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★ピタラス諸島、後日譚★
752:テッチャの真の目的
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「うっわぁ~!? 何ここ……、すっごぉーーーいっ!!!」
目の前に広がる色鮮やかな街並みに、感嘆の声を上げるグレコ。
「おぉお………、おぉ~…………」
ドーンと構えてはいるものの、周囲の雰囲気に気圧されて、うまく言葉が出てこないギンロ。
「…………眩しい。夜、のはず?」
目を細めて、静かに呟くティカ。
「んだ、時刻は夜の7時だ! まぁ~、フゲッタはだいたい、夜の10時くらいまではこんな感じだな!! なはははっ!!!」
腰に両手を当てた偉そうなポーズで、ヘラヘラと笑うカービィ。
「噂には聞いておったが、なんちゅう賑やかな街じゃ。こりゃ~、デタラッタも負けておれんでのぉ!」
何故か対抗心を燃やすテッチャ。
そして……
「ポポ! それじゃあ各々に用事を済ませて、3時間後の22時に、ここ……、白薔薇の騎士団ギルド本部に集合ポね!!」
ノリリアの言葉に、モッモ様御一行と、パロット学士とカサチョが頷いた。
ノヴァの月(11月)の14日。
俺達は、現地時間正午のアーレイク島より、時差7時間の魔法王国フーガの王都、フゲッタへとやって来た。
街は、あいも変わらず鮮やかで、眩しくて、美しい。
こちらの時刻は夜の7時で、夕食時の為に通りは大層賑わっていた。
俺達九人は、俺の神様アイテム導きの腕輪を使って、白薔薇の騎士団のギルド本部の前まで、一瞬の間にテレポートしたのだが……
たまたまその場に居合わせた見知らぬ街人達は、突然現れた俺達を見て、ギョッとした表情で此方を見ていた。
そりゃそうだ、何も無いところに、急に九人も現れたんだから。
(きゅうに、きゅうにん………、うぷぷぷぷ)
「それでは、私は早速自邸へと戻って、必要な書類をかき集めて参ります!」
鼻息荒く、そそくさと街並みに消えていくパロット学士。
「あたちとカサチョは団長の元へ行くポね。カービィちゃん、間違っても団長室には来ないでポよ!」
カービィに向かって念押ししながら、ギルド本部内へと続く馬鹿でかい扉の、その端にある小さめの扉を開くノリリアとカサチョ。
「わぁ~かってるってぇ~! いってらいってら~!!」
ヒラヒラと手を振りながら、二人を見送るカービィ。
そして……
「さっ! お買い物しましょ!!」
目をキラキラ……、いや、ギランギラン!させて、グレコはそう言った。
何を買う気なのかは知らないが、両手の拳をぎゅっと握り締めていて、気合十分な御様子です。
「待て待て、先に銀行に行かにゃ~。モッモ、財布の中身が空っぽなんじゃろ?」
テッチャの問い掛けに、俺はこくんと頷く。
「我は甘味が食べたい」
安定の甘党ギンロ。
「槍、買え」
人にお願いする態度がなってないティカ。
「おう! とりあえず全員、ローブのフードを被れ~!! そいで、おいらについてきなっ!!!」
キラーン☆って感じのキメ顔で、親指を立てるカービィ。
その指示に従って、みんなは身につけているそれぞれの服のフードを、頭に被った。
「それじゃ……、行こう! いざっ!! お買い物っ!!!」
モッモ様御一行、魔法王国フーガの王都フゲッタにて、初のショッピング開始!
さてさて、何故こうなったのかと言いますと……
少々時間を遡り、時刻はノヴァの月14日の朝7時。
俺は、前日に予め決められていた通り、テッチャと共に、獣化したギンロの背に乗って、封魔の塔を後にしました。
勿論ちゃんと帰れるように、封魔の塔のすぐ近くに、導きの石碑を立てておきました。
アーレイク島は、その全土が深い森に覆われている為に、足場がとても悪く、フェンリルのギンロといえども一筋縄ではいかず……
しかしながらそのおかげで、ギンロも馬鹿みたいな高速移動は出来ず、俺もグロッキーにはならずに済んだので、それはそれで良かったのかも知れません、はい。
森の中を南に向かって進む事およそ2時間。
ようやく島の南端に辿り着いた俺達を待っていたのは、小さな港とドワーフの集落でした。
そこに暮らすドワーフの数は推定五十名ほど。
全員がデタラッタ王国出身の、ドワーフ貿易商会に所属するドワーフで、その集落は商会のピタラス諸島支部だという事でした。
テッチャが会いたいと言っていた医者のバコロ先生は、やっぱり俺が一度ニベルー島で会った事があるドワーフでした。(名前、忘れててごめんなさい)
だけども、再開した二人はどこか余所余所しくて……
「バコロ殿! わしはデタラッタ王国現国王コウショウが子息、第一王子のテッチャ・ベナフグ・デタラッタですじゃ!! 父上からバコロ先生の話を聞いとっての、叔父貴が昔世話になったようで……。一度お会いしたいと思い、馳せ参じた次第ですじゃ!!!」
テッチャは、以前俺に見せてくれた金ピカの身分証のような物を提示しながら、奇妙な敬語を使って自己紹介していた。
自己紹介という事はつまり、二人は初対面だったらしい。
しかも、第一王子って……、テッチャには似合わなさ過ぎる響きの肩書きだった。
「おぉおっ!? 貴方様が、第一王子のテッチャ様!!? わざわざこんな辺境の地まで何故!?!? ……いやいや! いやいやいや、よくぞおいで下さった!! 何ももてなすものは御座いませんが……、でも何故っ!?!!?」
突然の訪問に、バコロ先生を始めとし、ドワーフ達は皆揃ってお決まりのおったまげポーズをして、目を白黒させて驚いていた。
王族の、それも第一王子が、何故ここに!?って感じで。
なんだか想像していた再会の雰囲気では無かったので、俺はギンロと視線を合わせて、「なんかおかしいぞ?」と意思疎通をした。
そして……
「んんっ、ゴホンッ! テッチャ、我の思い違いなら良いのだが……。ここへは何をしに来たのだ? もしやとは思うが、バコロ殿と再会する事以外に、何か目的があるのでは無いか??」
わざとらしく咳払いした事はさておき、ギンロにしてはとても頭の良い質問の仕方だな~と俺は思った。
するとテッチャは……
「んん? ガハハッ! バレてしもうたか!? いやなに、ちょっち考えがあっての……。このピタラス諸島には、他ではあまり手に入らん果実があるんじゃが、それを少~しばかり分けて貰いたくて、ここへ寄ったんじゃよ」
んなっ!? なんだってぇえっ!!?
あっさりと、真の目的はバコロ先生では無いと認めるテッチャ。
悪戯にニシシと笑う、その悪気の無い顔が、逆に悪人面に見えてしまう俺。
そしてその言葉に、俺の脳裏には嫌~な物が思い浮かんでいた。
白くて丸い、良い香りのする、猛毒のアレだ。
まさか、まさかとは思うけど……
テッチャのやつ、安寧の実、またの名をユーザネイジアの果実の事を言っているのではなかろうな!?
ユーザネイジアの果実は、一口であの世に逝けちゃう怖~い果物。
アンローク大陸では、過去にムーンエルフの国ルナジェナで起きた大量集団自殺事件をきっかけに、大陸全土で伐採、根絶された植物なのである。
しかしながら、ここアーレイク島にはその樹が残っていて……
ワコーディーン大陸への持ち込みは違法で無い為に、ザサーク船長及びタイニック号が、原住民である魚人のマーレ・ヴァンデアン達から買い取っているとかなんとか。
現在は主に安楽死の薬として使われていると言うが、果たして実態はどのようなものなのか……、その真実を、俺は知る由もない。
まさかとは思うが、テッチャのやつ、ユーザネイジアの果実を違法で売り捌く気では!?
なんて事だ……、仲間だと思っていたのに……
所詮こいつは、平気で嘘をついて、私腹を肥やす為に俺達をこんな所までついて来させるほどの、守銭奴丸出しの卑しい奴なんだ!
見損なったぞテッチャ!!
頭は禿げてて寒くても、心は温かいはずだって思ってたのに!!?
なんて酷い裏切りだぁっ!!!
悲しいやら、悔しいやら、腹立たしいやらで、心の中で何度も叫ぶ俺。
「ふむ、果実……?」
事態を理解できておらず、首を傾げるギンロ。
「実もそうじゃが、出来れば苗が欲しいんじゃ。正規ルートではなかなか手に入らんじゃろうが、ここは現地じゃて、わしの肩書きも手伝えば、或いは苗が貰えるかも知れんと考えての。もしそうなれば、テトーンの樹の村でも栽培出来るかも知れんで、物は試しじゃろ。せっかくここまで来たんじゃて、交渉してみようと思ったんじゃよ!」
なぁああぁぁぁっ!?
なんだってぇえええぇぇぇえっ!!?
ユーザネイジアの果実を、テトーンの樹の村で栽培するだとぉおぉぉっ!!??
言葉にならない叫びに、ワナワナと体を震わせる俺。
そんな俺を横目で見つつ、ギンロはテッチャに問い掛ける。
「あ~……、それを育てて、どうするのだ? 何に使う??」
はうっ!? 聞いちゃダメよギンロ!
この守銭奴は、中二病のあなたじゃ絶対に思い付かないほどの、良からぬ事を企んでいるの!!
聞いちゃダメ、あなたまで毒されちゃうわっ!!!
プチパニックに陥る俺。
するとテッチャは、ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながらこう言った。
「勿論、テトーンの樹の村のピグモル達に振る舞うんじゃよ! ピグモル達は皆、美食家じゃからの、絶対に気に入ると思うんじゃ~。わしも国に居た頃はよく食していたでの、あの上品な甘さは他には無いっ!! ちょっち作るのが難しそうじゃが……、まぁなんとかなるじゃろて。ほれ、ギンロも甘党じゃから、きっと気に入るに違いねぇのぉ。ガトーショコラは世界一甘美な、素晴らしい菓子じゃぞ、ガハハハハッ!!!」
豪快に笑うテッチャの言葉に、俺は一瞬の間、心が沈黙した。
ありゃ? ガトーショコラ、とな??
という事は……、ユーザネイジアではない???
およよ????
目の前に広がる色鮮やかな街並みに、感嘆の声を上げるグレコ。
「おぉお………、おぉ~…………」
ドーンと構えてはいるものの、周囲の雰囲気に気圧されて、うまく言葉が出てこないギンロ。
「…………眩しい。夜、のはず?」
目を細めて、静かに呟くティカ。
「んだ、時刻は夜の7時だ! まぁ~、フゲッタはだいたい、夜の10時くらいまではこんな感じだな!! なはははっ!!!」
腰に両手を当てた偉そうなポーズで、ヘラヘラと笑うカービィ。
「噂には聞いておったが、なんちゅう賑やかな街じゃ。こりゃ~、デタラッタも負けておれんでのぉ!」
何故か対抗心を燃やすテッチャ。
そして……
「ポポ! それじゃあ各々に用事を済ませて、3時間後の22時に、ここ……、白薔薇の騎士団ギルド本部に集合ポね!!」
ノリリアの言葉に、モッモ様御一行と、パロット学士とカサチョが頷いた。
ノヴァの月(11月)の14日。
俺達は、現地時間正午のアーレイク島より、時差7時間の魔法王国フーガの王都、フゲッタへとやって来た。
街は、あいも変わらず鮮やかで、眩しくて、美しい。
こちらの時刻は夜の7時で、夕食時の為に通りは大層賑わっていた。
俺達九人は、俺の神様アイテム導きの腕輪を使って、白薔薇の騎士団のギルド本部の前まで、一瞬の間にテレポートしたのだが……
たまたまその場に居合わせた見知らぬ街人達は、突然現れた俺達を見て、ギョッとした表情で此方を見ていた。
そりゃそうだ、何も無いところに、急に九人も現れたんだから。
(きゅうに、きゅうにん………、うぷぷぷぷ)
「それでは、私は早速自邸へと戻って、必要な書類をかき集めて参ります!」
鼻息荒く、そそくさと街並みに消えていくパロット学士。
「あたちとカサチョは団長の元へ行くポね。カービィちゃん、間違っても団長室には来ないでポよ!」
カービィに向かって念押ししながら、ギルド本部内へと続く馬鹿でかい扉の、その端にある小さめの扉を開くノリリアとカサチョ。
「わぁ~かってるってぇ~! いってらいってら~!!」
ヒラヒラと手を振りながら、二人を見送るカービィ。
そして……
「さっ! お買い物しましょ!!」
目をキラキラ……、いや、ギランギラン!させて、グレコはそう言った。
何を買う気なのかは知らないが、両手の拳をぎゅっと握り締めていて、気合十分な御様子です。
「待て待て、先に銀行に行かにゃ~。モッモ、財布の中身が空っぽなんじゃろ?」
テッチャの問い掛けに、俺はこくんと頷く。
「我は甘味が食べたい」
安定の甘党ギンロ。
「槍、買え」
人にお願いする態度がなってないティカ。
「おう! とりあえず全員、ローブのフードを被れ~!! そいで、おいらについてきなっ!!!」
キラーン☆って感じのキメ顔で、親指を立てるカービィ。
その指示に従って、みんなは身につけているそれぞれの服のフードを、頭に被った。
「それじゃ……、行こう! いざっ!! お買い物っ!!!」
モッモ様御一行、魔法王国フーガの王都フゲッタにて、初のショッピング開始!
さてさて、何故こうなったのかと言いますと……
少々時間を遡り、時刻はノヴァの月14日の朝7時。
俺は、前日に予め決められていた通り、テッチャと共に、獣化したギンロの背に乗って、封魔の塔を後にしました。
勿論ちゃんと帰れるように、封魔の塔のすぐ近くに、導きの石碑を立てておきました。
アーレイク島は、その全土が深い森に覆われている為に、足場がとても悪く、フェンリルのギンロといえども一筋縄ではいかず……
しかしながらそのおかげで、ギンロも馬鹿みたいな高速移動は出来ず、俺もグロッキーにはならずに済んだので、それはそれで良かったのかも知れません、はい。
森の中を南に向かって進む事およそ2時間。
ようやく島の南端に辿り着いた俺達を待っていたのは、小さな港とドワーフの集落でした。
そこに暮らすドワーフの数は推定五十名ほど。
全員がデタラッタ王国出身の、ドワーフ貿易商会に所属するドワーフで、その集落は商会のピタラス諸島支部だという事でした。
テッチャが会いたいと言っていた医者のバコロ先生は、やっぱり俺が一度ニベルー島で会った事があるドワーフでした。(名前、忘れててごめんなさい)
だけども、再開した二人はどこか余所余所しくて……
「バコロ殿! わしはデタラッタ王国現国王コウショウが子息、第一王子のテッチャ・ベナフグ・デタラッタですじゃ!! 父上からバコロ先生の話を聞いとっての、叔父貴が昔世話になったようで……。一度お会いしたいと思い、馳せ参じた次第ですじゃ!!!」
テッチャは、以前俺に見せてくれた金ピカの身分証のような物を提示しながら、奇妙な敬語を使って自己紹介していた。
自己紹介という事はつまり、二人は初対面だったらしい。
しかも、第一王子って……、テッチャには似合わなさ過ぎる響きの肩書きだった。
「おぉおっ!? 貴方様が、第一王子のテッチャ様!!? わざわざこんな辺境の地まで何故!?!? ……いやいや! いやいやいや、よくぞおいで下さった!! 何ももてなすものは御座いませんが……、でも何故っ!?!!?」
突然の訪問に、バコロ先生を始めとし、ドワーフ達は皆揃ってお決まりのおったまげポーズをして、目を白黒させて驚いていた。
王族の、それも第一王子が、何故ここに!?って感じで。
なんだか想像していた再会の雰囲気では無かったので、俺はギンロと視線を合わせて、「なんかおかしいぞ?」と意思疎通をした。
そして……
「んんっ、ゴホンッ! テッチャ、我の思い違いなら良いのだが……。ここへは何をしに来たのだ? もしやとは思うが、バコロ殿と再会する事以外に、何か目的があるのでは無いか??」
わざとらしく咳払いした事はさておき、ギンロにしてはとても頭の良い質問の仕方だな~と俺は思った。
するとテッチャは……
「んん? ガハハッ! バレてしもうたか!? いやなに、ちょっち考えがあっての……。このピタラス諸島には、他ではあまり手に入らん果実があるんじゃが、それを少~しばかり分けて貰いたくて、ここへ寄ったんじゃよ」
んなっ!? なんだってぇえっ!!?
あっさりと、真の目的はバコロ先生では無いと認めるテッチャ。
悪戯にニシシと笑う、その悪気の無い顔が、逆に悪人面に見えてしまう俺。
そしてその言葉に、俺の脳裏には嫌~な物が思い浮かんでいた。
白くて丸い、良い香りのする、猛毒のアレだ。
まさか、まさかとは思うけど……
テッチャのやつ、安寧の実、またの名をユーザネイジアの果実の事を言っているのではなかろうな!?
ユーザネイジアの果実は、一口であの世に逝けちゃう怖~い果物。
アンローク大陸では、過去にムーンエルフの国ルナジェナで起きた大量集団自殺事件をきっかけに、大陸全土で伐採、根絶された植物なのである。
しかしながら、ここアーレイク島にはその樹が残っていて……
ワコーディーン大陸への持ち込みは違法で無い為に、ザサーク船長及びタイニック号が、原住民である魚人のマーレ・ヴァンデアン達から買い取っているとかなんとか。
現在は主に安楽死の薬として使われていると言うが、果たして実態はどのようなものなのか……、その真実を、俺は知る由もない。
まさかとは思うが、テッチャのやつ、ユーザネイジアの果実を違法で売り捌く気では!?
なんて事だ……、仲間だと思っていたのに……
所詮こいつは、平気で嘘をついて、私腹を肥やす為に俺達をこんな所までついて来させるほどの、守銭奴丸出しの卑しい奴なんだ!
見損なったぞテッチャ!!
頭は禿げてて寒くても、心は温かいはずだって思ってたのに!!?
なんて酷い裏切りだぁっ!!!
悲しいやら、悔しいやら、腹立たしいやらで、心の中で何度も叫ぶ俺。
「ふむ、果実……?」
事態を理解できておらず、首を傾げるギンロ。
「実もそうじゃが、出来れば苗が欲しいんじゃ。正規ルートではなかなか手に入らんじゃろうが、ここは現地じゃて、わしの肩書きも手伝えば、或いは苗が貰えるかも知れんと考えての。もしそうなれば、テトーンの樹の村でも栽培出来るかも知れんで、物は試しじゃろ。せっかくここまで来たんじゃて、交渉してみようと思ったんじゃよ!」
なぁああぁぁぁっ!?
なんだってぇえええぇぇぇえっ!!?
ユーザネイジアの果実を、テトーンの樹の村で栽培するだとぉおぉぉっ!!??
言葉にならない叫びに、ワナワナと体を震わせる俺。
そんな俺を横目で見つつ、ギンロはテッチャに問い掛ける。
「あ~……、それを育てて、どうするのだ? 何に使う??」
はうっ!? 聞いちゃダメよギンロ!
この守銭奴は、中二病のあなたじゃ絶対に思い付かないほどの、良からぬ事を企んでいるの!!
聞いちゃダメ、あなたまで毒されちゃうわっ!!!
プチパニックに陥る俺。
するとテッチャは、ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながらこう言った。
「勿論、テトーンの樹の村のピグモル達に振る舞うんじゃよ! ピグモル達は皆、美食家じゃからの、絶対に気に入ると思うんじゃ~。わしも国に居た頃はよく食していたでの、あの上品な甘さは他には無いっ!! ちょっち作るのが難しそうじゃが……、まぁなんとかなるじゃろて。ほれ、ギンロも甘党じゃから、きっと気に入るに違いねぇのぉ。ガトーショコラは世界一甘美な、素晴らしい菓子じゃぞ、ガハハハハッ!!!」
豪快に笑うテッチャの言葉に、俺は一瞬の間、心が沈黙した。
ありゃ? ガトーショコラ、とな??
という事は……、ユーザネイジアではない???
およよ????
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