その輝きを失わないで

茶碗蒸し

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依存

19※

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二人が入ってくる気配を悟った瞬間に、天蓋付きのベッドの天蓋に登った俺の判断は果たして…。思わずゴクリと唾を飲み込み息を潜める。




「ありゃま隠れちゃったかな?」

  

「気配…はあるな、探すぞ」

  

セルシウスとリーの声が聞こえてくる。無駄に広い部屋を与えられたのでパッと見どこにいるのかは分からないだろう。あー病気打ち込まれてなくて、俺が万全の状態だったら余裕でこの状況から抜け出せるのに。体術だけでも捕まらない自信あるのにセルシウスの『』に俺を従わせる能力がくっそ強いから逃げても無駄ってわかってんだよな。心なんて攻撃対象によくできたなほんと。捻くれたやつだ。


と、少しでも奴の事を悪く思ったからなのだろうか。罰があったらしい。唐突にセルシウスに『』を使われてしまったのである。



『返事をしろ』




「うっ………はい」



くそう、無念だ。なんて馬鹿みたいに素直に返事してるんだよ俺の体。せめてもの抵抗だ!とできる限り小さい声で返事したのにばっちり聞こえたらしい。迷うことなくセルシウスは俺の寝室へと向かってきた。さすがにこの近距離じゃあ気配で分かる。普通にバレたね。



「おい。降りろ6代神」


「嫌ですー。」


そんなもん即答に決まってるだろ。誰か好き好んで自らの意思でお前のもとに行くものか。べぇっと舌を出してセルシウスを挑発してやる。すると、セルシウスは怖いくらいににっこりと微笑んだ。



「『』使われて自分でそこから俺のもとに来るか、俺に無理矢理連れて連れてかれたほうがいいか、選べ。」




ひっ…。なんて恐ろしい2択。




「あぁ、6代神様は無理矢理の方がお好みかな?」



いや待て待て待て!この二択どっちも無理やりだろうが!




「他の選択肢を所望」



ふむ、とセルシウスが一瞬迷った顔をしたのでワンちゃん見逃してもらえるかもと期待したのだがそれも泡の水。



べきり



「うわっ」




嫌な音を立ててベッドの柱が突然折れた。いや違う、折られた。セルシウスが片手で柱を掴んでいたのだ。当然この馬怪力男の力に耐えられるものではなく、あっけなく崩れ落ちていった。当然俺も落ちる。流石に予想してなさすぎて半歩反応が遅れてしまった。
床にぶつかる前に翼を広げて飛ぼうとしたけどさすがに高さがなくて出来なくてまあ、受け身でも取るかと思いながら落ちる感覚に身を任せる。そしてまさに受け身を取ろうとした瞬間、ふわっとセルシウスに抱きかかえられた。



「アンタ…この…ふわっふわで寝心地がいいベッドを粉々に粉砕するなんて…」



もう驚きすぎて口が閉じれない。



「ツッコむとこそこ?」



セルシウスは俺の反応が面白かったのかクスリと笑った。何回も思うけどほんとにそうやって笑ってたほうがいいのになぁ。そうぼんやりしてるうちにセルシウスは俺をいとも簡単に別の部屋のベッドに運んだ。その部屋とは俺の部屋と繋がっているセルシウスの寝室である。何だなんだと思っているうちにぽいっと先日のようにベッドへ投げ出される。まずいと思って逃げようとしたときにはもう遅かった。



「申し訳ないけど拘束させてくださいね」


いつの間にかリーが俺の背後に回り込んでいた。その後間髪入れずに翼の付け根に銀色の輪っかのようなものを着けられる。


「ゔぁっ…」



俺達紫灯国民にとっての翼は脳みたいな重要な器官。前も言ったと思うけど根本から抑えられるとめちゃめちゃ苦痛。それでそのままリーに後ろから拘束される。要はバックハグされてるってことだ。



「おい…、説明くらいしてもいいんじゃないですか?お二人共。」



コイツらが今日今から俺になにかしようとしてんのは明らかだ。んでそれはきっとあんまり俺にとって好ましくないことに違いない。実際拘束されてる現状が物語っている。今変に抵抗すると確実に逃げれない。とりあえず時間稼ぎ。



「やればわかる」





はい、時間稼ぎ終了。ってそんな説明あるか!!俺が抗議しようと口を開きかけたとき、セルシウスが俺の顎を掴みその唇を重ねてきた。




「んっ!」




入ってきた異物感にぞっとし思わず奴の舌に噛みつこうとした。シャワー室の一件で学習したのか奴はその瞬間に俺が最も感じる場所をつうっとなぞった。




「んっ!……」




セルシウスはこれまでした数回のキスで紫輝が感じる部分を覚えていた。長時間のキスに慣れていない紫輝は息が上手くできず酸欠になりかけている。だがセルシウスは加減しなかった。いとも簡単に組み敷いているようだがこの紫輝は本来そんなか弱い存在ではない。生まれてから一度もこのように相手に圧倒されることなんてなかったのだ。戦闘行為において。
油断すれば例え『』を使えようが関係ない、そんなのねじ伏せられてセルシウス側は敗北してしまうだろう。それをわかっているからセルシウスは紫輝の身体の力が抜けるまでやめない。それに戦闘で勝てないなら紫輝の不得意分野性行為に持ち込めばいいのだ。





めいいっぱい力を入れて俺はリーとセルシウスを押して抜け出そうとする。だがびくともしない強靭なこの二人。先程からこいつのキスのせいで呼吸が整わず酸素が足りない、くらくらする。翼の拘束のせいもあってか神様との応答が上手くできない。




「…っぁ…はっ………」



舌の角度を変えるために少し離れた瞬間で文句を言おうにも息を吸うので精一杯。今日は逃さないっていう感じがして身体が震えた。



「ちょっと失礼しますね。」



突然バックハグをして俺を拘束していたリーが動き出した。待て待て待て待て。それまで目をぎゅっと瞑ってキスに耐えていたが何されるのかわからないのが怖すぎて思わず目を開けリーの方を見た瞬間、目の前の男と目があった。



「余裕だな、他所見なんて」




口と口が密着したままセルシウスはそう言った。こんなふうに無理やりされて嫌なのに間近でその瞳を見てどくんと心臓が跳ねる。あ、と思った瞬間には顔がブワッと熱くなった。男とこんなことしてても屈辱的にしか感じなかったのに急に恥ずかしくなってふわふわとした気持ちになる。もうセルシウスの顔を見てられなくてまた目を閉じて耐える。




「んっ!!?」



ペロリと耳を舐められた。自分でも恥ずかしいくらいびくっと体がのけ反った。リーはそんな俺を見てやっぱりねと囁きふっと笑う。ちょっとした吐息が耳にあたるだけでぞわぞわして痺れる。それから耳を舐められ始めて狂いそうになった。







部屋に響く濡れた音。






抵抗してもねじ伏せられる怖さ、屈辱。






慣れない感覚。






俺の…たった唯一愛してる人は?…






り…あん……?誰だっけそれ…







あれ…思い出せない。








目の前のこの男は誰?俺にとっての何?







好き?








それとも…











シハイサレタイ?









「っっ…!」







階段をのぼるようにトントントンと悦びが溜まってく。昇りたくないのに強制的に上がってく。空を飛んでいるのと似ている感覚。限界だ、と思った。耳、口共に蹂躙されておかしくなるくらい動けなくて力が抜けてわからない。怖い。自分はこのまま進んだらどうなるのだろうか?






「怖いっ……」






そしたら目の前の男がふっと目を細めて笑いかけた。







「それが気持ちいいっていう感覚だ」







大丈夫だというようにまたキスされて。口の中のどこを舐められてももうわけがわからなくて。耳も緩く噛まれたりされて。おかしくなるのが気持ちいいってこと?






「そ…れって悪い…こと?」





とぎれとぎれにそう聞いた。こんなことするの汚い感じがして罪悪感に似たようなのを感じるから。






「いいや、悪くない。お前は感覚に身を任せろ」







そっか。悪いことじゃないならいいのかな。でも怖いものは怖い。なんかが迫ってくるような、もうそれが近い気がする。



 



「まっ…て…だめ…いや…だ」






やっぱり駄目だとそう思ったのにその男は綺麗な顔で残酷なことを言った。





「イけ」







「いっ…や…あ…」





身体が痙攣する。ふわっと落ちて行くような感覚に包まれて気持ちいいというのを初めて理解した。これが世間一般の気持ちいいっていう感情なのか、と。生憎だけど俺はもう二度と体感したくないと思った。自分が自分でなくなるような気がする。おかしくなる。




「セル…し…うす」




脱力感がすごくて力なく呼びかけた。やめてほしくて、もう俺をおかしくするのはやめろって、それだけだったのに…






「うっ…」






心がびきびきと痛むのが感じた。ヒビがはいってたのにそれが今になってほんとに割れそうになる。この感情が心のなかで俺の意志と関係なしにぐるぐる渦回ってて気持ち悪い。耐えきれずにその言葉を口にした。






「好き…」






一言、ほんとにたった一言。口に出した瞬間またびきりと一瞬心が軋んで、何か大切なものを連れ去って行かれたような感じがした。だけどそんな不安感も新しく満たされ始めた心地よいもので消去される。もう何を忘れてしまったのか何て関係なくてもうどうでも良くって、ただ、ただ、こいつが、セルシウスが欲しい。


















紫輝は一気に心の中枢への抗原の侵入を許してしまった。紫輝の心がもう既に、本人も知らないうちに限界を迎えていたのだろう。冷え切っていた心は免疫力を持たず抗原によってカタチを湾曲させられる。抗原は温めるかのように優しく優しく中へと入っていった。そしてそれはセルシウスとの接触することでより深く根付く。紫輝は気づいていなかったがセルシウスの側にいるだけで徐々に食い尽くされていた。脆かった心の楔が外れて一気に支配される。




















ああ、とてもとてもこの男がほしい。











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