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★ピタラス諸島、後日譚★
756:爪
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お買い物道中4軒目、武器屋にて。
「槍よか爪の方がいいんじゃねぇか?」
カービィが唐突にそう言った。
今俺達がいる場所は、フゲッタの東大通りに面した武器屋。
間に合わせで持ってきた槍が早々に壊れてしまい、バーバー族から貰った槍も役に立たなかった哀れなティカの為に、新しい槍を買おう! という事になったのだ。
この武器屋の店主である、カバみたいな獣人、その名もワポン。
(その外見は、一瞬、河馬神タマスを俺に思い起こさせたが、声がダンディー且つ口調がハッキリしているからして、喋ると全く別人だと認識できた、当たり前だけど……)
閉店間際だったが故に他に客が居なかった為、店主である彼に案内してもらいながら、槍コーナーへとやった来た途端、カービィが先程の言葉を口走ったのだ。
「いきなり何を言い出すのよ? ティカは槍が欲しいんでしょう??」
先程までの苛々を封印したらしいグレコが、いつも通りの声色でティカに尋ねる。
ティカは無言で頷いて、目の前に並ぶ槍へと視線を向けた。
壁に立て掛けられている、大小様々な、数百本の槍。
先端の刃の形も、持ち手の装飾も様々で、いろんなものがあって見ていて楽しくなる。
……まぁ全部、俺には扱えないんだけどね。
「う~ん、でもなぁ~……。ティカの並外れた身体能力と攻撃力を最大限活かすには、爪の方が確実に良い! とおいらは思うんだよな~」
ドヤ顔しつつ、二重顎に手を添えて、尚もそんな事を口走るカービィ。
「並外れた身体能力と攻撃力」という単語に反応したらしい、ギンロの耳がピクリと動き、同時にティカもクルッと此方に顔を向けた。
「あ~……、爪とは???」
尋ねる俺。
「ほら、クトゥルーとの戦いでさ、槍が無かったティカは自分の爪で戦ってたろ? その姿を見て思ったんだ。ティカは、何か武器を使うより、格闘技を駆使した肉弾戦というか……、接近戦の方が向いてるんじゃねぇのかなって。槍も悪くは無いだろうけど、ティカは体もでかいし、槍の分のリーチを考えて動くとなると、素早い相手には逆に不利になる事もあるだろう。船の上でギンロとやり合った時も、身のこなしが重いっていうか……、いまいちしっくりきてない感じが見受けられたからな。あんだけ厄介なクトゥルーの触手に対応出来たのも、たぶん余計な武器を持たずにいたからだと思うんだ。だから、ティカは槍よか爪の方が断然いい! うん!!」
ほう? つまり……、槍はやめて、爪で戦えと??
なら、爪はティカの指に元々生えてるんだから、ここでは何も買わないという事かしら???
「なるほどの。店主や、ここには爪装備は置いてあるんか?」
武器屋に入る直前に、何故だかフードをしっかりと被り直していたテッチャが、店主のワポンに問い掛ける。
ね……、ネイル、グローブだと?
何その名前??
直訳したら、爪の手袋だけど……、何それ???
爪の一本一本に、小さな袋でも被せるんですか????
「あるにはあるが……、ここいらじゃ爪使いはあまり居なくてな。三年ほど前に入荷したのが最後だ。新品は新品だが、型落ちの旧品になる。それで良いのなら見せるが……?」
ワポンはあまり乗り気じゃなさそうだ。
でも……
「だとよ。どうするティカ?」
ティカに尋ねるカービィ。
するとティカは……
「見よう」
即答した。
え、見るんだ?
槍はいいの??
どうやら、カービィの先程の言葉が効いているらしい。
ティカはあっさりと槍を諦めた。
ワポンに続いて、広い店内の片隅へと向かう俺達。
そこには、明らかに残り物ですって感じのいろんな武器と、埃を被った木箱が並んでいて、その中にお目当ての物があるらしい。
壁際に無造作に積まれている木箱を開けて、ガサガサと漁るワポン。
そして、近くにあったテーブルに、取り出した物を並べていった。
おぉ~!
これが爪かっ!!
なるほどそれで、《ネイル・グローブ》なんて呼ばれているわけねっ!!!
初めて見るそれらに、俺は深く納得する。
爪装備は、その名の通りに手袋であった。
勿論ただの手袋では無く、毛糸で出来ているわけでもない。
頑丈な皮と金属で出来た手袋、その指の付け根より少し下の部分から、鋭利に輝く長い刃物が着いているのだ。
刃物の色や形は様々で、それらは猛禽類の足の爪のようだったり、ティカのような竜人の手にあるそれとよく似ていたり、或いは猫の爪のように小さい物もあるが、どれも見るからに殺傷能力が高そうである。
「これで全部だ。悪いな、品揃えが悪くて」
ワポンはそう言って、ふ~っと息を吐いた。
ワポンが木箱から取り出した爪装備は全部で14個。
そのどれもが、凶器として申し分無い迫力を放っている。
こんなのを手に着けた奴と対峙した日にゃ~、俺なんか一瞬で、ペラッペラのスライスピグモルにされてしまうだろうな~、ははははは~。
アホでネガティブな妄想をする俺。
そんな時、一対の爪装備が目に留まった。
一際輝きを放つ、緑色の刃物。
極限まで磨き上げられているのであろうそれは、キラキラと宝石のように美しく煌めいている。
装着する為のバンドの部分は赤い鱗で覆われており、ティカの体表にあるそれにとてもよく似ていた。
「確かに物は少ないが……、なかなかにええもんを揃えておるのぉ~」
一つ一つ手にとって、繁々と観察していくテッチャ。
そして、俺が気になっていた、緑色の刃物がついた爪装備を手にした……、その時だ。
「これはまた、素晴らしい翡翠じゃな! 磨き方も一級品じゃて、何故こんなものが、こんな所に埋まって……、ん?うぬっ!? こっ!!? これはっ!?!?」
テッチャが叫んだ。
ワナワナと体を震わせるながら、両目をカッ! と見開いて、緑色の宝石のような刃物がついた爪装備の、バンド部分にある長さ調節の為の小さな金属のバックルを凝視している。
「何? どうしたの??」
「んんん???」
グレコ、ギンロ、ティカ、いつの間にか椅子に乗っていたカービィが、それを覗き込む。
俺は、高さが足りなくて、机の下で待機です……、けっ!
「あら? 何か書いてあるわね」
グレコがそう言った。
何が書いてあるんですかぁ~?
「み、ず、た、き……、ミズタキ? 名前かこれ??」
カービィがそう言った。
ミズタキだと? ……誰だ??
すると、テッチャは小刻みに震えながら話し始めた。
「ミズタキ・トゥーフ。この名前を知らぬはドワーフに在らず……。我が祖国デタラッタにおいて、最上級の鍛治職人である証、ゴッド級マスターの称号を作りし権威……。独自の技術で編み出した加工法によって、様々な武器防具をこの世に生み出し、数多の英雄に授けて回ったという、伝説の鍛治職人じゃよ。ミズタキは翡翠を用いて物を創るという噂じゃったが……。なるほどのぉ、噂は真であったか……」
…………え? 何が??
「どういう事? よく分からないんだけど……。この武器は、その伝説のドワーフ鍛治師が作ったって事なのかしら??」
ほぼ独り言に近いテッチャの言葉を、ちゃんと理解出来たらしいグレコが問い掛けた。
「うむ、簡単に言うとそういう事じゃ。店主……、これが何故ここに?」
テッチャが尋ねると、今度は店主のワポンが、テッチャを見ながらワナワナと震えているでは無いか。
「ま、まさかとは思っていたが……、お、お前……、お前っ! ドワーフかっ!?」
ビシィッ! という効果音が似合いそうなほどに、ぶっとい人差し指をテッチャに向けて突き立てるワポン。
「がっ!? しまったっ!!?」
慌てるテッチャ。
え!? なになにっ!!?
今度は何なのっ!!??
「なはははっ! バレちまったかっ!!」
笑うカービィ。
何が何だか分からず、クエスチョンマークが頭の上に浮かぶ俺、グレコ、ギンロにティカ。
「ドワーフがこの店に何の用だ!? くっそ……、怪しいと思ったんだ! こんな閉店間際に、羽振りが良さそうな団体客が来るなんてっ!!」
一人、腕をめちゃくちゃバタバタしながら、血相を変えて叫ぶワポン。
するとテッチャは、潔くフードを脱ぎ捨てて……
「すまんすまんっ! 隠すつもりは無かったんじゃが、こうなると思っての、静かにしてるつもりじゃったんじゃ!! しかし店主よ、これは値打ち物じゃぞ!? いったいどこで手に入れた!!?」
話を爪装備に戻そうとする。
だけどワポンは、気が動転しているらしく……
「まさかっ!? この店を買収しに来たんじゃっ!!? まだローンが残ってるんだぞ!!??」
ブルブルと全身を震わせながら、訳の分からない事を叫び続けている。
以下、テッチャとワポンのやり取りが続く……
「そんな事はせんてっ! それよりこの爪装備、幾らで売ってくれる? わしが見た限り、原価は20万センス程度じゃが、ミズタキの作った物となると、その数百倍の価値が……。いやしかし、箱の中に眠っとったくらいじゃて、廃品一歩手前だったわけじゃろ?? なら、原価の20万でどうじゃ???」
「なっ!? 何言ってんだお前っ!!? ドワーフに物を売るわけがないだろうっ!!??」
「買うのはわしじゃない! こっちの竜人の旦那が使うもんじゃて、問題なかろう!?」
「いや駄目だっ! ドワーフに武器を売ったなんて、噂でも立ってみろ!? この店が潰れてしまうだろうがっ!!?」
「ガハハッ! それほどやわな店には見えんがのぉ!? まぁいい……、とりあえずこれを20万で売ってくれっ!! そいで、金はこっちの小こいのが払うでの。わしは先に店から出ておくから、それでええじゃろ?」
「待てっ! 一人で外に出るなっ!! 逆に目立つだろうがっ!!!」
「お? それもそうじゃな。じゃあ……、もう少し、店内を見させてもらおうかの。まだ掘り出し物がありそうじゃて♪」
「なっ!? くぅっ!!? あぁあぁぁ~~~!!??」
ご機嫌な様子で、店内を見ようと歩き出すテッチャ。
頭を抱えて苦悩するワポン。
えっとぉ……、何?
何が、どうなってんの??
首を傾げている俺、グレコ、ギンロとティカに向かって、事態を把握出来ているらしいカービィが……
「にししし。後で説明してやるよ」
と、悪い顔で笑いながら言った。
「槍よか爪の方がいいんじゃねぇか?」
カービィが唐突にそう言った。
今俺達がいる場所は、フゲッタの東大通りに面した武器屋。
間に合わせで持ってきた槍が早々に壊れてしまい、バーバー族から貰った槍も役に立たなかった哀れなティカの為に、新しい槍を買おう! という事になったのだ。
この武器屋の店主である、カバみたいな獣人、その名もワポン。
(その外見は、一瞬、河馬神タマスを俺に思い起こさせたが、声がダンディー且つ口調がハッキリしているからして、喋ると全く別人だと認識できた、当たり前だけど……)
閉店間際だったが故に他に客が居なかった為、店主である彼に案内してもらいながら、槍コーナーへとやった来た途端、カービィが先程の言葉を口走ったのだ。
「いきなり何を言い出すのよ? ティカは槍が欲しいんでしょう??」
先程までの苛々を封印したらしいグレコが、いつも通りの声色でティカに尋ねる。
ティカは無言で頷いて、目の前に並ぶ槍へと視線を向けた。
壁に立て掛けられている、大小様々な、数百本の槍。
先端の刃の形も、持ち手の装飾も様々で、いろんなものがあって見ていて楽しくなる。
……まぁ全部、俺には扱えないんだけどね。
「う~ん、でもなぁ~……。ティカの並外れた身体能力と攻撃力を最大限活かすには、爪の方が確実に良い! とおいらは思うんだよな~」
ドヤ顔しつつ、二重顎に手を添えて、尚もそんな事を口走るカービィ。
「並外れた身体能力と攻撃力」という単語に反応したらしい、ギンロの耳がピクリと動き、同時にティカもクルッと此方に顔を向けた。
「あ~……、爪とは???」
尋ねる俺。
「ほら、クトゥルーとの戦いでさ、槍が無かったティカは自分の爪で戦ってたろ? その姿を見て思ったんだ。ティカは、何か武器を使うより、格闘技を駆使した肉弾戦というか……、接近戦の方が向いてるんじゃねぇのかなって。槍も悪くは無いだろうけど、ティカは体もでかいし、槍の分のリーチを考えて動くとなると、素早い相手には逆に不利になる事もあるだろう。船の上でギンロとやり合った時も、身のこなしが重いっていうか……、いまいちしっくりきてない感じが見受けられたからな。あんだけ厄介なクトゥルーの触手に対応出来たのも、たぶん余計な武器を持たずにいたからだと思うんだ。だから、ティカは槍よか爪の方が断然いい! うん!!」
ほう? つまり……、槍はやめて、爪で戦えと??
なら、爪はティカの指に元々生えてるんだから、ここでは何も買わないという事かしら???
「なるほどの。店主や、ここには爪装備は置いてあるんか?」
武器屋に入る直前に、何故だかフードをしっかりと被り直していたテッチャが、店主のワポンに問い掛ける。
ね……、ネイル、グローブだと?
何その名前??
直訳したら、爪の手袋だけど……、何それ???
爪の一本一本に、小さな袋でも被せるんですか????
「あるにはあるが……、ここいらじゃ爪使いはあまり居なくてな。三年ほど前に入荷したのが最後だ。新品は新品だが、型落ちの旧品になる。それで良いのなら見せるが……?」
ワポンはあまり乗り気じゃなさそうだ。
でも……
「だとよ。どうするティカ?」
ティカに尋ねるカービィ。
するとティカは……
「見よう」
即答した。
え、見るんだ?
槍はいいの??
どうやら、カービィの先程の言葉が効いているらしい。
ティカはあっさりと槍を諦めた。
ワポンに続いて、広い店内の片隅へと向かう俺達。
そこには、明らかに残り物ですって感じのいろんな武器と、埃を被った木箱が並んでいて、その中にお目当ての物があるらしい。
壁際に無造作に積まれている木箱を開けて、ガサガサと漁るワポン。
そして、近くにあったテーブルに、取り出した物を並べていった。
おぉ~!
これが爪かっ!!
なるほどそれで、《ネイル・グローブ》なんて呼ばれているわけねっ!!!
初めて見るそれらに、俺は深く納得する。
爪装備は、その名の通りに手袋であった。
勿論ただの手袋では無く、毛糸で出来ているわけでもない。
頑丈な皮と金属で出来た手袋、その指の付け根より少し下の部分から、鋭利に輝く長い刃物が着いているのだ。
刃物の色や形は様々で、それらは猛禽類の足の爪のようだったり、ティカのような竜人の手にあるそれとよく似ていたり、或いは猫の爪のように小さい物もあるが、どれも見るからに殺傷能力が高そうである。
「これで全部だ。悪いな、品揃えが悪くて」
ワポンはそう言って、ふ~っと息を吐いた。
ワポンが木箱から取り出した爪装備は全部で14個。
そのどれもが、凶器として申し分無い迫力を放っている。
こんなのを手に着けた奴と対峙した日にゃ~、俺なんか一瞬で、ペラッペラのスライスピグモルにされてしまうだろうな~、ははははは~。
アホでネガティブな妄想をする俺。
そんな時、一対の爪装備が目に留まった。
一際輝きを放つ、緑色の刃物。
極限まで磨き上げられているのであろうそれは、キラキラと宝石のように美しく煌めいている。
装着する為のバンドの部分は赤い鱗で覆われており、ティカの体表にあるそれにとてもよく似ていた。
「確かに物は少ないが……、なかなかにええもんを揃えておるのぉ~」
一つ一つ手にとって、繁々と観察していくテッチャ。
そして、俺が気になっていた、緑色の刃物がついた爪装備を手にした……、その時だ。
「これはまた、素晴らしい翡翠じゃな! 磨き方も一級品じゃて、何故こんなものが、こんな所に埋まって……、ん?うぬっ!? こっ!!? これはっ!?!?」
テッチャが叫んだ。
ワナワナと体を震わせるながら、両目をカッ! と見開いて、緑色の宝石のような刃物がついた爪装備の、バンド部分にある長さ調節の為の小さな金属のバックルを凝視している。
「何? どうしたの??」
「んんん???」
グレコ、ギンロ、ティカ、いつの間にか椅子に乗っていたカービィが、それを覗き込む。
俺は、高さが足りなくて、机の下で待機です……、けっ!
「あら? 何か書いてあるわね」
グレコがそう言った。
何が書いてあるんですかぁ~?
「み、ず、た、き……、ミズタキ? 名前かこれ??」
カービィがそう言った。
ミズタキだと? ……誰だ??
すると、テッチャは小刻みに震えながら話し始めた。
「ミズタキ・トゥーフ。この名前を知らぬはドワーフに在らず……。我が祖国デタラッタにおいて、最上級の鍛治職人である証、ゴッド級マスターの称号を作りし権威……。独自の技術で編み出した加工法によって、様々な武器防具をこの世に生み出し、数多の英雄に授けて回ったという、伝説の鍛治職人じゃよ。ミズタキは翡翠を用いて物を創るという噂じゃったが……。なるほどのぉ、噂は真であったか……」
…………え? 何が??
「どういう事? よく分からないんだけど……。この武器は、その伝説のドワーフ鍛治師が作ったって事なのかしら??」
ほぼ独り言に近いテッチャの言葉を、ちゃんと理解出来たらしいグレコが問い掛けた。
「うむ、簡単に言うとそういう事じゃ。店主……、これが何故ここに?」
テッチャが尋ねると、今度は店主のワポンが、テッチャを見ながらワナワナと震えているでは無いか。
「ま、まさかとは思っていたが……、お、お前……、お前っ! ドワーフかっ!?」
ビシィッ! という効果音が似合いそうなほどに、ぶっとい人差し指をテッチャに向けて突き立てるワポン。
「がっ!? しまったっ!!?」
慌てるテッチャ。
え!? なになにっ!!?
今度は何なのっ!!??
「なはははっ! バレちまったかっ!!」
笑うカービィ。
何が何だか分からず、クエスチョンマークが頭の上に浮かぶ俺、グレコ、ギンロにティカ。
「ドワーフがこの店に何の用だ!? くっそ……、怪しいと思ったんだ! こんな閉店間際に、羽振りが良さそうな団体客が来るなんてっ!!」
一人、腕をめちゃくちゃバタバタしながら、血相を変えて叫ぶワポン。
するとテッチャは、潔くフードを脱ぎ捨てて……
「すまんすまんっ! 隠すつもりは無かったんじゃが、こうなると思っての、静かにしてるつもりじゃったんじゃ!! しかし店主よ、これは値打ち物じゃぞ!? いったいどこで手に入れた!!?」
話を爪装備に戻そうとする。
だけどワポンは、気が動転しているらしく……
「まさかっ!? この店を買収しに来たんじゃっ!!? まだローンが残ってるんだぞ!!??」
ブルブルと全身を震わせながら、訳の分からない事を叫び続けている。
以下、テッチャとワポンのやり取りが続く……
「そんな事はせんてっ! それよりこの爪装備、幾らで売ってくれる? わしが見た限り、原価は20万センス程度じゃが、ミズタキの作った物となると、その数百倍の価値が……。いやしかし、箱の中に眠っとったくらいじゃて、廃品一歩手前だったわけじゃろ?? なら、原価の20万でどうじゃ???」
「なっ!? 何言ってんだお前っ!!? ドワーフに物を売るわけがないだろうっ!!??」
「買うのはわしじゃない! こっちの竜人の旦那が使うもんじゃて、問題なかろう!?」
「いや駄目だっ! ドワーフに武器を売ったなんて、噂でも立ってみろ!? この店が潰れてしまうだろうがっ!!?」
「ガハハッ! それほどやわな店には見えんがのぉ!? まぁいい……、とりあえずこれを20万で売ってくれっ!! そいで、金はこっちの小こいのが払うでの。わしは先に店から出ておくから、それでええじゃろ?」
「待てっ! 一人で外に出るなっ!! 逆に目立つだろうがっ!!!」
「お? それもそうじゃな。じゃあ……、もう少し、店内を見させてもらおうかの。まだ掘り出し物がありそうじゃて♪」
「なっ!? くぅっ!!? あぁあぁぁ~~~!!??」
ご機嫌な様子で、店内を見ようと歩き出すテッチャ。
頭を抱えて苦悩するワポン。
えっとぉ……、何?
何が、どうなってんの??
首を傾げている俺、グレコ、ギンロとティカに向かって、事態を把握出来ているらしいカービィが……
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