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★港町ジャネスコ編★
196:カリカリカリカリ
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ドッカーーーン!!!
「うぅ……、ご、ごめんにゃさい……」
「だからいつも言っていたポよね!? 必須科目の授業はちゃんと起きてなさいポって!?? アーレイク・ピタラスの大陸大分断が五千年前って……、いったい、何をどうしたらそんな適当な事が言えるんだポかぁっ!???」
「う、うぅぅ……、ご、ごめんにゃ、しゃい……」
憐れカービィに落ちたのは、グレコの雷ではなく、ノリリアの怒りの鉄槌だった。
間抜けな声を上げて起床したカービィに対し、ノリリアはその小さな手で、思い切り脳天チョップを繰り出した。
寝起きの一発がかなり効いたらしいカービィは、文字通り頭の上にチカチカと星が飛んでいるかのような顔をしていた。
それから数十分の間、カービィはノリリアに叱咤され続けている。
可愛らしいぱっちりお目目を釣り上げて、可愛らしい声でプリプリ怒るノリリアは、お世辞にも怖いとは言えないけれど……
何故だかカービィには効果抜群らしい。
床の上に正座して、項垂れた様子で、ちゃんと反省の態度を示すカービィ。
「創世からおよそ三千年の出来事を綴った世界魔法史の中でも、五本の指に入るほどの大事件の年代を一桁も間違えるなんて……。それでもフーガの魔導師ポかっ!? 何が虹の魔導師ポ!?? 王国のジョブ登録を抹消されたいポかぁっ!???」
「なっ!? そ、それだけはやめてくれぇっ!??」
「ならっ! 一から勉強し直すポねっ!!」
ノリリアは、先程革鞄から取り出した本の中でも、一番分厚い本を手にとって、正座するカービィの膝の上にドンッ! と置いた。
「ちょうど世界魔法史大全集があったポ。船の出航まではあと二日……。その間に、この一冊の全てを頭に叩き込むポよ!!!」
「ばっ!? それはさすがに無理だろっ!?? これ……、いったい何ページあるんだよ……?」
「無理じゃないポね、無理だと思うから無理なのポ、やろうと思えば出来るはずポ……。それとも何ポ? 世界最高峰の魔法教育を誇るビーシェント魔法学校を首席で卒業したカービィちゃんは、その功績までも失いたいポか??」
「ひぃっ!? それだけはっ!! それだけはご勘弁をぉっ!!!」
「だったら、これ、覚える事ポね。元々は全て学校で習ったことポ、丸っきり一から覚えるのとはわけが違うポね、二日間で充分だポ。二日後の夕方六時、タイニック号での出航前夜祭で、ちゃんと内容を覚え直したかあたちがテストするポ。その結果次第で、カービィちゃんのジョブ認定資格と首席卒業で授与した虹の魔導師の称号を剥奪するか否か、あたちが判断させてもらうポね。異論はないポ!?」
「はっ! はいっ!! 頑張って覚えますですっ!!!」
……うん、なんだか大変そうだねカービィ君。
俺にはどうする事も出来ないからさ、二日間真面目にお勉強する事をオススメしますよ。
こうして、ピタラス諸島をめぐる探索プロジェクトの内容をざっと説明してもらった俺たちは、明後日の夕方六時にタイニック号で再会する約束をして、ノリリアの部屋を後にしたのだった。
カリカリカリカリ
パラパラパラパラ
カリカリカリカリカリカリ
パラパラパラパラパラパラ
「ふぅ~……。やぁ~っと半分くらいかなぁ?」
「いいなぁ~モッモは。終わりが見えてさ? おいらなんて、もうさっきから何してんのか自分でも全くわかんなくなってきたぜ……」
宿屋、隠れ家オディロンの一室にて。
ベッドの上で、カービィは世界魔法史大全集を、俺は神様から貰った冒険の書を広げている。
「……カービィ、完全に集中力が切れてるね。リルミユさんに紅茶でも入れてもらう?」
「おっ、そうしよう! おまいも飲むか?」
「あ、うん、じゃあ頼むよ」
「がってん承知の助っ!!!」
ピョンっとベッドから飛び降りて、カービィは部屋から駆け出て行った。
……うん、じっとして勉強するって事が性に合わないんだろうな、カービィはさ。
そんな事を思いつつも、ちょっぴり疲れた俺も、手に持った羽ペンを一度置いて、再度ふぅ~っと大きく息を吐いた。
ノリリアたち白薔薇の騎士団の皆さんが宿泊している、北大通の超高級ホテルから帰ってきた俺たち四人は、特別する事も無かったし、時間も中途半端だと言う事で、シーツや枕の買い出しは明日にして、各々がやりたい事、やるべき事をする事にした。
グレコとギンロは、二人で国営軍の駐屯所に出かけて行った。
なんでも、実は起きていて、ノリリアの話を途中から聞いていたギンロは、俺たちを守る為に剣の腕を磨きたいとかなんとか……、と言うか、ただ単に、相手が手強そうだと感じて、ギンロの中に眠る魔獣の猛々しい本能が揺さぶられた、という感じだろうな。
魔法剣を手に、ニヤニヤとしながら出かけて行った。
グレコも、モッモを守る為に私も強くならなくちゃ! とかなんとか言って……、まぁ、こちらはそれが本心だろうな。
魔法弓を手に、駐屯所へと向かったのだった。
現在の時刻は~っと、何時だろうな?
ベッドから降りて、テクテクと歩き、窓から外を見る。
ジャネスコの港には、相変わらず大小様々な船が停泊しており、沢山の人々が往来している。
残念ながら、ここからではザサークの商船タイニック号は確認できない。
まだ空は青く、日も傾いていないし、午後三時くらいだろうか?
ここへ帰ってきてからずっと冒険の書を書き続けていたもんだから、肩が凝ってしまったな。
だけど、書きたい事が多すぎて、まだ半分ほどしか書けてないや……
今日中に書き終われるのかしらこれ?
窓の外を眺めながら、う~ん! と両手を上に伸ばしていると……
「ジェジェジェ?」
マンドラゴラのゴラが、ズボンのポケットから出てきた。
「あ、ゴラ、起きてたの?」
「ジェジェ~。ジェジェジェ、ジェ?」
「ん? あ~ありがとう、肩叩きしてくれるんだね、助かるよ~」
「ジェ~ジェ♪」
俺の肩までするりと登って来て、その小さく細い足で、肩叩きならぬ肩踏みを始めるゴラ。
ここ最近のゴラは、日中はとても静かで、もはやそこに居ることすら忘れてしまうほどに、俺のポケットに馴染んでいた。
ただ、俺と二人きりになった時はこのようにしてポケットから出てきて、話し掛けるかの如く、ジェジェ~っと鳴くのだ。
「ジェッ、ジェッ、ジェッ、ジェッ」
「お~良い感じ~♪ 結構力あるんだね~、ゴラ」
拉致事件の時に海に落ちて、勿論その時もポケットの中にいたゴラは、海水にやられて萎びれてしまったのだが……
もう駄目か? と思ったものの、リルミユさんの用意してくれたお風呂に一緒に浸かると、すぐさま回復してくれた。
意外や意外、マンドラゴラはなかなかに強い魔物なのだ。
だがしかし……
「ねぇゴラ、相談があるんだけど」
「ジェジェ?」
「……ゴラ、元いた森に帰らないかい?」
「ジュエッ!?」
俺の言葉に、ゴラの足がピタリと止まった。
「ほら、この間、海の水で萎びてしまって苦しかったでしょ? これから先も、何が起こるかわからない。僕のポケットの中は全然安全じゃないし、ゴラを守ってあげられる力は僕にはない。だからさ」
「嫌ジェッ!!!」
「……は?」
不意に聞こえた、言葉のような声に、俺は驚いてゴラを見る。
しかしゴラは……
「ジェジェジェ!? ジェジェジェジェジェジェッ!? ジェジェジェジェジェジェ~!!!」
何やら、かなりご立腹なようで、いつものジェジェ鳴きを連呼するだけだ。
さっきのは空耳だったのか?
そしてついにはその小さな手で、ポカスカと俺の頭を殴り始めた。
前述したように、思ったよりも力があって、痛い……
「いてっ。いててっ。わかった、わかったよ! ゴラも連れて行くよ!! けど、これから行くピタラス諸島はとっても危険な場所なんだ。だから、ちゃんと心構えをしておいてね」
「ジェジェ! ジェジェジェ~♪」
俺の言葉に安堵したらしいゴラは、ニパッと笑って肩踏みを再開させた。
ふ~、まったく……
ペットを飼うのも一苦労だぜ。
「うぅ……、ご、ごめんにゃさい……」
「だからいつも言っていたポよね!? 必須科目の授業はちゃんと起きてなさいポって!?? アーレイク・ピタラスの大陸大分断が五千年前って……、いったい、何をどうしたらそんな適当な事が言えるんだポかぁっ!???」
「う、うぅぅ……、ご、ごめんにゃ、しゃい……」
憐れカービィに落ちたのは、グレコの雷ではなく、ノリリアの怒りの鉄槌だった。
間抜けな声を上げて起床したカービィに対し、ノリリアはその小さな手で、思い切り脳天チョップを繰り出した。
寝起きの一発がかなり効いたらしいカービィは、文字通り頭の上にチカチカと星が飛んでいるかのような顔をしていた。
それから数十分の間、カービィはノリリアに叱咤され続けている。
可愛らしいぱっちりお目目を釣り上げて、可愛らしい声でプリプリ怒るノリリアは、お世辞にも怖いとは言えないけれど……
何故だかカービィには効果抜群らしい。
床の上に正座して、項垂れた様子で、ちゃんと反省の態度を示すカービィ。
「創世からおよそ三千年の出来事を綴った世界魔法史の中でも、五本の指に入るほどの大事件の年代を一桁も間違えるなんて……。それでもフーガの魔導師ポかっ!? 何が虹の魔導師ポ!?? 王国のジョブ登録を抹消されたいポかぁっ!???」
「なっ!? そ、それだけはやめてくれぇっ!??」
「ならっ! 一から勉強し直すポねっ!!」
ノリリアは、先程革鞄から取り出した本の中でも、一番分厚い本を手にとって、正座するカービィの膝の上にドンッ! と置いた。
「ちょうど世界魔法史大全集があったポ。船の出航まではあと二日……。その間に、この一冊の全てを頭に叩き込むポよ!!!」
「ばっ!? それはさすがに無理だろっ!?? これ……、いったい何ページあるんだよ……?」
「無理じゃないポね、無理だと思うから無理なのポ、やろうと思えば出来るはずポ……。それとも何ポ? 世界最高峰の魔法教育を誇るビーシェント魔法学校を首席で卒業したカービィちゃんは、その功績までも失いたいポか??」
「ひぃっ!? それだけはっ!! それだけはご勘弁をぉっ!!!」
「だったら、これ、覚える事ポね。元々は全て学校で習ったことポ、丸っきり一から覚えるのとはわけが違うポね、二日間で充分だポ。二日後の夕方六時、タイニック号での出航前夜祭で、ちゃんと内容を覚え直したかあたちがテストするポ。その結果次第で、カービィちゃんのジョブ認定資格と首席卒業で授与した虹の魔導師の称号を剥奪するか否か、あたちが判断させてもらうポね。異論はないポ!?」
「はっ! はいっ!! 頑張って覚えますですっ!!!」
……うん、なんだか大変そうだねカービィ君。
俺にはどうする事も出来ないからさ、二日間真面目にお勉強する事をオススメしますよ。
こうして、ピタラス諸島をめぐる探索プロジェクトの内容をざっと説明してもらった俺たちは、明後日の夕方六時にタイニック号で再会する約束をして、ノリリアの部屋を後にしたのだった。
カリカリカリカリ
パラパラパラパラ
カリカリカリカリカリカリ
パラパラパラパラパラパラ
「ふぅ~……。やぁ~っと半分くらいかなぁ?」
「いいなぁ~モッモは。終わりが見えてさ? おいらなんて、もうさっきから何してんのか自分でも全くわかんなくなってきたぜ……」
宿屋、隠れ家オディロンの一室にて。
ベッドの上で、カービィは世界魔法史大全集を、俺は神様から貰った冒険の書を広げている。
「……カービィ、完全に集中力が切れてるね。リルミユさんに紅茶でも入れてもらう?」
「おっ、そうしよう! おまいも飲むか?」
「あ、うん、じゃあ頼むよ」
「がってん承知の助っ!!!」
ピョンっとベッドから飛び降りて、カービィは部屋から駆け出て行った。
……うん、じっとして勉強するって事が性に合わないんだろうな、カービィはさ。
そんな事を思いつつも、ちょっぴり疲れた俺も、手に持った羽ペンを一度置いて、再度ふぅ~っと大きく息を吐いた。
ノリリアたち白薔薇の騎士団の皆さんが宿泊している、北大通の超高級ホテルから帰ってきた俺たち四人は、特別する事も無かったし、時間も中途半端だと言う事で、シーツや枕の買い出しは明日にして、各々がやりたい事、やるべき事をする事にした。
グレコとギンロは、二人で国営軍の駐屯所に出かけて行った。
なんでも、実は起きていて、ノリリアの話を途中から聞いていたギンロは、俺たちを守る為に剣の腕を磨きたいとかなんとか……、と言うか、ただ単に、相手が手強そうだと感じて、ギンロの中に眠る魔獣の猛々しい本能が揺さぶられた、という感じだろうな。
魔法剣を手に、ニヤニヤとしながら出かけて行った。
グレコも、モッモを守る為に私も強くならなくちゃ! とかなんとか言って……、まぁ、こちらはそれが本心だろうな。
魔法弓を手に、駐屯所へと向かったのだった。
現在の時刻は~っと、何時だろうな?
ベッドから降りて、テクテクと歩き、窓から外を見る。
ジャネスコの港には、相変わらず大小様々な船が停泊しており、沢山の人々が往来している。
残念ながら、ここからではザサークの商船タイニック号は確認できない。
まだ空は青く、日も傾いていないし、午後三時くらいだろうか?
ここへ帰ってきてからずっと冒険の書を書き続けていたもんだから、肩が凝ってしまったな。
だけど、書きたい事が多すぎて、まだ半分ほどしか書けてないや……
今日中に書き終われるのかしらこれ?
窓の外を眺めながら、う~ん! と両手を上に伸ばしていると……
「ジェジェジェ?」
マンドラゴラのゴラが、ズボンのポケットから出てきた。
「あ、ゴラ、起きてたの?」
「ジェジェ~。ジェジェジェ、ジェ?」
「ん? あ~ありがとう、肩叩きしてくれるんだね、助かるよ~」
「ジェ~ジェ♪」
俺の肩までするりと登って来て、その小さく細い足で、肩叩きならぬ肩踏みを始めるゴラ。
ここ最近のゴラは、日中はとても静かで、もはやそこに居ることすら忘れてしまうほどに、俺のポケットに馴染んでいた。
ただ、俺と二人きりになった時はこのようにしてポケットから出てきて、話し掛けるかの如く、ジェジェ~っと鳴くのだ。
「ジェッ、ジェッ、ジェッ、ジェッ」
「お~良い感じ~♪ 結構力あるんだね~、ゴラ」
拉致事件の時に海に落ちて、勿論その時もポケットの中にいたゴラは、海水にやられて萎びれてしまったのだが……
もう駄目か? と思ったものの、リルミユさんの用意してくれたお風呂に一緒に浸かると、すぐさま回復してくれた。
意外や意外、マンドラゴラはなかなかに強い魔物なのだ。
だがしかし……
「ねぇゴラ、相談があるんだけど」
「ジェジェ?」
「……ゴラ、元いた森に帰らないかい?」
「ジュエッ!?」
俺の言葉に、ゴラの足がピタリと止まった。
「ほら、この間、海の水で萎びてしまって苦しかったでしょ? これから先も、何が起こるかわからない。僕のポケットの中は全然安全じゃないし、ゴラを守ってあげられる力は僕にはない。だからさ」
「嫌ジェッ!!!」
「……は?」
不意に聞こえた、言葉のような声に、俺は驚いてゴラを見る。
しかしゴラは……
「ジェジェジェ!? ジェジェジェジェジェジェッ!? ジェジェジェジェジェジェ~!!!」
何やら、かなりご立腹なようで、いつものジェジェ鳴きを連呼するだけだ。
さっきのは空耳だったのか?
そしてついにはその小さな手で、ポカスカと俺の頭を殴り始めた。
前述したように、思ったよりも力があって、痛い……
「いてっ。いててっ。わかった、わかったよ! ゴラも連れて行くよ!! けど、これから行くピタラス諸島はとっても危険な場所なんだ。だから、ちゃんと心構えをしておいてね」
「ジェジェ! ジェジェジェ~♪」
俺の言葉に安堵したらしいゴラは、ニパッと笑って肩踏みを再開させた。
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ペットを飼うのも一苦労だぜ。
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