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★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★
657:原初の小鬼
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お? オリジン……、ゴブリン??
何それ???
「それは……、非常にまずいポね。みんな、出来るだけ静かに……」
ノリリアは、先程までとは違って、かなり声のトーンを落としてそう言った。
「進むんでさ?」
コソコソ声で、ライラックが問い掛ける。
「ポポ、ここまで来たのポ、進むしかないポよ」
ノリリアの判断に、騎士団メンバーは皆かなり険しい表情のまま互いに頷き合って、各々手に持っているランプを先程までよりも高い位置に掲げた。
そしてまた、俺たちは歩き出した。
より静かに、より慎重に。
えっと……、俺は、まだ状況がよく理解出来ていないぞ。
表情から察するに、隣のグレコもたぶん同じだと思う。
だけど、反対隣を歩くテッチャは、現状を把握しているようで……、緊張しているのだろう、ツルテカ頭が冷や汗だらけだ。
「ねぇテッチャ、どういう事なの?」
これでもかってくらい声を押し殺しながら、俺はテッチャに尋ねた。
テッチャは、沢山の小鬼が眠る壁際の足元付近を出来るだけ照らさない様に気を付けつつ、そろりそろりと歩きながら、いつもなら考えられないような消え入りそうな声で、俺の質問に答えてくれた。
「原初の小鬼っちゅ~のはな……、つまり、最初にこの世界に現れた小鬼の種族なんじゃが……。現生する小鬼は、様々な種族と関わる事で進化してきた、いわば亜種族なんじゃよ。それ故に体も大きいし、知能も高い。俗に、知性ある小鬼と呼ばれるんじゃが、言語を解する事も出来るし、他種族との余計な争いは避ける傾向にある。じゃが、原初の小鬼は違う。体は小さく、知能は恐ろしく低い。故に言語を持たず、文化もなく……、群れてはおるが、集団で狩りをする肉食魔物となんら変わらん。しかし、勿論魔物よりも多少知能は高い。言ってしまえば、ちょっとした知恵を持った魔物じゃの。しかも悪知恵じゃ。大方の性質は粗悪そのもので、食う、寝る、繁殖する……、その為に必要ならば、相手が何者であろうとも全力で戦う。即ち、本能の赴くままに生きる、なんとも厄介な種族なんじゃ」
粗悪な性質で、本能の赴くままって……、何それ、めっちゃ危険じゃんか。
つまり、意地の悪い、危険な小型の肉食獣って事でいいのか?
となると、同じゴブリンでも、ライラとは全く違う種族だと考えた方が良さそうだな。
「現生する知性ある小鬼と、原初の小鬼とは、もはや別の生き物だと言えるほど、その知能の差は激しい。僕達がお世話になっているタイニック号には、ハーフゴブリンのライラさんが居るけれど、彼女は小鬼の中でも、第三世代と呼ばれる小鬼だね。彼女の額には角が三本あったろう? 小鬼は、その能力に応じて角の本数が変わるんだ。知能はあるけれど、魔力のない小鬼は角が二本。ライラさんのように、他種族と交わる事で魔力を会得したハーフゴブリンなんかは、角が三本生えている。そして、今僕達の周りで眠りこけている小鬼は、額に角が一本のみ……。それが、本能のみで生きている第一世代の小鬼、原初の小鬼の証なんだよ」
テッチャの説明だけでは不十分だと考えたのだろう、後ろからマシコットがそっと教えてくれた。
ふむ、やはり全く別物と考えた方が良さそうだ。
簡単に言えば、猿と人間くらい違うって感じだろう。
……まぁ何にせよ、そんな本能のみで生きている危険極まりない奴らが、足元でゴロゴロ寝ているこの今の状況は、とんでもなく窮地だという事ではなかろうか?
加えて俺たちが今いる場所は、何処まで続くのか、何処に続いているのか全く分からない、真っ暗な洞窟の中なのだ。
入口は消えたし、出口も無い。
これは……、うん、かなりヤベェな。
「けどよ、原初の小鬼といやぁ、数百年前に絶滅したって噂じゃなかったか? 小鬼同士の生存競争に負けて、数を減らしていったって……」
カービィにしては気を遣った方だろうが、それでも声が大きい。
無神経もここまでくると酷いもんだなと思いつつ、俺はマシコットの返答を待つ。
「アンローク大陸において、最後に原初の小鬼が確認されたのは今から250年ほど前だと僕は記憶しています。ですが、見つかっていない=絶滅した、という考えは、間違っているんじゃないかなと……。モッモ君がいい例ですよ」
うむ、マシコットの言う通りだね。
世界的に見ればピグモルは、50年ほど前に絶滅したと思われているわけだし……
数百年前に絶滅したと考えられている小鬼が生き残っていたとて、なんら不思議ではないのであ~る!
「じゃあ、こいつら全部、起きちゃったら大変って事よね?」
俺たちの話を横で聞いていて、ようやく現状を理解出来たらしいグレコが、緊張感のある声でそう言った。
「大変どころじゃ済まない……。彼等が目を覚ませば最後、僕らはここで全滅するだろう。だけどただ一つ、原初の小鬼には、今の僕らに優位な特性があってね。彼等は夜行性では無い。つまり、暗い夜の時間帯は活動しない。更に言ってしまえば、今いる洞窟のような暗い場所では、自然と眠ってしまうんだ。下手に光を当てて刺激しなければ、彼等はこのまま眠り続けてくれるはず」
なるほど……
それでさっきマシコットは、グレコが奴らをランプで照らした際に、慌てて離れさせたんだな。
騎士団メンバーがランプを高く掲げているのも、小鬼達に極力明かりを当てないようにする為だろう。
つまり、暗いうちは安全、という事か。
リブロ・プラタの奴め、忠告とかってややこしい事言ってたけど……
「眠る子を、起こすべからず」ってこの事かよ。
子は子でも、こんな子だとは思わなかったわ!
それでも、進むしか無い。
今の俺たちに出来る事は、静かに、奴らを起こさないように気をつけながら、第二の試練をクリアする事のみである。
この真っ暗な洞窟の何処かにあるという、次の階層に向かう為の鍵を、なんとしてでも探さなければ!
息を押し殺しながら、進む事しばらく。
先頭を行くライラックとギンロが足を止めた。
「ぬぅ……、別れ道でさ」
ライラックの言葉に、ノリリアが前方を照らす。
だんだんと道幅が広くなっていっていた一本道の洞窟が、二手に別れているのだ。
勿論、その両方の壁際には、地面に蹲って眠る小鬼の姿が確認出来る。
「ポポゥ、どっちに進めば……?」
迷うノリリア。
「二組に分かれて進むか?」
ギンロがそう提案するも、
「それは余りに危険だ。万が一にもこいつらが目覚めれば、魔法の使えない我々には部が悪すぎる。加えて、ここで二手に分かれれば、更に頭数が減り、多勢に無勢……、すぐさま全滅するだろう。せめて全員一緒に行動すべきだ」
ロビンズが完全否定。
「ロビンズの意見に賛成です。もうここは、賭けに出るしかないですな。どちらか一方を選んで進みましょう」
パロット学士がそう言った。
すると、隣のグレコが……
「ねぇモッモ。あれ使えないの?」
ぬん? あれ、とは??
「あ~そっか、その手があったな! モッモ、あれ出せよ!!」
カービィもあれを御所望らしいが……、あれ、とは???
首を傾げる俺に対し、グレコとカービィはほぼ同時に溜息をついた。
「モッモ、あなたって本当に成長しないわね……。ほら、神様から授かった、欲しい物の存在する方角を教えてくれる羅針盤の事よ」
おっ!? おぉお~、なるほど!!
神様アイテムの出番ですな!!!
グレコの言葉に俺は、ゴソゴソと服の中を漁って、いつも首から下げている望みの羅針盤を取り出した。
この羅針盤は、銀色の針が常に北を指し、金色の針が俺の望む物の存在する方角を指し示してくれるという、超絶優れ物な羅針盤なのである。
だけど……、この塔は魔法が封印されちゃうような凄い塔であるからして、この望みの羅針盤が正常に機能してくれるかどうかは、ちょっぴり疑問である。
とは言っても、まぁ物は試しだし、他に成す術もないわけだから……
よしっ! いっちょやってみるかっ!!
俺は心の中で願った。
次の階層に向かう為の鍵は、どっちにありますか!?
すると、望みの羅針盤の金の針は、真っ直ぐに、はっきりと、右側の通路を指し示したではないか。
「うん、右ね……。ノリリア、右に行きましょう! 大丈夫、何かあったらモッモが責任を取るから!!」
グレコが遠慮なくそう言った。
……って、おいっ!? グレコ!!?
しれっと全責任を俺に押し付けるなっ!!!
「ポッ!? 右ポねっ!!? 分かったポ、モッモちゃんを信じるポよ!!!」
ノリリア、信じてくれるのは嬉しいけど……
俺の意見じゃなくて、神様アイテムの指示ですからね!
断じて俺が好き好んで選んだわけじゃないですからねっ!!
俺は一人ソワソワとした気持ちのまま、右の通路を選んで歩き出したみんなの後を、静かについて行った。
何それ???
「それは……、非常にまずいポね。みんな、出来るだけ静かに……」
ノリリアは、先程までとは違って、かなり声のトーンを落としてそう言った。
「進むんでさ?」
コソコソ声で、ライラックが問い掛ける。
「ポポ、ここまで来たのポ、進むしかないポよ」
ノリリアの判断に、騎士団メンバーは皆かなり険しい表情のまま互いに頷き合って、各々手に持っているランプを先程までよりも高い位置に掲げた。
そしてまた、俺たちは歩き出した。
より静かに、より慎重に。
えっと……、俺は、まだ状況がよく理解出来ていないぞ。
表情から察するに、隣のグレコもたぶん同じだと思う。
だけど、反対隣を歩くテッチャは、現状を把握しているようで……、緊張しているのだろう、ツルテカ頭が冷や汗だらけだ。
「ねぇテッチャ、どういう事なの?」
これでもかってくらい声を押し殺しながら、俺はテッチャに尋ねた。
テッチャは、沢山の小鬼が眠る壁際の足元付近を出来るだけ照らさない様に気を付けつつ、そろりそろりと歩きながら、いつもなら考えられないような消え入りそうな声で、俺の質問に答えてくれた。
「原初の小鬼っちゅ~のはな……、つまり、最初にこの世界に現れた小鬼の種族なんじゃが……。現生する小鬼は、様々な種族と関わる事で進化してきた、いわば亜種族なんじゃよ。それ故に体も大きいし、知能も高い。俗に、知性ある小鬼と呼ばれるんじゃが、言語を解する事も出来るし、他種族との余計な争いは避ける傾向にある。じゃが、原初の小鬼は違う。体は小さく、知能は恐ろしく低い。故に言語を持たず、文化もなく……、群れてはおるが、集団で狩りをする肉食魔物となんら変わらん。しかし、勿論魔物よりも多少知能は高い。言ってしまえば、ちょっとした知恵を持った魔物じゃの。しかも悪知恵じゃ。大方の性質は粗悪そのもので、食う、寝る、繁殖する……、その為に必要ならば、相手が何者であろうとも全力で戦う。即ち、本能の赴くままに生きる、なんとも厄介な種族なんじゃ」
粗悪な性質で、本能の赴くままって……、何それ、めっちゃ危険じゃんか。
つまり、意地の悪い、危険な小型の肉食獣って事でいいのか?
となると、同じゴブリンでも、ライラとは全く違う種族だと考えた方が良さそうだな。
「現生する知性ある小鬼と、原初の小鬼とは、もはや別の生き物だと言えるほど、その知能の差は激しい。僕達がお世話になっているタイニック号には、ハーフゴブリンのライラさんが居るけれど、彼女は小鬼の中でも、第三世代と呼ばれる小鬼だね。彼女の額には角が三本あったろう? 小鬼は、その能力に応じて角の本数が変わるんだ。知能はあるけれど、魔力のない小鬼は角が二本。ライラさんのように、他種族と交わる事で魔力を会得したハーフゴブリンなんかは、角が三本生えている。そして、今僕達の周りで眠りこけている小鬼は、額に角が一本のみ……。それが、本能のみで生きている第一世代の小鬼、原初の小鬼の証なんだよ」
テッチャの説明だけでは不十分だと考えたのだろう、後ろからマシコットがそっと教えてくれた。
ふむ、やはり全く別物と考えた方が良さそうだ。
簡単に言えば、猿と人間くらい違うって感じだろう。
……まぁ何にせよ、そんな本能のみで生きている危険極まりない奴らが、足元でゴロゴロ寝ているこの今の状況は、とんでもなく窮地だという事ではなかろうか?
加えて俺たちが今いる場所は、何処まで続くのか、何処に続いているのか全く分からない、真っ暗な洞窟の中なのだ。
入口は消えたし、出口も無い。
これは……、うん、かなりヤベェな。
「けどよ、原初の小鬼といやぁ、数百年前に絶滅したって噂じゃなかったか? 小鬼同士の生存競争に負けて、数を減らしていったって……」
カービィにしては気を遣った方だろうが、それでも声が大きい。
無神経もここまでくると酷いもんだなと思いつつ、俺はマシコットの返答を待つ。
「アンローク大陸において、最後に原初の小鬼が確認されたのは今から250年ほど前だと僕は記憶しています。ですが、見つかっていない=絶滅した、という考えは、間違っているんじゃないかなと……。モッモ君がいい例ですよ」
うむ、マシコットの言う通りだね。
世界的に見ればピグモルは、50年ほど前に絶滅したと思われているわけだし……
数百年前に絶滅したと考えられている小鬼が生き残っていたとて、なんら不思議ではないのであ~る!
「じゃあ、こいつら全部、起きちゃったら大変って事よね?」
俺たちの話を横で聞いていて、ようやく現状を理解出来たらしいグレコが、緊張感のある声でそう言った。
「大変どころじゃ済まない……。彼等が目を覚ませば最後、僕らはここで全滅するだろう。だけどただ一つ、原初の小鬼には、今の僕らに優位な特性があってね。彼等は夜行性では無い。つまり、暗い夜の時間帯は活動しない。更に言ってしまえば、今いる洞窟のような暗い場所では、自然と眠ってしまうんだ。下手に光を当てて刺激しなければ、彼等はこのまま眠り続けてくれるはず」
なるほど……
それでさっきマシコットは、グレコが奴らをランプで照らした際に、慌てて離れさせたんだな。
騎士団メンバーがランプを高く掲げているのも、小鬼達に極力明かりを当てないようにする為だろう。
つまり、暗いうちは安全、という事か。
リブロ・プラタの奴め、忠告とかってややこしい事言ってたけど……
「眠る子を、起こすべからず」ってこの事かよ。
子は子でも、こんな子だとは思わなかったわ!
それでも、進むしか無い。
今の俺たちに出来る事は、静かに、奴らを起こさないように気をつけながら、第二の試練をクリアする事のみである。
この真っ暗な洞窟の何処かにあるという、次の階層に向かう為の鍵を、なんとしてでも探さなければ!
息を押し殺しながら、進む事しばらく。
先頭を行くライラックとギンロが足を止めた。
「ぬぅ……、別れ道でさ」
ライラックの言葉に、ノリリアが前方を照らす。
だんだんと道幅が広くなっていっていた一本道の洞窟が、二手に別れているのだ。
勿論、その両方の壁際には、地面に蹲って眠る小鬼の姿が確認出来る。
「ポポゥ、どっちに進めば……?」
迷うノリリア。
「二組に分かれて進むか?」
ギンロがそう提案するも、
「それは余りに危険だ。万が一にもこいつらが目覚めれば、魔法の使えない我々には部が悪すぎる。加えて、ここで二手に分かれれば、更に頭数が減り、多勢に無勢……、すぐさま全滅するだろう。せめて全員一緒に行動すべきだ」
ロビンズが完全否定。
「ロビンズの意見に賛成です。もうここは、賭けに出るしかないですな。どちらか一方を選んで進みましょう」
パロット学士がそう言った。
すると、隣のグレコが……
「ねぇモッモ。あれ使えないの?」
ぬん? あれ、とは??
「あ~そっか、その手があったな! モッモ、あれ出せよ!!」
カービィもあれを御所望らしいが……、あれ、とは???
首を傾げる俺に対し、グレコとカービィはほぼ同時に溜息をついた。
「モッモ、あなたって本当に成長しないわね……。ほら、神様から授かった、欲しい物の存在する方角を教えてくれる羅針盤の事よ」
おっ!? おぉお~、なるほど!!
神様アイテムの出番ですな!!!
グレコの言葉に俺は、ゴソゴソと服の中を漁って、いつも首から下げている望みの羅針盤を取り出した。
この羅針盤は、銀色の針が常に北を指し、金色の針が俺の望む物の存在する方角を指し示してくれるという、超絶優れ物な羅針盤なのである。
だけど……、この塔は魔法が封印されちゃうような凄い塔であるからして、この望みの羅針盤が正常に機能してくれるかどうかは、ちょっぴり疑問である。
とは言っても、まぁ物は試しだし、他に成す術もないわけだから……
よしっ! いっちょやってみるかっ!!
俺は心の中で願った。
次の階層に向かう為の鍵は、どっちにありますか!?
すると、望みの羅針盤の金の針は、真っ直ぐに、はっきりと、右側の通路を指し示したではないか。
「うん、右ね……。ノリリア、右に行きましょう! 大丈夫、何かあったらモッモが責任を取るから!!」
グレコが遠慮なくそう言った。
……って、おいっ!? グレコ!!?
しれっと全責任を俺に押し付けるなっ!!!
「ポッ!? 右ポねっ!!? 分かったポ、モッモちゃんを信じるポよ!!!」
ノリリア、信じてくれるのは嬉しいけど……
俺の意見じゃなくて、神様アイテムの指示ですからね!
断じて俺が好き好んで選んだわけじゃないですからねっ!!
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