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★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★

686:私の事、どう思ってる?

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「グレコ~! カービィ~!! ノリリア~!!! みんな~、どこ行ったの~!!!? うぅ……」

 俺は一人、足場の悪いピンク色の森を、とぼとぼと歩いていた。

 ほら見ろっ!
 言わんこっちゃないっ!!
 みんなとはぐれちゃったじゃないかっ!!!

 おおよそ読者の方々が心配していた通りのストーリー展開です。
 モッモ、仲間とはぐれ、一人になる。

 くっそぉ~……、どうしろってんだ!?
 こんな、右も左も、前も後ろも、ついでに上も下もピンク一色の森で、俺にどうしろってんだよぉっ!!?

 最後に見たのは、森の中に走っていくみんなの後ろ姿。
 一生懸命追い駆けたけど、小さい上に運動音痴な俺が、こんな足場の悪い森の中で、みんなについて行けるわけもなく。
 ものの数分で一人ぼっちになってしまった俺は、かれこれ数十分ほど、森を彷徨い歩いてます、はい。

 なんとかしてみんなを探さねばと、ここまで進んで来たけれど……
 結論として、この森はやはり、普通の森では無いらしい。
 何処からともなく漂ってくる、ネチョっとした雰囲気の甘い香りのせいで、みんなの匂いは全く嗅ぎ取れず。
 カサカサと、そこかしこから物音がしてくるものの、生き物の姿は全く見当たらない。
 それだというのに、気の所為かも知れないけど、誰かにずっと見られているような……?
 兎に角、なんだか色々とおかしくて、為す術が有りませぬ。

「……っつ、はぁ~~~」

 俺は大きな溜息をついて、近くの木の根に腰掛けた。

 さてさて、これからどうしましょう?
 とりあえず、無駄に歩くのはやめよう、本当に無駄だから。
 森がどれほどの広さなのか分からないし、みんながどっちの方向に行ったのかももはや分からないし……
 宛ても無く歩き続けるなんて、体力がクソな俺には無理だ。
 
 それに、たぶんだけど、このままここでじっとしていれば、問題は解決するはずだ。
 サテュロスは、自身を見つけられたら、次の階層へと向かう為の鍵を渡すと言っていた。
 つまりそれは、ここに来た俺達の中の誰か一人でもいいから、森の中に消えたサテュロスを見つける事が出来れば試練クリアとなる……、という事のはずだ。
 だから、俺自身が頑張ってサテュロスを探す必要は無いのである。
 ここで待っていれば、きっと誰かがサテュロスを見つけて、捕まえて……、そして、鍵を手に入れてくれるはず。
 そうすればきっと、試練の間から昇降機へと戻る扉が現れて、俺も無事に帰還できるはずだ。
 第二階層の第二の試練で、はぐれたはずのマシコットも無事に昇降機に戻って来られたのだから……、うん、今回もきっと大丈夫だろう!

 安易にそう考えて、一安心した俺は、鞄の中をガサガサと漁る。
 水の入った皮袋を取り出して、コクコクと中身を飲み、乾いた喉を潤した。

「プハァッ! ふぅ~~~」

 でも、どのくらい待っていればいいんだろう?
 逃げ行くサテュロスは、かなり機敏な動きをしていた。
 しかも、衣服を一切身につけていない、素っ裸の格好で……
 あんな、見るからに野生児! みたいな奴を捕まえるのは、そう楽ではないはずだ。
 それに恐らく、ここは奴の庭みたいなもんだろう。
 勝手知ったる森の中で、敵に見つからないように隠れるなんて、お手の物のはず。
 そんな奴を、果たしてみんなは、無事に探し出す事が出来るだろうか??

「う~ん……。やっぱり僕も、探した方がいいかなぁ……?」

 ポツリと独り言を呟いて、皮袋を鞄に戻す。
 そして胸元から望みの羅針盤を取り出して、サテュロスの居所を探ろうとした……、その時だ。

「モッモ!」

 不意に名前を呼ばれて振り向くと、少し離れた場所に、グレコが立っていた。

「えっ!? あれっ!!?」

 驚いたのと、再会できて嬉しいのとで、俺は変な笑い方をしてしまう。 

「良かった、見つかって」

 そう言って、にこやかな表情で、此方に向かって歩いてくるグレコ。
 はぐれた事を怒られるかも!? と一瞬身構えたが、どうやら今回は怒っていなさそうだ、ラッキー♪

「他のみんなは?」

 尋ねる俺。

「さぁ……、分からないわ」

 答えるグレコ。

「そっか、グレコもはぐれちゃったのか……。でもまぁ良かったよ! グレコに会えて!! 今ちょうど、望みの羅針盤でサテュロスを探そうと思ってたんだ。けど……、先にみんなを探した方がいいかな?」

 そう言って俺は、望みの羅針盤に視線を向けた。
 羅針盤の銀色の針は、例によってゆっくりと回転しているものの、金色の針は真っ直ぐにグレコを指している。

 ん? いやいや、もうグレコは見つかったからいいんだよ。
 次はとりあえず、そうだな……、カービィを探そう!

 そう思った時だった。
 俺の真ん前まで歩いて来たグレコが、スッと姿勢を低くして、俺の目線まで顔を下げてきたのだ。
 そしてその両手で、羅針盤を持つ俺の手を、そっと包み込んだ。

「ひゃうっ!?」

 突然に手を触れられて、神経過敏な俺は小さく悲鳴を上げる。
 手の甲に感じるサワサワとした感覚が、ピリピリとした微弱電流を全身に伝えた。

「なっ!? 何っ!!?」

 ビックリして目を見開き、グレコを見る俺。
 するとグレコは、その真っ赤な瞳で、真っ直ぐに俺を見つめていて……

「ねぇモッモ。私の事、どう思ってる?」

 小首を傾げながら、グレコは問うてきた。

「んんっ!? どうって……、えっ!??」

 突然の事に、頭が回らない俺。
 というか……、手を離して欲しいっ!

「私は……、モッモの事、素敵だなって、ずっと思ってたよ」

「すっ!? てきっ!!?」

 なななっ!?
 何を言い出すんだグレコのやつっ!!?
 
 グレコは、うっとりとした表情で俺を見つめながら、優しく微笑んでいる。
 そのお顔はとても美しく、魅力的で……
 でもその前にっ! 手を離してっ!!
 全身のピリピリが治らないっ!!!

「ねぇ、モッモ……。私の事、好き?」

「はんっ!? 何言ってんのっ!!?」

 どうしたのグレコ!?
 えっ!!?
 何が起きてんのっ!?!?
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