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★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★
664:プップ
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「ぬぉおぉぉ~~~!!!」
ザシュザシュザシュ……、ブシュウッ!
幾度と無く鳴り響く、生々しい肉の切れる音と、血飛沫が飛び散る音。
「キィイィィ~!」
ボタボタボタ……、パタリ。
大量の血を流しながら、生き絶えていく小鬼達。
唸る双剣。
終わる事のない、ギンロ無双。
しかしそれは、ギンロが強いから終わらないのではない。
小鬼の襲撃が一向に止まないからこそ、終わらないのだ。
入り組んだ迷路のような洞窟で、至る所から小鬼は姿を現した。
そして遂に……
「キリが無いっ!!!」
ようやく気付いたらしいギンロが叫んだ。
普段は青銀色に美しいギンロの毛並みだが、そこかしこに小鬼の濃い紫色の返り血が付着し、それがぶち模様のように見えて、もはや別人‥‥、否、別フェンリルである。
生き絶えている小鬼達からは、小鬼特有の脂っぽい臭いと血生臭さが混じった、何ものにも例え難い悪臭が放たれている。
それはもう、嘔吐してしまいそうなほどに酷い臭いで……
出来るだけ臭いを吸い込まないようにと、俺はだいぶ前から口呼吸をしていた。
「もうっ! 出口はまだなのっ!?」
周囲に漂う異臭に耐え切れないのだろう、グレコは指で鼻を摘んだ格好で、半ばキレ気味に叫んだ。
グレコがそう言うのも無理はない。
俺達はかなりの長時間、洞窟の中を彷徨っていた。
その証拠に、ちょっとやそっとの運動じゃ汗なんかかかないグレコが、その額から大量の汗を流しているのだ。
汗の雫はグレコの白い頬を伝って、静かに地面へと落ちていった。
「わ、分かんないよっ! あぁっ!? 次は左!!!」
ギンロの肩の上に乗る俺は、グレコのプチ雷をかわしつつ、望みの羅針盤の金の針を確認し、慌ててギンロの左耳を引っ張った。
例によってギンロは、ロボットみたいな動きで左側に体を向けた。
そして、左側の通路に入ってすぐ、後ろから……
「ちょっ! ちょっとストップ!!」
静止したのはカービィだ。
その言葉に、目の前の小鬼を斬り捨てたギンロは、走るのをやめて立ち止まる。
他のみんなも一旦足を止めた。
幸いにも、此方に向かってくる小鬼の姿は、前にも後ろにも今のところ見当たらない。
「なぁ……、さっきからずっと、同じとこ回ってねぇか?」
息を切らしながら、不吉な事を言うカービィ。
もしそんな事になっていたら……、道案内している俺に全責任がっ!?
「それは無いポッ! 壁に印を付けているポが、同じ道は一度も通っていないポよ!!」
こちらもいつの間にかライラックに肩車してもらっているノリリアが、手に白いチョークのような物を持ちながら言った。
どうやら、迷った時の為に、小まめに壁に印を付けていたらしい、さすがである。
ライラックはというと、こちらも珍しく、その大きな肩を上下させて、呼吸を乱している。
あまり意識してなかったが(意識する余裕が無かっただけだけど……)、やはり俺達は、宝物庫を出てから随分と走ってきたようだ。
「まさかとは思うが……、この洞窟、広がっていってはいないだろうな?」
こちらも、これまでの旅では涼しい顔しか見た事が無かったロビンズだが、終わりの見えない長距離走に、かなりの疲労が顔に出ている。
「だとしたら絶望的ですわね。もう、正直言って……、いい加減にして欲しいですわ」
頭に被っていた帽子を取って、団扇のように仰いで使うインディゴ。
その言葉通り、かなりうんざりした表情である。
「はぁはぁ……、いったい、我々は……、はぁ……、何を、試されて、いるのでしょう?」
一番走れそうな草食獣の顔をしているパロット学士も、相当に疲れているようだ。
呼吸は乱れに乱れ、息も絶え絶えに、全身がプルプルと小刻みに震えており、顔がどことなく青い。
「ポ? 試されている?? つまり……、まだ試練は続いているという事ポか???」
「はぁはぁはぁ……、ふぅう~……。そう考える他ないかと……」
まさか? そんな……??
次の階に進む為の鍵を見つけたというのに、俺たちは
まだ何かを試されているのか???
「も……、もう駄目じゃ~~~! もう走れんっ!!」
最後尾を走っていたテッチャは、ツルツル頭から滝の如く大量の汗を流しながら、地面に倒れ込んだ。
その姿に俺は、若干の違和感を感じる。
……あれ?
テッチャのリュックって、あんなに大きかったっけか??
テッチャの背負っているリュックが、なんとなくいつもより膨らんでいるように見えたのだ。
だけど、その事に触れる間も無く……
「そういえば、宝物庫を出た瞬間に不思議な声が聞こえたわ。ねぇモッモ、あなたも聞こえたでしょう?」
「ふぇ? ふ……、不思議な声??」
突然グレコに話を振られて、声が上擦ってしまう俺。
「覚えてないの? 確か……、欲に負けた者は相応しくない、小鬼の餌食になれ、みたいな感じの」
あぁ……、なんかそんな声が聞こえたような、聞こえなかったような……
駄目だ、全然覚えてないや。
「モッモ、ゆっくりと話し込んでいる暇は無さそうぞ」
ギンロはそう言って、再び魔法剣を構える。
その視線の先、前方より、小鬼の群れがまたしても迫ってきているではないか。
「キィイィィーーーーー!」
きゃあっ!?
さっきより数多くないっ!!?
「こっちも来てやす!」
ライラックの言葉に後方を見ると、其方からも小鬼の群れが迫ってきている。
いやぁあっ!?
そっちも多くないっ!!?
「ポポウッ!? と、とにかく! 進むポ!!」
慌てて前進を指示するノリリア。
「ぬおぉおおぉぉぉ~~~!!!」
唸り声を上げながら、走り出すギンロ。
振り落とされないようにと、ギンロの頭部にギュッと掴まる俺。
後に続くみんな。
キーキーと悲鳴を上げながら、無惨にも次々と斬り倒されていく小鬼達。
ギンロの体力が保つ限り、俺達がやられる事は無いだろう。
だけどこのまま……、出口がどこかも分からないままに走り続けるのは、肉体的にも精神的にもキツイはずだ。
何か……、何とかしないと……
出口を見つけないと!
「カービィ! 何とかしなさいよっ!!」
「おぉっ!? 何とかとはっ!!?」
ギンロ(と俺)が小鬼と交戦する背後で、グレコとカービィが言い争い始めた。
「ほら! あなた、さっき言ってたじゃない!? 私達の今のこの状況、プップの冒険っていう絵本に似てるんじゃないの!!?」
グレコ……、それ、題名間違ってない?
「プッカな!」
めっちゃ笑顔で訂正するカービィ。
「名前なんてなんでもいいわよっ!!!」
声を荒げるグレコ。
「そいで、おいらにどうしろとっ!?」
「絵本では、そのプッカも小鬼に追い駆けられていたんでしょう!? どうやって逃げ切ったか思い出しなさいよっ!!!」
「なるほどっ! ……無理だっ!!」
「馬鹿っ! 諦めないで考えなさいっ!!」
まるで痴話喧嘩だな……、と、思った次の瞬間。
「うぉおぉっ!?!?」
ずっと後ろの方から、野太い悲鳴が聞こえた。
それは間違いなく、テッチャの声で……
「テッチャ!?」
「ポッ!? テッチャさん!!?」
みんなが驚き振り返った先に見えたのは、随分と離れた場所で、複数の小鬼達に飛びかかられて、前のめりに激しく転んでしまった、哀れなテッチャの姿だった。
ザシュザシュザシュ……、ブシュウッ!
幾度と無く鳴り響く、生々しい肉の切れる音と、血飛沫が飛び散る音。
「キィイィィ~!」
ボタボタボタ……、パタリ。
大量の血を流しながら、生き絶えていく小鬼達。
唸る双剣。
終わる事のない、ギンロ無双。
しかしそれは、ギンロが強いから終わらないのではない。
小鬼の襲撃が一向に止まないからこそ、終わらないのだ。
入り組んだ迷路のような洞窟で、至る所から小鬼は姿を現した。
そして遂に……
「キリが無いっ!!!」
ようやく気付いたらしいギンロが叫んだ。
普段は青銀色に美しいギンロの毛並みだが、そこかしこに小鬼の濃い紫色の返り血が付着し、それがぶち模様のように見えて、もはや別人‥‥、否、別フェンリルである。
生き絶えている小鬼達からは、小鬼特有の脂っぽい臭いと血生臭さが混じった、何ものにも例え難い悪臭が放たれている。
それはもう、嘔吐してしまいそうなほどに酷い臭いで……
出来るだけ臭いを吸い込まないようにと、俺はだいぶ前から口呼吸をしていた。
「もうっ! 出口はまだなのっ!?」
周囲に漂う異臭に耐え切れないのだろう、グレコは指で鼻を摘んだ格好で、半ばキレ気味に叫んだ。
グレコがそう言うのも無理はない。
俺達はかなりの長時間、洞窟の中を彷徨っていた。
その証拠に、ちょっとやそっとの運動じゃ汗なんかかかないグレコが、その額から大量の汗を流しているのだ。
汗の雫はグレコの白い頬を伝って、静かに地面へと落ちていった。
「わ、分かんないよっ! あぁっ!? 次は左!!!」
ギンロの肩の上に乗る俺は、グレコのプチ雷をかわしつつ、望みの羅針盤の金の針を確認し、慌ててギンロの左耳を引っ張った。
例によってギンロは、ロボットみたいな動きで左側に体を向けた。
そして、左側の通路に入ってすぐ、後ろから……
「ちょっ! ちょっとストップ!!」
静止したのはカービィだ。
その言葉に、目の前の小鬼を斬り捨てたギンロは、走るのをやめて立ち止まる。
他のみんなも一旦足を止めた。
幸いにも、此方に向かってくる小鬼の姿は、前にも後ろにも今のところ見当たらない。
「なぁ……、さっきからずっと、同じとこ回ってねぇか?」
息を切らしながら、不吉な事を言うカービィ。
もしそんな事になっていたら……、道案内している俺に全責任がっ!?
「それは無いポッ! 壁に印を付けているポが、同じ道は一度も通っていないポよ!!」
こちらもいつの間にかライラックに肩車してもらっているノリリアが、手に白いチョークのような物を持ちながら言った。
どうやら、迷った時の為に、小まめに壁に印を付けていたらしい、さすがである。
ライラックはというと、こちらも珍しく、その大きな肩を上下させて、呼吸を乱している。
あまり意識してなかったが(意識する余裕が無かっただけだけど……)、やはり俺達は、宝物庫を出てから随分と走ってきたようだ。
「まさかとは思うが……、この洞窟、広がっていってはいないだろうな?」
こちらも、これまでの旅では涼しい顔しか見た事が無かったロビンズだが、終わりの見えない長距離走に、かなりの疲労が顔に出ている。
「だとしたら絶望的ですわね。もう、正直言って……、いい加減にして欲しいですわ」
頭に被っていた帽子を取って、団扇のように仰いで使うインディゴ。
その言葉通り、かなりうんざりした表情である。
「はぁはぁ……、いったい、我々は……、はぁ……、何を、試されて、いるのでしょう?」
一番走れそうな草食獣の顔をしているパロット学士も、相当に疲れているようだ。
呼吸は乱れに乱れ、息も絶え絶えに、全身がプルプルと小刻みに震えており、顔がどことなく青い。
「ポ? 試されている?? つまり……、まだ試練は続いているという事ポか???」
「はぁはぁはぁ……、ふぅう~……。そう考える他ないかと……」
まさか? そんな……??
次の階に進む為の鍵を見つけたというのに、俺たちは
まだ何かを試されているのか???
「も……、もう駄目じゃ~~~! もう走れんっ!!」
最後尾を走っていたテッチャは、ツルツル頭から滝の如く大量の汗を流しながら、地面に倒れ込んだ。
その姿に俺は、若干の違和感を感じる。
……あれ?
テッチャのリュックって、あんなに大きかったっけか??
テッチャの背負っているリュックが、なんとなくいつもより膨らんでいるように見えたのだ。
だけど、その事に触れる間も無く……
「そういえば、宝物庫を出た瞬間に不思議な声が聞こえたわ。ねぇモッモ、あなたも聞こえたでしょう?」
「ふぇ? ふ……、不思議な声??」
突然グレコに話を振られて、声が上擦ってしまう俺。
「覚えてないの? 確か……、欲に負けた者は相応しくない、小鬼の餌食になれ、みたいな感じの」
あぁ……、なんかそんな声が聞こえたような、聞こえなかったような……
駄目だ、全然覚えてないや。
「モッモ、ゆっくりと話し込んでいる暇は無さそうぞ」
ギンロはそう言って、再び魔法剣を構える。
その視線の先、前方より、小鬼の群れがまたしても迫ってきているではないか。
「キィイィィーーーーー!」
きゃあっ!?
さっきより数多くないっ!!?
「こっちも来てやす!」
ライラックの言葉に後方を見ると、其方からも小鬼の群れが迫ってきている。
いやぁあっ!?
そっちも多くないっ!!?
「ポポウッ!? と、とにかく! 進むポ!!」
慌てて前進を指示するノリリア。
「ぬおぉおおぉぉぉ~~~!!!」
唸り声を上げながら、走り出すギンロ。
振り落とされないようにと、ギンロの頭部にギュッと掴まる俺。
後に続くみんな。
キーキーと悲鳴を上げながら、無惨にも次々と斬り倒されていく小鬼達。
ギンロの体力が保つ限り、俺達がやられる事は無いだろう。
だけどこのまま……、出口がどこかも分からないままに走り続けるのは、肉体的にも精神的にもキツイはずだ。
何か……、何とかしないと……
出口を見つけないと!
「カービィ! 何とかしなさいよっ!!」
「おぉっ!? 何とかとはっ!!?」
ギンロ(と俺)が小鬼と交戦する背後で、グレコとカービィが言い争い始めた。
「ほら! あなた、さっき言ってたじゃない!? 私達の今のこの状況、プップの冒険っていう絵本に似てるんじゃないの!!?」
グレコ……、それ、題名間違ってない?
「プッカな!」
めっちゃ笑顔で訂正するカービィ。
「名前なんてなんでもいいわよっ!!!」
声を荒げるグレコ。
「そいで、おいらにどうしろとっ!?」
「絵本では、そのプッカも小鬼に追い駆けられていたんでしょう!? どうやって逃げ切ったか思い出しなさいよっ!!!」
「なるほどっ! ……無理だっ!!」
「馬鹿っ! 諦めないで考えなさいっ!!」
まるで痴話喧嘩だな……、と、思った次の瞬間。
「うぉおぉっ!?!?」
ずっと後ろの方から、野太い悲鳴が聞こえた。
それは間違いなく、テッチャの声で……
「テッチャ!?」
「ポッ!? テッチャさん!!?」
みんなが驚き振り返った先に見えたのは、随分と離れた場所で、複数の小鬼達に飛びかかられて、前のめりに激しく転んでしまった、哀れなテッチャの姿だった。
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