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10.魔女の刻印
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「うぅ……」
うっすらと視界に映ったのは見知らぬ天井。古びた木造建築の匂いにシルヴィアはベッドから飛び起きた。
「ここは……?」
シルヴィアは必死に記憶を手繰り寄せる。
(確か、ゲルさんの店に行った帰りに馬車が襲撃されて……)
襲撃、というよりは御者が気絶させられたのだ。それで慌てているところへ現れたのが――
「お、起きたみたいだな」
赤髪の少年がドアの入り口にもたれかかっていた。そう、御者を気絶させここへ私を連れてきた張本人。シルヴィアは睨みをきかせながら尋ねる。
「私をなぜここへ連れてきたの?」
「無理やり連れてきたことには謝るよ。ただこのくらいしてくれないと俺らの願いなんて聞いてくれないだろ?」
「どういうこと? あなたは誰?」
「俺はカルマ。俺のことはどうでもいいから早く見てくれ」
カルマと名乗ったその少年はシルヴィアの手を引いた。どうやらシルヴィアに危害を加える気はないことが分かってシルヴィアは大人しくついていくことにした。
連れて行かれた先で、シルヴィアは愕然としてしまった。広めの部屋にたくさんの人が寝ている。苦しんでいる人もいればピクリともしない人もいる。
「これは一体どういうこと……?」
「呪いだよ、だいぶ昔の」
カルマに促され、寝ている人のそばへと寄る。横たわる男性の額にはくっきりと紫色の刻印が浮き上がっていた。
話を聞けば、この小さな村は昔魔女によって呪いをかけられたのだという。その魔女が示した呪いの発動が何と今年だったのだ。たくさんの人々が薬でも治らない酷い病に伏しているらしい。
「村長にもかかってるんだ。早くなんとかしてくれよ」
「わ、私にはそんなことできないわ!」
「はあ!? あんた王宮魔術師だろ!?」
「……違うわ。私はシルヴィア、王宮魔術師ではないわ」
シルヴィアが申し訳なさそうに顔を歪めるとカルマは「おい嘘だろ……」とその場にしゃがみ込んだ。どうやらカルマは以前子爵家の霊を除霊したことを耳にし、シルヴィアを王宮魔術師だと勘違いして連れてきてしまったらしい。
「でも、私は将来王宮魔術師になる見習いのようなものよ。だからできることはなんでもするわ。まずは村長のところへ連れて行って頂戴」
落胆したままだったがカルマは頷いて歩き出した。
部屋の奥に行くとたくさんの医者に囲まれ、ベッドに横たわる人影が見えた。
「シェルジュさん、俺間違えちゃった、ごめん。だけど見習いって人を連れてきたよ」
カルマはその人影に向かってそういうと、「こちらへきなさい」としわがれた声が聞こえてきた。シルヴィアが歩いていくと、白髪の仙人のような姿の老人が横たわっていた。
「シルヴィア・セレスタイトと申します。私は王宮魔術師ではありませんが精一杯頑張りたいと思います」
シルヴィアが頭を下げると、村長であるシェルジュは口角を上げた。
「君もすごい魔力があるようだね。私も協力できたらいいんだが……生憎もう歳だし、この有様だ。カルマが連れてきてしまったことは心から詫びよう」
シェルジュは近くにいた医者にこそこそと何かを告げた。それからカルマの方へと向き直る。
「私は大丈夫だから、カルマはシルヴィアさんと一緒にみんなを助けてやってくれ」
カルマは大きく頷く。シェルジュに耳打ちされた医者に促されシルヴィアたちはその部屋を後にした。
「この部屋を使ってくださいませ。薬剤や魔術関連のものも一式ございます。それからこの部屋のことはどうかご内密にしてくださいますよう」
連れて行かれた部屋は多少の埃が目立つものの、材料や研究には申し分ない部屋だった。「こんな部屋があったなんて」と驚くカルマを放ってシルヴィアは棚を見繕った。それからすぐ目的のものを見つけ出すと、机の上の塵を払い除けて材料を置いた。
「何をするつもりなんだ? 魔術師ならこう派手に杖とかで火とか出すもんじゃないのか?」
「何言ってるの、そんなに便利なものじゃないのよ。それに今から作るのは薬よ。昔の魔術に対抗する魔術なんてすぐには見つけられないわ」
呆れ気味に言いながらもシルヴィアはテキパキと調合していく。そうして机の上に並んだのはかなりの量の液体薬。
「今の短時間で……こんなに?」
「当たり前でしょう。症状の重い方には赤い瓶を軽そうな方には緑の瓶を」
シルヴィアはどさっとカルマに瓶を半分ずつ渡すと、部屋を颯爽と出て行く。カルマもそれを追うように部屋を出た。
「気分はいかがですか?」
「だいぶ良くなったよ。ありがとうねぇ」
シルヴィアは人々に薬を配りながらそう尋ねていた。全員というわけではないが、回復しかけている人が多くなってきた。
(でも、魔女の刻印……本で読んだだけだけれどあれはかなりの強さ、それにおそらく危険とされている黒魔女のもの。キースさんですら太刀打ちできるか怪しい……私の薬だっていつまでもつかは分からない)
シルヴィアは少し笑顔を取り戻してきた人々を見渡しながら苦い思いを抱いていた。するとぽんっと肩に手が置かれた。
「みんなだいぶ良くなってきた。本当にすごいよ、あんた」
カルマはニッコリ笑ってから「勝手に連れてきて本当にごめん」と改めて言い直す。
「いえ、それに私の薬もいつまでもつかは分からないから……この後酷くなったらどうしていいか分からないし……」
「いや、あんたは……シルヴィアはよく頑張ってる。見ず知らずの俺たちにここまでしてくれてさ。いいやつだよ。もしそうなったら俺が全力で城まで行って王宮魔術師を連れてくる!」
カルマはそう笑い飛ばすように言った。気落ちしていたシルヴィアもその楽観さに思わず笑顔になる。
「ようやく笑った。あんた、全然笑わないんだから」
カルマはふわっと笑った。シルヴィアはぶわわっと恥ずかしくなって話題を全力で逸らすことにした。
「み、みんな落ち着いたようだしお茶でも配りましょう。私たちも休憩しましょ」
「ああ、そうしよう」
シルヴィアはカルマとともにお茶を入れるため、先程の部屋へと戻った。
うっすらと視界に映ったのは見知らぬ天井。古びた木造建築の匂いにシルヴィアはベッドから飛び起きた。
「ここは……?」
シルヴィアは必死に記憶を手繰り寄せる。
(確か、ゲルさんの店に行った帰りに馬車が襲撃されて……)
襲撃、というよりは御者が気絶させられたのだ。それで慌てているところへ現れたのが――
「お、起きたみたいだな」
赤髪の少年がドアの入り口にもたれかかっていた。そう、御者を気絶させここへ私を連れてきた張本人。シルヴィアは睨みをきかせながら尋ねる。
「私をなぜここへ連れてきたの?」
「無理やり連れてきたことには謝るよ。ただこのくらいしてくれないと俺らの願いなんて聞いてくれないだろ?」
「どういうこと? あなたは誰?」
「俺はカルマ。俺のことはどうでもいいから早く見てくれ」
カルマと名乗ったその少年はシルヴィアの手を引いた。どうやらシルヴィアに危害を加える気はないことが分かってシルヴィアは大人しくついていくことにした。
連れて行かれた先で、シルヴィアは愕然としてしまった。広めの部屋にたくさんの人が寝ている。苦しんでいる人もいればピクリともしない人もいる。
「これは一体どういうこと……?」
「呪いだよ、だいぶ昔の」
カルマに促され、寝ている人のそばへと寄る。横たわる男性の額にはくっきりと紫色の刻印が浮き上がっていた。
話を聞けば、この小さな村は昔魔女によって呪いをかけられたのだという。その魔女が示した呪いの発動が何と今年だったのだ。たくさんの人々が薬でも治らない酷い病に伏しているらしい。
「村長にもかかってるんだ。早くなんとかしてくれよ」
「わ、私にはそんなことできないわ!」
「はあ!? あんた王宮魔術師だろ!?」
「……違うわ。私はシルヴィア、王宮魔術師ではないわ」
シルヴィアが申し訳なさそうに顔を歪めるとカルマは「おい嘘だろ……」とその場にしゃがみ込んだ。どうやらカルマは以前子爵家の霊を除霊したことを耳にし、シルヴィアを王宮魔術師だと勘違いして連れてきてしまったらしい。
「でも、私は将来王宮魔術師になる見習いのようなものよ。だからできることはなんでもするわ。まずは村長のところへ連れて行って頂戴」
落胆したままだったがカルマは頷いて歩き出した。
部屋の奥に行くとたくさんの医者に囲まれ、ベッドに横たわる人影が見えた。
「シェルジュさん、俺間違えちゃった、ごめん。だけど見習いって人を連れてきたよ」
カルマはその人影に向かってそういうと、「こちらへきなさい」としわがれた声が聞こえてきた。シルヴィアが歩いていくと、白髪の仙人のような姿の老人が横たわっていた。
「シルヴィア・セレスタイトと申します。私は王宮魔術師ではありませんが精一杯頑張りたいと思います」
シルヴィアが頭を下げると、村長であるシェルジュは口角を上げた。
「君もすごい魔力があるようだね。私も協力できたらいいんだが……生憎もう歳だし、この有様だ。カルマが連れてきてしまったことは心から詫びよう」
シェルジュは近くにいた医者にこそこそと何かを告げた。それからカルマの方へと向き直る。
「私は大丈夫だから、カルマはシルヴィアさんと一緒にみんなを助けてやってくれ」
カルマは大きく頷く。シェルジュに耳打ちされた医者に促されシルヴィアたちはその部屋を後にした。
「この部屋を使ってくださいませ。薬剤や魔術関連のものも一式ございます。それからこの部屋のことはどうかご内密にしてくださいますよう」
連れて行かれた部屋は多少の埃が目立つものの、材料や研究には申し分ない部屋だった。「こんな部屋があったなんて」と驚くカルマを放ってシルヴィアは棚を見繕った。それからすぐ目的のものを見つけ出すと、机の上の塵を払い除けて材料を置いた。
「何をするつもりなんだ? 魔術師ならこう派手に杖とかで火とか出すもんじゃないのか?」
「何言ってるの、そんなに便利なものじゃないのよ。それに今から作るのは薬よ。昔の魔術に対抗する魔術なんてすぐには見つけられないわ」
呆れ気味に言いながらもシルヴィアはテキパキと調合していく。そうして机の上に並んだのはかなりの量の液体薬。
「今の短時間で……こんなに?」
「当たり前でしょう。症状の重い方には赤い瓶を軽そうな方には緑の瓶を」
シルヴィアはどさっとカルマに瓶を半分ずつ渡すと、部屋を颯爽と出て行く。カルマもそれを追うように部屋を出た。
「気分はいかがですか?」
「だいぶ良くなったよ。ありがとうねぇ」
シルヴィアは人々に薬を配りながらそう尋ねていた。全員というわけではないが、回復しかけている人が多くなってきた。
(でも、魔女の刻印……本で読んだだけだけれどあれはかなりの強さ、それにおそらく危険とされている黒魔女のもの。キースさんですら太刀打ちできるか怪しい……私の薬だっていつまでもつかは分からない)
シルヴィアは少し笑顔を取り戻してきた人々を見渡しながら苦い思いを抱いていた。するとぽんっと肩に手が置かれた。
「みんなだいぶ良くなってきた。本当にすごいよ、あんた」
カルマはニッコリ笑ってから「勝手に連れてきて本当にごめん」と改めて言い直す。
「いえ、それに私の薬もいつまでもつかは分からないから……この後酷くなったらどうしていいか分からないし……」
「いや、あんたは……シルヴィアはよく頑張ってる。見ず知らずの俺たちにここまでしてくれてさ。いいやつだよ。もしそうなったら俺が全力で城まで行って王宮魔術師を連れてくる!」
カルマはそう笑い飛ばすように言った。気落ちしていたシルヴィアもその楽観さに思わず笑顔になる。
「ようやく笑った。あんた、全然笑わないんだから」
カルマはふわっと笑った。シルヴィアはぶわわっと恥ずかしくなって話題を全力で逸らすことにした。
「み、みんな落ち着いたようだしお茶でも配りましょう。私たちも休憩しましょ」
「ああ、そうしよう」
シルヴィアはカルマとともにお茶を入れるため、先程の部屋へと戻った。
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