194 / 800
★港町ジャネスコ編★
186:くすぐりの刑
しおりを挟む
「ほらぁ! ザサークがしつこいから、客人に勘違いされたじゃないかぁ!?」
黄緑色の肌と三つの黒い角以外は、ほぼほぼ人間の子供と変わらない少女が、ザサークの膝の上から飛び降りてそう言った。
服装はタンクトップに短パンとかなりラフで、ともすれば男の子に間違えてしまいそうだが、声の感じやふとした仕草を見る限りでは女の子で間違いないだろう。
「何がだっ!? てめぇら誰だって聞いてんだっ!?? ノックもなしに俺様の部屋に入るとはいい度胸だなぁおいっ!!!」
全身の鱗を黒光りさせて、ザサークが立ち上がる。
小汚いランニングシャツに、ダボっとしたズボン。
しかし、肩に引っ掛けている赤く長い上着はちゃんとした感じのもので、どことなく船長感が漂っている。
そんなザサークの怒号を受けて、俺はササッとギンロの後ろに隠れた。
俺が太刀打ちできる相手ではなさそうだから、君たちなんとかしてくれたまえ。
特にカービィ君、君のせいでこうなっているんだから……、なんとかしてくれたまえ。
「あ~っと……、この商船に乗せてもらいたくて、直談判に来ました!」
……うん、正直なのはいい事だよカービィ君。
けどさ、もうちょっと説明の仕方ってものがあるじゃない?
何をしていたかは知らないけれど、何かの最中だった事は事実で、それを中断させてしまったわけだから、謝罪の言葉を言うのが先決ではないかな??
「あぁっ!? んなもん知るかぁっ!! 誰だって聞いてんだよこらぁっ!!!」
ひぃいぃぃっ!? 怖いっ! 怖すぎるぅっ!!
こんな人が船長の船に乗るだなんて、ヤダヤダ、無理無理無理!!!
「あっ! ザサーク!! ほら、この人カービィだよ!!! 虹の魔導師カービィ!!!!!」
黄緑色の肌の少女が、興奮気味にカービィを指差す。
「何っ!? 本当かてめぇっ!??」
ザサークの声色が、少しばかり変わった。
「ん、おいらは虹の魔導師カービィだっ!!!」
両腰に手を当てて、偉そうに胸を張るカービィ。
その姿に、ザサークと少女の目がキラキラと輝いた。
……いったい、何だって言うんだよおい。
「いやぁ~、まさか虹の魔導師カービィさんだとはつゆ知らず……。すまねぇな、怒鳴ったりしてよ」
ニコニコと笑いながら、船長椅子にゆったりと腰掛けるザサーク。
「いやぁ~、おいらも悪かったさ。てっきりお取り込み中かと思って……。興味本位で勢い余って入っちまったんだ。悪かった!」
ヘラヘラと笑いながら、ソファーに寄りかかるカービィ。
「お取り込み中って、てめぇ……、あんなガキンチョ相手に俺様が欲情するわけねぇだろうが? 俺様はこう、はち切れんばかりのムチムチボディーがお好みだぜぇ」
「ははははっ! おいらもそっちの方が好みだっ!!」
「ギャハハハッ! 虹の魔導師が俺様と同じ趣向とは、光栄だぜっ!!」
大きな声を出して、笑い合うカービィとザサーク。
……何だろうな、馬があってるのかこの二人は?
ソファーにちょこんと腰掛けて、ザサークとカービィのやり取りを眺める俺たち三人。
黄緑色の肌の少女に勧められるままに、船長室の大きなソファーに座っているわけだが……
この二人の会話には混ざりたくない……、きっと三人共そう思っているはずだ、誰も声を出さないでいる。
「お待たせしました~」
船長室の扉が開いて、先程の少女が入ってきた。
手にはコーヒーカップのようなものが四つ乗ったお盆を持って、俺たちにそれを配ってくれた。
中には温かい飲み物が入っている。
「おう、ライラ。俺様の分はどうした?」
少女の事を、ザサークはライラと呼んだ。
「ザサークの分はないよ! 俺をくすぐりまくった罰だっ!!」
俺って……、女の子じゃないのだろうか?
そして、さっきの悲鳴は、くすぐられていたからだったのか。
良かった、もっと大人なアレを想像していたもんだから……
「てめぇっ!? それはてめぇが訳わかんねぇ事をぬかしたからだろうがぁっ!??」
「新しい服が欲しいって言うののどこが訳わかんねぇのさぁっ!?」
おぉ? なんだなんだ、喧嘩かぁ??
「欲しがる服がおかしいからだろうがっ!? 何だってまたあんなフリフリしたもん欲しがるんだっ!??」
「悪いかよっ!? 俺だってな、お洒落したい年頃なんだよぉっ!!」
「お洒落だぁ~? んなもん、言葉遣いを直してからにするこったなぁっ!! 自分の事を俺なんて言う女がどこにいるってんだぁっ!??」
「うるせぇっ! こうでもしないと、野郎共に示しがつかねぇんだよぉっ!!」
「馬鹿かっ! 男のフリしたっててめぇは女だろうがっ!! 女なら女らしく、しおらしくしてやがれってんだ!!!」
「だったら! あの服買ってくれりゃいいじゃねぇかっ!? あれを着りゃ、俺だってちっとは女らしくしてやるよっ!!!」
「ばっ!? てめぇあんなもん着て船に乗る気かぁっ!?? それこそ野朗共が色めき立つだろうがっ!??? そんな事はこの俺様が許さねぇぞっ!!!!!」
「だから……、てめぇと話したって堂々巡りなんだよっ! この、馬鹿ザサーク!!」
「なっ!? 親父に向かって馬鹿とはなんだぁっ!!?」
「馬鹿は馬鹿だっ! 何度でも言ってやるよ!! 馬鹿ザサーク!!!」
「てっめぇ~……。もう一度くすぐりの刑だぁっ!!!!!」
「ぎゃあっ!? やめっ!!? やめろぉっ!!??」
あ~、あ~なるほど、こういう事か……
突如として始まった罵声の応酬と、くすぐりの刑を目の当たりにして、先程扉の外で聞いていた声の正体がようやく理解出来た。
そして、どうやら俺たちの存在を忘れてしまっているザサークとライラを、俺たち四人は、事が収束するまで黙って見守るしかないようだ。
う~ん、何だろうな……
先行きが非常に不安になってきたぞこれは……
黄緑色の肌と三つの黒い角以外は、ほぼほぼ人間の子供と変わらない少女が、ザサークの膝の上から飛び降りてそう言った。
服装はタンクトップに短パンとかなりラフで、ともすれば男の子に間違えてしまいそうだが、声の感じやふとした仕草を見る限りでは女の子で間違いないだろう。
「何がだっ!? てめぇら誰だって聞いてんだっ!?? ノックもなしに俺様の部屋に入るとはいい度胸だなぁおいっ!!!」
全身の鱗を黒光りさせて、ザサークが立ち上がる。
小汚いランニングシャツに、ダボっとしたズボン。
しかし、肩に引っ掛けている赤く長い上着はちゃんとした感じのもので、どことなく船長感が漂っている。
そんなザサークの怒号を受けて、俺はササッとギンロの後ろに隠れた。
俺が太刀打ちできる相手ではなさそうだから、君たちなんとかしてくれたまえ。
特にカービィ君、君のせいでこうなっているんだから……、なんとかしてくれたまえ。
「あ~っと……、この商船に乗せてもらいたくて、直談判に来ました!」
……うん、正直なのはいい事だよカービィ君。
けどさ、もうちょっと説明の仕方ってものがあるじゃない?
何をしていたかは知らないけれど、何かの最中だった事は事実で、それを中断させてしまったわけだから、謝罪の言葉を言うのが先決ではないかな??
「あぁっ!? んなもん知るかぁっ!! 誰だって聞いてんだよこらぁっ!!!」
ひぃいぃぃっ!? 怖いっ! 怖すぎるぅっ!!
こんな人が船長の船に乗るだなんて、ヤダヤダ、無理無理無理!!!
「あっ! ザサーク!! ほら、この人カービィだよ!!! 虹の魔導師カービィ!!!!!」
黄緑色の肌の少女が、興奮気味にカービィを指差す。
「何っ!? 本当かてめぇっ!??」
ザサークの声色が、少しばかり変わった。
「ん、おいらは虹の魔導師カービィだっ!!!」
両腰に手を当てて、偉そうに胸を張るカービィ。
その姿に、ザサークと少女の目がキラキラと輝いた。
……いったい、何だって言うんだよおい。
「いやぁ~、まさか虹の魔導師カービィさんだとはつゆ知らず……。すまねぇな、怒鳴ったりしてよ」
ニコニコと笑いながら、船長椅子にゆったりと腰掛けるザサーク。
「いやぁ~、おいらも悪かったさ。てっきりお取り込み中かと思って……。興味本位で勢い余って入っちまったんだ。悪かった!」
ヘラヘラと笑いながら、ソファーに寄りかかるカービィ。
「お取り込み中って、てめぇ……、あんなガキンチョ相手に俺様が欲情するわけねぇだろうが? 俺様はこう、はち切れんばかりのムチムチボディーがお好みだぜぇ」
「ははははっ! おいらもそっちの方が好みだっ!!」
「ギャハハハッ! 虹の魔導師が俺様と同じ趣向とは、光栄だぜっ!!」
大きな声を出して、笑い合うカービィとザサーク。
……何だろうな、馬があってるのかこの二人は?
ソファーにちょこんと腰掛けて、ザサークとカービィのやり取りを眺める俺たち三人。
黄緑色の肌の少女に勧められるままに、船長室の大きなソファーに座っているわけだが……
この二人の会話には混ざりたくない……、きっと三人共そう思っているはずだ、誰も声を出さないでいる。
「お待たせしました~」
船長室の扉が開いて、先程の少女が入ってきた。
手にはコーヒーカップのようなものが四つ乗ったお盆を持って、俺たちにそれを配ってくれた。
中には温かい飲み物が入っている。
「おう、ライラ。俺様の分はどうした?」
少女の事を、ザサークはライラと呼んだ。
「ザサークの分はないよ! 俺をくすぐりまくった罰だっ!!」
俺って……、女の子じゃないのだろうか?
そして、さっきの悲鳴は、くすぐられていたからだったのか。
良かった、もっと大人なアレを想像していたもんだから……
「てめぇっ!? それはてめぇが訳わかんねぇ事をぬかしたからだろうがぁっ!??」
「新しい服が欲しいって言うののどこが訳わかんねぇのさぁっ!?」
おぉ? なんだなんだ、喧嘩かぁ??
「欲しがる服がおかしいからだろうがっ!? 何だってまたあんなフリフリしたもん欲しがるんだっ!??」
「悪いかよっ!? 俺だってな、お洒落したい年頃なんだよぉっ!!」
「お洒落だぁ~? んなもん、言葉遣いを直してからにするこったなぁっ!! 自分の事を俺なんて言う女がどこにいるってんだぁっ!??」
「うるせぇっ! こうでもしないと、野郎共に示しがつかねぇんだよぉっ!!」
「馬鹿かっ! 男のフリしたっててめぇは女だろうがっ!! 女なら女らしく、しおらしくしてやがれってんだ!!!」
「だったら! あの服買ってくれりゃいいじゃねぇかっ!? あれを着りゃ、俺だってちっとは女らしくしてやるよっ!!!」
「ばっ!? てめぇあんなもん着て船に乗る気かぁっ!?? それこそ野朗共が色めき立つだろうがっ!??? そんな事はこの俺様が許さねぇぞっ!!!!!」
「だから……、てめぇと話したって堂々巡りなんだよっ! この、馬鹿ザサーク!!」
「なっ!? 親父に向かって馬鹿とはなんだぁっ!!?」
「馬鹿は馬鹿だっ! 何度でも言ってやるよ!! 馬鹿ザサーク!!!」
「てっめぇ~……。もう一度くすぐりの刑だぁっ!!!!!」
「ぎゃあっ!? やめっ!!? やめろぉっ!!??」
あ~、あ~なるほど、こういう事か……
突如として始まった罵声の応酬と、くすぐりの刑を目の当たりにして、先程扉の外で聞いていた声の正体がようやく理解出来た。
そして、どうやら俺たちの存在を忘れてしまっているザサークとライラを、俺たち四人は、事が収束するまで黙って見守るしかないようだ。
う~ん、何だろうな……
先行きが非常に不安になってきたぞこれは……
0
お気に入りに追加
496
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
異世界転移は定員オーバーらしいです
家具屋ふふみに
ファンタジー
ある日、転校した学校で自己紹介を行い、席に着こうとしたら突如光に飲まれ目を閉じた。
そして目を開けるとそこは白いような灰色のような空間で…土下座した人らしき物がいて…?
どうやら神様が定員を間違えたせいで元の世界に戻れず、かと言って転移先にもそのままではいけないらしく……?
帰れないのなら、こっちで自由に生きてやる!
地球では容姿で色々あって虐められてたけど、こっちなら虐められることもない!…はず!
え?他の召喚組?……まぁ大丈夫でしょ!
そんなこんなで少女?は健気に自由に異世界を生きる!
………でもさぁ。『龍』はないでしょうよ…
ほのぼの書いていきますので、ゆっくり目の更新になると思います。長い目で見ていただけると嬉しいです。
小説家になろう様でも投稿しています。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
隠れジョブ【自然の支配者】で脱ボッチな異世界生活
破滅
ファンタジー
総合ランキング3位
ファンタジー2位
HOT1位になりました!
そして、お気に入りが4000を突破致しました!
表紙を書いてくれた方ぴっぴさん↓
https://touch.pixiv.net/member.php?id=1922055
みなさんはボッチの辛さを知っているだろうか、ボッチとは友達のいない社会的に地位の低い存在のことである。
そう、この物語の主人公 神崎 翔は高校生ボッチである。
そんなボッチでクラスに居場所のない主人公はある日「はぁ、こんな毎日ならいっその事異世界にいってしまいたい」と思ったことがキッカケで異世界にクラス転移してしまうのだが…そこで自分に与えられたジョブは【自然の支配者】というものでとてつもないチートだった。
そしてそんなボッチだった主人公の改生活が始まる!
おまけと設定についてはときどき更新するのでたまにチェックしてみてください!
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる