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★港町ジャネスコ編★
148:なんちゅうジジイだっ!
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「吾輩の名はモーン!」
げっ、名前が「も」から始まるのかよ。
ちょっぴり被ってるじゃねぇか。
「獣人ヌート族のパントゥーである!!」
げっ、そこも被って……、いやいやいや! 俺はヌート族でもパントゥーでもないしっ!!
正真正銘、生粋のピグモルだしぃっ!!!
あっぶねぇ~、自分で自分に俺はヌート族だって暗示かけてたわ~。
「そして、何を隠そう吾輩の父は、既にこの世界には存在しない、ピグモルという絶滅種なのだっ!!!」
はは~ん、なるほどな。
つまり、母ちゃんがヌート族で、父ちゃんがピグモルだってことか。
それで……、この外見なのだね。
何故か偉そうに自己紹介をする、ヌート族でパントゥーだと言う店主のお爺さん、モーンをジロジロと観察する俺。
目と耳はピグモルそのものなのだが、ゴワゴワの毛並みと長い前歯はおそらくヌート族の遺伝なのだろう。
「……そりゃいいけど、なんでモッモがおまいさんの子どもって事になるんだ?」
カービィが尋ねた。
「実は……。吾輩は、ヌート族のはみ出し者でな。ヌート族の事は知っておるかね?」
「ん~、やんわりとはね」
「ふむ……。ヌート族とは、ここより遥か北に存在するこの国の首都、モントール市を囲む小さな村々に暮らす農夫の種族。働き者で有名なヌート族だが、吾輩はどうも農業が苦手でな。一人村を出て、ここでこのような商いをしておるのだ」
ふ~ん、ヌート族って働き者なのか。
なんて言ったっけな、あの国営軍の駐屯所でいちゃもんつけてきたラビー族……、サッパリ名前が出てこないあのムッツリ眼鏡野郎が、ヌート族は数ばかりいて能がないなんて言ってたけど……
農夫で働き者な種族なら、おそらくこの国の食物自給率はそのヌート族が支えているに違いない。
……しかしまぁ、農業が苦手っていうのはたぶん、ピグモルの血が混じっているからだろうな。
ピグモルは基本、せっせと働くのが苦手だからね。
テトーンの樹の村の畑の世話だって、俺が口を酸っぱくしてみんなに言い続けて、数年かかって定着したんだから。
「何を隠そう、吾輩、若き頃は大層モテた」
……なんだいきなり? 自慢か??
「歳を取ってもなお愛らしいこの顔が、どんな種族の女子にも大人気だったのだ!」
そりゃまぁ……、人気はありますよ。
だって、元々は愛玩動物だったわけですからね、ピグモルは。
「そして、求められるままに、吾輩は来るもの拒まずの姿勢を貫いた!!」
……誰彼構わず手を出したってわけか。
なんちゅうジジイだっ!
「おぉ~、なんと羨ましい……」
おいカービィ、鼻の下を伸ばすなっ!
「その中にはもちろんヌート族もいてな……。そのうち何人かはその……、子どもを授かったと言って、故郷の村に帰って行ったのだ」
お……、おぉ、なんか急にヘビーな話になったな。
「何それ? あなた、自分の子なのに一緒に育てなかったの??」
グレコが噛み付く。
「いやいや、勿論一緒に暮らそうと提案したとも! しかし、当時から、吾輩の暮らしぶりはお世辞にも安定しているとは言えないものでな。子どもを育てるなら故郷の村がいいと、みな吾輩を一人残して去って行ったのだ……」
……なんだろう、悉く無責任なはずなのに、なぜか可哀想だと感じてしまう。
「そして、お前のその目は、どこからどう見ても吾輩にそっくりだ。隠さずとも良い。母に聞いて、父である吾輩を探しにきたのだろう? そうなのだろう、息子よ!?」
あ~、えっとぉ~、とりあえずそのキラキラした目をやめてくれませんか?
100パーセント、いや、200パーセント、俺はあなたの子ではありません。
「店主よ、このモッモの父と母は我らも顔見知りである。断じてお主ではない」
ありがとうギンロ!
ハッキリ言ってくれて!!
「何を……、そうか!? 偽りの父の元で不幸な半生を送ってきたのだな!?? すまない、吾輩が不甲斐ないばかりに、息子がそのような辛い目に遭っていたとは……」
あの~、全力で悔やまないでください。
俺はこれまで、とってもとっても幸せに暮らしてきましたから!
「いやいや、おまいさんちょっと想像力が豊かすぎるぞ? モッモは、ちゃんと両親揃ってご健在だし、三つ子の兄と弟だっているんだからな!」
いつもならヘラヘラ笑っているカービィでさえも、あまりにモーンが行きすぎた頭の持ち主なので、そう言わざるを得なかった。
「いやいや、隠さずとも良い。モッモ、という名なのだな。その名からもわかるだろう、お前は間違いなく吾輩の子だ! さぁ、父の胸に飛び込んでおいでっ!!」
……だから、こんなイカれた店に入るのは嫌だったんだ。
ほら見て? この、さも感動的な再会を果たしたかのように、涙ぐみながら両手を広げているお爺さんヌート族を。
みんなで違うって言っているのに、妄想が逞しすぎるだろうっ!?
カランカラン
乾いた鐘の音が鳴って、店に他の客がやってきたようだ。
しかし、感動の再会真っ只中のモーンは、いらっしゃいの言葉をかける気もないらしい。
あ~も~面倒臭いなっ!
「僕はあなたの息子じゃありませんっ! 僕は、列記としたピグモルなんです!! ヌート族とのパントゥーとか、その子どもとか、そんなんじゃなくて……。ちゃんとしたピグモルなんですぅっ!!!」
大きな声で叫ぶ俺。
ここまで自分の事を、ヌート族のパントゥーだとか偽ってきたけど、もう限界だ!
俺は生粋のピグモルなんだぞ!!
父ちゃんも母ちゃんもちゃんといる、ピグモルのモッモなんだぞぉっ!!!
思わず叫んでしまった俺に対して、カービィは「あちゃ~」と呟き、グレコは執拗なモーンを睨みつけ、ギンロは呆れ顔でフンッ! 鼻を鳴らした。
そして、モーンはと言うと……
「……な、なんだと?」
軽く固まって、棒読みでそう言った。
そして徐々に、わなわなと体を震わせて……
「ぴっ!? ぴぐもっ!?? ピグモルだとぉおぉぉっ!???」
ドワーフ族もびっくりな、両手を万歳するように高く上げた最大級のおったまげポーズを披露してくれた。
両目は飛び出るんじゃないかと思うくらい大きく開かれて、長い前歯はカタカタと音を立てている。
そんなモーンの様子を見て、ようやく俺は、言ってはいけない事を言ってしまったのだと理解し、冷や汗をかくのであった。
げっ、名前が「も」から始まるのかよ。
ちょっぴり被ってるじゃねぇか。
「獣人ヌート族のパントゥーである!!」
げっ、そこも被って……、いやいやいや! 俺はヌート族でもパントゥーでもないしっ!!
正真正銘、生粋のピグモルだしぃっ!!!
あっぶねぇ~、自分で自分に俺はヌート族だって暗示かけてたわ~。
「そして、何を隠そう吾輩の父は、既にこの世界には存在しない、ピグモルという絶滅種なのだっ!!!」
はは~ん、なるほどな。
つまり、母ちゃんがヌート族で、父ちゃんがピグモルだってことか。
それで……、この外見なのだね。
何故か偉そうに自己紹介をする、ヌート族でパントゥーだと言う店主のお爺さん、モーンをジロジロと観察する俺。
目と耳はピグモルそのものなのだが、ゴワゴワの毛並みと長い前歯はおそらくヌート族の遺伝なのだろう。
「……そりゃいいけど、なんでモッモがおまいさんの子どもって事になるんだ?」
カービィが尋ねた。
「実は……。吾輩は、ヌート族のはみ出し者でな。ヌート族の事は知っておるかね?」
「ん~、やんわりとはね」
「ふむ……。ヌート族とは、ここより遥か北に存在するこの国の首都、モントール市を囲む小さな村々に暮らす農夫の種族。働き者で有名なヌート族だが、吾輩はどうも農業が苦手でな。一人村を出て、ここでこのような商いをしておるのだ」
ふ~ん、ヌート族って働き者なのか。
なんて言ったっけな、あの国営軍の駐屯所でいちゃもんつけてきたラビー族……、サッパリ名前が出てこないあのムッツリ眼鏡野郎が、ヌート族は数ばかりいて能がないなんて言ってたけど……
農夫で働き者な種族なら、おそらくこの国の食物自給率はそのヌート族が支えているに違いない。
……しかしまぁ、農業が苦手っていうのはたぶん、ピグモルの血が混じっているからだろうな。
ピグモルは基本、せっせと働くのが苦手だからね。
テトーンの樹の村の畑の世話だって、俺が口を酸っぱくしてみんなに言い続けて、数年かかって定着したんだから。
「何を隠そう、吾輩、若き頃は大層モテた」
……なんだいきなり? 自慢か??
「歳を取ってもなお愛らしいこの顔が、どんな種族の女子にも大人気だったのだ!」
そりゃまぁ……、人気はありますよ。
だって、元々は愛玩動物だったわけですからね、ピグモルは。
「そして、求められるままに、吾輩は来るもの拒まずの姿勢を貫いた!!」
……誰彼構わず手を出したってわけか。
なんちゅうジジイだっ!
「おぉ~、なんと羨ましい……」
おいカービィ、鼻の下を伸ばすなっ!
「その中にはもちろんヌート族もいてな……。そのうち何人かはその……、子どもを授かったと言って、故郷の村に帰って行ったのだ」
お……、おぉ、なんか急にヘビーな話になったな。
「何それ? あなた、自分の子なのに一緒に育てなかったの??」
グレコが噛み付く。
「いやいや、勿論一緒に暮らそうと提案したとも! しかし、当時から、吾輩の暮らしぶりはお世辞にも安定しているとは言えないものでな。子どもを育てるなら故郷の村がいいと、みな吾輩を一人残して去って行ったのだ……」
……なんだろう、悉く無責任なはずなのに、なぜか可哀想だと感じてしまう。
「そして、お前のその目は、どこからどう見ても吾輩にそっくりだ。隠さずとも良い。母に聞いて、父である吾輩を探しにきたのだろう? そうなのだろう、息子よ!?」
あ~、えっとぉ~、とりあえずそのキラキラした目をやめてくれませんか?
100パーセント、いや、200パーセント、俺はあなたの子ではありません。
「店主よ、このモッモの父と母は我らも顔見知りである。断じてお主ではない」
ありがとうギンロ!
ハッキリ言ってくれて!!
「何を……、そうか!? 偽りの父の元で不幸な半生を送ってきたのだな!?? すまない、吾輩が不甲斐ないばかりに、息子がそのような辛い目に遭っていたとは……」
あの~、全力で悔やまないでください。
俺はこれまで、とってもとっても幸せに暮らしてきましたから!
「いやいや、おまいさんちょっと想像力が豊かすぎるぞ? モッモは、ちゃんと両親揃ってご健在だし、三つ子の兄と弟だっているんだからな!」
いつもならヘラヘラ笑っているカービィでさえも、あまりにモーンが行きすぎた頭の持ち主なので、そう言わざるを得なかった。
「いやいや、隠さずとも良い。モッモ、という名なのだな。その名からもわかるだろう、お前は間違いなく吾輩の子だ! さぁ、父の胸に飛び込んでおいでっ!!」
……だから、こんなイカれた店に入るのは嫌だったんだ。
ほら見て? この、さも感動的な再会を果たしたかのように、涙ぐみながら両手を広げているお爺さんヌート族を。
みんなで違うって言っているのに、妄想が逞しすぎるだろうっ!?
カランカラン
乾いた鐘の音が鳴って、店に他の客がやってきたようだ。
しかし、感動の再会真っ只中のモーンは、いらっしゃいの言葉をかける気もないらしい。
あ~も~面倒臭いなっ!
「僕はあなたの息子じゃありませんっ! 僕は、列記としたピグモルなんです!! ヌート族とのパントゥーとか、その子どもとか、そんなんじゃなくて……。ちゃんとしたピグモルなんですぅっ!!!」
大きな声で叫ぶ俺。
ここまで自分の事を、ヌート族のパントゥーだとか偽ってきたけど、もう限界だ!
俺は生粋のピグモルなんだぞ!!
父ちゃんも母ちゃんもちゃんといる、ピグモルのモッモなんだぞぉっ!!!
思わず叫んでしまった俺に対して、カービィは「あちゃ~」と呟き、グレコは執拗なモーンを睨みつけ、ギンロは呆れ顔でフンッ! 鼻を鳴らした。
そして、モーンはと言うと……
「……な、なんだと?」
軽く固まって、棒読みでそう言った。
そして徐々に、わなわなと体を震わせて……
「ぴっ!? ぴぐもっ!?? ピグモルだとぉおぉぉっ!???」
ドワーフ族もびっくりな、両手を万歳するように高く上げた最大級のおったまげポーズを披露してくれた。
両目は飛び出るんじゃないかと思うくらい大きく開かれて、長い前歯はカタカタと音を立てている。
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