682 / 800
★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★
669:第三の試練
しおりを挟む昇降機内の中央の柱に向かい、柱の側面にある穴のうち2と書かれた穴に、第二の試練で手に入れた緑色の宝玉を埋め込むノリリア。
穴にすっぽりと収まった緑色の宝玉はピカッと光を放ち、またしても何処からともなく、フューンというパソコンが起動する際のような音が鳴り響いた。
そして、ガコンッ!と足元が大きく揺れて、ガガガガ!と音を立てながら、昇降機が作動する。
中央の柱に装着されたままの舵輪改めハンドルを、ライラックが力いっぱい回し始めると、頭上の巨大な鎖がジャラジャラと音を立てながら稼働して、昇降機はゆっくりと上昇を始めた。
「う~ん……。次は何だったっけなぁ~?」
難しい顔をしながら腕組みをして、何やら考え中のカービィ。
「ポポ、プッカのお話の展開ポか?」
ノリリアがカービィにそう言うと……
「んだ。グリフォン、ゴブリンときて、次は……、う~ん……? なんか、どっかでドラゴンが出てきた記憶があるんだけど、ゴブリンの次ではなかったような……??」
え? ちょ、ちょっと待って。
ドラゴンって言った今??
この塔、ドラゴンもいるの???
「おそらく、次は人魚ポよ」
はっ!? 人魚!!?
「お!? おぉ、そうだよそうだよ!」
「けど、詳細は全然覚えてないポよ」
「ん~、どんなだったっけかなぁ……? なんかこう、人魚が歌っていた記憶があるんだけどなぁ……??」
いや、あの、二人とも……
どっちもそうだけど、記憶力がザルだなおい。
俺に言われたかないだろうけどさ。
「モッモ君、先程は本当にありがとう、助かったよ」
不意に声をかけられて振り向くと、そこには元気いっぱいになった、お顔メラメラのマシコットが。
「あ、うん。……いやでも、先にマシコットの火を消したのも僕だし、お礼なんてそんなそんな」
手をパタパタと横に振る俺。
こっちが勝手に消火して、慌てて着火しただけだからさ、うん。
「いや、本当に助かったんだよ。興奮状態に陥ったのは僕が未熟だったからであって、あのままだとパロット学士を真っ黒焦げにしていたと思う……。止めてくれてありがとう。そして、助けてくれてありがとう」
マシコットめ、そんな真っ直ぐな目で俺を見て、お礼なんて言うんじゃないよ。
爽やかな笑顔が眩しいぜっ!
「それにしても、さすがは時の神の使者だね。まさか、数多存在する精霊の中でも、皇王と呼ばれる者を召喚出来るなんて……。凄く驚いたし、皇王に命を救われたなんて、畏れ多くて……。僕は本当に運が良いよ」
「あ~……、それは僕もさっき知ったんだ。まさか、バルンが偉い王様だなんて、思いもよらなくて……」
そう、まさかあのバルンが……
いつもヌボーっとしてて、眠そうなバルンが、王様だなんて……
言われなくちゃ分からないし、言われた今もよく分かっていない。
「そうだったんだね。ボンヤリとしか覚えていないけど、確かに見た目はさほど迫力が無かったね。けど、彼は紛れもなく、火の精霊サラマンダーの王だろう。内に秘めている霊力が桁違いだったし……、何より今、全身でその力の強さを僕は感じている。本当に、なんて優しくて、心地よい炎なんだろう」
そう言うとマシコットは、いつもはめている手袋を外して、その手を覆う真っ赤な炎を、うっとりとした表情で見つめた。
へ~、そうなんだ~。
やっぱり、マシコット自身も半分精霊だから、そういう事が分かるんですかね?
まぁなんにせよ、無事で良かったよほんと。
「それに、水の精霊ウンディーネの彼も、きっと高名な精霊に違いないよ。興奮状態の僕の炎を、一瞬で消してしまうくらいだものね」
え? ゼコゼコが??
それは無いんじゃないか???
……いやでも、あいつ妙に偉そうだしな、有り得るのかも。
そうやって雑談をしている間に、ライラックの懸命な頑張りで、昇降機は上階へと到着した。
先程と同じく、壁際には金色の光を放つ両開きの扉が一つ。
そこには美しい人魚のレリーフが象られている。
『第三階層に到着! これより、第三の試練を開始する!!』
声高高に宣言するリブロ・プラタ。
「ポポ、やっぱり人魚ポね……。みんな、心して進むポよ!」
ノリリアの言葉に、力強く頷く騎士団の面々。
「さて……、これ以上、ノリリア達に迷惑をかけるわけにはいかないわ。私達も、気を引き締めていきましょ!」
「あいっ!」
「ガッテン!!」
「うむ!!!」
グレコの言葉に、俺、カービィ、ギンロも、気合を入れて返事をした。
第一階層でティカが、第二階層でテッチャが脱落し、俺達四人と騎士団メンバー六人を足して、残りは十名。
なんとかして、このまま誰も欠ける事なく、最上階へと向かいたい!
勿論、俺自身が欠けてしまわないよう、頑張らないと!!
「ポポポ、今回の試練も、鍵を探せばいいですポか?」
『その通り! 挑戦者全員で、この扉の先に広がるダンジョンより、上階に向かう為の鍵を探してくるのだ!!』
「それで……、何か忠告は無いのか?」
ロビンズが、リブロ・プラタに向かって問うた。
けど、その表情には期待の「き」の字もなく、とりあえず聞いてみたといった感じだ。
まぁ無理も無いな、第二階層では「眠る子を起こすべからず」とかなんとか、めっちゃ分かりにくい忠告しかしてくれなかったわけだし、結局起こしちゃったし……
『愚かなる貴様らに忠告する! 決して嘆くな!!』
な……、嘆くな、だと?
何を?? え、何が???
「ま~た、とんでもなく抽象的だな~」
口をへの字に歪ませた変顔で、カービィはそう言った。
「嘆くな、という事は……。この先には、我らが嘆かねばならぬ何かがある、という事であろうか?」
嘆かねばならぬ何か、って何さギンロや。
例えば、ギンロなら……、一生スイーツが食べられなくなってしまう、とか?
……え、何その試練、意味不明なんだけど。
「ポッ! 考えてても仕方ないポね!! 行くポよ!!!」
キッと前を見据えるノリリア。
すると、人魚のレリーフが象られた金色の光を放つ扉が、ゆっくりと開かれていき……
『これより、第三の試練、開始!』
0
お気に入りに追加
493
あなたにおすすめの小説
アスタッテの尻拭い ~割と乗り気な悪役転生~
物太郎
ファンタジー
“彼女”は死後、一枚のカードを手に取った。
そこに書かれていたのは「役:悪役令嬢」。
『いいかい? 君はそこに書かれた君の役目を果たせばいい。失敗すれば死。一つでも取りこぼせば死。分かった?』
彼女を転生させるという謎の少年はそう言った。
アルベラ・ディオールとして転生した彼女は時に頼れる仲間を作り、時に誰かを敵に回し、“悪役令嬢”という役を成し遂げるべく二度目の人生を奔走する。
※「追放」「復讐」主体の話ではありません
※◆=イラストありページ
・「アスタッテ」って何? 転生の目的は何? をさくっと知りたい方は「65話」と「151話」をどうぞ
第一章、怪しいお薬 十歳偏 ―完―
5年後に迎える学園生活&悪役業に備えるべくアルベラは模索する。そんな中、10歳時のヒーロー達と出会ったり、父の領地で売られている怪しげな薬の事を知ったり、町で恐れられてるファミリーと出会ったり……。※少しずつ文章を修正中
第二章、水底に沈む玉 十三歳偏 ―完―
高等学園入学まであと2年。アルベラは行き倒れの奴隷の少年を見つける。それから少しして魔族の奴隷も拾い……。
彼らの出会いとアルベラの悪役令嬢としてのクエストが関わり何かが起きる?
第三章、エイヴィの翼 前編 学園入学編
高等学園の入学前に、とある他人種の少女と出会ったアルベラ。少女にもらった地図が切っ掛けで、学園一度目の長期休暇は十日前後の冒険に出ることに。
ヒロインやヒーローとも新たに出会い、自分を転生させた少年とも再会し、アルベラの悪役業も本番に。彼女の賑やかで慌ただし学園生活が始まる。
第三章、エイヴィの翼 後編 一年生長期休暇と冒険編
学園入学後の初の長期休暇。入学前に出会った他人種の少女の里観光を口実に、手に入れた地図を辿りお宝探しへ。その先でアルベラ達一行はダークエルフの双子の企てに巻き込まれる事に。
吸血鬼公爵に嫁いだ私は血を吸われることもなく、もふもふ堪能しながら溺愛されまくってます
リオール
恋愛
吸血鬼公爵に嫁ぐこととなったフィーリアラはとても嬉しかった。
金を食い潰すだけの両親に妹。売り飛ばすような形で自分を嫁に出そうとする家族にウンザリ!
おまけに婚約者と妹の裏切りも発覚。こんな連中はこっちから捨ててやる!と家を出たのはいいけれど。
逃げるつもりが逃げれなくて恐る恐る吸血鬼の元へと嫁ぐのだった。
結果、血なんて吸われることもなく、吸血鬼公爵にひたすら愛されて愛されて溺愛されてイチャイチャしちゃって。
いつの間にか実家にざまぁしてました。
そんなイチャラブざまぁコメディ?なお話しです。R15は保険です。
=====
2020/12月某日
第二部を執筆中でしたが、続きが書けそうにないので、一旦非公開にして第一部で完結と致しました。
楽しみにしていただいてた方、申し訳ありません。
また何かの形で公開出来たらいいのですが…完全に未定です。
お読みいただきありがとうございました。
優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~
日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。
もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。
そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。
誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか?
そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。
愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす
リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」
夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。
後に夫から聞かされた衝撃の事実。
アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。
※シリアスです。
※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。
【完結】聖女が世界を呪う時
リオール
恋愛
【聖女が世界を呪う時】
国にいいように使われている聖女が、突如いわれなき罪で処刑を言い渡される
その時聖女は終わりを与える神に感謝し、自分に冷たい世界を呪う
※約一万文字のショートショートです
※他サイトでも掲載中
冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~
日之影ソラ
ファンタジー
タイトル統一しました!
小説家になろうにて先行公開中
https://ncode.syosetu.com/n5925iz/
残虐非道の鬼女王。若くして女王になったアリエルは、自国を導き反映させるため、あらゆる手段を尽くした。時に非道とも言える手段を使ったことから、一部の人間からは情の通じない王として恐れられている。しかし彼女のおかげで王国は繁栄し、王国の人々に支持されていた。
だが、そんな彼女の内心は、女王になんてなりたくなかったと嘆いている。前世では一般人だった彼女は、ぐーたらと自由に生きることが夢だった。そんな夢は叶わず、人々に求められるまま女王として振る舞う。
そんなある日、目が覚めると彼女は少女になっていた。
実の姉が魔女と結託し、アリエルを陥れようとしたのだ。女王の地位を奪われたアリエルは復讐を決意……なーんてするわけもなく!
ちょうどいい機会だし、このままセカンドライフを送ろう!
彼女はむしろ喜んだ。
没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!
日之影ソラ
ファンタジー
かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。
しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。
ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。
そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。
こちらの作品の連載版です。
https://ncode.syosetu.com/n8177jc/
最弱テイマーの成り上がり~役立たずテイマーは実は神獣を従える【神獣使い】でした。今更戻ってこいと言われてももう遅い~
平山和人
ファンタジー
Sランクパーティーに所属するテイマーのカイトは使えない役立たずだからと追放される。
さらにパーティーの汚点として高難易度ダンジョンに転移され、魔物にカイトを始末させようとする。
魔物に襲われ絶体絶命のピンチをむかえたカイトは、秘められた【神獣使い】の力を覚醒させる。
神に匹敵する力を持つ神獣と契約することでスキルをゲット。さらにフェンリルと契約し、最強となる。
その一方で、パーティーメンバーたちは、カイトを追放したことで没落の道を歩むことになるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる