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★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★

669:第三の試練

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 昇降機内の中央の柱に向かい、柱の側面にある穴のうち2と書かれた穴に、第二の試練で手に入れた緑色の宝玉を埋め込むノリリア。
 穴にすっぽりと収まった緑色の宝玉はピカッと光を放ち、またしても何処からともなく、フューンというパソコンが起動する際のような音が鳴り響いた。
 そして、ガコンッ!と足元が大きく揺れて、ガガガガ!と音を立てながら、昇降機が作動する。
 中央の柱に装着されたままの舵輪改めハンドルを、ライラックが力いっぱい回し始めると、頭上の巨大な鎖がジャラジャラと音を立てながら稼働して、昇降機はゆっくりと上昇を始めた。

「う~ん……。次は何だったっけなぁ~?」

 難しい顔をしながら腕組みをして、何やら考え中のカービィ。

「ポポ、プッカのお話の展開ポか?」

 ノリリアがカービィにそう言うと……

「んだ。グリフォン、ゴブリンときて、次は……、う~ん……? なんか、どっかでドラゴンが出てきた記憶があるんだけど、ゴブリンの次ではなかったような……??」

 え? ちょ、ちょっと待って。
 ドラゴンって言った今??
 この塔、ドラゴンもいるの???

「おそらく、次は人魚ポよ」

 はっ!? 人魚!!?

「お!? おぉ、そうだよそうだよ!」

「けど、詳細は全然覚えてないポよ」

「ん~、どんなだったっけかなぁ……? なんかこう、人魚が歌っていた記憶があるんだけどなぁ……??」

 いや、あの、二人とも…… 
 どっちもそうだけど、記憶力がザルだなおい。
 俺に言われたかないだろうけどさ。

「モッモ君、先程は本当にありがとう、助かったよ」

 不意に声をかけられて振り向くと、そこには元気いっぱいになった、お顔メラメラのマシコットが。

「あ、うん。……いやでも、先にマシコットの火を消したのも僕だし、お礼なんてそんなそんな」

 手をパタパタと横に振る俺。
 こっちが勝手に消火して、慌てて着火しただけだからさ、うん。

「いや、本当に助かったんだよ。興奮状態トランスに陥ったのは僕が未熟だったからであって、あのままだとパロット学士を真っ黒焦げにしていたと思う……。止めてくれてありがとう。そして、助けてくれてありがとう」

 マシコットめ、そんな真っ直ぐな目で俺を見て、お礼なんて言うんじゃないよ。
 爽やかな笑顔が眩しいぜっ!

「それにしても、さすがは時の神の使者だね。まさか、数多存在する精霊の中でも、皇王と呼ばれる者を召喚出来るなんて……。凄く驚いたし、皇王に命を救われたなんて、畏れ多くて……。僕は本当に運が良いよ」

「あ~……、それは僕もさっき知ったんだ。まさか、バルンが偉い王様だなんて、思いもよらなくて……」

 そう、まさかあのバルンが……
 いつもヌボーっとしてて、眠そうなバルンが、王様だなんて……
 言われなくちゃ分からないし、言われた今もよく分かっていない。

「そうだったんだね。ボンヤリとしか覚えていないけど、確かに見た目はさほど迫力が無かったね。けど、彼は紛れもなく、火の精霊サラマンダーの王だろう。内に秘めている霊力が桁違いだったし……、何より今、全身でその力の強さを僕は感じている。本当に、なんて優しくて、心地よい炎なんだろう」

 そう言うとマシコットは、いつもはめている手袋を外して、その手を覆う真っ赤な炎を、うっとりとした表情で見つめた。
 
 へ~、そうなんだ~。
 やっぱり、マシコット自身も半分精霊だから、そういう事が分かるんですかね?
 まぁなんにせよ、無事で良かったよほんと。
 
「それに、水の精霊ウンディーネの彼も、きっと高名な精霊に違いないよ。興奮状態の僕の炎を、一瞬で消してしまうくらいだものね」

 え? ゼコゼコが??
 それは無いんじゃないか???
 ……いやでも、あいつ妙に偉そうだしな、有り得るのかも。

 そうやって雑談をしている間に、ライラックの懸命な頑張りで、昇降機は上階へと到着した。
 先程と同じく、壁際には金色の光を放つ両開きの扉が一つ。
 そこには美しい人魚のレリーフが象られている。

『第三階層に到着! これより、第三の試練を開始する!!』

 声高高に宣言するリブロ・プラタ。

「ポポ、やっぱり人魚ポね……。みんな、心して進むポよ!」

 ノリリアの言葉に、力強く頷く騎士団の面々。

「さて……、これ以上、ノリリア達に迷惑をかけるわけにはいかないわ。私達も、気を引き締めていきましょ!」

「あいっ!」

「ガッテン!!」

「うむ!!!」

 グレコの言葉に、俺、カービィ、ギンロも、気合を入れて返事をした。

 第一階層でティカが、第二階層でテッチャが脱落し、俺達四人と騎士団メンバー六人を足して、残りは十名。
 なんとかして、このまま誰も欠ける事なく、最上階へと向かいたい!
 勿論、俺自身が欠けてしまわないよう、頑張らないと!!

「ポポポ、今回の試練も、鍵を探せばいいですポか?」

『その通り! 挑戦者全員で、この扉の先に広がるダンジョンより、上階に向かう為の鍵を探してくるのだ!!』

「それで……、何か忠告は無いのか?」

 ロビンズが、リブロ・プラタに向かって問うた。
 けど、その表情には期待の「き」の字もなく、とりあえず聞いてみたといった感じだ。
 まぁ無理も無いな、第二階層では「眠る子を起こすべからず」とかなんとか、めっちゃ分かりにくい忠告しかしてくれなかったわけだし、結局起こしちゃったし……

『愚かなる貴様らに忠告する! 決して嘆くな!!』

 な……、嘆くな、だと?
 何を?? え、何が???

「ま~た、とんでもなく抽象的だな~」

 口をへの字に歪ませた変顔で、カービィはそう言った。

「嘆くな、という事は……。この先には、我らが嘆かねばならぬ何かがある、という事であろうか?」

 嘆かねばならぬ何か、って何さギンロや。
 例えば、ギンロなら……、一生スイーツが食べられなくなってしまう、とか?
 ……え、何その試練、意味不明なんだけど。

「ポッ! 考えてても仕方ないポね!! 行くポよ!!!」

 キッと前を見据えるノリリア。
 すると、人魚のレリーフが象られた金色の光を放つ扉が、ゆっくりと開かれていき……

『これより、第三の試練、開始!』
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