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★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★
714:史実と真実(その4)
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ごくりと生唾を飲み込むノリリア。
「そうすると……。大魔道師アーレイク・ピタラスが、かつてのムームー大陸にやって来た本当の理由は、原住種族の争いを治める為でも、悪魔を倒す為でも無くて……。その五番目の弟子である悪魔ユディンを、魔界に帰す為だったのポか?」
「如何にも、そういう事である」
「ポポォ~。やっぱり、歴史の真実は、あたちの想像の斜め上を行くポねぇ~」
ノリリアはそう言って天井を仰ぎ見て、感嘆の息を漏らした。
一方の俺はというと、プラティックの長く長~い昔話を聞きながら、ずっと考えていた。
その話は本当に、今重要なんですか? と……
ノリリアは興味津々っぽいけど、正直俺は、過去に何があったのか、その詳細を知りたいとは思わないのである。
何故ならば、聞いたところですぐ忘れそうだから。
それよりも、これから何をどうすればいいのか、その黒革の手帖(邪滅の書をそう呼ぶ事にしました)を本当に俺が受け取らなければならないのか、俺がその……、旧世界の神と戦うとかどうとか……、その辺りの詳細を知りたいのです、はい。
「それじゃあ、この……、手紙に書かれている、予定が大幅に狂ったというのは、その事に関係があるのポ?」
いつの間にか、鞄の中から一通の手紙を取り出していたノリリアが、中を開いてプラティックに尋ねる。
それは、いつぞやの折に見せてくれた、アーレイク・ピタラスが妻に宛てた手紙だった。
「おぉ!? もしやその手紙は!!? 我に読ませてくれっ!!!」
半ば取り上げる様に、ノリリアから手紙を受け取ったプラティックは、食い入る様に手紙を読み始めた。
そして口元を押さえて、下を向いて、微かに肩を震わせ始めたではないか。
なんだなんだ? どうしたんだ??
まさか、過去を思い出して、泣いている……、のか???
しかしながら、プラティックは泣いてなどいなかった。
心配する俺を他所に、顔を上げたプラティックは……
「ぶふっ……、ぶわぁっはぁ~っ! はっはっはっはぁっ!! さすがはアーレイクだっ!!!」
大爆笑している。
「何が……、そんなに面白いのポ?」
「いやはや、脱帽である! まさかここまで精巧な虚文を作成しておったとは……。つまり貴様らは、この手紙にまんまと踊らされて、今ここにいるというわけだ!!」
「ポ? 踊らされて?? …‥どういう事ポ???」
怪訝な顔をするノリリア。
するとプラティックは、いやらしい含み笑いをしながらこう言った。
「ふっ……、ふふふふふっ。愚かなる貴様達に教えてやろう。アーレイクには、子供は愚か、妻もおらぬ」
「ポッ!?」
え? それってどういう……??
「でもここにっ! この手紙は、アーレイクが妻のマティに宛てて書いたものではっ!? ……ポポッ、まさかこれは、偽物の手紙なのポッ!??」
はぁっ!? そんなまさかっ!!?
「いやいや、偽物では無い。この印章は間違いなくアーレイクのものであるし、これはアーレイクの字だ。しかしながら、中に書かれている事の7割ほどは……、嘘だ」
「嘘ぉおっ!?!?」
なんだってぇえっ!?!?
おいおい、ちょっと待てよ……
何がどうなってんだ?
ノリリア達騎士団のメンバーは、この手紙が見つかったから、ピタラス諸島の調査を任されたんじゃ無かったっけか??
それなのに、その手紙が、嘘だと???
「まぁ、驚くのも無理はない。しかしながら、この様な手紙が見つかれば、本来ならば国家レベルで事が進められるはずであろう? それが、貴様らの様なギルドの小隊に調査が一任されたのだ。つまり……、この手紙の信憑性は極めて低いと、フーガの現国王は考えたのだろう」
「ポポポッ!? そんなぁあっ!!? ……で、でも、確かにそうかも知れないポ。国王様は、この手紙の存在は極秘だと……、外部にその存在を漏らしてはいけないと、仰っていたポ。だから国属魔導師団ではなく、あたち達の様なギルドの歴史探究部にクエストの依頼を……? でもまさか、その理由が……、ポォオ~~~」
眉間に皺を寄せ、酷く困惑した様子のノリリアと、それをめちゃくちゃ面白そうに見ているプラティック。
「それらしい文章で演出し、誇張表現を用いて大袈裟にして、あたかも真実の様にツラツラと書き並べておるが……、残念ながら、これはフェイクである。事の経緯はこうだ。アーレイクはこの塔を、フーガの連中に荒らされたく無かった。この塔は即ち、次代の時の神の使者に、その邪滅の書を託す事を目的に造られたのだ。邪滅の書は、唯一神代の悪霊に対抗し得る力であり、その力を行使できるのはアーレイクと同じ時の神の使者しかおらぬ。それ故に、国の馬鹿共の玩具にさせるわけにはいかなかったのだ。やれ研究だなんだと、いつの時代も学会の連中はうるさい。故に、確実に次の使者へと渡るよう、様々な工夫と仕掛けを未来に向けて残したのだろう。その一つが、この手紙というわけだ。この手紙の存在で、貴様らギルドの連中が動き出し、そこに時の神の使者も加担する。更に、時空穴と悪魔の存在、サルテルの名を記す事で、そこからサルヴァトルとの繋がりにも気付くであろう。非常に分かりにくいものではあるが……、この手紙は、アーレイクが仕掛けた起爆剤に過ぎぬ。或いは、この塔を目指さんとす貴様達への、真実へと繋がるヒントだった、というわけだ」
「ポポゥ、そうだったのポ……」
「考えてもみよ。そもそもが、アーレイクは予知魔法の使い手ぞ? とすれば、冒頭の書き出し部分からしておかしいであろう?? 《当初計画していた予定が大幅に狂い始めた》などと書いておるが……、ぶふっ、予知魔法が使えるくせに、計画が狂うなぞ早々あり得ん。……しかしまぁ、確かに、予定が変わった部分はあった。だがそれは、この手紙を書いた後の事であるからして、この手紙とは無関係であろう」
「ポポポゥ……。なら、このマティとコルメンというのは……、誰ポ?」
「マティは、アーレイクが使役させていた従魔の名だ。コルメンは確か、昔飼ってた鳥の名ではなかったか……?」
「鳥!? な、なんて事ポ……」
ニヤニヤとほくそ笑むプラティックと、どっと疲れが出た様にテーブルに突っ伏すノリリア。
なんだかよく分からないけど、とんでもない事態に陥っているな。
つまりノリリア達は、最初の段階から騙されていたと……?
「先程話した様に、アーレイクの目的は最初から、ユディンを魔界に帰す事のみだった。国王命令である未開地遠征や、サルヴァトルの活動目的である時空穴を塞ぐといった事は、当時の彼にとっては二の次三の次だったのだ。なんせ、ユディンはアーレイクが幼い頃より共に育った友なのだからな」
「ポポッ? 友達?? 幼い頃からというのは……???」
「アーレイクの両親を知っているか?」
「両親? ポポ、史実にはそこまで残っていないポね。誰なのポ??」
「父の名はジャルダン・ピタラス。そして母の名は、ミーリィ・ビダ・バートンだ」
「ポオッ!? そんなっ!?? まさかアーレイク・ピタラスは、ビダ家の血筋なのポッ!?!?」
「そうだ。しかしながらアーレイクは、サルテルの娘が使用人との間に儲けた子供故、家系譜に載る事は愚か、その存在すらなかった事にされた。母親のミーリィはアーレイクを産んだその日に亡くなり、父親もアーレイクが乳飲み子の頃に他界。愛する娘の忘れ形見とも言えようアーレイクを、サルテルは放っておく事も出来ず、自ら育てる事にしたのだ。そうしてアーレイクは、サルテルの元で、弟子として暮らし始めた。決して孫であるとバラしてはいけない事、未来永劫ビダ家の血縁関係者だと認めない事を約束させられた上でな。しかしながら、幼い子供にとって、そのような生活はさぞ息苦しかったであろう。アーレイクは、16歳になる年にサルテルの元を去っている。その時に共に連れ出したのが、幼き頃より人知れず、秘密裏に関わりを持っていた檻の中の小さな悪魔、ユディンだったのだ」
「なんとっ!? じゃあアーレイクは……、サルテルの屋敷からユディンを誘拐したって事ポ!??」
「まぁ……、そうとも言うな。しかしユディンは、そのまま屋敷に留まっていれば、いつかは殺されていた身。誘拐とて、本人は本望だったであろう」
「ポポゥ……。そのような複雑な身の上で、且つ得体の知れない悪魔の子供を連れた状態で……、国属の魔導師になったのポか?」
「そうだ。よくもそんな危険な真似をと、常人ならば思うであろうな。しかし、彼はアーレイク・ピタラスだ。予知魔法の使い手であり、時の神の使者でもある。自身の未来に何が待ち受けているのか、全てを理解した上で行動していたであろう。それ故、彼の頭の中で起きている事は、長年共にいた我にも計り知れぬものがあった。しかしながら、彼の行動原理は、いつの日も安寧と平和を求めるが故であったように思う」
なんていうか……、細かいところはよく分からないけれど、結構いろいろと、やばい奴だったんだな、アーレイク先輩は。
「アーレイクの目的はユディンを魔界に帰す事。一方で、当時のフーガを治めていた第80代国王コダルトは、己の地位を守る事に必死だった。過去のゾロモンの乱心より、世界各地で続出する時空穴の出現と、そこからの悪魔侵入は、全てが魔法王国フーガに起因すると、周辺諸国より考えられていたのだ。隣国であるヴェルハーラにおいて、一年に一度開かれる【王議会】では、さぞかし肩身が狭かったであろう。そして、それは国内でも同じ事。過去に、サルテルにゴエティアの写しを許可したのは、当時の魔法学会長に当たるコダルトの祖父であった為、世界各地の時空穴及び悪魔の存在は、全てサルテルがゴエティアの写しを世間に広めたからだと、魔法政会の一部の者達は考えていたのだ。それ故、その責任の所在が孫のコダルトに向けられ、進退を厳しく追求されていたのだろう。そこでコダルトは、各地に発生する時空穴の存在が公になる前に消滅させてしまおうと、アーレイクを初めとし、多くの国王直属の魔導師達を国外の未開地遠征へと駆り出していた。ただしコダルト自身は、各地で発生する時空穴と悪魔召喚の因果関係には懐疑的で、遠く離れたムームー大陸にまでアーレイクを使わす意味があるのかと、出発のその日まで派遣を渋っていたのだ。まぁその理由も、旅の資金が膨大になるという事だろうがな。もう一方で、サルテル率いるサルヴァトルの目的は、一貫して悪魔は敵であるという認識の下に、世界中の時空穴を消滅させる事であった。ただし、その時空穴の消滅の為に、一部で悪魔の底知れぬ破壊力を利用していたのも事実だ。その危うい思想、手法は、代々受け継がれていった。アーレイクは、その双方に組し、利用し……、挙げ句の果てには、未来の貴様達までもを操り、己の真の目的を達成しようとしていたのだ。なんともまぁ、既に故人とはいえ、末恐ろしい奴である」
ふ……、ふ~~~~~ん。
プラティックが一人でペラペラと喋る内容は、俺には難し過ぎて、正直よく分からない。
分からないけれど、全部アーレイク・ピタラスが仕組んだ通りになっているんだな、という事だけはなんとなく理解できましたね、は~い。
「さて……、余談はここまでとしよう。本題に入ろうではないか。過去、ムームー大陸で何が起こり、そして今、何が起きているのか……。愚かなる貴様達に、真実を教えてやろう」
ニヤリと笑って、プラティックはそう言った。
……え? 嘘でしょ??
こんだけ喋っておいて、まだ余談だったわけ???
話が長過ぎるんですけどぉっ!?!?
「そうすると……。大魔道師アーレイク・ピタラスが、かつてのムームー大陸にやって来た本当の理由は、原住種族の争いを治める為でも、悪魔を倒す為でも無くて……。その五番目の弟子である悪魔ユディンを、魔界に帰す為だったのポか?」
「如何にも、そういう事である」
「ポポォ~。やっぱり、歴史の真実は、あたちの想像の斜め上を行くポねぇ~」
ノリリアはそう言って天井を仰ぎ見て、感嘆の息を漏らした。
一方の俺はというと、プラティックの長く長~い昔話を聞きながら、ずっと考えていた。
その話は本当に、今重要なんですか? と……
ノリリアは興味津々っぽいけど、正直俺は、過去に何があったのか、その詳細を知りたいとは思わないのである。
何故ならば、聞いたところですぐ忘れそうだから。
それよりも、これから何をどうすればいいのか、その黒革の手帖(邪滅の書をそう呼ぶ事にしました)を本当に俺が受け取らなければならないのか、俺がその……、旧世界の神と戦うとかどうとか……、その辺りの詳細を知りたいのです、はい。
「それじゃあ、この……、手紙に書かれている、予定が大幅に狂ったというのは、その事に関係があるのポ?」
いつの間にか、鞄の中から一通の手紙を取り出していたノリリアが、中を開いてプラティックに尋ねる。
それは、いつぞやの折に見せてくれた、アーレイク・ピタラスが妻に宛てた手紙だった。
「おぉ!? もしやその手紙は!!? 我に読ませてくれっ!!!」
半ば取り上げる様に、ノリリアから手紙を受け取ったプラティックは、食い入る様に手紙を読み始めた。
そして口元を押さえて、下を向いて、微かに肩を震わせ始めたではないか。
なんだなんだ? どうしたんだ??
まさか、過去を思い出して、泣いている……、のか???
しかしながら、プラティックは泣いてなどいなかった。
心配する俺を他所に、顔を上げたプラティックは……
「ぶふっ……、ぶわぁっはぁ~っ! はっはっはっはぁっ!! さすがはアーレイクだっ!!!」
大爆笑している。
「何が……、そんなに面白いのポ?」
「いやはや、脱帽である! まさかここまで精巧な虚文を作成しておったとは……。つまり貴様らは、この手紙にまんまと踊らされて、今ここにいるというわけだ!!」
「ポ? 踊らされて?? …‥どういう事ポ???」
怪訝な顔をするノリリア。
するとプラティックは、いやらしい含み笑いをしながらこう言った。
「ふっ……、ふふふふふっ。愚かなる貴様達に教えてやろう。アーレイクには、子供は愚か、妻もおらぬ」
「ポッ!?」
え? それってどういう……??
「でもここにっ! この手紙は、アーレイクが妻のマティに宛てて書いたものではっ!? ……ポポッ、まさかこれは、偽物の手紙なのポッ!??」
はぁっ!? そんなまさかっ!!?
「いやいや、偽物では無い。この印章は間違いなくアーレイクのものであるし、これはアーレイクの字だ。しかしながら、中に書かれている事の7割ほどは……、嘘だ」
「嘘ぉおっ!?!?」
なんだってぇえっ!?!?
おいおい、ちょっと待てよ……
何がどうなってんだ?
ノリリア達騎士団のメンバーは、この手紙が見つかったから、ピタラス諸島の調査を任されたんじゃ無かったっけか??
それなのに、その手紙が、嘘だと???
「まぁ、驚くのも無理はない。しかしながら、この様な手紙が見つかれば、本来ならば国家レベルで事が進められるはずであろう? それが、貴様らの様なギルドの小隊に調査が一任されたのだ。つまり……、この手紙の信憑性は極めて低いと、フーガの現国王は考えたのだろう」
「ポポポッ!? そんなぁあっ!!? ……で、でも、確かにそうかも知れないポ。国王様は、この手紙の存在は極秘だと……、外部にその存在を漏らしてはいけないと、仰っていたポ。だから国属魔導師団ではなく、あたち達の様なギルドの歴史探究部にクエストの依頼を……? でもまさか、その理由が……、ポォオ~~~」
眉間に皺を寄せ、酷く困惑した様子のノリリアと、それをめちゃくちゃ面白そうに見ているプラティック。
「それらしい文章で演出し、誇張表現を用いて大袈裟にして、あたかも真実の様にツラツラと書き並べておるが……、残念ながら、これはフェイクである。事の経緯はこうだ。アーレイクはこの塔を、フーガの連中に荒らされたく無かった。この塔は即ち、次代の時の神の使者に、その邪滅の書を託す事を目的に造られたのだ。邪滅の書は、唯一神代の悪霊に対抗し得る力であり、その力を行使できるのはアーレイクと同じ時の神の使者しかおらぬ。それ故に、国の馬鹿共の玩具にさせるわけにはいかなかったのだ。やれ研究だなんだと、いつの時代も学会の連中はうるさい。故に、確実に次の使者へと渡るよう、様々な工夫と仕掛けを未来に向けて残したのだろう。その一つが、この手紙というわけだ。この手紙の存在で、貴様らギルドの連中が動き出し、そこに時の神の使者も加担する。更に、時空穴と悪魔の存在、サルテルの名を記す事で、そこからサルヴァトルとの繋がりにも気付くであろう。非常に分かりにくいものではあるが……、この手紙は、アーレイクが仕掛けた起爆剤に過ぎぬ。或いは、この塔を目指さんとす貴様達への、真実へと繋がるヒントだった、というわけだ」
「ポポゥ、そうだったのポ……」
「考えてもみよ。そもそもが、アーレイクは予知魔法の使い手ぞ? とすれば、冒頭の書き出し部分からしておかしいであろう?? 《当初計画していた予定が大幅に狂い始めた》などと書いておるが……、ぶふっ、予知魔法が使えるくせに、計画が狂うなぞ早々あり得ん。……しかしまぁ、確かに、予定が変わった部分はあった。だがそれは、この手紙を書いた後の事であるからして、この手紙とは無関係であろう」
「ポポポゥ……。なら、このマティとコルメンというのは……、誰ポ?」
「マティは、アーレイクが使役させていた従魔の名だ。コルメンは確か、昔飼ってた鳥の名ではなかったか……?」
「鳥!? な、なんて事ポ……」
ニヤニヤとほくそ笑むプラティックと、どっと疲れが出た様にテーブルに突っ伏すノリリア。
なんだかよく分からないけど、とんでもない事態に陥っているな。
つまりノリリア達は、最初の段階から騙されていたと……?
「先程話した様に、アーレイクの目的は最初から、ユディンを魔界に帰す事のみだった。国王命令である未開地遠征や、サルヴァトルの活動目的である時空穴を塞ぐといった事は、当時の彼にとっては二の次三の次だったのだ。なんせ、ユディンはアーレイクが幼い頃より共に育った友なのだからな」
「ポポッ? 友達?? 幼い頃からというのは……???」
「アーレイクの両親を知っているか?」
「両親? ポポ、史実にはそこまで残っていないポね。誰なのポ??」
「父の名はジャルダン・ピタラス。そして母の名は、ミーリィ・ビダ・バートンだ」
「ポオッ!? そんなっ!?? まさかアーレイク・ピタラスは、ビダ家の血筋なのポッ!?!?」
「そうだ。しかしながらアーレイクは、サルテルの娘が使用人との間に儲けた子供故、家系譜に載る事は愚か、その存在すらなかった事にされた。母親のミーリィはアーレイクを産んだその日に亡くなり、父親もアーレイクが乳飲み子の頃に他界。愛する娘の忘れ形見とも言えようアーレイクを、サルテルは放っておく事も出来ず、自ら育てる事にしたのだ。そうしてアーレイクは、サルテルの元で、弟子として暮らし始めた。決して孫であるとバラしてはいけない事、未来永劫ビダ家の血縁関係者だと認めない事を約束させられた上でな。しかしながら、幼い子供にとって、そのような生活はさぞ息苦しかったであろう。アーレイクは、16歳になる年にサルテルの元を去っている。その時に共に連れ出したのが、幼き頃より人知れず、秘密裏に関わりを持っていた檻の中の小さな悪魔、ユディンだったのだ」
「なんとっ!? じゃあアーレイクは……、サルテルの屋敷からユディンを誘拐したって事ポ!??」
「まぁ……、そうとも言うな。しかしユディンは、そのまま屋敷に留まっていれば、いつかは殺されていた身。誘拐とて、本人は本望だったであろう」
「ポポゥ……。そのような複雑な身の上で、且つ得体の知れない悪魔の子供を連れた状態で……、国属の魔導師になったのポか?」
「そうだ。よくもそんな危険な真似をと、常人ならば思うであろうな。しかし、彼はアーレイク・ピタラスだ。予知魔法の使い手であり、時の神の使者でもある。自身の未来に何が待ち受けているのか、全てを理解した上で行動していたであろう。それ故、彼の頭の中で起きている事は、長年共にいた我にも計り知れぬものがあった。しかしながら、彼の行動原理は、いつの日も安寧と平和を求めるが故であったように思う」
なんていうか……、細かいところはよく分からないけれど、結構いろいろと、やばい奴だったんだな、アーレイク先輩は。
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ふ……、ふ~~~~~ん。
プラティックが一人でペラペラと喋る内容は、俺には難し過ぎて、正直よく分からない。
分からないけれど、全部アーレイク・ピタラスが仕組んだ通りになっているんだな、という事だけはなんとなく理解できましたね、は~い。
「さて……、余談はここまでとしよう。本題に入ろうではないか。過去、ムームー大陸で何が起こり、そして今、何が起きているのか……。愚かなる貴様達に、真実を教えてやろう」
ニヤリと笑って、プラティックはそう言った。
……え? 嘘でしょ??
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