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第八話
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魔界。
そこは、人のいない魔物たちの世界。
空は常に薄暗く、明るくなることは決してない。
地上にはいたるところにどんよりした瘴気が立ち込めている。
Cランク以下の下位の魔物たちが、常に弱肉強食の争いを繰り広げており、殺伐な世界と化していた。
Cランクの以下の魔物たちは、獣や虫といった姿をしており、知性はほとんどなく、本能の赴くままに生きている。
Bランク以上の魔物は知性を持っており、さらに強力な能力を持っていた。Bランク以上の魔物が誕生するのは稀で、魔物のほとんどはCランク以下であった。
突如、争いを繰り広げていたCランク以下の魔物たちが動きを止めた。
その後、びくびくと怯えるように震えた後、何かから逃げるように一目散に走り始める。
逃げた魔物たちがいた場所に、幼い少女の姿をした魔物が通る。
黒髪の少女だ。ゴスロリ衣装を身に着けており、右手にクマのぬいぐるみを持っている。
肌はぞっとするくらい白い。瞳は禍々しい赤い光を発している。
少女の姿をしているが、人型であるので彼女はBランク以上の魔物である。
Bランクの魔物は、階級で見るとCランクより一つだけ上なのだが、実力で言うと圧倒的な差がある。
本当で強い相手を察せる魔物たちが、一目散に逃げていくのも無理はないだろう。
「飽きた」
少女の魔物はそう呟いた。
彼女はぬいぐるみを持っていない方の左手を開いた状態で前に突き出す。
「ゲート」
と一言呟くと、目の前に明るい光を放つ、大きな円が出現した。
常に薄暗い魔界も、ゲートが開いた時だけ明るい光に照らされる。
このゲートを一度くぐれば、魔物ですら元の世界に戻ることが困難になる。
魔界からゲートを開くのはBランク以上の魔物であれば、自由に出来るのだが、くぐった先の世界で魔界に戻るゲートを開くことは不可能である。
その事実を知っているのか知らないのか分からないが、少女の魔物は一切躊躇することなく、自分が開いたゲートをくぐった。
〇
翌朝。
目覚めた俺は体を起こし背伸びをした。
前世では常に寝不足気味だった俺も、今世では寝不足になったことはほとんどない。
スリープという眠らせる魔法があり、それを良く導入しているからだ。
本来は他者を眠らせて行動不能にする魔法だが、自分に使えば快適に眠ることができる。
ベッドから起き上がり、寝室から出てリビングに行く。
腹が減ったので朝食を作ろう、と思ったら窓から俺の家の中をのぞく金髪の女が目に入った。
俺は窓を開ける。
「何か用か?」
「べ、別になんでもないわよ!」
と顔を赤くして金髪の女エミルはそう言った。
何か期待するような表情を浮かべていた。
エミルが何を期待しているのかは、言われるまでもなく分かっていた。
「飯食うか?」
「食べる!!」
そう言うと、満面の笑みを浮かべてそう言った。
なんか餌付けされてる犬みたいだな……
今日の朝は貝を使ったスープを作った。
家の近く湖には、カキに似た姿をしたローブ貝という貝が生息している。
強い毒を持っているが、魔法で毒を完全に消せば美味しく食べられる。
味もカキに似ており、非常に美味しい。
湖の底にいるので、たまに潜って取ってきている。
このスープとサラダにパンが、今日の朝食だ。
スープの味付けが上手く行ったので、結構おいしく食べられた。
「美味しい!」
エミルにも好評だったようだ。
「何か悪いわね。昨日に続いて美味しい物食べさせてもらって。このお礼は必ずするわ!」
「お礼ね……じゃあ、何か美味そうな食材を見つけたら、持ってきてくれ」
「食材ね……分かったわ!」
まあ、どうせ見つけてきた食材は俺が料理して、エミルも食べるんだろうけどな。
朝食も食べたし……さて釣りにでも行くか。
俺は釣りの準備を始める。
「また釣りするの?」
「釣りは毎日する」
「や、やっぱり釣りが強さの秘訣というわけね……私もやるわ!」
相変わらず勘違いを続けている。
まあ、エミルの場合、戦闘において思慮の足りなさが、弱点となっている気がするので、釣りをしながら自分と向き合ってみるのもありかもしれない。
その後、俺は手早く釣りの準備を済ませて外に出た。
「あ?」
外に出た直後、異変に気付く。
湖の真ん中に、謎の塔が立っていることに気付いた。
結構高い塔で、湖から出ている部分だけでも50mはありそうだ。
外壁はカラフルなマーブル模様になっており、見ているだけで頭が痛くなってくるような建物だ。
一体全体、誰があんな建物を建てやがった。
「何あの趣味の悪い建物……」
「お前、俺の家に来る前に気付かなかったのか?」
あんなに目立つ建物だ。
テントの外に出た瞬間、気付きそうなものだが。
「全く気付かなかったわ。お腹減ってたし」
どんだけ食い意地が張ってんだこいつは。
……誰だか知らんが妙なもん建てやがって。
一刻も早くどかしたいが、それも少し面倒そうだ。魔弾(マジック・バレット)をぶっ放せば、破壊は出来るだろうが、そうすると、湖の魚たちを殺しかねない。
ちょっとずつ切り崩していくのがいいだろうが、正直時間がかかる。
せっかく準備をして釣りをするのをやめたくはない。
釣りをしてから、あの塔は何とかしよう。
そこは、人のいない魔物たちの世界。
空は常に薄暗く、明るくなることは決してない。
地上にはいたるところにどんよりした瘴気が立ち込めている。
Cランク以下の下位の魔物たちが、常に弱肉強食の争いを繰り広げており、殺伐な世界と化していた。
Cランクの以下の魔物たちは、獣や虫といった姿をしており、知性はほとんどなく、本能の赴くままに生きている。
Bランク以上の魔物は知性を持っており、さらに強力な能力を持っていた。Bランク以上の魔物が誕生するのは稀で、魔物のほとんどはCランク以下であった。
突如、争いを繰り広げていたCランク以下の魔物たちが動きを止めた。
その後、びくびくと怯えるように震えた後、何かから逃げるように一目散に走り始める。
逃げた魔物たちがいた場所に、幼い少女の姿をした魔物が通る。
黒髪の少女だ。ゴスロリ衣装を身に着けており、右手にクマのぬいぐるみを持っている。
肌はぞっとするくらい白い。瞳は禍々しい赤い光を発している。
少女の姿をしているが、人型であるので彼女はBランク以上の魔物である。
Bランクの魔物は、階級で見るとCランクより一つだけ上なのだが、実力で言うと圧倒的な差がある。
本当で強い相手を察せる魔物たちが、一目散に逃げていくのも無理はないだろう。
「飽きた」
少女の魔物はそう呟いた。
彼女はぬいぐるみを持っていない方の左手を開いた状態で前に突き出す。
「ゲート」
と一言呟くと、目の前に明るい光を放つ、大きな円が出現した。
常に薄暗い魔界も、ゲートが開いた時だけ明るい光に照らされる。
このゲートを一度くぐれば、魔物ですら元の世界に戻ることが困難になる。
魔界からゲートを開くのはBランク以上の魔物であれば、自由に出来るのだが、くぐった先の世界で魔界に戻るゲートを開くことは不可能である。
その事実を知っているのか知らないのか分からないが、少女の魔物は一切躊躇することなく、自分が開いたゲートをくぐった。
〇
翌朝。
目覚めた俺は体を起こし背伸びをした。
前世では常に寝不足気味だった俺も、今世では寝不足になったことはほとんどない。
スリープという眠らせる魔法があり、それを良く導入しているからだ。
本来は他者を眠らせて行動不能にする魔法だが、自分に使えば快適に眠ることができる。
ベッドから起き上がり、寝室から出てリビングに行く。
腹が減ったので朝食を作ろう、と思ったら窓から俺の家の中をのぞく金髪の女が目に入った。
俺は窓を開ける。
「何か用か?」
「べ、別になんでもないわよ!」
と顔を赤くして金髪の女エミルはそう言った。
何か期待するような表情を浮かべていた。
エミルが何を期待しているのかは、言われるまでもなく分かっていた。
「飯食うか?」
「食べる!!」
そう言うと、満面の笑みを浮かべてそう言った。
なんか餌付けされてる犬みたいだな……
今日の朝は貝を使ったスープを作った。
家の近く湖には、カキに似た姿をしたローブ貝という貝が生息している。
強い毒を持っているが、魔法で毒を完全に消せば美味しく食べられる。
味もカキに似ており、非常に美味しい。
湖の底にいるので、たまに潜って取ってきている。
このスープとサラダにパンが、今日の朝食だ。
スープの味付けが上手く行ったので、結構おいしく食べられた。
「美味しい!」
エミルにも好評だったようだ。
「何か悪いわね。昨日に続いて美味しい物食べさせてもらって。このお礼は必ずするわ!」
「お礼ね……じゃあ、何か美味そうな食材を見つけたら、持ってきてくれ」
「食材ね……分かったわ!」
まあ、どうせ見つけてきた食材は俺が料理して、エミルも食べるんだろうけどな。
朝食も食べたし……さて釣りにでも行くか。
俺は釣りの準備を始める。
「また釣りするの?」
「釣りは毎日する」
「や、やっぱり釣りが強さの秘訣というわけね……私もやるわ!」
相変わらず勘違いを続けている。
まあ、エミルの場合、戦闘において思慮の足りなさが、弱点となっている気がするので、釣りをしながら自分と向き合ってみるのもありかもしれない。
その後、俺は手早く釣りの準備を済ませて外に出た。
「あ?」
外に出た直後、異変に気付く。
湖の真ん中に、謎の塔が立っていることに気付いた。
結構高い塔で、湖から出ている部分だけでも50mはありそうだ。
外壁はカラフルなマーブル模様になっており、見ているだけで頭が痛くなってくるような建物だ。
一体全体、誰があんな建物を建てやがった。
「何あの趣味の悪い建物……」
「お前、俺の家に来る前に気付かなかったのか?」
あんなに目立つ建物だ。
テントの外に出た瞬間、気付きそうなものだが。
「全く気付かなかったわ。お腹減ってたし」
どんだけ食い意地が張ってんだこいつは。
……誰だか知らんが妙なもん建てやがって。
一刻も早くどかしたいが、それも少し面倒そうだ。魔弾(マジック・バレット)をぶっ放せば、破壊は出来るだろうが、そうすると、湖の魚たちを殺しかねない。
ちょっとずつ切り崩していくのがいいだろうが、正直時間がかかる。
せっかく準備をして釣りをするのをやめたくはない。
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