素材鑑定士見習いの徒然なる日常 〜愛されスピーの村外研修〜

はじめに

   この世には、様々な職業ジョブがある。
   人々の生活において、それら職業は、密接に関わり合っている。

   人々が口にする野菜や果物、穀物などを作り出す農夫ファーマー。
   海に船を浮かべ、魚を捕る漁師フィッシャー。
   国内外問わず、凶暴な魔物を相手に戦いを挑み、そこで得た戦利品を生活の糧とする狩猟師ハンター。
   様々な物を扱い、売りさばく商人マルシャン。
   人々が暮らす住まいを造る大工カーペンターに、武器や防具を作る鍛治師シュミート。
   変わりどころでは、歌とダンスで群衆を魅了する踊り子ダンサーや、拾い物でその日暮らしをする採集師コレクターなども、立派な職業として認められている。

   そして何より、ここ魔法王国フーガで最も権力を持ち、最も数が多く、最も人気の高い職業は、魔導師メイジである。
   王都の他に、それぞれに巨大な魔法学校を有する四つの街で形成されるこの国は、その名の通りの魔法大国。
   その為に、国王直属の王立ギルドを含め、大小様々な魔導師ギルドが存在する。  

   ……そんな魔法王国フーガにおいて、最重要かつ最も地味な職業が一つ。
   国民の生活にも、様々な職業ギルドのサポート役としても、彼等は必須の職業なのだが、裏方故に光が当たる事はほぼない。
   その職業の名は、素材鑑定士マテリアル・アプレイズ。
   数々ある職業の中で、職業資格の取得が最も難しい上に、最も人気のない、なんとも損な職業である。
   
   この物語は、そんな素材鑑定士になりたいと言う稀有な若者の日常を描く、ほのぼのとしたお話。