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★ピタラス諸島、後日譚★

768:パーティーリーダー

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●パーラ・ドット大陸●

 ワコーディーン大陸より以南、ピタラス諸島を越えて、ランダーガン大海を更に南に向かった先にある中規模大陸。
 大陸のほとんどが乾燥地帯で、中央には広大なパーラ砂漠が存在する。
 海に面している地域には多少の緑が有り、北端と東西の海岸沿いに一つずつ、総じて三つの国が存在している。
 その三つの国は、砂漠三国さばくさんごくと呼ばれており、それぞれがパーラ・ドット大陸全土の所有権を主張している為に、数百年もの昔から国同士のいざこざが絶えず、現在も対立状態が続いている。

 大陸に暮らす種族は多種多様であるが、どの種族も乾燥地帯に耐え得る心体を持った、強い種族である。
 特に、砂漠三国と呼ばれる国々を治める三種族は、その歴史の長さからも、パーラ・ドット大陸の過酷な環境に完璧に順応しており、その身体能力も抜群に高い。
 また、その三種族は、三種族ともが蛮族指定されている種族であり、身の内に野蛮さを秘めている種族であると認定されている為、パーラ・ドット大陸及び砂漠三国への大陸外からの旅行者はほとんどいない。
 それ故に、パーラ・ドット大陸の内情は解り辛く、世界的に見ても、非常に閉鎖的な地域であるといえよう。
 
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「んじゃ~まとめっぞ!? おいら達は当初の予定通り、一度アーレイク島に戻って、商船タイニック号でパーラ・ドットへと向かう。そんでもって、おいら達がパーラ・ドットへ到着したら、モッモが空間移動でフーガに飛んで、ジオーナとトゥエガとウィルを拾って、パーラ・ドットへ連れて行く……、これでいいよなっ!??」

 ノリリアが提案した事を、さも自分が考えた作戦かのようにまとめにかかるカービィ。
 その言葉に対し、ノリリアは少々ムッとした顔付きながらも頷いて、ジオーナも眉間に皺を寄せたままの難しい顔で小さく頷いた。
 他方、納得したような表情で深く頷くトゥエガと、満面の笑みで嬉しそうにコクコクと高速で何度も頷くウィル。
 ローズ、コニーちゃん、グレコも、特に異論は無さそうだ。

 ふぅ~、どうやら話は上手くまとまったようですね、良かった良かった♪ ……って、いやっ!? 
 はいぃっ!!?
 何勝手にまとまってんだよぅっ!!??

 周囲の流れの速さについていけず、完全に発言の機会を逃してしまった俺は、一人心の中でアワアワとする。

 ジオーナとトゥエガとウィルが旅に同行するっ!?
 いやいやいやいや、急展開にも程があるぞっ!!?
 こんな意味不明なメンバーで、この先どうするんだよぉおっ!!??
 しかも俺……、またアッシー君かよぉおっ!!???

(毎度毎度の事だけど、作者のやつ、いったい何を考えてんだっ!?)

 だけども、時既に遅し……
 俺が心の中でいくら焦ろうとも、決定は覆らないだろう。

「まぁ七日……、いや、今日が15日だから、今日も含めば九日あるな。それに、船の運航次第ではもう一日……、という事は、ざっと計算して十日間か? うむ、十日あれば、なんとかなりそうだな。なぁ、ジオーナ」

 トゥエガの問い掛けに、ジオーナはかなり苛立った様子ながらも、渋々と頷く。

「決まりだねっ!? じゃあ僕、早速準備してこよ~っと♪」

 るんるんスキップで、一人部屋を出て行くウィル。

「ポポゥ。団長、コニーちゃん、これで大丈夫ですポか?」

 確認を取るノリリア。

「えぇ、わたくしは構わなくてよ」

「報告書をまとめてくれさえすればいい。あとはそうだね……、年末の総会当日までには帰ってきな」

 笑顔のローズと、ニヤリ笑いのコニーちゃん。

「さて、そうと決まれば忙しいな。よしっ! 一丁やるかぁあっ!!」

 ご自慢の筋肉をモコモコと盛り上がらせて、ワサワサと頭を揺らしながら、部屋を出て行くトゥエガ。

「はぁ~……、報告書……。チッ! あんなもの、作ったとて誰が見る? 毎年毎年、余計な仕事をさせやがって……。政界のじじい共めが、さっさとくたばりやがれっ!!」

 小声ながらもブツブツと、恐ろしい言葉を口にしながら、トゥエガに続いて部屋を出て行くジオーナ。

 あの三人と、一緒に、旅を……、するのか?
 ウィルはマイペースだし、トゥエガはワサワサだし、ジオーナは怖いし……
 いろんな意味で、大丈夫かしら……??

「ポポポ、それじゃあ……。捜索遠征隊の名簿を急いで作るポよ! パーティーリーダーは、カービィちゃんでいいポ?」

「お? パーティーリーダーか!? 久しぶりだな~、その響き。いいぞっ☆」

 キラーンとキメ顔スマイルのカービィと、あえてそれを見ないノリリア。

 ……てか、パーティーリーダー、カービィなのね。
 モッモ様御一行のはずなのに、俺じゃないのね。
 なんかそれって……、いや、いいよもう、ブーブー。

「ガラパゴ老師様、もう少しだけお待ちくださいポ。セーラ、手伝ってポ!」

「はっ!? はいっ!!」

 受付嬢のセーラを伴って、ノリリアも部屋を出て行った。

「老師殿、此方に座ってお待ち下さい」

 ライネルが、何処からかそっと椅子を出してきた。
 ガラパゴ老師は眠そうな様子で、のそっと椅子に腰掛けた。

「ふぁ~あっ! 難しい話をしたら、眠くなっちゃったわ~。グレコ、今夜は泊まっていくの?」

 大きな欠伸をしながらそう言ったローズが、隣のグレコに問い掛ける。
 とろんとした寝惚け眼ではあるものの、そのキラキラとした表情から、どうやらまだガールズトークがしたいようだ。

「あ……、いいえ、泊まらないわ。元々すぐに戻る予定だったから」

 一瞬迷うも、正しい返事をするグレコ。

「そう? もう夜中の2時だし、泊まっていけばいいのに……」

 残念そうに、口を尖らせるローズ。

「えっ、もうそんな時間なのね!? あ、でも……。確か、時差があるから、アーレイク島ではまだお昼かも!」

 おっと……、グレコはまだ、時差の事をよく分かってないようだ。

「いやいや、それはねぇよグレコさん。フーガとアーレイク島の時差は七時間だから、あっちは今、夜の七時ぐらいじゃねぇかな」

 訂正するカービィ。

「あら、そうなの? そしたら……、ううん、泊まるのはやめておくわ。また今度の機会にね」

 にっこりと笑うグレコ。

「きっとよ! 約束ねっ!!」

 駄々をこねる小さな女の子みたいな声で、ローズはそう言った。
 まさかこの可愛いローズが、あんなにも恐ろしいドラゴンに変身できるなんて……、グレコは知る由もないだろうな。

「モッモ、先程の三名が、我らに同行するのか?」

 ずーっと静かにステイしていたギンロが、そう尋ねてきた。

「あ、うん。なんか……、そうなっちゃったね、ははは。……はぁ~」

 思わず溜息が出ちゃう俺。

「ガハハッ! 賑やかになるのぉ~!!」

 他人事のように笑うテッチャ。
 まぁ、テッチャはこの後テトーンの樹の村に帰るだろうから、他人事なんだけどね、実際。

「心配すんなモッモ! トゥエガは良い奴だし、ジオーナは強ぇ~し、ウィルは……? ウィルはよく知らねぇけど、たぶん大丈夫だろっ!? なははははっ!!!」

 いつも通り、適当な事を言うカービィ。
 さっき一瞬だけど、行方不明者の名前が判明した時に深刻な表情になっていたのは、幻だったのかも知れない。

「ふむ、カービィがそう言うならば、心配は要らぬであろうが……。先程の女、凄まじいものを背負っておった」

 ほう? 凄まじいものとは何かね、ギンロ君や??

「えっと……、何が? 迫力が凄かったって事??」

「いや、その様な良いものでは無い。あれは恐らく……、死念。それ即ち、亡き者の思いが形となったものだ。あの女の背後には、おびただしい数の死念が渦巻いていた。あの女……、只者では無かろう」

 おおう、出たよ出たよ、ギンロのオカルト発言。
 死念だとぉ~? やめてよもぉ~、おっかない!
 ジオーナ自身がおっかないのに、オバケ付きだなんてもう最悪じゃんっ!?
 俺、迎えに来るの、やめようかなぁ……??

「モッモ、ずっと、見てる、ぞ」

 ふぁ? ティカよ、急に何よ??
 ずっと見てるって……、何をよ???

 唐突にそう言ったティカは、くいくいっと顎をしゃくった。
 その先にいるのは、椅子に座った亀……、ではなく、国王の使いであるガラパゴ老師だ。

 ガラパゴ老師は、ティカの言った通り、じーっとこっちを見ている。
 なんとも言えない無表情な亀顔で、じーっと、俺の事を見ているのだ。
 
 な……、何よ?
 そんなにじーっと見ないでよ。

 丸眼鏡の奥にある、全く瞬きをしないその老いた目に見つめられ、俺は身も心も固まった。
 そして……

「ほぉ~ほっほっほっ、面白い。かように面白い生き物は、久しく見た。アーレイク以降、時の神の使者と名乗る者には、ついぞ出会う事が無かったが……。そうかぇ、お前さんがなぁ~」

 目を細めながら、笑うガラパゴ老師。
 その表情は、遠方から来た孫を迎える祖父のように優しくて、どこか切なくなるような……

「時の神の使者が世に放たれるは、世界が変革の時を迎えた証。お前さんの、これからの行い、その一つ一つが、世界を右にも左にも動かす事になる。正しき答えは何か、和平への道は何れか……、己の心をしかと持ちなされ。それが、最良の未来へと、繋がっていく」

 何故だか、ガラパゴ老師に悟りの様なものを説かれて、俺はとりあえず頷いた。
 
「カービィ・アド・ウェルサー、お前の言葉は正しかったと、これで証明されたなぁ。しかとこのお方をお守りするように。それが、お前に与えられた役目なのだろう?」

 爺ちゃんが孫に語り掛けるように、言葉を紡ぐガラパゴ老師。

「んだっ! 大丈夫さ、ガラパゴっちゃん!! 言われなくてもおいらは、ちゃ~んとモッモを守ってみせるさ!!!」

 カービィ、お前……
 この、見るからに御高齢で、絶対偉い人であろうガラパゴ老師に対し、タメ口はおろか、その名前を「ちゃん」付けで呼ぶなんて、なんて不届き者なのっ!?
 あんた、処刑されるわよっ!!?

 などと、俺がヒヤヒヤしていると……

 ドタドタドタッ!!!

 何やら運動神経の悪そうな足音が聞こえてきたかと思うと、部屋の扉が開いて、そこには汗だくのパロット学士が現れた。

「はぁ、はぁ……、も、モッモ、さん……。はぁ……、おっ! お待たせしましたぁあっ!!」

 めちゃくちゃやる気満々な様子で、肩を大きく上下させながら、鼻息荒く叫んだパロット学士。
 その両腕には、大量の書物が抱えられている。

 一方で俺は、何故自分の名前が呼ばれたのか、理由が分からずに、軽く首を傾げた。

 えっとぉ……、待って無いけど?
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