向日葵畑の君へ

茶碗蒸し

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4月

無理矢理

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あの後、松葉先輩と同じマンションで隣の部屋だということが判明した。嘘だ、と現実を否定したいが今もこうして変わることなくお隣さんである。

なんで今まで気づかなかったのか?と言うと、俺が挨拶に行くとき必ず300の人(松葉先輩)はいなくてじゃあお菓子だけ置いとこってなって顔を合わせたことはなかった。

俺は一人で衝撃の事実に気づいたあと、めちゃめちゃ悩んだ。松葉先輩は隣同士ってこと知ってるのかどうか。もし知らなくて聞いたらなんか気まずいし、知ってて挨拶しないのも気まずい。こんな感じで何だかんや悩ん出るうちに一週間が経過した。しかもその間、鉢合わせ内容にビクビクしながら。




…ってまぁ、理由も行ったしもう話すことなんてないか。その証拠に話しかけられたりしないし。



なんて、放課後考えながら帰宅する準備をしていた。



「珱柳ー!誰か呼んでるー!」



クラスのとある女子からそんな風に声がかかって、その誰かを見る。



「うげ」



俺はその3人を見た瞬間、そいつらとは別のドアから全力疾走で逃げ出した。荷物はすべて準備してあったからほんと良かった。逃げ切れるかな、と思って後ろを振り向く。唖然とした。なんと会いたくない3人は猛スピードで俺を追いかけてきたのである。




え?何で何で?普通追いかけてこなくない??



若干恐怖を感じながら校舎内を走ること10分。校庭の茂みへと身を隠した俺は上がった息を押し殺していた。数分経っても人の気配が感じられなかったからコソコソと這い出して帰路につこうとした時。自分は相手よりも甘かった、と感じた。



「馬渕くん久しぶり」
「足速いねー、流石」
「やっと出てきてくれて助かった」


等と三人はペラペラ好き勝手に話している。俺よりも先にここに来て俺が出てくるのを待ち伏せしていたらしい。すべて筒抜けだったと言うわけだ。



俺の会いたくない3人とは、松葉慧、南條若、姫路陸。


バレー部の先輩であり全員2年生。


山陽学園バレー部の黄金世代である。




「こんにちは」



一応挨拶だけして目の前をさらっと通り過ぎれば、俺のこと忘れてくんないかなと思っていちかばちかで歩き始めた。まぁ、そんなわけなくてガシッと3人に掴まれたけど。



「っ!…もう!何なんですか?!」



振りほどきたくてブンブン腕を振り回すけど、男子高生三人分対俺じゃ分が悪すぎる。奴らはニコニコと笑いながら無言で俺を引っ張っていった。怖すぎ。


ふと、



『ほら!もっとねだれよ…気持ちイんだろ?』



と耳奥でまたトラウマがフラッシュバックする。途端に気持ち悪くなって引っ張られている手を振り払った。



「触るなっ!…」



ハァハァと呼吸が荒くなる。目の前がチカチカと光って目の前の三人が誰だか認識できなくなってきた。それと同時に俺を昔犯した奴と姿が重なる。幻覚だとわかってるのに。一度怯えてしまった身体は前に進めなくて後ろへと後ずさることしかできない。冷や汗が大量にでてきて、視線は怯えてキョロキョロと落ち着きがなくなる。どこからどう見ても俺の姿は異常だろう。



そんな中、声がした。






「珱柳」


意思の強い声が聞こえて、何故かその声に安心した。


でもびくりと身体が震えて声の方へ顔は上げられない。怖くて。



その時、とんっと足元にボールが転がってきた。



どこから持ってきたのか分からないが目の前にいる三人のうち誰かが俺に投げたんだろう。



爪先にボールが軽く当たってその衝撃で目が覚めた。



目の前にいる三人をちゃんと先輩だと脳が認識する。




「何のようですか、俺に」


なんとか平常心を取り戻しながら尋ねる。なぜ俺を追いかけるのか、シンプルに疑問。松葉先輩にも理由行ったし、のこりの二人は俺に興味なさそうなのに。




「お前がバレーできないのはわかってる」



「なら、なおさら…何で」



「馬渕クン、慧はこの前のお前のレシーブ見てうちに必要だって惚れ込んだんだよ」

と南條先輩。



「今日練習試合なんだけどさ、見に来るだけ来てほしいんだって」



と姫路先輩。






二人は完全に松葉先輩に付き合ってるって感じだった。




「お前に俺達のバレー見てほしくて、。強引に誘ったのは悪かった。見に来てくれないか?」




「見に行くだけなら…いいですけど。」




俺ち了承の返事を貰えると思ってなかったらしい。3人の先輩達は意外そうな目で俺を見た。いや!あんたら断っても絶対ついてくるだろ。ここで今日だけ行けばこれから先絡んでくることはない、はず。




「じゃあ行くぞ!」




「ぐぇっ…」





先輩方はそうと決まったら行動が早い。俺の制服の襟をむんずと掴みズルズルと引きずっていった。おそらく手を引っ張らなかったのは俺が触れられるのが苦手だと悟ったからだろう。変なとこで察しがいい奴らだ。







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