その輝きを失わないで

茶碗蒸し

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捕獲

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「うわぁぁっ!」

はぁ、はぁ。自分の呼吸音がうるさい。体内で血潮がどくどくと渦巻いている。何だ何だ。
何があった。てかあのあとどうなったんだ?
いや、まって、この疲労感もしかして…

「俺ってシヴァ呼んじゃった?」


その瞬間ー


ゴッツーン

「痛っ!」

突如、勢いよく俺の頭に振り落とされる拳骨。焦りすぎて自分がどこにいるのか、そして周りに誰がいるのか全然気にしてなかった。
今俺は医務室にいて兄とソンリェンの二人が目の前にいた。

「呼んじゃった…☆じゃないわ!この馬鹿」

なんと…。我が兄、朱輝が激怒していた。俺にそっくりな顔面が怒りに歪んでいる。何という迫力。

「まず、そのポンコツ頭のお前にあの後何があったか説明してやる!」

「な!ふざけんなっ!ポンコツだって?!どこがだよ!むしろ善戦してたじゃねぇか!」

「うるさいっ!」


バッチィイーン


今度は拳骨ではなく予想外に平手打ち。なんでだよ。せっかく拳が割れるように頭強化してたのに。

「あの後、お前はシヴァを呼んだ衝撃で錯乱状態に陥り、手に負えなかったため俺が始末した。それで侵入者2人だがあいつらは俺らとは交戦しようとしなかった。ほんとにあっさり引き下がったよ。多分だけどあいつらはお前を殺す気はなかったな。捕らえようとしてたんだろう。」
 


「…何で追いかけて殺さなかった?」


本当に不思議なんだけれど俺よりも戦闘狂の朱輝とソンリェンが行っていたから絶対絶対ぜーったい我慢できないと思ってた。


「国賓だからだ」


「どの国の?」


「明日明後日に我が国に才華国と黒妖国が訪問するからだ。」
 
何だそれ。全く聞いてない。そんな俺の考えを読み取ったかのように朱輝が言った。

「お前には伝わらないようにしている。アウラのせいではない。」

「は?…」

信頼されてないってことなのだろうか?確かに双子で喧嘩ばっかりだったけどそこまで嫌われていたとは。いや地味に傷つく。

「違う。お前を信頼してないんじゃなくて…~うぁー」

朱輝は俺に伝えるかどうか迷っているようだった。

「ソンリェン言うべきかな?」

と、。あの即断即決する人がそんなに迷うなんてよほどのことなのか?ソンリェンも迷っているようだし、。(ちなみに完全に余談だけど、ソンリェンは正統派イケメン、同じ紫灯国民だけど俺とは全く違う顔をしている。身長は189センチとまたまた高身長。顔面偏差値は間違いなく70超えだろう。つまり顔面天才。)


しばらくの沈黙の後、ソンリェンは覚悟したようにため息をついて

「言うべきだろうな。」

ソンリェンが厳しい顔をするなんて本当に珍しい。ソン(ニックネーム)はいつも明るくて本当にポジティブ。戦争中は何度も助けられたし。こんな暗い声じゃなくてもっと明るくて、大声でギャグ言って叫ぶような変なやつなんだ。国民からの人気も高くてめっちゃモテモテ。

「おーけぃ。じゃあ言うわ」


「おう」

別にそんなに人生経験浅くないので何を言われても驚かない自信がある。


「シンプルに言うとこの2国の訪問理由はお前を要求している。なぜだか知らんがお前の力が必要。それでこちらがお前を手渡せば、我が国と同盟を組んでくれるらしい。
んで、昨日の相手は黒髪が黒妖国第1王子のセルシウス・オリバーで茶髪が才華国第1王子リー・ハオラン。おそらくここ最近の襲撃はお前の力を探るためだろう。ここまでは理解可能か?」



うぉぃ!急にこいつよく喋るじゃん。さっきまでの言いづらそうな空気は何だったんだよ。


「言ってることはわかる。だけど、襲撃はこの2国だけじゃなかった。白藍国も碧海国も何体か魔物をよこしてきたぞ。それに俺の力が必要なのに俺に呪い?みたいなのかけたのか?矛盾してない?」


俺が呪いの話をすると、2人はあからさまに渋い顔をした。

「いいか、紫(ゆかり:ソンリェンが紫輝のことを呼ぶとき)。お前は今すっっごい術をかけられている!」

「ほう」

「えーっとな!つまり、死ぬとかそういうんじゃなくてさぁ、あぁ、……愛?」

はい?全くわけがわからない。ソンは昔から頭いいけど教えるのとかはくっそ下手くそ。

「もういいソンリェン。俺が説明するわ…」

朱輝も同じことを思ったようで張り切って説明しようとするソンをかなり強めの力で下がらせる。かわいそう…。


「お前さ今好きな人いる?」


はい?…本日2度目だぞ。わけがわからない。

「あのな、お前がかけられた呪いはさ殺傷生があるもんじゃないの。」

「え、でも俺はよく立っていられるなっていわれたけど…」

その言葉は普通の人だったら死んでるよーって
意味で言ってたような気がする。

「うん。普通の人なら死ぬと思う。」

「?」

「お前薬飲ませられたときセルシウスとキスしただろ…」


思わず真っ赤っかになる。恥ずかしい恥ずかしすぎる。なんで知ってるんだぁぁぁ!衝撃の言葉はまだまだ終わらない。

「俺もまだよくわかんねぇんだけど、その薬と注射された薬剤合わせると投与された人は恋しちゃうらしいんだわ」

「は?俺が?…誰に?」

「キスしたやつ。つまりセルシウス」

「え、でも注射されたやつのこと好きにならなかったら不平等じゃないか??」

「錠剤がメインで、注射のやつはお前の体に探知されないようにだろうなぁ、。抗原を。」

「うっうそだ!だって俺その時目眩とか吐き気とかめっちゃしたし!今にも死にそうだったんだぞ!それがそんな馬鹿な薬だったって?!」


「そりゃ人間の人格…心の部分を無理やり変形させるんだぞ。普通なら拒絶反応起きて死ぬだろうな。その馬鹿な薬で…」





…。一度にたくさん聞きすぎたせいか、聞き間違えたかもしれない。もう一度聞いてみよう。



「それってマジ?」



頼む。お願いだから。ドッキリって言ってくれ…。そんな俺の願いも虚しく、2人は神妙な顔つきで

「大マジだ。」


そう言った。
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