いているとき、エミルがそう言ってきた。
「ここではライズは戦わないで、私だけに戦わせてほしいの。そして私の戦闘を見て欲しい」
「何でそんなことを」
「ライズの戦いを見て、何か盗もうと思ったんだけど、何かすぐ終わっちゃうし……私の戦いを見てアドバイスをしてくれれば嬉しんだけど……だめかしら」
「アドバイスだと……?」
一応、俺はレベル9999になる前は、修行を積み重ねていたので、戦うことにはある程度詳しい。
しかしとはいえ、他人を強くするアドバイスなんてしたことは無い。エミルほどの戦闘力を持つ者を、さらに強くするアドバイスなど正直無理だ。
「お願い!」
深々と頭を下げてお願いしてきた。
エミルはプライドは結構高そうなタイプだが、ここまでするとは……
何というか断りにくいな……
まあ、別に受けてもいいか。俺のアドバイスで弱くなるということも多分ないだろうしな。
「別に見てアドバイスをするのは構わんが、強く慣れるという保証は出来ないぞ」
「それでも構わない。お願いするわ」
ダンジョン内では、俺は戦わずエミルの戦闘を見ることになった。
ドームを出た後、エミルがそう言った。
「魔物に子供がいるのかどうかは知らんが……邪悪な魔物という感じはしなかったな」
「魔物だから何だかんだ言って悪いやつでしょ?」
この考えはエミルが単細胞生物だからではなく、冒険者のほとんどが持っている考えだ。
まあ、実際ほとんどの魔物は邪悪な連中なので、実力差が魔物とそれほどない冒険者なら、問答無用で殺しに行った方が、被害は済むだろうし、間違ったやり方とは一概に言えない。
魔物=悪の考えを持つ者が、言葉で考えを変えるとは思えないし、わざわざ説得はしなかった。
シーラは、あの奇妙な建物で遊べば自分の下にたどり着けると言っていた。
建物は全部で5つ。ドームはすでに攻略したので、後4つだ。
俺たちはドームから一番近くにある建物へと向かった。
ドームは荒野にポツンと立っていたが、次の建物があった場所は草原だった。
エジプトのピラミッドのように、四角錐の建物が草原の真ん中に建造されていた。砂漠にあるイメージが強いので、違和感が凄い。
ちなみにこの世界では、ピラミッドの様な建物はたぶん存在しない。俺も世界中を見て回ったわけではないので、知らないだけでどこかにあるかもしれないが。少なくとも俺の知識の中にはない。
外壁は相変わらずのカラフルなマーブル模様。
ドームや塔同様、かなり大きな建物だった。
入り口の前まで行き、中に入った。
ドームの時と同じく、入り口が魔法文字(ルーン)で強化された扉に封鎖された。
さてここは何があるか。
前と同じく敵を倒せばいいだけなら楽なのだが。
薄暗い通路を進んでいくと、広い空間に出た。
この建物の内部デザインはモザイク柄だ。
もしかしたら、最初の塔が失敗作だったのは、デザインを間違えたからなのだろうか。
『ハロー。またあったねお兄ちゃん。シーラミッドへようこそー』
シーラミッドて。
何でそのネーミングにしたのか気になる。
魔界にはまさかピラミッドがあるのか?
「早くこの茶番を終わらせてお前の居場所を教えろ」
『駄目だよー。それじゃ面白くないよぉ』
シーラの指示を無視して、強引に場所を探すという手もあるのだが、隠れている場所によってはかなり手間がかかる。
今のところ会わないと言ってきているわけじゃないし、ここは大人しく指示に従っていた方が、手早く会えるかもしれない。
『このシーラミッドはダンジョンだよー。地下に行く階段があるから、そこを降りて一番下を目指してねー』
地下ならこのピラミッドの部分は一体何の意味があるんだ。
『あ、上の部分は飾りだよー。面白い形の建物でしょ』
「飾りなのかよ。無駄にでけーなおい」
『あ、それと、ダンジョンの壁や床を壊すのは反則だからねー。反則したらこの場所に戻ってくることになるから。守ってね』
反則したら転送される。
その転送を無効化する魔法をかければ問題はないが……ただ、シーラの機嫌を損ねると、逃げられて捕まえるのが遅れるかもしれない。ここは一応従っとくか。
『それじゃ、階段を開くね!』
シーラがそう言うと、中央の床が開く。
地下まで行ける階段が現れた。
シーラの声はそれ以上聞こえなくなった。
「行くか」
「私はダンジョン攻略は得意よ! 任せなさい」
ダンジョン攻略得意な奴が、あんな安直な罠に引っかかるわけない。怪しすぎる。
エミルの動きには注視しなければ、面倒な罠を作動させるかもしれない。
俺たちは階段を降りて、ダンジョンに入った。
「ライズ、一つお願いがあるわ」
「何だ」
ダンジョンに入って歩いているとき、エミルがそう言ってきた。
「ここではライズは戦わないで、私だけに戦わせてほしいの。そして私の戦闘を見て欲しい」
「何でそんなことを」
「ライズの戦いを見て、何か盗もうと思ったんだけど、何かすぐ終わっちゃうし……私の戦いを見てアドバイスをしてくれれば嬉しんだけど……だめかしら」
「アドバイスだと……?」
一応、俺はレベル9999になる前は、修行を積み重ねていたので、戦うことにはある程度詳しい。
しかしとはいえ、他人を強くするアドバイスなんてしたことは無い。エミルほどの戦闘力を持つ者を、さらに強くするアドバイスなど正直無理だ。
「お願い!」
深々と頭を下げてお願いしてきた。
エミルはプライドは結構高そうなタイプだが、ここまでするとは……
何というか断りにくいな……
まあ、別に受けてもいいか。俺のアドバイスで弱くなるということも多分ないだろうしな。
「別に見てアドバイスをするのは構わんが、強く慣れるという保証は出来ないぞ」
「それでも構わない。お願いするわ」
ダンジョン内では、俺は戦わずエミルの戦闘を見ることになった。
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