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★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★

681:雪山

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 あっ、荒れ狂う稲妻!?
 銀竜イルクナード!!?
 何それぇっ!?!?

 ……ん? 
 でも、なんかその名前、どっかで聞いたような??

(銀竜イルクナードにつきましては、作者の別作品「五人の賢者」にて、詳しくお話が書かれておりますので、宜しければ御一読ください、ペコリ)

「どういう事!? 今度は本当に山に飛ばされたの!!? それも、ドラゴンのいる山に!?!?」

 防寒着に身を包み、幾分か顔色がマシになったグレコが、別の意味で声を震わせながら叫ぶ。
 何故叫んでいるのかというと、辺りが猛吹雪過ぎて、叫ぶように声を張らないと相手に届かないからだ。
 先程の咆哮が合図であったかのように、降り頻る雪は激しさを増していた。

「いや、さすがに実際の山じゃねぇだろう! ここもきっと、空間魔法によって作られた異空間だ!! ほんでもって、アンローク大陸には、いくつか有名な竜の伝説があって……、その一つが、荒れ狂う稲妻と呼ばれた銀竜イルクナード!!! そいつの棲家が、今おいら達がいるような雪山なんだ!!!!」

 同じく、叫ぶように答えるカービィ。

 なるほど!
 という事は、この雪山の異空間は、その銀竜が住む雪山がモチーフになっていて……
 そんでもって、その雪山に住んでいる銀竜が、ここにいるのではないかと……
 そういう事なのかっ!?

 ギャラララララララァーーーーーー!!!

「ヒィイィィ~~~!?!!?」

 再び響き渡った咆哮に、俺は驚き飛び上がる。

 こえぇええぇぇっ!
 こんな恐ろしい声で鳴くなんざ、絶対ヤバい奴に決まってる!!

「その、イルクナードって何!? どんな奴なのよっ!!?」

 グレコが叫ぶ。

「銀竜イルクナードは、アンローク大陸において、フーガに並ぶ魔法大国である隣国ヴェルハーラで、神と奉られている古代竜エンシェント・ドラゴンだよ! その昔、ヴェルハーラを滅ぼそうとした邪竜と戦った魔導師達に、力を貸したと伝えられているんだ!!」

 答えたのはマシコットだ。
 こちらは、猛吹雪のせいで、お顔の炎があちこちに飛び散りそうになっている。

「あんっ!? イルクナードが邪竜じゃねぇのかっ!?? ヴェルハーラを滅ぼそうとしたってのも、イルクナードだろ!?!?」

 そう言って、カービィが顔をしかめるも……

「違うポよ! 銀竜イルクナードは、邪竜に滅ぼされそうになったヴェルハーラを、魔導師と共に守った守護竜ポッ!! イルクナードは邪竜じゃないポよ!!!」

 いつも通りのカービィのうろ覚え知識に、キレるノリリア。

「そんな事より、この先どうするかを考えろ! このままだと全員凍え死ぬぞっ!!」

 余計な言い争いに業を煮やしたらしい、ロビンズがらしくない怒鳴り声を上げた。
 
「そ、そうポね! 立ち止まってる暇はないポよ!! みんな、前進するポッ!!!」

 ノリリアが号令をかける。

「ど、どこへ向かうんでさっ!?」

 顔中が雪に覆われて、ホワイトタイガーになりかけているライラックが問う。

「山を登るポッ! 伝説によると、銀竜イルクナードはボボバ山の頂に存在するポよ!! その証拠に、さっきの声も上から聞こえてきたポね!!!」

 うぉおっ!?
 この猛吹雪の中を登山ですか!!?
 しかも、恐ろしいドラゴンを探しに!?!?
 考えただけで倒れそうなんだけどっ!?!!?

 しかしながら、ノリリアの選択に、俺は逆らう理由が無い。 
 何故ならば、こっそりと確認した望みの羅針盤の金の針が、真っ直ぐに、目の前に続く雪で真っ白な上り坂の先を指しているのだから。

 うぅ~……、サバイバル!
 めちゃくちゃサバイバルじゃんかよっ!!
 これのどこが、体力いらないんだよぉっ!!!

 先程のリブロ・プラタの言葉を思い出し、腹を立てる俺。
 だが、立ち止まっている暇は無い。
 じっとしてたって試練はクリア出来ないし、なんなら凍死してしまう。

 進むしか無いだろうが、こんにゃろめぇえっ!!!!

 俺達は、猛吹雪の中を、山頂目指して歩き出した。
 




 ザク、ザク、ザク……

 どれほど歩いただろうか?
 山を登るにつれて、次第に猛吹雪は収まっていき、雪雲が覆う白い空から降る雪は、あられのような小さなものになっていた。
 
 ザク、ザク、ザク、ザク……

 ノリリアを先頭に、歩き続ける俺達。
 降る雪はマシになってきたものの、辺りは一面の銀世界。
 なんとか歩いてはいるが、体は既に冷え切っており、手足の先はちょっぴり痺れ始めている。
 さっきまでは、お互いに励まし合っていたみんなの声も、今はもう聞こえて来ない。

 ザク、ザク、ザク、ザク、ザク……

 なんだか体が重たくなってきた。
 それに、眠い。
 瞼が自然と下りてくる。
 あぁ、このまま少し、眠りたいなぁ……

 ギャラララララララァーーーーー!!!!!

「ひゃあっ!?!?」

 間近で聞こえたドラゴンの咆哮に、一瞬で現実に引き戻される俺。

 あっぶねっ!?
 今、完全に、あの世に引っ張られてたぞ!!?
 
 目をパチクリさせて、周囲の現状を把握しようとすると、俺達のすぐ目の前に、巨大な何かが立っていて……

「ポポポッ! ドラゴンポッ!!」

 どぅおっ!?
 ドラゴンんんんっ!!?

 俺は、目ん玉が飛び出そうなほどに驚いて、それを見上げた。

 岩とも見紛いそうなその巨体は、銀色に輝く大きな鱗で全身をびっしりと覆われており、背にはこれまた馬鹿でかい翼を有している。
 遥か頭上高くにあるそのお顔は、恐ろしいなんて言葉じゃ表現出来ないくらい、物々しく殺気立っていた。

 眼光鋭い二つの金色の瞳。
 裂けそうなほどに大きな口と、そこに生えならぶ巨大で鋭い幾本もの牙。
 威嚇するかの如く、大きく開かれた一対の翼。
 そして、振り上げられる、鋭利な爪を有した二本の前足……

「モッモ! 危ないっ!!」

 ドーーーーン!!!

 グレコの叫び声が聞こえて、俺の体は宙を舞った。
 声も上げられぬまま、俺はドラゴンの前足の餌食となって……、ないっ!?

「危なかったでやす」

「ラッ!? ライラック!!?」

 俺は、降りしきる雪のせいでホワイトタイガーと化し、周囲の景色に完全に溶け込んでしまっていたライラックに、間一髪で助けて貰っていたのだ。
 その逞しい両腕で、ギュッと体を抱き締められている。
 
 ……いやん、温かいわ。

 そんな馬鹿な事を考えている暇なんて、勿論無く。
 
 ギャララララァッ!!!

 恐ろしい咆哮と共に、振り下ろされる巨大な二本の前足。
 ダーン! ダーン!! と地響きを立てながら、地面に大きな穴がいくつも出来ていく。

「危ねぇっ!? 一旦離れろっ!!!」

 カービィの指示に、全員がドラゴンから距離を取る。
 がしかし、約一名は違っていて……

「銀竜イルクナード! 我が剣を受けてみよっ!!」

 きゃあっ!?
 何してんのギンロ!!?

 二本の魔法剣を両手に握り締めたギンロは、躊躇なく、ドラゴンに飛びかかって行った。
 そして真っ直ぐに、剣の切先をドラゴンの喉元に向かって振り下ろした……、次の瞬間。

 パッ!!!
 
「ポッ!?」

「ありゃっ!??」

「ギンロ!?!?」

 今の今まで、ドラゴンの首を斬り裂かんとしていたギンロが、その場から綺麗さっぱり消えてしまったでは無いか。
 辺りを見回すも、その姿は何処にもなく……

「あいつ、何処行った!!???」

 カービィが叫ぶ。
 それと同時に、ドラゴンがまたしても吠える。

 ギャラララッ! ギャラララッ!!
 ギャラララララララァーーーーー!!!

 ギャアァ~~~!?
 さっきよりも怒ってるっ!!?
 何してくれてんだよギンロ!!??
 そして……、どこ行ったんだよぉおっ!?!!?
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